エターナル

夢幻

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エターナル 番外編 「詐欺師が詐欺のような詐欺師の話をします」

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『パラレルが、わからないですか?』


「パラレルワールドって、平行世界って分かってるけど、分岐した世界線だよね。自分と同じ人がいても、同じ人生とは限らない、自分がいない世界もあったり、ほぼ違いの無い世界もある。みんな同じ作りだけど、違いはあるって事なんだろうけどさ
この星がないパラレルもあるって事だよね
なんか、この星が無い宇宙って考えると、変な表現だけどさ、穴が空いてるみたいだなって思える。自分の星のない所だけ、星がないんじゃなくって、穴が空いてる映像を思うんだ」
いつもの日曜の朝だった。朝軽くパン齧って、部屋でプラモ作りながらのエターナルと喋っていた時の事だった


『・・・そうですね』


珍しく、エターナルが悩んだような顔をした
窓から見える天気の良い青い空の光りを浴びた美しいエターナルは、神々しく見えていた
そして、口を開いた


『今から詐欺師が、詐欺のような詐欺師の話をしますね』と言って、エターナルが机の上の僕のペットボトルに魔法の杖を向けた
魔法の杖は、姉さんの昔の人形の衣装に付いていたのを、エターナル魔法を使う時に、シンデレラの魔法使いのようにこの棒を振ってと頼んでから、エターナルは気にいったようで、魔法を使う時(エターナルの能力は魔法ではなく、超能力と思うけど)杖があると雰囲気がでると思ったからで。


フタがポンっと外れ、水が飛び出し、水は無数の水球になり、部屋一杯に広がった


「わっ!」と、僕は声を上げた
数にして幾つあるのか、分からなかった
何十、100ある、ない?と思った


まだ、お昼も過ぎていない明るい太陽の光りが入ってくる室内は、水球の光りの反射で、部屋が一気に明るくなった


無数に浮いてる水球が、キュっと立方体に集まる場所
一個一個の水球は、そのままに
200㌢四方から100、80、50㌢四方の立方体に縮小されていき(立方体は小さくなる度に、部屋の明るさは落ちていき)、ルービックキューブを見ているようで、それが空中でクルクル回転をし、ピタッと止まった


『これも、パラレルワールドです』


「えっ?」
僕は、エターナルと水球を交互に見た


『ペットボトルの纏まった水を、一個の水球に分け、分岐した世界です。水球にする事で、パラレルワールドに。これは、クッキーや飴にも言えます』


「クッキー?飴?」


『クッキーは、棒上に捏ねた材料を切り分け、焼きます。見た目は同じですが、均一にカットしても焦げの付き方違ったり欠けたり、均一に材料を混ぜたとしても、砂糖の濃い部分やバター、バニラエッセンスの濃い部分が一枚一枚のクッキーにはあるでしょう。完全に均一ではないですね』


「まあ、確かに」


『クッキーや飴は、すぐ食べられてしまう物もあれば、2日後3日後、1週間後、落としてしまい捨てられる物もあるでしょうし、カビる物もあるでしょう』


『工場で作られたクッキーや飴はオートメーションで均一ですが、ナッツの入ったクッキー等は、ナッツの大きさも個数も様々です。手作りなら、尚更材料の混ざり具合は不揃いでしょう』


「そうだね」


『この立方体に並んだ水球も、不純物の混ざり方は均一とは言えず、時間が経過すると微生物の発生も様々でしょう。


立方体は、くるくる回っている
水球一個、一個の回転方向も違っていた


「カビや微生物って、人間とか動物の例え?」


『そのように考えて貰っても大丈夫です』
エターナルは、にっこり言った
僕は、珍しいなと思った


『本来のパラレルワールドとは違いますが、これは類似性ではなく、近似性と言った方がいいでしょう
この場合の分岐点は、等分に分けた事ですが、本来のパラレルワールドは、何かの「出来事」で、その都度分岐すると考えられているようですが「出来事」が何に対してかは、私達は知り得ていません』


「・・・まあ、そうだよね。うん』


『人それぞれ、疑念の生じる時点でなのか?
全体の意識で、つまりこの場合地球ですね
地球の意識で分岐され、パラレルワールドが作られる。分岐された違和感から私達人間が過去を振り返ったり、後悔したり、パラレルの世界を考えたり思ったりするのでしょうか?
または、既にあるパラレルの地球に、自分の感じ取った平行世界に渡っていくのでしょうか?
それとも、この立方体の水球のように、外部の意識=この場合私ですね
外部の意識で、パラレルが作られるのか、どうなんでしょうね」


「外部の意識って、神様?」


『そうとも言えますし、この宇宙に関与している者かも知れません。私は、この立方体の水球達にとって神ではありませんけれど、ペットボトルの水を分割しました』


立方体の水球はくるくる回り、一個の水球に纏まり、また2個、4個、8個、16個と次々と分割され、部屋いっぱいの水球になった時、水球で明るく見える部屋に、僕の気分はとても明るくなった。魔法って凄いなぁって、思いながら
そして、又、さっきと同じ立方体の大きさに戻り、くるくる回転し、水球も、また同じようにそれぞれ回転していて


「関与している者...」


エターナルは、立方体の水球を一つ一つ元のペットボトルの水に戻した


水球達は、空いたペットボトルの中で一つ一つ纏められ、ぐにゃりとした流線型の形になり、ペットボトルの底に溜まっていった


戻っていくペットボトルの水の様に、トプんトプんと音を聞いているような気持ち
水球の形が崩れ、一つの水の戻って行くのをみていると、ぐにゃりとパラレルの地球達が一つに纏まっているのをみているような気持ちになって、ちょっと奇妙な気がした


一つにまとまった、パラレルの地球


球の形をしていない、地球


それは、地球?
地球の元だよねと、思った
地球の元か...


『では、今見ていた物は本当に、ランドルフがが見ていた物ですか?』
パンっとエターナルに言われて、正気に戻った


「えっ、だってエターナルが今、見せてくれたじゃない?」


『ランドルフ、あなたは確かめましたか?』


「・・・ううん。だけど、確かめるって?」


『あなたは、水球を触りましたか?」


「触ってない」


『証明する物は、「見せてくれた」と言う言葉のみですね』


「そうだね」


『では』


エターナルは、再度ペットボトルの水を空中で水球にし立方体へと、さっきと同じように大きく部屋に広げたり、小さくしたりを繰り返し、僕は大きく広げた時に水球の一個に触った


水球は形を崩し、パッシャっと床に落ちた


僕は、もう一個水球に触った
また、水球は下にパッシャと落ちる
僕はもう一回、水球が下に落ちないように触った


手の中では、水球は水溜まりになり、僕は水を床に落とした
パッシャっと


エターナルは、見やすい大きさの立方体に戻した。水球3個分だけ無い立方体に
それを立方体にペットボトルに戻すと、ペットボトルの水は、さっきより減っている。
最初ラベルの赤い線迄あったけど、それより下になっている。減った、3個分だ


「床には、3個分水が落ちている。これが証拠だよ、エターナル」


『そうですね。でも、その水はランドルフがペットボトルから直に溢した水とも言えます
この部屋には、私とあなたしかいません
誰も、証明する人はいません
また、あなたは魔法を証明できません
ランドルフの所に、エターナルがいると言う証明もできません』
エターナルが、クスっと笑った


「そうだけど、それないじゃん」


『今回に関しては、そこ迄は意地悪を言いません。ジョークですよ。でも、覚えておいてください』


僕は、(なんだ?)と思った


『ランドルフ、常に確認を取る癖をつけなさい
人が「これは小麦粉」と言っても、小麦粉ではないかも知れません
「砂糖」と言っても、砂糖ではないかも知れません
甘い匂いがしたら、砂糖と思うかも知れませんが、純度100ではないかも知れません
常に好奇心を持ってください
まあ、あなたの良い所は、良くも悪くも好奇心の旺盛な所ですが、洞察する事を忘れないでください』


エターナルに、こう言う事を言われると、背筋を伸ばして「うん」と言ってしまう


『ランドルフ、どうですか?』


「えっ」


エターナルは、また水球が並んだ立方体を大きくしたり小さくしたり、くるくる回転させている


「あっ、ああ、穴が空いてるようには見えないね。空間があるだけだよ、その空間、3個のとこ」


『そう、空間があるだけです。パラレルの世界で、この星がなくても空間があるだけですね。なんの不安からきて、そう考えたのかはわかりませんが。少しは、払拭できたらいいですね』


「・・・」
不安、不安か。あれは不安からきてると思ったんだ、エターナルは。別の不安は一杯あるけど。これとそれは結びつかないよな、なんの不安なんだろう...


エターナルは、3個分減った水球の立方体を一つに纏め、数の揃った水球の立方体に戻し、魔法の杖を振るった


水球は全部、人型になり、飛石のように交互に人型から犬の形に変わり、人型、犬、人型、犬が並んだ立方体になっていた


えっ、なにと、僕は思った


『人間や動物もパラレルワールドと言えます』


その時、携帯がなった
電話はお婆ちゃんからで、出ると
「お昼、食べましょう」と、僕はびっくりしたエターナルとパラレルの話を仕出したのは、11過ぎた所で、もう13時近かくで、そんなに時間立っていた事に。エターナルは、行ってらっしゃいっと言う顔をしている
日曜のお昼は朝が遅いから、13時ぐらいになる時もあれば、朝と昼兼用の時もある
今日は、朝軽くパンを食べただけで
家にはお婆ちゃんと僕だけ残して、全員出かけている


『ランドルフ、たまには食事の後の洗い物を
してきなさい。後軽く掃除をして、お婆さんのお手伝いしてきなさい。今は、自分の部屋の片付けよりも』


「わかったよ」


『掃除が終わった後で、外に出かければいいでしょう。今日は、天気も崩れません。問題は、ないです』


エターナルは、押し込むように言い渡すのが、とても得意だなっと思う


もっと喋っていたかった、でもお婆ちゃんを待たせるのもで、まあまた後から喋れないいのだけど


「食べてくるよ」と言って、部屋を出る時、明るい部屋の中、エターナルだけが太陽の光を背に宙に浮いて、水の立方体はペットボトルに戻っていて、なんかさみしい気がした




 END 
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