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エターナル 番外編 ファンタジー・ドリーム襲撃

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《気がつくと、大きな戦いに巻き込まれている場面だった》

《森の中に見える広場は、周りの木々の間から燃え盛る炎が、火の海のように見えていた》

《辺りは一面、炎。オレンジ色って、この事かと思った》



僕は、燃え盛るオレンジ色の炎に圧倒されていた
燃え盛る木々の轟音のように焼ける音に
普段の安堵する焚き火とは、違う山火事
焦げる匂いに、煙の匂い
一瞬、理解できなかった
人々が、自分に火が付く事を恐れた悲鳴が遠くに聞こえ
森や木々を焼いていく、地獄の炎のような熱気を見渡し、状況を理解した


この炎が種族同士の戦いなのか、エイリアン系の襲来かは分からなかったが、近くにいた友人が急に体を丸めたと思ったら激しく掻きむしり、服を引き裂き、唸り声を上げ、大きく轟くような咆哮と共に、背中が金色に光り始め...体が大きく変化していった


金色の光りと思っていたのは、金色の毛並みに人間の耳とは違う耳が、腕も姿形も大きな金色の毛並みに覆われた狼男に変化していった


友人の美しい金髪の理由が、わかった気がした
横目で僕を見る目には殺気を孕んでいて、恐ろしい形相に驚く自分
(彼がこんな顔をするなんて)
そう懐かしい緑の瞳はすざましい怒気を孕んでいた


なぜ、緑の瞳に懐かしく思うのかわからなかった


狼男は、友人だ


狼男に変化した友人は走り出し、完全な狼となり、燃え盛る炎の奥から次々とやってくる奴らを、ゆらっと白い影のように立っている厚さの無い、奴らを、敵を仕留めていった


《わかってないのに、なぜか敵と思った
友人と思うのも不思議だった
緑の瞳に、懐かしく思うのも本当に不思議だった》

白い影に飛びかかり、喉笛を脇腹を咆哮と共に噛みつき、食い千切り、赤い血を飛ばす
薄い白い体に、赤い血に驚く自分とは違い
彼は、狼は唸り声と共に相手を押し倒し押さえつけ、顔に噛みつくすさまじい動き、場面は凄惨であるのに、狼の凄まじい動きは、神々しい金色の炎が粛正にかかっているようだった


その時、頭上から天地を揺るがす声が響く


「やっぱりか!この地域の住人は、元は聖霊達が人間になった者達だけあるな。代が継がれ、記憶にも残らず、自分達が何者か忘れていき親が子に伝えなくなっていっても、窮地になれば先祖帰りか!
他の者達も姿を変えていってるぞ!
お前はそのままか」と、
森を山を、この辺り一帯に轟くような声


声は聞こえるが、姿は見えない


自分を指刺すように轟く、その声と同時に、地面は揺れ、風が荒く吹き出し回りの火に煽られ強く燃え盛り、飛び火が起こった


自分が何を相手にしているかはわからなかった
が、自分はどうしてここにいるかがわかった
と気がつくと、突然の急襲に気が動転していたと思う


この炎の前に、村が、村の人々が襲撃され殺された事を思い出す


人々の逃げ惑う恐怖の顔を見ていた、自分
ただ、どうして、この場所にいるのかがわからない
友人が、どうして横にいるのかも


あの優しい友人が、金色の狼になって戦っている姿を目の当たりにし、空に轟いていた声


どんな時でも、話し合いをと言う暴力的な所のない彼が、敵に挑み食いちぎっていってる、その姿


大きく唸る狼の声
嘲笑うかのように燃え盛っていく炎
このすざましい炎も、奴らから見れば巨大な焚き火なのか?とふと思うも...
涼しく光る月の下で、光る金色の狼の咆哮に、熱さだけで、皮膚が焼けただれていくように感じる炎に、正気に戻る


熱さに、自分が立っているのが不思議だった


すざましい熱さに、ナニぼーっとしたんだと思うと同時にっっz


自分の左手の平が、さっきからジンジンする
痺れてるようにジンジンしていてどんどん痛みのように大きくなっていき、急に自分はキモが座ったように左手を前に突き出し、呪文を唱えていた


自分が自分である感覚に驚く
こうしてるのが、当然の感覚に


見ると手には穴が空いていて...
向こう側が見える


開いた穴が、物凄い勢いで火を、辺りを奴等を吸い込んでヒュルヒュルと消えていく
燃え盛る炎を奴等を吸い込んでいく手に伝わる振動は強く、体が震え、足を開いて踏ん張り、右手で左手首を支え、体中力が入っていた


さっきの声の主と思えるのは、吸い込んでいないように思う
何処に行ったと思う
上空を見上げて見るが、あたりに気配がない


血で赤く燃え盛っていた炎は、鎮火していた


開いた手の穴の吸引は、収まっているが、手は相変わらずジンジンしている


この手の痺れのような痛みが増していくたびに、自分は全てを思い出した


この村の遥遠い過去を
人里離れたこの村は、山や泉、川、花や植物の精霊達が存在していた
そのうち精霊達は時々人間の姿になり、人間として村人らに時々会っていたのが、一緒に日々暮らしていくようになった
中には人間と一緒になり、子供を作り人間として寿命を終えていく者も


また、精霊達は人間の姿に変えていたのを、長い年月でそれを忘れてしまった者達もいた


僕も村の森の精霊を受け継ぐ直系だ
手に穴が開き、力を使った
森は、入口であり番人の役目がある
この村を守る為にも....


狼になった友人が、僕を痛ましい目で見てくる
自分だって、元の姿に戻ったのに(笑)


僕に寄ってきて、身体を擦る
もう、会えなくなる挨拶のように


会えなくなる訳ではない


僕は、元の森の姿に戻るだけ
戻らないといけない


恋人を残して
昨日好きだと打ち明けたが...
彼女は、村を襲った襲撃で亡くなったと思うんだろうな
遺体はと捜し、嘆くだろう
見つからなくて
悲しまずに、新しい恋をして毎日楽しく過ごしてほしい


・・・ファニだった?
昨日告白したのに、もう名前が思い出せない
出来事や会話は思い出せるのに、呼んだ名前のとこだけが、思い出せない


手の穴が、大きく広がっていく


自分の体が輪のように
大気に森に、隅々に広がっていくのがわかる
消えていった部分から、
身体が広がっていくのがわかる
自分が森に、村に、山に広がるたびに、
開いた穴は大きくなっていって体は、もう半分もない


種々の花や木々、川や泉の精だった者達が
各々の動物の集合体だった精霊達が、なぜ人間の姿形を取り、そこから彼ら人間となっていったのか、人間と一緒になっていった気持ちはわからない


まったく
最初は、自然と人間の仲介役を買って出、橋渡しの役目のつもりだったのだろうか


自分は、人間の女性に恋をして好きだと
結婚しようと、告白したと言うのに(笑)
まあ、人間だと思っていたし(笑)


引越しするのとは訳が違う
折角、告白したのにと言う気持ちもある
考え方が、自分でも少しオカシイと思う(笑)
泣きたくなるような感じがしている
人間の感情か、好きだと思っていた感情なのか


敵が来たら
人間では、対処はできない
自分達が人間でいたから
やすやすと侵入や攻撃をくらったか
いざとなると、人間ではダメか


なんで、自分がとは思わない
自分が森の精霊だと気づいたからなのか


精霊は人間に姿を変えて接するだけなら問題は何もないが、決意して人間でいると決めたり、人間の姿でいるのが長くなると、精霊に戻れなくなる
そんな精霊達は、多いようだ
人間に変化すると精霊は寿命が少し長いだけで、人間として生を終える
子供に自分の役目を渡し


精霊の血を分けられた村人達
我々の意識を通すためだったのか、よくわからないな


人間へと変化し、代を重ね意識は薄れど、
こうやって危機となれば、元の姿に戻りて
この土地を守る


人間のイヤな所は、山ほどあるのに


精霊達は、それを直して貰いたくて人間に変化して、人間に会っていたと思うのだが...
人間を正そうと思っていたと思うのに...


なぜだろう、
見てきたと思う、思い出す映像は
彼らに道を聞かれ伝えている所や
楽しく横に並んで一緒に喋って歩いている所
重い荷物を代わりに持っている所で


皮肉だな、自分達のこの場所を守る事が
人間を守る事になるのは


本当に精霊達は、なぜ人間になったのだろう
擬態と言う形をとって、わからない
人間の身体でしてきた事が、楽しかったと思う
この気持ち


身体が、半分以上無くなってきてから強く思う


朝の鳥の囀りを、人間の耳で聞く事はない
朝の森の霧のある湿度を、雨に濡れた身体を感じる事はない
朝のしじまを、静寂を、身体で感じる事はない
不意に触れた人の手の温かさ、
久しぶりと言って走って来て
勢いよく抱きついてきたりのアタックやハグ
楽しそうな声や嬉しそうな笑い声
不意に自分の腕に落ちてくる、相手の体の重さに、身体の暖かさ
太陽の暖かさを感じる髪の匂いを、もう人間で感じる事はない


見上げれば青い空の暖かさ、
冷たさ、
寒さ、
遠くで轟く雷鳴、
もう雨が降るぞと、忙しく人と笑いながら走る事も、恋人の名前を呼ぶ事もない


名前を呼ばれて、振り替えることは
もう自分にはないと思う
ため息が出る
このさみしい感情を振り切らないといけない


人間でいる事は、正しかったのか
正しくなかったのか
それは、不要な感情と思いたい


敵の、襲撃からこの村を守るのに自分が侵入者を阻む壁になり、侵入させない役割をする為に、森の大地に木々に草に大気に、同化し守る役目を果たす


意識は、遍満する


この村を守る為に
森を、川を湖を山に自分の意識が周回し戻ってくる
この場所に何回でも、何十回でも、何百回でも散っては、戻り、散っては戻り、何十回も周回する


侵入者は、霧の向こうに送ってやる



友人が、大きく咆哮する


別れを惜しむように鳴き、吠える


僕も悲しいが、僕はいつも彼が微笑んでいた顔をし「ありがとう」と言った
どう、何を言っていいかわからない


お互いに自分達は、
これから意識を交わすしかできない


これからも、敵は襲撃に来る事は考えられて、僕は、この森を好きと言った彼女を守りたい
名前思い出せないくせに、彼女とのこともいずれ忘れるのかも


手の穴は、どんどん広がり
僕と彼は、最後の別れをする



☀️

「ランドルフ、朝よ」と、大きな言葉と共に
横っ面を叩かれて目が覚めた

僕は、なんとも言えない気持ちの中、姉さんを見た
一瞬誰?ここは?って思った

けど、外の光が、姉さんのお喋りが
「昨日、起こしてほしいって言ったでしょ。忘れたの?朝早く友達と約束したって」

「あゝ、あっ、うん。うん、起きる。ありがとう。姉さん」


「どっか変くない!
いつもなら叩くなって言うのに。起こしてって頼んだけど、叩いて起こさないでって言っていたのにって、おーい。ホントに目が覚めてる?」
と言って、僕の顔をのぞき込んだ


「大丈夫、起きるよ。なんか、変な夢見てた」なんか姿が、変わるようなだったような...、寝ぼけまなこで、そう思う僕


「そう」


「姉さんは、なんで叩いて起こすの?」


「普通に呼んでも起きないのと、日頃のうらみ」


僕は、あんぐりと口を開けた。


「人にただでお願いしてるのよ、キミは。私にバイト代払えばいいの」姉さんは、フンっとした感じで出ていった


僕は、それはソーダと思った。バイト代払えば、叩かれない事は明白だと思い、顔を洗いにベッドからでた




☀️
「おはよう」お父さんの声
朝の光が燦々と入るダイニングルームで、父親の2杯目のコーヒーが、メイドに注がれていた

「お父さん、おはよう」
彼は、そう言いながらテーブルの席に着いた
メイドが、コーヒーか紅茶を聞いてきて
カフェ・オ・レをお願いした


「まだ、寝ていてもいいんじゃないのか。来週から中3だろ。まだ休みじゃないか」コーヒーを口にしながら言う父親


「ん、なんか夢を見たんだ。変な夢、で目が覚めたんだ。なんか、襲撃受けたような。変な夢だった」
(父さん、修理に出した時計戻ってきたんだ)とアルフレッドは思った。父親の時計は亡くなった母親が、5年前にプレゼントした時計で。その時計をアルフレッドは、少し羨ましく見ていた。僕も時計プレゼントされたかったなって、お母さんに


「スペクタルな夢だった?」
お父さんは、楽しそうに言う


「んー、どうなんだろう。具体的にはもう思い出せないけど、でも火の海を見たように思う。なんか変な夢だった。お別れするような」そう、少し気分が切ないのに、変な感じだよ。
ただの夢なのに…



fin
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