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拗らせ女の同期への秘めたる一途な想い
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「いつ?」
「最初にセックスする前」
「嘘だ」
「だから嘘じゃねぇよ。すみれは確かに俺のことを好きだと言った。俺もすみれのことが好きだったから抱いた」
ずっと私は巧のことをセフレだと思っていたから、突然そんなことを言われても全然思考が追いつかない。
「お前、ピーピー泣きながら言ってただろ。『巧は恋愛が面倒かもしれないけど、好きなんだもん』って」
は?
泣きながらそんなことを言ったなんて信じられない。
というか、恋愛がめんどくさいって話を私は本人に言ったってこと?
「最初、何を言ってるのか分からなかったけど、俺が晴馬たちと話してたのを聞いたって言われて思い出したんだ。あいつら、よく合コンとかやってただろ。俺は合コンとか好きじゃないし、誘われるのが嫌だったから面倒って言ったんだよ。恋愛自体が面倒なわけじゃない」
「じゃあ、私はずっと勘違いして……」
「俺は好きだったすみれに告白されて嬉しかった。それなのに、お前は自分が言ってたことを忘れてるとかあり得ないだろ」
巧は大きなため息をつく。
「すみれは酔ってたから記憶が曖昧になってたのかもしれないけど、俺はちゃんと確認した。抱くけどいいのかって。そしたら、すみれが言ったんだ。『好きだから抱いて』って」
記憶をどうにか手繰り寄せ、あの夜のことを必死に思い出す。
確か、酔ってタクシーで眠ってしまった私を巧が自分のマンションに連れ帰ってくれた。
それで、ふと目覚めた私を心配そうな目で見つめる巧に胸が高鳴って……。
「あっ、」
私、なんか言った気がする。
私の言葉に驚いた表情の巧も、そのあとなにか言ってキスをした、はずだ。
その時に言った言葉が告白だったのかも。
自分が巧に告白したことを忘れてしまっていたなんて最悪すぎるでしょ。
しかも、散々セフレだからと勘違いして落ち込んで、ひとり勝手に傷ついていたなんて馬鹿すぎる。
なにより、巧に申し訳ない。
「ご、ごめん」
頭を下げていたら、巧は私の両頬を包んで視線を合わせてきた。
「すみれ、お前は俺のことどう思ってるんだ?」
巧は真っ直ぐ射抜くように私を見つめてきた。
もう好きって言っていいの?
我慢しなくていい?
「好き。ずっと巧のことが好きだった」
溢れる思いと共に、涙がこぼれ落ちた。
自分の気持ちを押し殺すのは苦しかった。
それでも巧との繋がりが欲しくて、身体だけの関係を続けていた。
巧が優しく指で涙を拭い、目を細めて微笑む。
「俺もすみれが好き」
私は泣きながら巧に抱き着いた。
ポンポンとあやすように背中を擦ってくれる。
「マジでセフレってなんだよ。会ってもセックスしない日もあったし、二人で映画とか行ったのだって普通にデートだろ」
巧が恨み言を呟く。
確かに健全な週末を過ごしたこともあった。
それって、身体だけの関係というかセフレではない、よね?
申し訳なさ過ぎて、巧の胸に頭をグリグリと押し付けて反省する。
「まさか、お互い勘違いしているとは思わなかったわ」
何度目かも分からないため息をつく。
「これからは、お互いにもっと気持ちを伝えあった方がいいってことだな。俺もハッキリと言わなかったもの悪かったし。とりあえず、すみれは親に見合いの話は彼氏がいるからって言って断ること。分かった?」
私が頷くと、巧は満足そうに笑う。
『彼氏がいるのでお見合いは止めて』なんて言ったらお母さんは驚くだろうな、なんて思っていたら急に巧にデコピンされた。
「俺をセフレに仕立て上げたすみれには、たっぷりとお仕置きするから覚悟しろよ」
「お仕置き?」
とんでもないことを言われたので聞き返すと巧はジト目を向けてきた。
「自分が好きだと言ったことも、俺が好きだと言ったこともすべて忘れていた。挙げ句の果てには俺のことをセフレとか思ってるし」
「ごめんなさい」
それを言われると、謝罪の言葉しか出てこない。
「もう謝罪はいいよ。すみれ的にはやっと彼氏彼女になれたみたいだし、今から俺らがやるべきことは決まってるだろ」
巧は私を抱き上げ、寝室へ行くとベッドに放り投げられてスプリングが軋んだ。
両手をベッドについて覆い被さってくると、巧は口許に笑みを浮かべた。
私はそれを見て、心臓が早鐘を打つ。
「セフレなんて誤解されないように、すみれの身体の隅々まで舐め尽くして愛してやるから」
そんな恐ろしい言葉を口にしたあと、貪るようなキスを仕掛けてきた。
呼吸も奪うような口づけに、私の身体は熱を帯びていく。
「巧っ、好き……」
激しいキスの合間、私は好きな人に『好き』と言える喜びを感じ、巧の身体を抱きしめた。
End.
「最初にセックスする前」
「嘘だ」
「だから嘘じゃねぇよ。すみれは確かに俺のことを好きだと言った。俺もすみれのことが好きだったから抱いた」
ずっと私は巧のことをセフレだと思っていたから、突然そんなことを言われても全然思考が追いつかない。
「お前、ピーピー泣きながら言ってただろ。『巧は恋愛が面倒かもしれないけど、好きなんだもん』って」
は?
泣きながらそんなことを言ったなんて信じられない。
というか、恋愛がめんどくさいって話を私は本人に言ったってこと?
「最初、何を言ってるのか分からなかったけど、俺が晴馬たちと話してたのを聞いたって言われて思い出したんだ。あいつら、よく合コンとかやってただろ。俺は合コンとか好きじゃないし、誘われるのが嫌だったから面倒って言ったんだよ。恋愛自体が面倒なわけじゃない」
「じゃあ、私はずっと勘違いして……」
「俺は好きだったすみれに告白されて嬉しかった。それなのに、お前は自分が言ってたことを忘れてるとかあり得ないだろ」
巧は大きなため息をつく。
「すみれは酔ってたから記憶が曖昧になってたのかもしれないけど、俺はちゃんと確認した。抱くけどいいのかって。そしたら、すみれが言ったんだ。『好きだから抱いて』って」
記憶をどうにか手繰り寄せ、あの夜のことを必死に思い出す。
確か、酔ってタクシーで眠ってしまった私を巧が自分のマンションに連れ帰ってくれた。
それで、ふと目覚めた私を心配そうな目で見つめる巧に胸が高鳴って……。
「あっ、」
私、なんか言った気がする。
私の言葉に驚いた表情の巧も、そのあとなにか言ってキスをした、はずだ。
その時に言った言葉が告白だったのかも。
自分が巧に告白したことを忘れてしまっていたなんて最悪すぎるでしょ。
しかも、散々セフレだからと勘違いして落ち込んで、ひとり勝手に傷ついていたなんて馬鹿すぎる。
なにより、巧に申し訳ない。
「ご、ごめん」
頭を下げていたら、巧は私の両頬を包んで視線を合わせてきた。
「すみれ、お前は俺のことどう思ってるんだ?」
巧は真っ直ぐ射抜くように私を見つめてきた。
もう好きって言っていいの?
我慢しなくていい?
「好き。ずっと巧のことが好きだった」
溢れる思いと共に、涙がこぼれ落ちた。
自分の気持ちを押し殺すのは苦しかった。
それでも巧との繋がりが欲しくて、身体だけの関係を続けていた。
巧が優しく指で涙を拭い、目を細めて微笑む。
「俺もすみれが好き」
私は泣きながら巧に抱き着いた。
ポンポンとあやすように背中を擦ってくれる。
「マジでセフレってなんだよ。会ってもセックスしない日もあったし、二人で映画とか行ったのだって普通にデートだろ」
巧が恨み言を呟く。
確かに健全な週末を過ごしたこともあった。
それって、身体だけの関係というかセフレではない、よね?
申し訳なさ過ぎて、巧の胸に頭をグリグリと押し付けて反省する。
「まさか、お互い勘違いしているとは思わなかったわ」
何度目かも分からないため息をつく。
「これからは、お互いにもっと気持ちを伝えあった方がいいってことだな。俺もハッキリと言わなかったもの悪かったし。とりあえず、すみれは親に見合いの話は彼氏がいるからって言って断ること。分かった?」
私が頷くと、巧は満足そうに笑う。
『彼氏がいるのでお見合いは止めて』なんて言ったらお母さんは驚くだろうな、なんて思っていたら急に巧にデコピンされた。
「俺をセフレに仕立て上げたすみれには、たっぷりとお仕置きするから覚悟しろよ」
「お仕置き?」
とんでもないことを言われたので聞き返すと巧はジト目を向けてきた。
「自分が好きだと言ったことも、俺が好きだと言ったこともすべて忘れていた。挙げ句の果てには俺のことをセフレとか思ってるし」
「ごめんなさい」
それを言われると、謝罪の言葉しか出てこない。
「もう謝罪はいいよ。すみれ的にはやっと彼氏彼女になれたみたいだし、今から俺らがやるべきことは決まってるだろ」
巧は私を抱き上げ、寝室へ行くとベッドに放り投げられてスプリングが軋んだ。
両手をベッドについて覆い被さってくると、巧は口許に笑みを浮かべた。
私はそれを見て、心臓が早鐘を打つ。
「セフレなんて誤解されないように、すみれの身体の隅々まで舐め尽くして愛してやるから」
そんな恐ろしい言葉を口にしたあと、貪るようなキスを仕掛けてきた。
呼吸も奪うような口づけに、私の身体は熱を帯びていく。
「巧っ、好き……」
激しいキスの合間、私は好きな人に『好き』と言える喜びを感じ、巧の身体を抱きしめた。
End.
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