63 / 64
12騎士選抜トーナメント
大会に向かう道3
しおりを挟む「たぁぁぁぁぁぁああ!」
気合いの入った声と共に、白銀の剣筋が煌めきを放つ。
そして、響き渡る鋭い金属音……
「なろっ……」
デュランダルを持つテューネから繰り出される猛攻に、航太は堪らずにエアの剣を小さく振った。
エアの剣によって発生した鋭い風は、テューネの小さな身体を簡単に後方に飛ばす。
「追撃、鎌鼬!」
更に大きく振ったエアの剣から、目にも見える程の鎌鼬を生み出した。
が……地面から突然発生した水の柱……波の様な形状の水に鎌鼬は絡み取られ、その勢いは失われる。
飛ばされたテューネは大剣を持っているとは思えない動きで一回転すると、着地と同時に飛び上がり、勢いを失った鎌鼬を軽々と飛び越えた。
そのまま回転し、デュランダルに遠心力を加え航太に振り下ろそうとする。
凄まじい勢いで振り下ろされる大剣デュランダルを、エアの剣を横にして防ごうとする航太。
エアの剣とデュランダルの力比べが行われる……そうなる直前、白き閃光がテューネの無防備な側面に吸い込まれる。
「きゃあああぁぁぁ!」
考えても無い方向からの攻撃に、テューネの身体はバランスを失い大地に転げ落ちた。
白き閃光……ゼークの動作に無駄はない。
転がったテューネが体勢を整える前に、バスタード・ソードを振り翳す。
そのスピードは雷の如く……流れる様な動きで、テューネに攻撃を仕掛けようとする。
「速過ぎなんだよなー! 間に合え!」
その動きを止めようと、絵美が天沼矛を振って水の壁をテューネとゼークの間に発生させた。
その瞬間ゼークは飛び上がり、迫り上がっていく水の壁上を軽く蹴って前宙すると、テューネにバスタード・ソードを突き出す。
「まいりましたぁ……」
目前にバスタード・ソードの剣先を突き付けられ、テューネはデュランダルを手放して手を上げる。
「ふぅ……ちょっと航太! 無闇に大技を使うなって言ってるでしょ! 僅かな隙でも、凄腕や達人が相手なら確実にその隙を突いてくるわ。大技を使う時は、見せ技で相手の隙を作る時か、確実に仕留められる時だけって言ったよね? いける! って思った時に技を出しちゃうのが、航太の悪い所だわ」
「いや、でもよ……あのままテューネの攻撃を受け続けてたら、オレ死んでたぜ! いいか……信じられないが、テューネの腕はオレより上だ!」
「オレより上だ! じゃないのよ……それに、テューネより自分の方が実力が上だと思ってた事が驚きだわ……いい航太? あなたは、騎士見習いになった程度の剣の腕だと自覚しなさい! だからこそ、隙をつくっちゃ駄目なの! 十二騎士選抜試験に出てくる騎士に、弱い人はいないわ。気を引き締めないと……」
2人のやり取りに、ゼークの腕を借りて立ち上がったテューネは微笑んだ。
「それでも、負けてしまいましたね。航太様の腕や連携の問題は分からないですけど、やっぱりゼーク様は強い……神剣を持っていなくても、充分な程に……」
「ありがと、テューネ。テューネは、神剣の力に頼り過ぎかもね。だから隙も出来てしまう。でも今回は2人1組なんだから、攻撃だけじゃなくて防御も連携出来る。パートナーが攻撃を仕掛けた時、その攻撃を自信を持って完結出来る様にサポートする事も出来るはずよ。まぁ、私達のチームにも言える事なんだけどねー……」
ゼークに睨まれた航太は、口笛を吹きながら明後日の方向を向いて目を逸らす。
「やっぱり、私達の力不足かぁ……常に実戦で腕を磨いているゼークとテューネには敵わないなぁ……ゼークの動きに対応出来て無いもんねー。ゴメンね、テューネ」
「いえ、絵美様は頑張ってやってくれてますよ。私がゼーク様のようにに、リスク管理ができれば……」
テューネと絵美が話し合いを始めた様子を頷きながら見たゼークは、まだ明後日の方向を向いている航太の耳を摘む。
「いでででででで! 何すんだ! 耳は繊細なんだぞ!」
「そう? そんなに強く摘んだつもりは無かったんだけど……それより、私達も特訓を再開するわよ。明日は、いよいよトーナメントが始まるんだから!」
そんな2組を、少し離れた崖の上から見下ろす仮面を被った男が1人……
「私だけでは足りないと……我が主の命と言うより、マーリンの差し金か? 気に入らないが、用心に越した事は無い。数日は、トーナメントを楽しむとするか……」
仮面の男は、独り言の様に呟くと踵を返した。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします
暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。
いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。
子を身ごもってからでは遅いのです。
あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」
伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。
女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。
妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。
だから恥じた。
「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。
本当に恥ずかしい…
私は潔く身を引くことにしますわ………」
そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。
「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。
私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。
手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。
そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」
こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
強奪系触手おじさん
兎屋亀吉
ファンタジー
【肉棒術】という卑猥なスキルを授かってしまったゆえに皆の笑い者として40年間生きてきたおじさんは、ある日ダンジョンで気持ち悪い触手を拾う。後に【神の触腕】という寄生型の神器だと判明するそれは、その気持ち悪い見た目に反してとんでもない力を秘めていた。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる