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小さな違和感
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その日の夜、仕事が終わり駅までの道のりを歩く。
私の通勤手段は徒歩、電車、自転車だ。
お店から駅までは徒歩で約十分。
そこから電車に乗って十分で最寄り駅につく。
駅から私が住んでいるアパートまで自転車で五分だ。
今日は早番だったので、十八時半に店を出た。
この時間帯は、歩いていると仕事帰りのサラリーマンやOLとすれ違う。
駅が目前に見えた時、バッグの中のスマホが震え、軽快な着信音がかすかに聞こえた。
立ち止まってバッグの中を漁りスマホを取り出すと画面にはテツからの着信を知らせる文字が表示されていた。
バーで飲んだ日にテツと連絡先を交換し、それから毎日のようにメッセージのやり取りをしている。
その時に、決まってテツは私の仕事の終わる時間を聞いてきた。
遅番の時は帰るのが遅くなるから心配だとか言って。
今まで何年もこのスタイルでやってきているのに、急に心配されるのは変な感じでムズムズする。
私はというと、ことあることにあの夜のことを思い出してしまい気まずくて仕方ない。
だけど、テツはその事に触れることは一切ない。
順番が逆だったことを気にしているのか、テツは私との心の距離を縮めようとしているのが会話の端々で感じる。
覚悟しとけよとは言っていたけど、あの夜のことは一度リセットして最初から関係を築き直そうとしている。
テツのそんな真摯な態度に、私もちゃんと向き合うべきなのかもと思い始めている。
それより何の用だろう。
テツはまだ仕事なのかな。
電話に出ようとした時、「あの……」という男性の声が聞こえた気がした。
でも、雑踏の中だし私の空耳だろうと判断し、電話に出た。
「もしもし」
『今、大丈夫か?』
「うん。さっき店を出て帰ってる途中だから。どうしたの?」
『そうか。いや、別に用はないけど何となく声が聞きたくなって』
「な、なにそれ。そっちはまだ仕事?」
さり気なく声が聞きたいとか言われ、動揺して素っ気ない態度を取ってしまった。
ホント、こういうのに慣れてないから照れくさいしドキドキする。
『あぁ。最近は定時で帰れることは滅多にないからな』
「忙しいんだね。あっ、ごめん。電車の時間があるからもう切るね」
話をしていて、何気なく駅の時計を見ると電車の出発時間が近づいていた。
別に一本遅らせても問題はないけど、いつも乗っている電車じゃないと変な感じがする。
『そうか、気を付けて帰れよ』
「うん、ありがと。仕事頑張って。じゃあ」
話し終わって電話を切ると耳が熱い。
何かテツの声が甘さを含んでいるように聞こえるんだけど……。
スマホをバッグの中にしまっていると、誰かの視線を感じた。
周りを見回してみたけど、見知った顔の人はいない。
というか、私のことなんか見向きもしないで駅までの道を急いでいる人やこれから飲みに行くであろう若者の集団が歩いている。
気のせいか。
私は早足で駅まで向かった。
私の通勤手段は徒歩、電車、自転車だ。
お店から駅までは徒歩で約十分。
そこから電車に乗って十分で最寄り駅につく。
駅から私が住んでいるアパートまで自転車で五分だ。
今日は早番だったので、十八時半に店を出た。
この時間帯は、歩いていると仕事帰りのサラリーマンやOLとすれ違う。
駅が目前に見えた時、バッグの中のスマホが震え、軽快な着信音がかすかに聞こえた。
立ち止まってバッグの中を漁りスマホを取り出すと画面にはテツからの着信を知らせる文字が表示されていた。
バーで飲んだ日にテツと連絡先を交換し、それから毎日のようにメッセージのやり取りをしている。
その時に、決まってテツは私の仕事の終わる時間を聞いてきた。
遅番の時は帰るのが遅くなるから心配だとか言って。
今まで何年もこのスタイルでやってきているのに、急に心配されるのは変な感じでムズムズする。
私はというと、ことあることにあの夜のことを思い出してしまい気まずくて仕方ない。
だけど、テツはその事に触れることは一切ない。
順番が逆だったことを気にしているのか、テツは私との心の距離を縮めようとしているのが会話の端々で感じる。
覚悟しとけよとは言っていたけど、あの夜のことは一度リセットして最初から関係を築き直そうとしている。
テツのそんな真摯な態度に、私もちゃんと向き合うべきなのかもと思い始めている。
それより何の用だろう。
テツはまだ仕事なのかな。
電話に出ようとした時、「あの……」という男性の声が聞こえた気がした。
でも、雑踏の中だし私の空耳だろうと判断し、電話に出た。
「もしもし」
『今、大丈夫か?』
「うん。さっき店を出て帰ってる途中だから。どうしたの?」
『そうか。いや、別に用はないけど何となく声が聞きたくなって』
「な、なにそれ。そっちはまだ仕事?」
さり気なく声が聞きたいとか言われ、動揺して素っ気ない態度を取ってしまった。
ホント、こういうのに慣れてないから照れくさいしドキドキする。
『あぁ。最近は定時で帰れることは滅多にないからな』
「忙しいんだね。あっ、ごめん。電車の時間があるからもう切るね」
話をしていて、何気なく駅の時計を見ると電車の出発時間が近づいていた。
別に一本遅らせても問題はないけど、いつも乗っている電車じゃないと変な感じがする。
『そうか、気を付けて帰れよ』
「うん、ありがと。仕事頑張って。じゃあ」
話し終わって電話を切ると耳が熱い。
何かテツの声が甘さを含んでいるように聞こえるんだけど……。
スマホをバッグの中にしまっていると、誰かの視線を感じた。
周りを見回してみたけど、見知った顔の人はいない。
というか、私のことなんか見向きもしないで駅までの道を急いでいる人やこれから飲みに行くであろう若者の集団が歩いている。
気のせいか。
私は早足で駅まで向かった。
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