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二人の関係を変えた夜
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えっ……?
桜の飾りのついたピンだ。
どこかで見た気がするんだけど……ってこれ!
ハッとして隣に座っているテツを見た。
「これ、覚えてるか?」
「私の、だよね」
確認するように聞くと、テツは頷いた。
この桜のピンは私が小学校の卒業式の時に付けていた物だ。
テツの暴言を聞いた瞬間、ムカついて何も考えずにピンを投げつけたから、なくなってしまったと思っていたのに……。
「あの時のこと、ずっと謝りたかった」
テツは真っ直ぐに私を見つめた。
「ホントにごめん。あんなことを言って美桜を傷付けるつもりはなかったんだ。あの日、いつもと違う髪型を見てクラスの男どもが可愛いって騒いでいたんだ。美桜の可愛さは俺だけが知っていればいいのに……って思ったらムカついて心にもないことを言ってしまったんだ」
バツが悪そうに目を伏せる。
私はサラリと言われた言葉に耳を疑った。
テツが私のことを可愛いと思ってくれていたなんて信じられない。
私のことを傷つけたくせに、という気持ちでジト目を向けた。
「あれは完全な八つ当たりだ。言ってしまった言葉は取り消せない。だから謝らないといけないのは分かっていたけど、美桜と面と向き合うことが怖かった。でも、時が経てばその気持ちも和らぎ謝れると思っていた。だけど、中学一年の夏に美桜は引っ越してしまい、それが叶わなくなった。謝るチャンスはいくらでもあったのに、どうしてもっと早く勇気を出して謝らなかったんだと後悔した。願掛けじゃないけど、このピンを持ってればいつか会えるかもと思って大事に取っておいたんだ」
テツは桜のピンを手に取ると私の方へと差し出した。
「そして、会えたら謝罪してこのピンを返そうと思っていた」
なくなってしまったと思っていた桜のピンをテツが十年以上も大事に持っていてくれた。
もう錆びていて髪の毛に飾ることは難しいけど……。
懐かしい気持ちでそのピンを見つめる。
テツの想いを聞き、いろいろ考えた。
テツも自分の言ってしまった言葉を後悔していた。
十何年も……。
言われた私も悲しかったけど、こうして謝罪してくれて胸のつかえが取れ、スッキリとした気持ちになった。
何より、あの桜のピンをずっと持っていてくれていたことでテツの言葉を素直に受け入れることが出来た。
「ありがとう。謝ってくれたから許してあげる」
ピンを受け取り私が笑顔で答えると、テツは安堵の息をはいていた。
私はお預けされていたシャンディーガフを飲んだ。
少し温くなってたけど。
「なぁ、そんなに飲んでるけど明日も仕事があるんじゃないのか?」
シャンディーガフをおかわりして飲んでいる私を見て心配そうに言ってくるテツが親みたいでおかしくなりケラケラ笑いながら答えた。
「明日も遅番だから問題はないよ」
「それならいいけど」
テツと話しながら、多少酔いが回っているんだろうなという感覚はあった。
居酒屋しか行ったことがなかったので、本格的なバーに来るチャンスなんて二度とないから素面のテツには悪いけど、つい飲んでしまう。
でも、値段のことを考えたらこれ以上は無理だ。
桜の飾りのついたピンだ。
どこかで見た気がするんだけど……ってこれ!
ハッとして隣に座っているテツを見た。
「これ、覚えてるか?」
「私の、だよね」
確認するように聞くと、テツは頷いた。
この桜のピンは私が小学校の卒業式の時に付けていた物だ。
テツの暴言を聞いた瞬間、ムカついて何も考えずにピンを投げつけたから、なくなってしまったと思っていたのに……。
「あの時のこと、ずっと謝りたかった」
テツは真っ直ぐに私を見つめた。
「ホントにごめん。あんなことを言って美桜を傷付けるつもりはなかったんだ。あの日、いつもと違う髪型を見てクラスの男どもが可愛いって騒いでいたんだ。美桜の可愛さは俺だけが知っていればいいのに……って思ったらムカついて心にもないことを言ってしまったんだ」
バツが悪そうに目を伏せる。
私はサラリと言われた言葉に耳を疑った。
テツが私のことを可愛いと思ってくれていたなんて信じられない。
私のことを傷つけたくせに、という気持ちでジト目を向けた。
「あれは完全な八つ当たりだ。言ってしまった言葉は取り消せない。だから謝らないといけないのは分かっていたけど、美桜と面と向き合うことが怖かった。でも、時が経てばその気持ちも和らぎ謝れると思っていた。だけど、中学一年の夏に美桜は引っ越してしまい、それが叶わなくなった。謝るチャンスはいくらでもあったのに、どうしてもっと早く勇気を出して謝らなかったんだと後悔した。願掛けじゃないけど、このピンを持ってればいつか会えるかもと思って大事に取っておいたんだ」
テツは桜のピンを手に取ると私の方へと差し出した。
「そして、会えたら謝罪してこのピンを返そうと思っていた」
なくなってしまったと思っていた桜のピンをテツが十年以上も大事に持っていてくれた。
もう錆びていて髪の毛に飾ることは難しいけど……。
懐かしい気持ちでそのピンを見つめる。
テツの想いを聞き、いろいろ考えた。
テツも自分の言ってしまった言葉を後悔していた。
十何年も……。
言われた私も悲しかったけど、こうして謝罪してくれて胸のつかえが取れ、スッキリとした気持ちになった。
何より、あの桜のピンをずっと持っていてくれていたことでテツの言葉を素直に受け入れることが出来た。
「ありがとう。謝ってくれたから許してあげる」
ピンを受け取り私が笑顔で答えると、テツは安堵の息をはいていた。
私はお預けされていたシャンディーガフを飲んだ。
少し温くなってたけど。
「なぁ、そんなに飲んでるけど明日も仕事があるんじゃないのか?」
シャンディーガフをおかわりして飲んでいる私を見て心配そうに言ってくるテツが親みたいでおかしくなりケラケラ笑いながら答えた。
「明日も遅番だから問題はないよ」
「それならいいけど」
テツと話しながら、多少酔いが回っているんだろうなという感覚はあった。
居酒屋しか行ったことがなかったので、本格的なバーに来るチャンスなんて二度とないから素面のテツには悪いけど、つい飲んでしまう。
でも、値段のことを考えたらこれ以上は無理だ。
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