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拗らせ女の同期への秘めたる一途な想い
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明日香に言われ、私はずっと考えていた。
巧と話し合った方がいいと言われても、どう切り出していいか分からなかった。
『好き』だと告白しても振られるだけで、今までの関係がギクシャクする未来しかみえない。
会って『セフレはやめる』と言えばいいのかな。
いくら考えても正解にたどり着けなくて、とりあえず会う約束だけしていた。
金曜の仕事終わり、いつものように巧の部屋に向かった。
今日は、まだお風呂には入っていないみたいで部屋着で出迎えられた。
「飯食う?」
「ううん。ちょっと話がしたくて」
晩御飯は食べていないけど、今はお腹が減ってなかった。
私はいつものようにラグの上に座る。
「なんか飲む?」
「大丈夫」
「えっ、いったいどうしたんだ?」
普段と違う私の様子に巧が怪訝な表情で隣に座った。
私と一緒にいるとき、巧は無愛想な仮面を外す。
気心が知れている私だけに見せる顔だ。
私が話を切り出したあとは、もうこの顔も見れなくなるのかな。
緊張して膝の上に置いていた手をギュッと握る。
「あのね、」
口を開いたときにスマホの着信音が鳴った。
私の好きなアーティストの曲が部屋に鳴り響いている。
「ちょっとごめん」
バッグの中に入っていたスマホを見ると、お母さんからだった。
今は出たくないかも、と無視をした。
けど、うるさく鳴り続く私の着信音。
「出ないのか?」
「あ、うん。お母さんからだし」
「俺のことは気にせず出ろよ」
そんなことを言われたら出ないわけにはいかない。
私は渋々、スマホの画面をタップした。
「……もしもし」
『もしもし、すみれ?あんた、お見合いの日は来週の土曜でいいんでしょ?』
「それはちょっと待って」
『どうしてよ。先方に連絡しないといけないんだから。すみれの都合を教えてもらわないと困るんだけど』
「こっちも今、お見合いの話なんてされたら困るから」
思わずそう叫んでいた。
「見合い?」
巧の低い声が耳に届く。
慌てて隣を見ると、不愉快そうにムッとした表情の巧と目が合った。
まずい、とりあえず電話を終わらせよう。
「お母さん、用事があるからまたかける。じゃあね」
『ちょっと待ちなさっ……』
話を遮って電話を切ると、電源を落とした。
スマホをバッグの中にしまっていたら、隣からの視線が突き刺さる。
「すみれ、見合いってなに?」
巧が怒っている気がする。
こんな巧は初めて見るかもしれない。
私はビクビクしながら口を開いた。
「お、お母さんが彼氏もいないし結婚の予定がない私に見合いの話を持ってきて」
「は?彼氏はいるだろ」
間髪入れずに言われた言葉に反論した。
「いないよ、彼氏なんて」
「ふざけんなよ、マジで」
巧が不機嫌丸出しで私を睨んだ。
なんで巧がそんなことを言うのか理解できなかった。
どこに私の彼氏がいるというんだろう。
もし、他に私の彼氏がいたとしたら、巧とセフレなんかになるわけない。
「ふざけてないよ。私に彼氏なんていない!」
「いるだろうが、俺が」
「えっ?」
「えってなんだよ」
「なんだよって、巧こそなにを言ってるの?」
私の耳はおかしくなったんだろうか。
巧が彼氏?
「すみれこそ、なに言っているんだ。俺とお前は付き合っているだろ」
「えっ?は?なに、それ……」
聞き間違いだろうか。
巧は当たり前のように、私と付き合っていると言っている。
本当に意味がわからない。
疲れすぎて私の脳がバグってるのかな。
「おい、ちょっと待て。俺はずっとすみれと付き合っていると思っていたんだけど」
「嘘だっ」
「嘘じゃねえよ。俺が好きじゃねえ奴なんて抱くわけないだろ」
「えっ?」
それって、好きな人なら抱くということなのかな。
「じゃあ、すみれは俺のことどう思っていたんだ?」
改めて聞かれ、私は小さな声で「セフレ……」と答えた。
「バッカ!お前クソだろ」
巧は盛大に暴言を吐いた挙句、私の両頬を抓ってきた。
「いひゃい」
「なんでそんなとんでもない発想になるんだよ」
巧は呆れたように言い、手を離した。
「だって、酔った勢いでエッチしたでしょ」
「あの時か。確かにお前はベロベロに酔ってたよな」
「巧だって酔ってたじゃん」
「あんなの酔ったうちに入らない。だから、俺は酔った勢いで抱いたわけじゃない。それに、すみれは俺のこと好きって言ったじゃん」
眩暈がした。
私が巧のことを好きと言った?
明日香に言われ、私はずっと考えていた。
巧と話し合った方がいいと言われても、どう切り出していいか分からなかった。
『好き』だと告白しても振られるだけで、今までの関係がギクシャクする未来しかみえない。
会って『セフレはやめる』と言えばいいのかな。
いくら考えても正解にたどり着けなくて、とりあえず会う約束だけしていた。
金曜の仕事終わり、いつものように巧の部屋に向かった。
今日は、まだお風呂には入っていないみたいで部屋着で出迎えられた。
「飯食う?」
「ううん。ちょっと話がしたくて」
晩御飯は食べていないけど、今はお腹が減ってなかった。
私はいつものようにラグの上に座る。
「なんか飲む?」
「大丈夫」
「えっ、いったいどうしたんだ?」
普段と違う私の様子に巧が怪訝な表情で隣に座った。
私と一緒にいるとき、巧は無愛想な仮面を外す。
気心が知れている私だけに見せる顔だ。
私が話を切り出したあとは、もうこの顔も見れなくなるのかな。
緊張して膝の上に置いていた手をギュッと握る。
「あのね、」
口を開いたときにスマホの着信音が鳴った。
私の好きなアーティストの曲が部屋に鳴り響いている。
「ちょっとごめん」
バッグの中に入っていたスマホを見ると、お母さんからだった。
今は出たくないかも、と無視をした。
けど、うるさく鳴り続く私の着信音。
「出ないのか?」
「あ、うん。お母さんからだし」
「俺のことは気にせず出ろよ」
そんなことを言われたら出ないわけにはいかない。
私は渋々、スマホの画面をタップした。
「……もしもし」
『もしもし、すみれ?あんた、お見合いの日は来週の土曜でいいんでしょ?』
「それはちょっと待って」
『どうしてよ。先方に連絡しないといけないんだから。すみれの都合を教えてもらわないと困るんだけど』
「こっちも今、お見合いの話なんてされたら困るから」
思わずそう叫んでいた。
「見合い?」
巧の低い声が耳に届く。
慌てて隣を見ると、不愉快そうにムッとした表情の巧と目が合った。
まずい、とりあえず電話を終わらせよう。
「お母さん、用事があるからまたかける。じゃあね」
『ちょっと待ちなさっ……』
話を遮って電話を切ると、電源を落とした。
スマホをバッグの中にしまっていたら、隣からの視線が突き刺さる。
「すみれ、見合いってなに?」
巧が怒っている気がする。
こんな巧は初めて見るかもしれない。
私はビクビクしながら口を開いた。
「お、お母さんが彼氏もいないし結婚の予定がない私に見合いの話を持ってきて」
「は?彼氏はいるだろ」
間髪入れずに言われた言葉に反論した。
「いないよ、彼氏なんて」
「ふざけんなよ、マジで」
巧が不機嫌丸出しで私を睨んだ。
なんで巧がそんなことを言うのか理解できなかった。
どこに私の彼氏がいるというんだろう。
もし、他に私の彼氏がいたとしたら、巧とセフレなんかになるわけない。
「ふざけてないよ。私に彼氏なんていない!」
「いるだろうが、俺が」
「えっ?」
「えってなんだよ」
「なんだよって、巧こそなにを言ってるの?」
私の耳はおかしくなったんだろうか。
巧が彼氏?
「すみれこそ、なに言っているんだ。俺とお前は付き合っているだろ」
「えっ?は?なに、それ……」
聞き間違いだろうか。
巧は当たり前のように、私と付き合っていると言っている。
本当に意味がわからない。
疲れすぎて私の脳がバグってるのかな。
「おい、ちょっと待て。俺はずっとすみれと付き合っていると思っていたんだけど」
「嘘だっ」
「嘘じゃねえよ。俺が好きじゃねえ奴なんて抱くわけないだろ」
「えっ?」
それって、好きな人なら抱くということなのかな。
「じゃあ、すみれは俺のことどう思っていたんだ?」
改めて聞かれ、私は小さな声で「セフレ……」と答えた。
「バッカ!お前クソだろ」
巧は盛大に暴言を吐いた挙句、私の両頬を抓ってきた。
「いひゃい」
「なんでそんなとんでもない発想になるんだよ」
巧は呆れたように言い、手を離した。
「だって、酔った勢いでエッチしたでしょ」
「あの時か。確かにお前はベロベロに酔ってたよな」
「巧だって酔ってたじゃん」
「あんなの酔ったうちに入らない。だから、俺は酔った勢いで抱いたわけじゃない。それに、すみれは俺のこと好きって言ったじゃん」
眩暈がした。
私が巧のことを好きと言った?
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