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騎士への道
聖凰騎士団3
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「くそっ! ウジャウジャ湧いてきた! まずいな……完全に囲まれている」
「智ちん、ミワちんを任せるよ! 攻めは私とアーレイさんで!」
智美と絵美は、走るスピードの遅い美羽に合わせていた。
その為、航太達から遥かに離されてしまっている。
そんな二人を気遣かって、アーレイは周囲を警戒しながら走っていた……つもりだった。
それが突然、一つ目の巨人に囲まれている。
音も無く現れた……湧いて出たという表現が、一番しっくりしてしまう。
「五匹はいるな……焦らずに、一匹づつ確実に仕留めるぞ! 異変に気付けば、メルフィ達も戻って来る筈……自分達が助かる事を最優先にするんだ!」
アーレイは汗ばんだ手の平を鎧で拭い、バスタード・ソードを握り直す。
女性ばかり四人を守りながら戦った事はない……そして、相手は一匹でも自分より強いモンスターだ。
それでも、自分はフィアナ騎士である……命に替えても、民間人だけは守らなければならない。
「いくぞっ!」
「まだ行かない! ちょい待ち!」
動きだそうとしたアーレイの前に飛び出した絵美は、大地に天沼矛を突き刺し、左腕を胸の前に突き出す。
「はああぁぁぁ!」
絵美の声に反応するかのように、天沼矛が薄浅葱色に輝いた。
天沼矛によって大地から吸い上げられた水が、絵美を中心とした輪になって、ゆっくり浮き上がっていく。
浮き上がりながら木々からも水分を取り込んでいく水の輪は、薄いながらも外側は研ぎ澄まされた刃のように鋭い。
「囲んだら勝ちっ! とか思った? 残念だけど、私も神器の使い方を少しは学んで来てるんだから! 広がれ、水の刃!」
浮き上がった水の刃は、高速で回転し始める。
そして、回転しながら一つ目の巨人の首を目掛けて広がっていく。
回転しながら延伸する水の輪は、飛んだら胴体を……しゃがめば頭を斬り裂く絶妙な位置でマックミーナ族の戦士に襲いかかる。
「ぐおおぉぉぉ!」
身体を……首を……頭を分断された四体分の一つ目の巨人が、大地に崩れ落ちた。
「ありゃ? 一体討ち漏らした?」
天沼矛を素早く大地から引き抜くと、振り下ろされた金砕棒を絵美は間一髪で躱す。
「絵美、水の刃が消された場所が一カ所だけあった! 生き残った一つ目の巨人が特殊能力を持っているのか、他に要因があるのか分からないけど、用心して!」
「智美さん、そこの木陰が一瞬だけど光りました。絵美さんが攻撃した瞬間に光ったから、水の刃が消えた事と関係あるのかな? って気がします」
智美の言葉の後を追うように、美羽が近くの木を指して異変を伝える。
「よく見ていた! おそらく、魔法使いがサポートしているのだろう。魔法使いは、物理攻撃に弱い! 接近戦に持ち込めれば!」
アーレイは、その巨体に似合わない素早い動きで光った木の近くに回り込み、バスタード・ソードを構えた。
「魔法使いは物理攻撃に弱い……か。そうね、あなたにアーサー様やフレイヤ様のような剣速があれば、あるいは届くかもしれないわ」
純白のローブを身に纏いフードを深く被っているが、その声で女性だと分かる。
フードの奥からは、薄いピンクの長い前髪が胸の辺りまでローブの上を流れていた。
「剣速か……このデカイ獲物を見て言ってるなら、心配無用だ。フィアナ騎士の力、その目に焼き付けながら死んでいけ!」
確かに、アーレイの振るバスタード・ソードのスピードは速い。
しかし、それは普通の騎士と比較しての話だ。
子供の頃から一流の騎士……神剣を使い熟し、神級と互角に戦ったり、目も眩むような大軍に一人で立ち向かって行った騎士達の戦いを見てきた魔法使いには、アーレイの動きは遅すぎた。
二つの魔法を余裕を持って使える程度に……
アーレイの振ったバスタード・ソードは、魔法によって現れた物理障壁によって弾かれる。
「我が服従し、我に服従する炎の王よ……我の前に立ち塞がり者を焼き払え……」
心言詠唱による物理障壁……そして、短縮詠唱による回避不能な魔法の詠唱……
サラマンダー・プレートと呼ばれる炎系の上位魔法であり、通常なら松明並の火種と長い詠唱が必要な魔法だ。
それを何の火種も無く短い詠唱で使う魔法使いなど、世界広しと言えど指で数えられる程度しかいないだろう。
それが、たとえ人一人分だとしても……
バスタード・ソードを弾かれてバランスを失ったアーレイの足元に、突然マグマが現れる。
それは一瞬だった……しかし、一瞬で充分だった。
マグマに触れたアーレイの足から、一瞬で炎が身体中を駆け回る。
「なっ……アーレイさんっ!」
いち早く気付いた智美が水の力で消火を図ろうとするが、神剣を振る前に消し炭になったアーレイの灰が四散した。
「そんな……そんな……」
美羽は両手を口に当て、瞳からは涙が零れ落ちる。
「これは……ちょいヤバイかもね……」
アーレイが魔法使いを引き付けている間に一つ目の巨人を水の刃で袈裟斬りにした絵美も、アーレイが焼かれる瞬間を見ていた。
警戒して神器を構える智美と絵美に、魔法使いはゆっくりと近付きながらフードを外す。
「智美さん、絵美さん、お久しぶりです。私の事、覚えていますか?」
薄いピンクの髪が流れ、フードの影から美少女の顔が鮮明になる。
「どうして私達の名前を知っているの? あなたは……誰?」
「分からないのも無理ないですね……数ヶ月前までは、こんなに小さな子供でしたから……」
魔法使いは笑顔で、自らの腰の当たりを手で示す。
「まさか……ルナ……ちゃん?」
「正解です! 智美さん、絵美さん、戻ってくれたんですね! アーサー様の……いえ、カズ兄ちゃんの力になる為に! ごめんなさい……私、お二人だと気付かなくて、戦闘を仕掛けちゃいました。フィアナ騎士と一緒に行動していたから……」
そう言うルナの言葉を、混乱しながら智美と絵美は聞いていた。
確かに、ルナの面影はある。
だが……
「ルナちゃん……何個か質問していいかな? ルナちゃんが数ヶ月で大人の女性に成長している理由も勿論聞きたいんだけど……どうして化け物を操って人々を襲っているの? それに、一真も参加している訳? どうして、こんな事になってるの?」
「智美さん……マックミーナ族の人々を化け物だと思っているのですか? 私は……見当違いをしていたみたいですね。カズ兄ちゃんの昔からの仲間なら、私達の仲間に相応しい心を持っていると思っていたのに……」
そこまで話したルナの視線は、ニミュエに向く。
「黒き妖精……どうして、こんな奴と……」
呟くように声を出したルナに、水の鞭が襲う。
ニミュエを守るように地面から生えた水の鞭は、それぞれが意思を持っているかのようにルナに攻撃を仕掛ける。
「皆さん、騙されないで下さい! あの女……禁術に身を染めています。それに、アーレイさんの敵ですよ!」
水の鞭を身軽に躱したルナは、混乱し動けないでいる智美と絵美を見た。
そして、口を開く。
心は失っていても、心を失う前に示した行動が今に繋がっているという事実を伝える為に……
「智ちん、ミワちんを任せるよ! 攻めは私とアーレイさんで!」
智美と絵美は、走るスピードの遅い美羽に合わせていた。
その為、航太達から遥かに離されてしまっている。
そんな二人を気遣かって、アーレイは周囲を警戒しながら走っていた……つもりだった。
それが突然、一つ目の巨人に囲まれている。
音も無く現れた……湧いて出たという表現が、一番しっくりしてしまう。
「五匹はいるな……焦らずに、一匹づつ確実に仕留めるぞ! 異変に気付けば、メルフィ達も戻って来る筈……自分達が助かる事を最優先にするんだ!」
アーレイは汗ばんだ手の平を鎧で拭い、バスタード・ソードを握り直す。
女性ばかり四人を守りながら戦った事はない……そして、相手は一匹でも自分より強いモンスターだ。
それでも、自分はフィアナ騎士である……命に替えても、民間人だけは守らなければならない。
「いくぞっ!」
「まだ行かない! ちょい待ち!」
動きだそうとしたアーレイの前に飛び出した絵美は、大地に天沼矛を突き刺し、左腕を胸の前に突き出す。
「はああぁぁぁ!」
絵美の声に反応するかのように、天沼矛が薄浅葱色に輝いた。
天沼矛によって大地から吸い上げられた水が、絵美を中心とした輪になって、ゆっくり浮き上がっていく。
浮き上がりながら木々からも水分を取り込んでいく水の輪は、薄いながらも外側は研ぎ澄まされた刃のように鋭い。
「囲んだら勝ちっ! とか思った? 残念だけど、私も神器の使い方を少しは学んで来てるんだから! 広がれ、水の刃!」
浮き上がった水の刃は、高速で回転し始める。
そして、回転しながら一つ目の巨人の首を目掛けて広がっていく。
回転しながら延伸する水の輪は、飛んだら胴体を……しゃがめば頭を斬り裂く絶妙な位置でマックミーナ族の戦士に襲いかかる。
「ぐおおぉぉぉ!」
身体を……首を……頭を分断された四体分の一つ目の巨人が、大地に崩れ落ちた。
「ありゃ? 一体討ち漏らした?」
天沼矛を素早く大地から引き抜くと、振り下ろされた金砕棒を絵美は間一髪で躱す。
「絵美、水の刃が消された場所が一カ所だけあった! 生き残った一つ目の巨人が特殊能力を持っているのか、他に要因があるのか分からないけど、用心して!」
「智美さん、そこの木陰が一瞬だけど光りました。絵美さんが攻撃した瞬間に光ったから、水の刃が消えた事と関係あるのかな? って気がします」
智美の言葉の後を追うように、美羽が近くの木を指して異変を伝える。
「よく見ていた! おそらく、魔法使いがサポートしているのだろう。魔法使いは、物理攻撃に弱い! 接近戦に持ち込めれば!」
アーレイは、その巨体に似合わない素早い動きで光った木の近くに回り込み、バスタード・ソードを構えた。
「魔法使いは物理攻撃に弱い……か。そうね、あなたにアーサー様やフレイヤ様のような剣速があれば、あるいは届くかもしれないわ」
純白のローブを身に纏いフードを深く被っているが、その声で女性だと分かる。
フードの奥からは、薄いピンクの長い前髪が胸の辺りまでローブの上を流れていた。
「剣速か……このデカイ獲物を見て言ってるなら、心配無用だ。フィアナ騎士の力、その目に焼き付けながら死んでいけ!」
確かに、アーレイの振るバスタード・ソードのスピードは速い。
しかし、それは普通の騎士と比較しての話だ。
子供の頃から一流の騎士……神剣を使い熟し、神級と互角に戦ったり、目も眩むような大軍に一人で立ち向かって行った騎士達の戦いを見てきた魔法使いには、アーレイの動きは遅すぎた。
二つの魔法を余裕を持って使える程度に……
アーレイの振ったバスタード・ソードは、魔法によって現れた物理障壁によって弾かれる。
「我が服従し、我に服従する炎の王よ……我の前に立ち塞がり者を焼き払え……」
心言詠唱による物理障壁……そして、短縮詠唱による回避不能な魔法の詠唱……
サラマンダー・プレートと呼ばれる炎系の上位魔法であり、通常なら松明並の火種と長い詠唱が必要な魔法だ。
それを何の火種も無く短い詠唱で使う魔法使いなど、世界広しと言えど指で数えられる程度しかいないだろう。
それが、たとえ人一人分だとしても……
バスタード・ソードを弾かれてバランスを失ったアーレイの足元に、突然マグマが現れる。
それは一瞬だった……しかし、一瞬で充分だった。
マグマに触れたアーレイの足から、一瞬で炎が身体中を駆け回る。
「なっ……アーレイさんっ!」
いち早く気付いた智美が水の力で消火を図ろうとするが、神剣を振る前に消し炭になったアーレイの灰が四散した。
「そんな……そんな……」
美羽は両手を口に当て、瞳からは涙が零れ落ちる。
「これは……ちょいヤバイかもね……」
アーレイが魔法使いを引き付けている間に一つ目の巨人を水の刃で袈裟斬りにした絵美も、アーレイが焼かれる瞬間を見ていた。
警戒して神器を構える智美と絵美に、魔法使いはゆっくりと近付きながらフードを外す。
「智美さん、絵美さん、お久しぶりです。私の事、覚えていますか?」
薄いピンクの髪が流れ、フードの影から美少女の顔が鮮明になる。
「どうして私達の名前を知っているの? あなたは……誰?」
「分からないのも無理ないですね……数ヶ月前までは、こんなに小さな子供でしたから……」
魔法使いは笑顔で、自らの腰の当たりを手で示す。
「まさか……ルナ……ちゃん?」
「正解です! 智美さん、絵美さん、戻ってくれたんですね! アーサー様の……いえ、カズ兄ちゃんの力になる為に! ごめんなさい……私、お二人だと気付かなくて、戦闘を仕掛けちゃいました。フィアナ騎士と一緒に行動していたから……」
そう言うルナの言葉を、混乱しながら智美と絵美は聞いていた。
確かに、ルナの面影はある。
だが……
「ルナちゃん……何個か質問していいかな? ルナちゃんが数ヶ月で大人の女性に成長している理由も勿論聞きたいんだけど……どうして化け物を操って人々を襲っているの? それに、一真も参加している訳? どうして、こんな事になってるの?」
「智美さん……マックミーナ族の人々を化け物だと思っているのですか? 私は……見当違いをしていたみたいですね。カズ兄ちゃんの昔からの仲間なら、私達の仲間に相応しい心を持っていると思っていたのに……」
そこまで話したルナの視線は、ニミュエに向く。
「黒き妖精……どうして、こんな奴と……」
呟くように声を出したルナに、水の鞭が襲う。
ニミュエを守るように地面から生えた水の鞭は、それぞれが意思を持っているかのようにルナに攻撃を仕掛ける。
「皆さん、騙されないで下さい! あの女……禁術に身を染めています。それに、アーレイさんの敵ですよ!」
水の鞭を身軽に躱したルナは、混乱し動けないでいる智美と絵美を見た。
そして、口を開く。
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