再会ロマンス~幼なじみの甘い溺愛~

松本ユミ

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二人の関係を変えた夜

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連れてこられたのは、『ダークムーン』というバー。
車は近くの駐車場に止めて少し歩いた場所にバーはあった。
ここはどうやらテツの行きつけのお店らしく、長身の渋いイケメンと親しそうに挨拶を交わしている。

「こんばんは、朔斗さん」

「哲平くん、いらっしゃい。珍しく今日は一人じゃないんだな」

「えぇ、まぁ」

ふぅん、テツはここに来るときは一人なんだ。
てっきり、女の人を連れてきてるのかと思った。

「空いている席へどうぞ」

カウンターの左側にはサラリーマンが一人、お酒を飲んでいる。
テツはカウンターの右端に座り、私はその隣に座る。

「美桜、何か飲む?」

「じゃあ、ピーチフィズで」

「つまみ系はいらないのか?」

どうしよう。
さっき、お店で残った惣菜を食べたからそんなに食べれない。
だからといってお酒だけっていうのも寂しいし。
メニューを見て考える。

「レンコンチップスかな」

「了解。朔斗さん、ピーチフィズとレンコンチップス、俺は茄子とベーコンのトマトソースパスタと彩り野菜と海老のアヒージョと烏龍茶」

「あれ、今日は飲まないんだな」

「車で来てるから」

「なるほど」

テツが注文すると、朔斗さんと呼ばれていたイケメンの男性はカウンターの奥に入っていった。

「ここのアヒージョはマジで美味いから食べてみて」

「うん、ありがとう」

私は返事をしながら、店内に視線を向けた。
こんなバーの常連なんて、テツは私とは違う世界で生活していたんだろうな。
もう、私の知っているテツではないんだと改めて思う。
私は頼んだピーチフィズが美味しくて飲み干した。
この勢いで話を聞いて用件を済ませようと思い口を開く。

「話って何?」

「飯を食べ終わってからでもいいか?」

私が切り出した時、ちょうどテツの頼んだパスタが出来上がったところだった。
何も食べてなくてお腹が空いていると言っていたので、仕方なく了承した。
テツが食べている間に私はカクテルのおかわりをした。

「すみません、スクリュードライバーお願いします」

「美桜、ちょっとペースが早いんじゃないのか?」

「そんなことないよ。テツは早く食べなよ」

心配そうに言うテツに笑いながら答える。
このバーのカクテルは全て六百円。
美味しいからいろんな種類を飲んでみたくなる。
財布には七千円は入ってたと思うから支払いはできる。

私はスクリュードライバーを飲みつつ朔斗さんと話をしていた。
朔斗さんは、ここのオーナー兼バーテンダーらしい。
パッと見は無口なのかな?と思っていたけど、すごく話しやすくて、優しい人だった。
結婚しているとのことで、その証拠に左の薬指には指輪がはめられていた。

「すみません、シャンディーガフ下さい」

「美桜、顔とか赤くなってないか?」

パスタを食べ終わったテツが気遣わしげな表情で私を見る。

「飲んだらすぐに顔に出るだけで、全然大丈夫よ」

お酒を飲んで顔が熱くなるのはいつものことだ。

「シャンディーガフです」

「ありがとうございます」

テツがいきなり私の目の前に置かれたシャンディーガフの入ったグラスを遠ざける。

「何するのよ」

「話があるって言っただろ。これはその後だ」

お酒を取り上げられムッとしたけど、本来の目的を思い出しおとなしく従った。
テツは咳払いし、ポケットから何かを出してカウンターの上に置いた。
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