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騎士への道
王立ベルヘイム騎士養成学校19
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奴隷解放騒動の一件の後、イングリス、ザハール、ジル……3人の特訓は激しさを増していた。
別に、航太が訓練の強度を上げた訳ではない。
それまでも3人の瞳は真剣だった……しかし、更に覚悟が篭った瞳を光らせるようになった。
母親が傷付いていく中、盾になるしかなかったイングリス……
兄弟の仇が目の前にいるのに、軽くいなされたザハール……
家宝の名剣があるのに、そんな仲間達の力になりきれなかったジル……
自分の信念を貫き通す為には、圧倒的に力が足りない……そう思った。
今のままでは、強い者の言いなりになるしかない。
今までの生活と変わらない……強い力に屈服して過ごす日々。
迫害される奴隷、出世する仇、家名の縛り……強い力に、拳を握り締め恨めしく睨みつけるしか出来ない日々……
彼らは、航太と智美の背中に希望を見た。
国や集団に縛られない、自分の信念を貫き通す力を……
国の為、集団の為、それも大切だとは思う。
全ての人が自分勝手な事をしていては、組織は混乱し破綻を招いてしまうだろう……しかし、それでも本当に譲れない事があった場合、それを飲み込んで組織の為に尽くすのか?
そうじゃない……間違っていると思う事は、間違っていると叫びたい。
自分が納得出来るまで、何度も、何度も……
「うおおおおぉぉぉぉ!」
ザハールの振った剣が、航太の脇腹スレスレを通り抜ける。
「っなろっ……張り切りやがって! って、連携攻撃も様になってきやがった!」
航太が拙いベルヘイム騎士の型で戸惑っている間に、両サイドからイングリスとジルが襲いかかった。
「だが、神剣相手に無策で飛び込むと……怪我するぜぇ!」
航太の握るグラムから眩い光が発生し、周囲に電撃が舞う。
その電撃の防壁に木片が触れ、木片を中心にして光がフラッシュのように弾け散る。
目も眩む鋭い光が2・3回周囲を染めると、電撃の防壁が無くなった。
ザハールが剣先で木片を突き刺し、その木片を電撃の防壁に向かって突き飛ばし、その木片が全ての電撃の力を受けて黒焦げになって地面に転がる。
そのタイミングを狙っていたイングリスとジルが動く。
隙の出来た航太に、2方向からの同時攻撃……
その2つの刃は、突然迫り上がった土の壁に行く手を阻まれた。
地面に突き刺さったグラムの力で、まるで土が意思を持ったように航太を守る。
「残念だったな! これが、ウォール・クラッシュだ!」
イングリスとジルの剣を受け止めた土の壁は、瞬時にヒビが入り弾け飛ぶ。
その石礫は、イングリスとジルに襲いかかった。
「きゃあああぁぁぁ!」
が……その全ての石礫は、イングリスとジルに当たる事なく水の壁に絡め取られた。
「ちょっと航ちゃん、そんなダサい……もとい、まんまの技名で身体中アザだらけになる女の子が可哀相だと思わない訳? 倒すにしても、もう少しオシャレな技で決めなよ!」
「んだと? 戦闘中に、オシャレもクソもあるか! コッチもベルヘイムの型に合わせて戦ってるから、大変なんだ! 咄嗟にコッコイイ技名なんて出てくるかよ!」
右腕で流れる汗を拭った航太は、その場に腰を下ろす。
「今のは、イイ線いってたと思ったんだが……神剣を相手にするなら、もっと早い連携が必要だな。電撃が消えてから動いてちゃ遅ぇ……」
「そうね……それに、相手の動きに合わせる為にタイミングを図るから、どうしても一呼吸遅くなっちゃうわ」
休息する航太の目の前で、休憩もせずに話し合いを始めるザハールとジル。
その輪に、直ぐにイングリスも加わる。
「はぁ……まぢかよ。こりゃ、今日も徹夜コースか? 3人を同時に相手しているコッチの身にもなってほしいモンだぜ……」
「けど、凄く成長していると思う。神剣相手に単独で戦うのは得策じゃない……更に強大な力を持つヨトゥンの将軍クラスなら、それこそ無謀な戦いになっちゃう。でも、ああやって協力出来れば打開する道も見つかるかもしれない。現に、航ちゃんに土の力まで使わせたんだしね」
智美と航太は、話し合う3人に視線を向けた。
「神剣を持っていたとしても、ロキやスルト相手にサシで勝負なんて出来やしねぇ……だから、ベルヘイム十二騎士の選抜試験は2人1組なんだろ? 他の騎士と、いかに連携がとれるかを見る為にな」
「うん……口で言うのは簡単だけど、プライドもあれば流儀もある。連携をとれって言われても、直ぐに出来る事じゃない。けど、ザハール君達は気付く事が出来た……1人で戦う事の限界と、仲間と協力する事で生まれる無限の可能性を……3人とも、もっと強くなるね!」
智美の視線の先には、以前の頼りのない騎士見習いではなく、高みを目指す騎士の姿をした3人がいた……
別に、航太が訓練の強度を上げた訳ではない。
それまでも3人の瞳は真剣だった……しかし、更に覚悟が篭った瞳を光らせるようになった。
母親が傷付いていく中、盾になるしかなかったイングリス……
兄弟の仇が目の前にいるのに、軽くいなされたザハール……
家宝の名剣があるのに、そんな仲間達の力になりきれなかったジル……
自分の信念を貫き通す為には、圧倒的に力が足りない……そう思った。
今のままでは、強い者の言いなりになるしかない。
今までの生活と変わらない……強い力に屈服して過ごす日々。
迫害される奴隷、出世する仇、家名の縛り……強い力に、拳を握り締め恨めしく睨みつけるしか出来ない日々……
彼らは、航太と智美の背中に希望を見た。
国や集団に縛られない、自分の信念を貫き通す力を……
国の為、集団の為、それも大切だとは思う。
全ての人が自分勝手な事をしていては、組織は混乱し破綻を招いてしまうだろう……しかし、それでも本当に譲れない事があった場合、それを飲み込んで組織の為に尽くすのか?
そうじゃない……間違っていると思う事は、間違っていると叫びたい。
自分が納得出来るまで、何度も、何度も……
「うおおおおぉぉぉぉ!」
ザハールの振った剣が、航太の脇腹スレスレを通り抜ける。
「っなろっ……張り切りやがって! って、連携攻撃も様になってきやがった!」
航太が拙いベルヘイム騎士の型で戸惑っている間に、両サイドからイングリスとジルが襲いかかった。
「だが、神剣相手に無策で飛び込むと……怪我するぜぇ!」
航太の握るグラムから眩い光が発生し、周囲に電撃が舞う。
その電撃の防壁に木片が触れ、木片を中心にして光がフラッシュのように弾け散る。
目も眩む鋭い光が2・3回周囲を染めると、電撃の防壁が無くなった。
ザハールが剣先で木片を突き刺し、その木片を電撃の防壁に向かって突き飛ばし、その木片が全ての電撃の力を受けて黒焦げになって地面に転がる。
そのタイミングを狙っていたイングリスとジルが動く。
隙の出来た航太に、2方向からの同時攻撃……
その2つの刃は、突然迫り上がった土の壁に行く手を阻まれた。
地面に突き刺さったグラムの力で、まるで土が意思を持ったように航太を守る。
「残念だったな! これが、ウォール・クラッシュだ!」
イングリスとジルの剣を受け止めた土の壁は、瞬時にヒビが入り弾け飛ぶ。
その石礫は、イングリスとジルに襲いかかった。
「きゃあああぁぁぁ!」
が……その全ての石礫は、イングリスとジルに当たる事なく水の壁に絡め取られた。
「ちょっと航ちゃん、そんなダサい……もとい、まんまの技名で身体中アザだらけになる女の子が可哀相だと思わない訳? 倒すにしても、もう少しオシャレな技で決めなよ!」
「んだと? 戦闘中に、オシャレもクソもあるか! コッチもベルヘイムの型に合わせて戦ってるから、大変なんだ! 咄嗟にコッコイイ技名なんて出てくるかよ!」
右腕で流れる汗を拭った航太は、その場に腰を下ろす。
「今のは、イイ線いってたと思ったんだが……神剣を相手にするなら、もっと早い連携が必要だな。電撃が消えてから動いてちゃ遅ぇ……」
「そうね……それに、相手の動きに合わせる為にタイミングを図るから、どうしても一呼吸遅くなっちゃうわ」
休息する航太の目の前で、休憩もせずに話し合いを始めるザハールとジル。
その輪に、直ぐにイングリスも加わる。
「はぁ……まぢかよ。こりゃ、今日も徹夜コースか? 3人を同時に相手しているコッチの身にもなってほしいモンだぜ……」
「けど、凄く成長していると思う。神剣相手に単独で戦うのは得策じゃない……更に強大な力を持つヨトゥンの将軍クラスなら、それこそ無謀な戦いになっちゃう。でも、ああやって協力出来れば打開する道も見つかるかもしれない。現に、航ちゃんに土の力まで使わせたんだしね」
智美と航太は、話し合う3人に視線を向けた。
「神剣を持っていたとしても、ロキやスルト相手にサシで勝負なんて出来やしねぇ……だから、ベルヘイム十二騎士の選抜試験は2人1組なんだろ? 他の騎士と、いかに連携がとれるかを見る為にな」
「うん……口で言うのは簡単だけど、プライドもあれば流儀もある。連携をとれって言われても、直ぐに出来る事じゃない。けど、ザハール君達は気付く事が出来た……1人で戦う事の限界と、仲間と協力する事で生まれる無限の可能性を……3人とも、もっと強くなるね!」
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