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アトランティス
ウンディーネとアトランティス
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波に揺られてどれほど過ごしただろう。
ノームが天使のような人を連れて戻ってきた。恐らくウンディーネだ。
髪が透明感のある水色がかった白髪のさらさらストレートロングヘアで氷や水を連想させる色をしている。ノーム同様白い輪が頭上にあり、白い翼が背中から生えている。
「どう? 落ち着いた? こっちはウンディーネ。アトランティスで自由に暮らしてるんだよ」
「初めまして。裕樹といいます」
お辞儀をすると、ウンディーネは優しそうな笑みを浮かべながらお辞儀を返してくれた。
お辞儀し終えるのを見てノームが口を開く。
「へえ。裕樹っていうんだ。一緒にいた花人がヒロくんって言ってたからおんなじように真似して呼んでたけど、今初めて名前を知ったなあ。そういえば自己紹介らしい自己紹介してなかったね。私はノームだよ、よろしくね」
猫毛をふわふわと弾ませながらお辞儀をしてくれるのに合わせ、こちらもお辞儀を返す。
ノームはなんだか嬉しそうにしながら話を続けた。
「人から見える精霊の中で縛られてなかったのはウンディーネとシルフくらいなんだ。ここの人間たちにはどういう風に伝わってるのか知らないけど、繋がれてたのは私とイフリートとレヴィンくらい。見えなくなったドライアドはユグドラシルに引きこもっちゃった。空中庭園の人たちが変わったのはそのあたりからかな。他にも精霊がいるんだけど、マナの力が弱いと姿が見えないんだよね。だから人間たちにはいなかった精霊がひょっこり生えてきたように見えてるんだけど、私たちはずっとどこかにいるんだよ。妖精すら知らないこと」
書物の内容や妖精から聞いた話と違った真実に困惑しつつも、周りから見た物事と当人たちの知っている実情が異なるということだと納得することができた。
どんな物事もいつだってそうじゃないか。
周りからの視点と自分の視点で事実が異なることはあるけれど、やっぱり当人たちの方が実情には詳しいというもの。
じゃあ、他にどんな精霊がいるんだろう?
「見えていない精霊ってどんな精霊がいるの? マナの属性は消えたり増えたりするものなの?」
精霊の数もさることながら、仕組みについて知りたくなった。精霊から聞ける話の方がきっと確実だ。
期待に目を輝かせながらノームたちを見つめていると、ノームとウンディーネは目を合わせて苦笑いをし、ウンディーネが口を開いた。
「それがね、全員と会ったことあるわけじゃないんだ。生き別れになった兄弟みたいなものだから。どこでいつ生まれるのか全然わからない。人が生まれる前は自然の中で溢れかえっているものだけがマナになって精霊になったの。最初は私とノームにイフリートとドライアドとシルフ。人が生まれてからは心とか時とかいろんなマナが生まれてきた。そのうち、それぞれの領地で欲しい属性を奪い合ってその地に縛り付けてきたよ。そのとき、シルフは捕まえることができなかった。風を捕らえることができる人なんていないからね」
なるほど確かに……。
水も火も木も土も、人はその場に留めておくことができるけれど、風だけは捕まえられない。一つの場所に留めておくことなんてできやしないんだ。
「シルフはお父さんのところに逃げ帰ることができたんだ。だからシルフに新しく地上で生まれたレヴィンのこと聞いても誰それ? って言うと思う。私たち四人は知ってるけどね。ちなみに、地上にあるマナは全部お父さんから注がれているもの。主張が弱いけれどずっと見守ってくれる優しい光。でもね、私たちみんなお父さんのところへ帰ればいいわけじゃないんだ。地上にいるお母さんの傍に誰かいないと、寂しさのあまりどうなっちゃうかわかんないからね。お父さんはシルフと相性が良かったから世界に風のマナが溢れてるだけ。私とノームはお母さんの傍にいたいと思ってる。相性も良いし大好きだから。ただし、また捕まらないようにね」
そういって二人は手を繋いで微笑みあい、ウンディーネはさらに続けた。
「アトランティスの人たちは縛り付けられていた私の話に耳を傾けて解放してくれたの。私はここの人たちが大好き。だからこの海には光があふれて闇が穏やかになってるんだ。大切なのは話し合い、理解しあう心と歩み寄る勇気だよ! みんな当たり前になってて気づいてないけど、世界に溢れているのは風だけじゃなくて水もなんだ。残念ながら届けきれてない場所もあるけど……完璧じゃないから個性も特色も特徴も生きるための工夫もあるんだよ。風だって、水の中にまでは届かないように、完璧なものなんてないんだよ」
心がふわっとなったような心地よさを覚える。
心から吹き始めた風に水のような落ち着きが備わったようで心地よい。
穏やかで清々しい気持ちがこんなにも心地よいなんて思ってもみなかったな。
ほんのりと優しい気持ちが湧き上がってくるのを感じていると、ノームが穏やかに提案した。
「よければ一緒にアトランティスを回らない? ウンディーネが案内してくれるってさ。ここって本当に良い領地だから損はないよ」
居心地も気分も穏やかになれたこの領地を知りたい気持ちが強かったので考える間もなく頷いた。
「是非お願いします」
ノームが天使のような人を連れて戻ってきた。恐らくウンディーネだ。
髪が透明感のある水色がかった白髪のさらさらストレートロングヘアで氷や水を連想させる色をしている。ノーム同様白い輪が頭上にあり、白い翼が背中から生えている。
「どう? 落ち着いた? こっちはウンディーネ。アトランティスで自由に暮らしてるんだよ」
「初めまして。裕樹といいます」
お辞儀をすると、ウンディーネは優しそうな笑みを浮かべながらお辞儀を返してくれた。
お辞儀し終えるのを見てノームが口を開く。
「へえ。裕樹っていうんだ。一緒にいた花人がヒロくんって言ってたからおんなじように真似して呼んでたけど、今初めて名前を知ったなあ。そういえば自己紹介らしい自己紹介してなかったね。私はノームだよ、よろしくね」
猫毛をふわふわと弾ませながらお辞儀をしてくれるのに合わせ、こちらもお辞儀を返す。
ノームはなんだか嬉しそうにしながら話を続けた。
「人から見える精霊の中で縛られてなかったのはウンディーネとシルフくらいなんだ。ここの人間たちにはどういう風に伝わってるのか知らないけど、繋がれてたのは私とイフリートとレヴィンくらい。見えなくなったドライアドはユグドラシルに引きこもっちゃった。空中庭園の人たちが変わったのはそのあたりからかな。他にも精霊がいるんだけど、マナの力が弱いと姿が見えないんだよね。だから人間たちにはいなかった精霊がひょっこり生えてきたように見えてるんだけど、私たちはずっとどこかにいるんだよ。妖精すら知らないこと」
書物の内容や妖精から聞いた話と違った真実に困惑しつつも、周りから見た物事と当人たちの知っている実情が異なるということだと納得することができた。
どんな物事もいつだってそうじゃないか。
周りからの視点と自分の視点で事実が異なることはあるけれど、やっぱり当人たちの方が実情には詳しいというもの。
じゃあ、他にどんな精霊がいるんだろう?
「見えていない精霊ってどんな精霊がいるの? マナの属性は消えたり増えたりするものなの?」
精霊の数もさることながら、仕組みについて知りたくなった。精霊から聞ける話の方がきっと確実だ。
期待に目を輝かせながらノームたちを見つめていると、ノームとウンディーネは目を合わせて苦笑いをし、ウンディーネが口を開いた。
「それがね、全員と会ったことあるわけじゃないんだ。生き別れになった兄弟みたいなものだから。どこでいつ生まれるのか全然わからない。人が生まれる前は自然の中で溢れかえっているものだけがマナになって精霊になったの。最初は私とノームにイフリートとドライアドとシルフ。人が生まれてからは心とか時とかいろんなマナが生まれてきた。そのうち、それぞれの領地で欲しい属性を奪い合ってその地に縛り付けてきたよ。そのとき、シルフは捕まえることができなかった。風を捕らえることができる人なんていないからね」
なるほど確かに……。
水も火も木も土も、人はその場に留めておくことができるけれど、風だけは捕まえられない。一つの場所に留めておくことなんてできやしないんだ。
「シルフはお父さんのところに逃げ帰ることができたんだ。だからシルフに新しく地上で生まれたレヴィンのこと聞いても誰それ? って言うと思う。私たち四人は知ってるけどね。ちなみに、地上にあるマナは全部お父さんから注がれているもの。主張が弱いけれどずっと見守ってくれる優しい光。でもね、私たちみんなお父さんのところへ帰ればいいわけじゃないんだ。地上にいるお母さんの傍に誰かいないと、寂しさのあまりどうなっちゃうかわかんないからね。お父さんはシルフと相性が良かったから世界に風のマナが溢れてるだけ。私とノームはお母さんの傍にいたいと思ってる。相性も良いし大好きだから。ただし、また捕まらないようにね」
そういって二人は手を繋いで微笑みあい、ウンディーネはさらに続けた。
「アトランティスの人たちは縛り付けられていた私の話に耳を傾けて解放してくれたの。私はここの人たちが大好き。だからこの海には光があふれて闇が穏やかになってるんだ。大切なのは話し合い、理解しあう心と歩み寄る勇気だよ! みんな当たり前になってて気づいてないけど、世界に溢れているのは風だけじゃなくて水もなんだ。残念ながら届けきれてない場所もあるけど……完璧じゃないから個性も特色も特徴も生きるための工夫もあるんだよ。風だって、水の中にまでは届かないように、完璧なものなんてないんだよ」
心がふわっとなったような心地よさを覚える。
心から吹き始めた風に水のような落ち着きが備わったようで心地よい。
穏やかで清々しい気持ちがこんなにも心地よいなんて思ってもみなかったな。
ほんのりと優しい気持ちが湧き上がってくるのを感じていると、ノームが穏やかに提案した。
「よければ一緒にアトランティスを回らない? ウンディーネが案内してくれるってさ。ここって本当に良い領地だから損はないよ」
居心地も気分も穏やかになれたこの領地を知りたい気持ちが強かったので考える間もなく頷いた。
「是非お願いします」
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