25 / 115
小さな違和感
7
しおりを挟む
はぁ、疲れた。
三件目の配達を終え、ため息をつく。
最後は五階建てのマンションの五階の家で、子供の誕生日パーティで子供用のお弁当やオードブルの注文があった。
タイミングが悪いことに、マンションのエレベーターが点検中で階段を使用しないといけなかった。
これがホントにしんどかった。
普通に階段をのぼるだけでも大変だけど、お弁当の入った保温ボックスを抱えてだったので足だけじゃなく腕にも負担がかかった。
配達先のマンションを見上げてため息をつき、腕をさする。
日頃、運動なんてしていない私にはかなりのダメージだ。
配達は力のある男性の方が向いてるのかも知れない。
明日、筋肉痛になるかもなんて考えながら車に乗り込んだ。
配達先から戻り、店の前にある駐車場に車を止めた。
そこには五台車が止めれるように区切ってあり、その中の一台は配達専用と書かれている。
配達が出来る人を雇ったら、バイクでも買おうか検討しているとおじさんが話していた。
保温ボックスを持って店の裏口から入ろうとした時、声をかけられた。
「ナツキさん!」
えっ、と思いながら振り返ると斉藤と名乗ったサラリーマンがうちの店で買ったであろう弁当の入ったビニール袋を手に持って立っていた。
「今日は配達だったんですね。店にいないからそうかなって思っていたんです」
どうして斉藤さんがわざわざ裏口まで回ってきてまで私に声をかけてきたんだろう。
裏口は従業員専用なんだけど……。
斉藤さんの行動に疑問をもった。
ふと、数日前にさつきと会った時に言われたことを思い出した。
偶然を装ってバッタリって、まさかね。
今日も店にお弁当を買いに来ていただけだよね。
グルグルといろんなことを考えていたら、斉藤さんが質問してきた。
「弁当一個って配達してもらえるのかな?」
「いえ、うちはお弁当は五個以上からの配達になります。従業員も限られているので申し訳ないのですが一個だけの配達は出来ないんです。それに日替わり弁当なら店頭販売しかしてませんよ」
「そっか。じゃあ、今まで通り店まで買いに来ないといけないね」
そう言って笑う斉藤さんの笑顔になぜか恐怖を覚えた。
どうしてそう思ったのか言葉では説明できないけど、本能的に怖くなった。
さつきから言われた言葉が念頭にあるからかも知れない。
「ねぇ、今日は言ってくれないの?」
「何をですか?」
不意に言われたことが理解出来なくてたずねる。
「仕事頑張ってって、この前は言ってくれたよね」
そうだったかな。
お客さんに何を言ったかなんていちいち覚えてないんだけど。
斉藤さんはじっと私を見つめていて、その目が逸らされることはない。
これは言わないとダメな気がして私は口を開いた。
「お仕事頑張ってくださいね」
「ありがとう。ナツキさんのその一言で僕は頑張れるよ。じゃあ、また明日」
斉藤さんは満足そうな笑みを浮かべてその場を離れた。
明日も来るという宣言をされ、私は変な胸騒ぎを感じていた。
三件目の配達を終え、ため息をつく。
最後は五階建てのマンションの五階の家で、子供の誕生日パーティで子供用のお弁当やオードブルの注文があった。
タイミングが悪いことに、マンションのエレベーターが点検中で階段を使用しないといけなかった。
これがホントにしんどかった。
普通に階段をのぼるだけでも大変だけど、お弁当の入った保温ボックスを抱えてだったので足だけじゃなく腕にも負担がかかった。
配達先のマンションを見上げてため息をつき、腕をさする。
日頃、運動なんてしていない私にはかなりのダメージだ。
配達は力のある男性の方が向いてるのかも知れない。
明日、筋肉痛になるかもなんて考えながら車に乗り込んだ。
配達先から戻り、店の前にある駐車場に車を止めた。
そこには五台車が止めれるように区切ってあり、その中の一台は配達専用と書かれている。
配達が出来る人を雇ったら、バイクでも買おうか検討しているとおじさんが話していた。
保温ボックスを持って店の裏口から入ろうとした時、声をかけられた。
「ナツキさん!」
えっ、と思いながら振り返ると斉藤と名乗ったサラリーマンがうちの店で買ったであろう弁当の入ったビニール袋を手に持って立っていた。
「今日は配達だったんですね。店にいないからそうかなって思っていたんです」
どうして斉藤さんがわざわざ裏口まで回ってきてまで私に声をかけてきたんだろう。
裏口は従業員専用なんだけど……。
斉藤さんの行動に疑問をもった。
ふと、数日前にさつきと会った時に言われたことを思い出した。
偶然を装ってバッタリって、まさかね。
今日も店にお弁当を買いに来ていただけだよね。
グルグルといろんなことを考えていたら、斉藤さんが質問してきた。
「弁当一個って配達してもらえるのかな?」
「いえ、うちはお弁当は五個以上からの配達になります。従業員も限られているので申し訳ないのですが一個だけの配達は出来ないんです。それに日替わり弁当なら店頭販売しかしてませんよ」
「そっか。じゃあ、今まで通り店まで買いに来ないといけないね」
そう言って笑う斉藤さんの笑顔になぜか恐怖を覚えた。
どうしてそう思ったのか言葉では説明できないけど、本能的に怖くなった。
さつきから言われた言葉が念頭にあるからかも知れない。
「ねぇ、今日は言ってくれないの?」
「何をですか?」
不意に言われたことが理解出来なくてたずねる。
「仕事頑張ってって、この前は言ってくれたよね」
そうだったかな。
お客さんに何を言ったかなんていちいち覚えてないんだけど。
斉藤さんはじっと私を見つめていて、その目が逸らされることはない。
これは言わないとダメな気がして私は口を開いた。
「お仕事頑張ってくださいね」
「ありがとう。ナツキさんのその一言で僕は頑張れるよ。じゃあ、また明日」
斉藤さんは満足そうな笑みを浮かべてその場を離れた。
明日も来るという宣言をされ、私は変な胸騒ぎを感じていた。
10
お気に入りに追加
78
あなたにおすすめの小説
残業シンデレラに、王子様の溺愛を
小達出みかん
恋愛
「自分は世界一、醜い女なんだーー」過去の辛い失恋から、男性にトラウマがあるさやかは、恋愛を遠ざけ、仕事に精を出して生きていた。一生誰とも付き合わないし、結婚しない。そう決めて、社内でも一番の地味女として「論外」扱いされていたはずなのに、なぜか営業部の王子様•小鳥遊が、やたらとちょっかいをかけてくる。相手にしたくないさやかだったが、ある日エレベーターで過呼吸を起こしてしまったところを助けられてしまいーー。
「お礼に、俺とキスフレンドになってくれない?」
さやかの鉄壁の防御を溶かしていく小鳥遊。けれど彼には、元婚約者がいてーー?
地味女で喪女でもよく濡れる。~俺様海運王に開発されました~
あこや(亜胡夜カイ)
恋愛
新米学芸員の工藤貴奈(くどうあてな)は、自他ともに認める地味女で喪女だが、素敵な思い出がある。卒業旅行で訪れたギリシャで出会った美麗な男とのワンナイトラブだ。文字通り「ワンナイト」のつもりだったのに、なぜか貴奈に執着した男は日本へやってきた。貴奈が所属する博物館を含むグループ企業を丸ごと買収、CEOとして乗り込んできたのだ。「お前は俺が開発する」と宣言して、貴奈を学芸員兼秘書として側に置くという。彼氏いない歴=年齢、好きな相手は壁画の住人、「だったはず」の貴奈は、昼も夜も彼の執着に翻弄され、やがて体が応えるように……
お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~
ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。
2021/3/10
しおりを挟んでくださっている皆様へ。
こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。
しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗)
楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。
申しわけありません。
新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。
修正していないのと、若かりし頃の作品のため、
甘めに見てくださいm(__)m
家族愛しか向けてくれない初恋の人と同棲します
佐倉響
恋愛
住んでいるアパートが取り壊されることになるが、なかなか次のアパートが見つからない琴子。
何気なく高校まで住んでいた場所に足を運ぶと、初恋の樹にばったりと出会ってしまう。
十年ぶりに会話することになりアパートのことを話すと「私の家に住まないか」と言われる。
未だ妹のように思われていることにチクチクと苦しみつつも、身内が一人もいない上にやつれている樹を放っておけない琴子は同棲することになった。
ドクターと救急救命士は天敵⁈~最悪の出会いは最高の出逢い~
せいとも
恋愛
救急救命士として働く雫石月は、勤務明けに乗っていたバスで事故に遭う。
どうやら、バスの運転手が体調不良になったようだ。
乗客にAEDを探してきてもらうように頼み、救助活動をしているとボサボサ頭のマスク姿の男がAEDを持ってバスに乗り込んできた。
受け取ろうとすると邪魔だと言われる。
そして、月のことを『チビ団子』と呼んだのだ。
医療従事者と思われるボサボサマスク男は運転手の処置をして、月が文句を言う間もなく、救急車に同乗して去ってしまった。
最悪の出会いをし、二度と会いたくない相手の正体は⁇
作品はフィクションです。
本来の仕事内容とは異なる描写があると思います。
表紙イラストはイラストAC様よりお借りしております。
契約結婚!一発逆転マニュアル♡
伊吹美香
恋愛
『愛妻家になりたい男』と『今の状況から抜け出したい女』が利害一致の契約結婚⁉
全てを失い現実の中で藻掻く女
緒方 依舞稀(24)
✖
なんとしてでも愛妻家にならねばならない男
桐ケ谷 遥翔(30)
『一発逆転』と『打算』のために
二人の契約結婚生活が始まる……。
【R18・完結】甘溺愛婚 ~性悪お嬢様は契約婚で俺様御曹司に溺愛される~
花室 芽苳
恋愛
【本編完結/番外編完結】
この人なら愛せそうだと思ったお見合い相手は、私の妹を愛してしまった。
2人の間を邪魔して壊そうとしたけど、逆に2人の想いを見せつけられて……
そんな時叔父が用意した新しいお見合い相手は大企業の御曹司。
両親と叔父の勧めで、あっという間に俺様御曹司との新婚初夜!?
「夜のお相手は、他の女性に任せます!」
「は!?お前が妻なんだから、諦めて抱かれろよ!」
絶対にお断りよ!どうして毎夜毎夜そんな事で喧嘩をしなきゃならないの?
大きな会社の社長だからって「あれするな、これするな」って、偉そうに命令してこないでよ!
私は私の好きにさせてもらうわ!
狭山 聖壱 《さやま せいいち》 34歳 185㎝
江藤 香津美 《えとう かつみ》 25歳 165㎝
※ 花吹は経営や経済についてはよくわかっていないため、作中におかしな点があるかと思います。申し訳ありません。m(__)m
最高ランクの御曹司との甘い生活にすっかりハマってます
けいこ
恋愛
ホテルマンとして、大好きなあなたと毎日一緒に仕事が出来ることに幸せを感じていた。
あなたは、グレースホテル東京の総支配人。
今や、世界中に点在する最高級ホテルの創始者の孫。
つまりは、最高ランクの御曹司。
おまけに、容姿端麗、頭脳明晰。
総支配人と、同じホテルで働く地味で大人しめのコンシェルジュの私とは、明らかに身分違い。
私は、ただ、あなたを遠くから見つめているだけで良かったのに…
それなのに、突然、あなたから頼まれた偽装結婚の相手役。
こんな私に、どうしてそんなことを?
『なぜ普通以下なんて自分をさげすむんだ。一花は…そんなに可愛いのに…』
そう言って、私を抱きしめるのはなぜ?
告白されたわけじゃないのに、気がづけば一緒に住むことになって…
仕事では見ることが出来ない、私だけに向けられるその笑顔と優しさ、そして、あなたの甘い囁きに、毎日胸がキュンキュンしてしまう。
親友からのキツイ言葉に深く傷ついたり、ホテルに長期滞在しているお客様や、同僚からのアプローチにも翻弄されて…
私、一体、この先どうなっていくのかな?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる