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強引な優しさ
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十五時過ぎに家に帰り、着替えを済ませる。
平日にこんな時間から家にいることが滅多にないので変な気分だ。
これからどうしようかと思案していたらスマホにメッセージが届いた。
送り主はテツだ。
《お疲れさま。今日の夜、予定ある?》
今日は何もやることがないので暇と言えば暇だ。
《お疲れさま。特に予定はないけど》
メッセージを送るとすぐに返信が来た。
《よかった。仕事終わりに会おう。また連絡する》
ものの五分の間で、強引に約束を取り付けられてしまった。
このタイミングでテツと会うのか……。
仕事終わりって、私の仕事はもう終わっているんだけど。
私はテツから連絡がくるまで、部屋の片付けをしながら過ごすことにした。
***
「で、どういうことだよ」
ジロリと睨まれて肩を竦めた。
私は今、テツの行きつけの居酒屋で追求を受けている。
あの後、テツから迎えに行くから仕事はいつ終わるのか聞かれて返答に困った。
なぜなら私は家にいたからだ。
正直に家にいると答えると、何でだと聞かれて話せば長くなるから会って話すと伝えた。
仕事を終えたテツは、私の住んでいるアパートに車で迎えに来た。
それに乗り込むと、居酒屋の近くのコインパーキングに車を止めた。
『まちらく』という居酒屋に入り、料理を一通り注文したところで追及が始まった。
「いろいろあって、仕事は辞めることにしたの」
「いろいろって何だよ」
「いろいろは、いろいろだよ」
「答えになってない」
ですよねー。
でも、ストーカーされてるかもしれない、なんて実際に被害に遭った訳じゃないのに話すのもどうかなと思ったりして。
自意識過剰な気もするし。
でも、テツはのらりくらりとかわせる相手ではないのは今までの付き合いで身に染みていた。
私の勘違いかも知れないけど、と前置きして話し出した。
「最近、毎日のようにお店に弁当を買いに来てくれるサラリーマンがいるんだけど、その人の様子がおかしくて」
「様子がおかしいってどういう風に?」
「いや、ホントに偶然とか私の思い過ごしかもしれないんだけどね。そのサラリーマンからよく話しかけられるようになって……。この前は、私とさつきがご飯を食べに行っていたお店で遭遇したの。その次の日から私が配達から帰ってきた時、裏口のところで声をかけられて一言二言会話して帰るっていうのが何回かあったから」
目の前にあるメロンソーダのグラスについている水滴を人差し指で触る。
「普通、お客さんは裏口の方に来ることなんてないでしょ。それなのに、わざわざ裏口まで回って来るなんておかしいよなと思って。何か待ち伏せされているような気がして怖くなったの」
その時の私に向けた笑顔を思い出しただけで身震いした。
平日にこんな時間から家にいることが滅多にないので変な気分だ。
これからどうしようかと思案していたらスマホにメッセージが届いた。
送り主はテツだ。
《お疲れさま。今日の夜、予定ある?》
今日は何もやることがないので暇と言えば暇だ。
《お疲れさま。特に予定はないけど》
メッセージを送るとすぐに返信が来た。
《よかった。仕事終わりに会おう。また連絡する》
ものの五分の間で、強引に約束を取り付けられてしまった。
このタイミングでテツと会うのか……。
仕事終わりって、私の仕事はもう終わっているんだけど。
私はテツから連絡がくるまで、部屋の片付けをしながら過ごすことにした。
***
「で、どういうことだよ」
ジロリと睨まれて肩を竦めた。
私は今、テツの行きつけの居酒屋で追求を受けている。
あの後、テツから迎えに行くから仕事はいつ終わるのか聞かれて返答に困った。
なぜなら私は家にいたからだ。
正直に家にいると答えると、何でだと聞かれて話せば長くなるから会って話すと伝えた。
仕事を終えたテツは、私の住んでいるアパートに車で迎えに来た。
それに乗り込むと、居酒屋の近くのコインパーキングに車を止めた。
『まちらく』という居酒屋に入り、料理を一通り注文したところで追及が始まった。
「いろいろあって、仕事は辞めることにしたの」
「いろいろって何だよ」
「いろいろは、いろいろだよ」
「答えになってない」
ですよねー。
でも、ストーカーされてるかもしれない、なんて実際に被害に遭った訳じゃないのに話すのもどうかなと思ったりして。
自意識過剰な気もするし。
でも、テツはのらりくらりとかわせる相手ではないのは今までの付き合いで身に染みていた。
私の勘違いかも知れないけど、と前置きして話し出した。
「最近、毎日のようにお店に弁当を買いに来てくれるサラリーマンがいるんだけど、その人の様子がおかしくて」
「様子がおかしいってどういう風に?」
「いや、ホントに偶然とか私の思い過ごしかもしれないんだけどね。そのサラリーマンからよく話しかけられるようになって……。この前は、私とさつきがご飯を食べに行っていたお店で遭遇したの。その次の日から私が配達から帰ってきた時、裏口のところで声をかけられて一言二言会話して帰るっていうのが何回かあったから」
目の前にあるメロンソーダのグラスについている水滴を人差し指で触る。
「普通、お客さんは裏口の方に来ることなんてないでしょ。それなのに、わざわざ裏口まで回って来るなんておかしいよなと思って。何か待ち伏せされているような気がして怖くなったの」
その時の私に向けた笑顔を思い出しただけで身震いした。
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