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拗らせ女の同期への秘めたる一途な想い
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「明日香、私お見合いする」
「は?マジで言ってる?」
「マジ。お母さんが見合いしろって言って来週の土曜はどうかって聞いてきてる。ちなみに、拒否権はなし」
「あちゃー、すみれのお母さん容赦ないね」
「彼氏がいれば断れたんだけどね」
週が明けた月曜、ランチに誘った同期の明日香に愚痴る。
ショートボブの目鼻立ちの整った顔の明日香、今日はお洒落な黒縁メガネをかけている。
「彼氏……ね」
明日香には私が巧とセフレ関係にあることを伝えている。
注文したオムライスを食べていたら、目の前の明日香がじっと見つめてきた。
「榎本のことはいいの?」
スプーンでオムライスにかかっていたデミグラスソースをつつきながら口を開く。
「いいもなにもセフレだもん」
「あのさ、本当にセフレ?」
「どういうこと?」
明日香の言葉に首を傾げる。
「すみれと榎本って付き合ってるとしか思えないんだけど」
「は?どこをどう見て?」
思わず変な声が出た。
私と巧が付き合っているとしか思えないってどういうことだろう。
「だって、ほぼ毎週のように会ってるんでしょ」
「うん」
「で、エッチして次の日も一緒に過ごしているんでしょ?」
「うん」
金曜に巧の家に泊まって、次の日は映画を観に行ったり買い物に出かけたりすることもある。
お互いに予定があって、会わない日もあるけど。
「それで付き合ってないって噓でしょ」
明日香は呆れたように言うけど、私と巧は付き合っていない。
それは断言できる。
なんなら私の片想いだ。
「だって、巧は恋愛はめんどくさいって言ってたし」
「榎本が直接すみれに言ったの?」
「ううん。同期会の時に渡辺くんたちと話しているときに言ってた」
「それって男同士で話してたのを盗み聞きしたってこと?」
「盗み聞きって……。まあ、そうとも言うけど」
好きな人の声は自然と耳が捉えてしまうわけで。
本音を言えば、私だってあんな巧の言葉なんて聞きたくなかった。
「榎本ってさ、女子の同期で仲がいいのってすみれだけなんだよね」
「えっ?」
「私、同期会でも榎本とほとんど喋ったことないよ。それに、他の女子とも親しげに話しているの見たことがない」
言われた意味が分からず、パチパチと数回瞬きする。
「榎本が自分から話しかけるのはすみれだけ。下の名前で呼ぶのもすみれだけ。それって、どういうことなんだろうね」
明日香が頬付けをつきながら意味深なことを言う。
「ねぇ、お見合いする前に榎本と本音で話し合ってみなよ。じゃないとすみれ、後悔するよ」
そう言って、明日香は食後に運ばれてきていたコーヒーを飲み干した。
後悔……。
「いい機会だし、お互いに腹を割って話しな。じゃ、戻ろうか」
明日香が伝票を持って立ち上がる。
「奢ってくれるの?」
「まさか、個別会計に決まってるじゃん」
「ここは奢ってくれる流れかと思ったのに」
「調子に乗らないで」
そんなやり取りをしながらレジに向かった。
「明日香、私お見合いする」
「は?マジで言ってる?」
「マジ。お母さんが見合いしろって言って来週の土曜はどうかって聞いてきてる。ちなみに、拒否権はなし」
「あちゃー、すみれのお母さん容赦ないね」
「彼氏がいれば断れたんだけどね」
週が明けた月曜、ランチに誘った同期の明日香に愚痴る。
ショートボブの目鼻立ちの整った顔の明日香、今日はお洒落な黒縁メガネをかけている。
「彼氏……ね」
明日香には私が巧とセフレ関係にあることを伝えている。
注文したオムライスを食べていたら、目の前の明日香がじっと見つめてきた。
「榎本のことはいいの?」
スプーンでオムライスにかかっていたデミグラスソースをつつきながら口を開く。
「いいもなにもセフレだもん」
「あのさ、本当にセフレ?」
「どういうこと?」
明日香の言葉に首を傾げる。
「すみれと榎本って付き合ってるとしか思えないんだけど」
「は?どこをどう見て?」
思わず変な声が出た。
私と巧が付き合っているとしか思えないってどういうことだろう。
「だって、ほぼ毎週のように会ってるんでしょ」
「うん」
「で、エッチして次の日も一緒に過ごしているんでしょ?」
「うん」
金曜に巧の家に泊まって、次の日は映画を観に行ったり買い物に出かけたりすることもある。
お互いに予定があって、会わない日もあるけど。
「それで付き合ってないって噓でしょ」
明日香は呆れたように言うけど、私と巧は付き合っていない。
それは断言できる。
なんなら私の片想いだ。
「だって、巧は恋愛はめんどくさいって言ってたし」
「榎本が直接すみれに言ったの?」
「ううん。同期会の時に渡辺くんたちと話しているときに言ってた」
「それって男同士で話してたのを盗み聞きしたってこと?」
「盗み聞きって……。まあ、そうとも言うけど」
好きな人の声は自然と耳が捉えてしまうわけで。
本音を言えば、私だってあんな巧の言葉なんて聞きたくなかった。
「榎本ってさ、女子の同期で仲がいいのってすみれだけなんだよね」
「えっ?」
「私、同期会でも榎本とほとんど喋ったことないよ。それに、他の女子とも親しげに話しているの見たことがない」
言われた意味が分からず、パチパチと数回瞬きする。
「榎本が自分から話しかけるのはすみれだけ。下の名前で呼ぶのもすみれだけ。それって、どういうことなんだろうね」
明日香が頬付けをつきながら意味深なことを言う。
「ねぇ、お見合いする前に榎本と本音で話し合ってみなよ。じゃないとすみれ、後悔するよ」
そう言って、明日香は食後に運ばれてきていたコーヒーを飲み干した。
後悔……。
「いい機会だし、お互いに腹を割って話しな。じゃ、戻ろうか」
明日香が伝票を持って立ち上がる。
「奢ってくれるの?」
「まさか、個別会計に決まってるじゃん」
「ここは奢ってくれる流れかと思ったのに」
「調子に乗らないで」
そんなやり取りをしながらレジに向かった。
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