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甘い?同居生活

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「美桜、聞いてる?」

「え、聞いてるよ」

不意に名前を呼ばれて我に返る。
思考がふわふわとよそに飛んでいた。

さっきの話で分かったことは、テツは御曹司で今はデザイン事務所で働いているけど後々に海鳴建設に戻るということ。
そして、次期社長ということ。
何か幼なじみという距離から遠い存在になった気分だ。

「うちの会社で働くことはオッケーだよな?」

「そこまでお膳立てしてもらって断ることなんて出来ないと思うんだけど」

「じゃあ、近々社長に合わせるよ」

テツはそう言って、スマホを手にどこかに電話をかけ始めた。
相変わらず、テツの行動の速さには目を見張る。

「あのさ、履歴書とか必要だよね」

「そうだな、聞いてみるよ。あ、哲平だけど。例の件、オッケーだったよ」

テツが嬉しそうに話す。

「いつなら大丈夫?来週ね、分かった。そうだ、履歴書とかいる?了解。うん、そういうことでよろしくお願いしまーす」

会話の内容から、テツの会社の社長だというのが分かる。
私は息をひそめ、電話が終わるのを待った。

「履歴書は持ってきてくれって」

「分かった。用意しとくね。あと、土曜に買い物に出掛けてくる」

履歴書も必要だし、それに貼る写真も撮らないといけないよね。
それと、履歴書のついでにスーツも買おう。
今までは普段着でよかったけど、会社で働くとなるとスーツとか必要になってくる。

それなりに貯金はしているから、あまり高いものでなければ大丈夫だ。
脳内で自分の財布と通帳と相談していると、テツが口を開く。

「美桜、俺も一緒に行く」

「一人で買いに行けるから大丈夫だよ」

「そんな冷たいこと言うなよ。ホント男心が分かってないな。買い物ついでにデートしたいんだけど」

「デート?」

思わず声が裏返った。
テツは何を言ってるんだ。

「あのさ、俺が美桜のことを好きだって言ったこと忘れてないよな」

テツが拗ねたような口ぶりで言ってくる。

「わ、忘れてないけど……」

「好きな子とデートしたいと思うのは当たり前だと思うんだけど。それに言ったよな、覚悟しとけって。というか、買い物するにも足がいるだろ。車出してやるから」

結局言い負かされて、テツとデートという名の買い物に出掛けることになった。
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