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現
落日
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様々なことを楽しみ、成長していっていると、先生からウサギの話を聞いた。
あるところに旅をしている修行者がいました。
森の動物たちはその人のことが大好きで、みんなで旅の疲れを癒そうとあらゆるものを用意しました。
サルは躍りを、リスは木の実を、狸は腹太鼓、熊は鮭を、鳥は歌を用意しました。
狐はウサギがなにも用意していないことに気がつき、君はなにもしないのかと聞きました。
ウサギも何かしたかったのですが、旅の人のためにできることがわかりませんでした。
みんなが楽しそうに焚火を囲んで宴を催しているのを、ウサギは遠くから眺めていました。なにもできなかったためです。
しばらくして旅の人は言いました。
「肉も食べたいな」
動物たちは目をそらし、困ったようすでしたが、ウサギは焚き火に飛び込み、こう言いました。
「どうぞ、私の肉をお食べください。私にはこれしかできることがありません」
哀れに思った旅の人はウサギを月へ上げて餅つきの仕事を与えました。
国によってはウサギは餅ではなく薬を作っているそうな。
この話を聞いたとき、ウサギの行いを見て哀れに思ってくれる人がいたこと、ウサギに居場所ができて良かったと心から思えた。
もう焚き火に飛び込まずにすむ。もう誰かのために自分を犠牲にしないですむ。できることがないなんて悲しいことを言わずにすむ。
そう思うと心からほっとできたのだった。
そして、心に深く残った話でもある。正確に覚えられているか確かではないけれど。
こんな風に誰かが見守ってくれてて、誰かが評価してくれたらどれだけいいだろうか。優しい心が報われたらどれだけ良いか。そう思わずには、そう願わずにはいられなかった。
そんなある日、弟や近所の子の鳩尾を殴ることがあった。
じゃれあっていて照れ隠し半分で殴っただけだったけれど、よくないところに当たってしまったようで、弟も近所の子もうずくまってしばらく動かなかった。
近所の子は、年寄りに同じことをしたら殺せるレベルと評価をしていた。
大袈裟だなあと思っていたけれど、本当に苦しそうにしていて、もしかしてこっちの才能あるのかもしれないとはしゃぐ気持ちがわいてくる反面、申し訳ないことをしたという気持ちも少なからずあった。
そのうち、本当に怖がって嫌がるようになったから意識的にやめるよう心がけて習慣化させずにすんだ。
下手をしたら調子に乗っていると言われがちなエスカレートした状態にまでなっていたかもしれない。
あれはある意味では精神的に死んでいて自制が利かない、一種のゾンビみたいな状態なのだろうと思う。
今こうしていじめられることなく穏やかに過ごすことができているから、自制心が働いて意識的になんとかできた。相手の痛みに寄り添って、いけないことだからやめないといけないと自分の手綱を握ることができたんだ。
それもまた新しい発見でもあって、自分の状態がわかるのもまた楽しいことのひとつだと、楽しいことがどんどん増えていくことを楽しんだ。
そんなある日、みんなで学校の裏庭に集まって作業しようとしていたときのことだ。
急に、何かを知ってたのに黙っていた人から死ねと言われた。
あまりに唐突で、言われる心当たりのない暴言に茫然自失となっていると、周りの人が心配してくれた。
自分が悪いのに何言ってるんだという人もいて、なにがなんだかわからなかったけれど、いきなり他人に何の脈絡もなく死ねと言われることがいかにショックなことかを知った瞬間でもあった。
先生が妊娠してしばらく学校を休むことになった。
6年生の秋か冬あたりから産休に入り、算数を受け持っていた先生が代わりを務めた。
卒業文集で友人として登場してもらいたいと思った人の名前を伏せるよう言っていた担任の先生の判断の方が好きだったけれど、代わりを務めた先生は敢えて名前を書くように言っていた。
最後まで担任の先生が受け持っていてくれたらなと思いながら、残りの学生生活を少し不安な気持ちで過ごしていると、いろいろなことがあった。
朝、園芸係の仕事をしていると、低学年の男の子がウサギ小屋の中から体形について侮辱してくることがあった。
助けてくれた子と二人で気にしないでいようと言いながらも、あまりに失礼な言葉に腹を立てていると、放課後に嫌なことが起きた。
助けてくれた子は用事があったのか、一人で園芸の仕事をしていると、朝と同じようにウサギ小屋の中から体形や顔についての罵詈雑言を浴びせられた。
気にしないように相手せず水やりをしていると、唐突に尻を触られた。
あまりにショックで嫌なことだったので、思わず手入れしているときに手に持っていた泥を相手に投げつけてしまった。本当に心から嫌なことだったからだ。
すると、怒ったのか罵詈雑言をやめただけでなく、仲間から心配されながら泥を拭って静かにぶつぶつ言い始めていた。
そのあと、ウサギ小屋から出て帰る前にまた罵詈雑言を浴びせながら水筒を振り回し、ぶつけてこようとしたので首根っこを掴んで怒って黙らせた。
本当に嫌な出来事だった。暴言を吐くのも尻を触られたのも、首根っこを掴んだのも全部。
おしりを触られたのが本当にショックだったこと、咄嗟だったとはいえ暴力行為に出てしまったことが本当に嫌だった。
喧嘩を売ってきておいて、負けたら泣きながら校門近くにいた大人に自分たちが被害者であるかのように話していて、私が悪者であるかのような目でみながら悪口をたくさん言って騒いでいるのが見聞きできた。
先に仕掛けたのはあっちで、私は自分の身を守ったり抵抗しただけだった。
手足ががくがくと震えて上手く動かせないまま、寂しくてやるせない気持ちを抱えて作業を続けた。
先生が代わってから話し合いの場はなくなったも同然で、相談できる人も機会も少なくなっていった。
話し合いたいと思ったことを見つけて帰りの会で持ち出しても、そういうのはもうなしにしようと言って取り下げられるようになった。
ある男の子が帰り道でやたらと人懐っこく近寄ってくることがあった。
その子がいじめられていること、ひとりぼっちで友達がいないと言っていたこと、お腹すいているのにご飯を食べたら怒られるということ、いろいろなことが心配だった。
ひとりぼっちの寂しさを知っていたし、傍にいるという約束をしたからできる限り一緒にいて友達としてたくさん考えて寂しくないような言葉を選んで接していた。
その子の周りにいることはとてもしんどいことだった。
良い大人もいたけれど、同じおバカちゃん呼ばわりしてこっちへ来るよう言ってきた人もいて、別に目指してもないことで比べて馬鹿にされることがあって、とにかくしんどかった。
こんな中で同級生から罵詈雑言を浴びせられながらひとりぼっちで過ごすなんて苦行だなあ。
十分理解できる苦しさだったから、力になれたら、助けになれたらと思って一緒に帰っていたある日のことだった。
あんまりお腹がすいたというので、うちでご飯を食べさせようと思っていたときのことだ。
ちょうどその子の帰り道の途中に私の家があったので、親に頼んで何か食べさせてあげられないかと相談すると、その子の家の問題に口を出すと訴えられるかもしれないからご飯はあげられないとのことだった。
納得できなくて親と言い合いをしたけれど、ご飯を食べさせてあげていないことだけでなく、ご飯を与えたら訴えられるかもしれないなんて話は地域で有名だったらしく、父親はどうしても助けることが難しいと、親御さんの教育方針だから直接話すしかないと説得させられてしまった。
助けられなかったことを謝りながらその日は家から送り出して終わった。
ある日の帰り道、罵詈雑言を浴びせられても頑張っているから優しい言葉やもらえたら嬉しい言葉を掛けて元気づけていると、いじめている子たちからママ呼ばわりされたことがあった。
いじめられてる子は恥ずかしかったのかすごく嫌がっていて、私のせいで恥をかかせたのだと思っていた。
どれだけ相手の子らに話してもわかりあえず、罵詈雑言はおさまらなかった。
「そういうことしてるといつか必ず痛い目を見るからな!」
いつか今までの行いが返ってくると強く信じていたから出た言葉だった。
「誰が痛い目見せるんだよ!」
言い返されて困ったけれど、いつか必ず痛い目に遭うとどこかで確信していた。強く信じたからなのか、そういう予感があったからなのか定かではなかったけれど。
いじめられていた子もそれを信じてくれたらしい。
いつか必ず報いを受けると。
その次の日だった。
いじめられていた子は嬉しそうにしながら不細工やデブ、容姿に関する罵詈雑言を浴びせてきた。
罵倒したら、縁を切ったら仲良くしてくれると言ってもらえたと、すごく嬉しそうにしていた。
そういうことなら協力しようと思って、突き放すことにした。
ひとりぼっちは寂しいし、味方が一人だけだと、私みたいなやつが傍にいると一緒に後ろ指さされてもっとしんどくなるだろうと。
こちらからも罵詈雑言を浴びせ、いじめられてた子が上手くいくことを心から願ったけれど、うまくはいかなかったらしい。
しょんぼりとしながらこちらにきて、嘘をつかれたと言っていて、私もショックだったけれど、これ以上一緒にいるべきではないだろうと判断してそばを離れることにした。
できる限り一緒にいるという約束を守らないことに決めた瞬間だったけれど、次の日の朝、すごい剣幕で隣の地区にいる同級生の男の子から集団登校の時に怒鳴られた。
マジでありえない、気持ち悪い。
いじめられてた子には友達がいて、本当はひとりぼっちじゃなかったのもこのときはっきりわかった。
ちゃんと味方してくれる人がいて、一緒になって罵詈雑言を浴びせてこられた。いじめられていた子は信じていたのになんていって悲しそうにしていて苦しかった。
なんで怒鳴られてるのかわかってるのかと聞かれたけれど、傍にいるという約束を破ったせいで罵詈雑言を浴びせられたと思ったから、傍にいなかったせいだと答えると気持ち悪いとか頭がおかしい、何言ってるのかなんて言われた。
本当に心当たりがなくて理解できなくて、ただただ辛かった。
隣の地区にいる同級生の女の子が知らないって言ってると庇ってくれようとしてくれたし、話の流れから親御さんがあることないこと言いふらしたのだとわかったけれど、どうしてそんなことされているのかが、どうしてそれだけでみんな怒っているのかさっぱりわからなかった。
そのあと、庇ってくれていた女の子は親から良い話を聞いたと、言うこと聞かないと知らないよなんて言ってすごく嬉しそうにしていたのもなにがなんだかわからなかった。
例え何か弱みを握られていたとしても、誰かの言うことを聞くことなんてないだろうと思う。
せっかく、担任だった先生のおかげで穏やかに過ごせていたはずの小学校生活最後の期間はただただ悲しくて息苦しい毎日で終わった。
卒業できて嬉しかった。罵詈雑言はもうたくさんだったし、集団登校というシステムがずっと嫌で仕方がなかったから。
卒業したら一人で登下校ができるのを心から楽しみにしていた。やっと一人になれる、誰かと行動する時間が少しでも減らせると。
あるところに旅をしている修行者がいました。
森の動物たちはその人のことが大好きで、みんなで旅の疲れを癒そうとあらゆるものを用意しました。
サルは躍りを、リスは木の実を、狸は腹太鼓、熊は鮭を、鳥は歌を用意しました。
狐はウサギがなにも用意していないことに気がつき、君はなにもしないのかと聞きました。
ウサギも何かしたかったのですが、旅の人のためにできることがわかりませんでした。
みんなが楽しそうに焚火を囲んで宴を催しているのを、ウサギは遠くから眺めていました。なにもできなかったためです。
しばらくして旅の人は言いました。
「肉も食べたいな」
動物たちは目をそらし、困ったようすでしたが、ウサギは焚き火に飛び込み、こう言いました。
「どうぞ、私の肉をお食べください。私にはこれしかできることがありません」
哀れに思った旅の人はウサギを月へ上げて餅つきの仕事を与えました。
国によってはウサギは餅ではなく薬を作っているそうな。
この話を聞いたとき、ウサギの行いを見て哀れに思ってくれる人がいたこと、ウサギに居場所ができて良かったと心から思えた。
もう焚き火に飛び込まずにすむ。もう誰かのために自分を犠牲にしないですむ。できることがないなんて悲しいことを言わずにすむ。
そう思うと心からほっとできたのだった。
そして、心に深く残った話でもある。正確に覚えられているか確かではないけれど。
こんな風に誰かが見守ってくれてて、誰かが評価してくれたらどれだけいいだろうか。優しい心が報われたらどれだけ良いか。そう思わずには、そう願わずにはいられなかった。
そんなある日、弟や近所の子の鳩尾を殴ることがあった。
じゃれあっていて照れ隠し半分で殴っただけだったけれど、よくないところに当たってしまったようで、弟も近所の子もうずくまってしばらく動かなかった。
近所の子は、年寄りに同じことをしたら殺せるレベルと評価をしていた。
大袈裟だなあと思っていたけれど、本当に苦しそうにしていて、もしかしてこっちの才能あるのかもしれないとはしゃぐ気持ちがわいてくる反面、申し訳ないことをしたという気持ちも少なからずあった。
そのうち、本当に怖がって嫌がるようになったから意識的にやめるよう心がけて習慣化させずにすんだ。
下手をしたら調子に乗っていると言われがちなエスカレートした状態にまでなっていたかもしれない。
あれはある意味では精神的に死んでいて自制が利かない、一種のゾンビみたいな状態なのだろうと思う。
今こうしていじめられることなく穏やかに過ごすことができているから、自制心が働いて意識的になんとかできた。相手の痛みに寄り添って、いけないことだからやめないといけないと自分の手綱を握ることができたんだ。
それもまた新しい発見でもあって、自分の状態がわかるのもまた楽しいことのひとつだと、楽しいことがどんどん増えていくことを楽しんだ。
そんなある日、みんなで学校の裏庭に集まって作業しようとしていたときのことだ。
急に、何かを知ってたのに黙っていた人から死ねと言われた。
あまりに唐突で、言われる心当たりのない暴言に茫然自失となっていると、周りの人が心配してくれた。
自分が悪いのに何言ってるんだという人もいて、なにがなんだかわからなかったけれど、いきなり他人に何の脈絡もなく死ねと言われることがいかにショックなことかを知った瞬間でもあった。
先生が妊娠してしばらく学校を休むことになった。
6年生の秋か冬あたりから産休に入り、算数を受け持っていた先生が代わりを務めた。
卒業文集で友人として登場してもらいたいと思った人の名前を伏せるよう言っていた担任の先生の判断の方が好きだったけれど、代わりを務めた先生は敢えて名前を書くように言っていた。
最後まで担任の先生が受け持っていてくれたらなと思いながら、残りの学生生活を少し不安な気持ちで過ごしていると、いろいろなことがあった。
朝、園芸係の仕事をしていると、低学年の男の子がウサギ小屋の中から体形について侮辱してくることがあった。
助けてくれた子と二人で気にしないでいようと言いながらも、あまりに失礼な言葉に腹を立てていると、放課後に嫌なことが起きた。
助けてくれた子は用事があったのか、一人で園芸の仕事をしていると、朝と同じようにウサギ小屋の中から体形や顔についての罵詈雑言を浴びせられた。
気にしないように相手せず水やりをしていると、唐突に尻を触られた。
あまりにショックで嫌なことだったので、思わず手入れしているときに手に持っていた泥を相手に投げつけてしまった。本当に心から嫌なことだったからだ。
すると、怒ったのか罵詈雑言をやめただけでなく、仲間から心配されながら泥を拭って静かにぶつぶつ言い始めていた。
そのあと、ウサギ小屋から出て帰る前にまた罵詈雑言を浴びせながら水筒を振り回し、ぶつけてこようとしたので首根っこを掴んで怒って黙らせた。
本当に嫌な出来事だった。暴言を吐くのも尻を触られたのも、首根っこを掴んだのも全部。
おしりを触られたのが本当にショックだったこと、咄嗟だったとはいえ暴力行為に出てしまったことが本当に嫌だった。
喧嘩を売ってきておいて、負けたら泣きながら校門近くにいた大人に自分たちが被害者であるかのように話していて、私が悪者であるかのような目でみながら悪口をたくさん言って騒いでいるのが見聞きできた。
先に仕掛けたのはあっちで、私は自分の身を守ったり抵抗しただけだった。
手足ががくがくと震えて上手く動かせないまま、寂しくてやるせない気持ちを抱えて作業を続けた。
先生が代わってから話し合いの場はなくなったも同然で、相談できる人も機会も少なくなっていった。
話し合いたいと思ったことを見つけて帰りの会で持ち出しても、そういうのはもうなしにしようと言って取り下げられるようになった。
ある男の子が帰り道でやたらと人懐っこく近寄ってくることがあった。
その子がいじめられていること、ひとりぼっちで友達がいないと言っていたこと、お腹すいているのにご飯を食べたら怒られるということ、いろいろなことが心配だった。
ひとりぼっちの寂しさを知っていたし、傍にいるという約束をしたからできる限り一緒にいて友達としてたくさん考えて寂しくないような言葉を選んで接していた。
その子の周りにいることはとてもしんどいことだった。
良い大人もいたけれど、同じおバカちゃん呼ばわりしてこっちへ来るよう言ってきた人もいて、別に目指してもないことで比べて馬鹿にされることがあって、とにかくしんどかった。
こんな中で同級生から罵詈雑言を浴びせられながらひとりぼっちで過ごすなんて苦行だなあ。
十分理解できる苦しさだったから、力になれたら、助けになれたらと思って一緒に帰っていたある日のことだった。
あんまりお腹がすいたというので、うちでご飯を食べさせようと思っていたときのことだ。
ちょうどその子の帰り道の途中に私の家があったので、親に頼んで何か食べさせてあげられないかと相談すると、その子の家の問題に口を出すと訴えられるかもしれないからご飯はあげられないとのことだった。
納得できなくて親と言い合いをしたけれど、ご飯を食べさせてあげていないことだけでなく、ご飯を与えたら訴えられるかもしれないなんて話は地域で有名だったらしく、父親はどうしても助けることが難しいと、親御さんの教育方針だから直接話すしかないと説得させられてしまった。
助けられなかったことを謝りながらその日は家から送り出して終わった。
ある日の帰り道、罵詈雑言を浴びせられても頑張っているから優しい言葉やもらえたら嬉しい言葉を掛けて元気づけていると、いじめている子たちからママ呼ばわりされたことがあった。
いじめられてる子は恥ずかしかったのかすごく嫌がっていて、私のせいで恥をかかせたのだと思っていた。
どれだけ相手の子らに話してもわかりあえず、罵詈雑言はおさまらなかった。
「そういうことしてるといつか必ず痛い目を見るからな!」
いつか今までの行いが返ってくると強く信じていたから出た言葉だった。
「誰が痛い目見せるんだよ!」
言い返されて困ったけれど、いつか必ず痛い目に遭うとどこかで確信していた。強く信じたからなのか、そういう予感があったからなのか定かではなかったけれど。
いじめられていた子もそれを信じてくれたらしい。
いつか必ず報いを受けると。
その次の日だった。
いじめられていた子は嬉しそうにしながら不細工やデブ、容姿に関する罵詈雑言を浴びせてきた。
罵倒したら、縁を切ったら仲良くしてくれると言ってもらえたと、すごく嬉しそうにしていた。
そういうことなら協力しようと思って、突き放すことにした。
ひとりぼっちは寂しいし、味方が一人だけだと、私みたいなやつが傍にいると一緒に後ろ指さされてもっとしんどくなるだろうと。
こちらからも罵詈雑言を浴びせ、いじめられてた子が上手くいくことを心から願ったけれど、うまくはいかなかったらしい。
しょんぼりとしながらこちらにきて、嘘をつかれたと言っていて、私もショックだったけれど、これ以上一緒にいるべきではないだろうと判断してそばを離れることにした。
できる限り一緒にいるという約束を守らないことに決めた瞬間だったけれど、次の日の朝、すごい剣幕で隣の地区にいる同級生の男の子から集団登校の時に怒鳴られた。
マジでありえない、気持ち悪い。
いじめられてた子には友達がいて、本当はひとりぼっちじゃなかったのもこのときはっきりわかった。
ちゃんと味方してくれる人がいて、一緒になって罵詈雑言を浴びせてこられた。いじめられていた子は信じていたのになんていって悲しそうにしていて苦しかった。
なんで怒鳴られてるのかわかってるのかと聞かれたけれど、傍にいるという約束を破ったせいで罵詈雑言を浴びせられたと思ったから、傍にいなかったせいだと答えると気持ち悪いとか頭がおかしい、何言ってるのかなんて言われた。
本当に心当たりがなくて理解できなくて、ただただ辛かった。
隣の地区にいる同級生の女の子が知らないって言ってると庇ってくれようとしてくれたし、話の流れから親御さんがあることないこと言いふらしたのだとわかったけれど、どうしてそんなことされているのかが、どうしてそれだけでみんな怒っているのかさっぱりわからなかった。
そのあと、庇ってくれていた女の子は親から良い話を聞いたと、言うこと聞かないと知らないよなんて言ってすごく嬉しそうにしていたのもなにがなんだかわからなかった。
例え何か弱みを握られていたとしても、誰かの言うことを聞くことなんてないだろうと思う。
せっかく、担任だった先生のおかげで穏やかに過ごせていたはずの小学校生活最後の期間はただただ悲しくて息苦しい毎日で終わった。
卒業できて嬉しかった。罵詈雑言はもうたくさんだったし、集団登校というシステムがずっと嫌で仕方がなかったから。
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