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ロンスヴォの戦い
デュランダルと共に………2
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「ガヌロンはいたか??」
「コッチにはいないぞ!!」
ゼーク隊とオルフェ隊の兵達は、必死にガヌロンを捜していた。
と、その時……………
「オルフェ様、コッチに来て下さい!!」
兵の1人が、オルフェの前に慌てて走って来た。
「どうした??」
「ガヌロンが…………フェルグスに捕まってます!!」
フェルグスと聞いて、オルフェとゼークは顔を見合せる。
「フェルグス…………航太が、お母様を助けてくれたのに…………まだ私達と戦うつもりなの??」
ゼークの瞳が、怒りに奮えた。
「いや…………ガヌロンを捕らえたと言うなら、完全に敵対してる訳でも無いかもしれん…………フェルグスなら、ガヌロンの動きが不可思議なのも分かる筈だ」
オルフェの言葉に頷いたゼークは、フェルグスを見たつけたと言う兵が走って来た方向に足を向ける。
「とにかく…………急ぎましょう!!どっちみち、ガヌロンの兵を使わないとランカストを助けに行けない!!」
ゼークの言葉に、いち早く反応したテューネは先頭をひた走った。
テューネにとっては、フェルグスが何者かなど、どうでもいい。
とにかくランカストを助けたい…………その一心で、足を前に出す。
林を抜けた高台…………戦場を見渡せる場所に、フェルグスは立っていた。
純白に黄金の縁取りの鎧…………その神々しい姿に、始めて見たテューネは言葉を失う。
そんなテューネの背後から、白き閃光が駆け抜けていく!!
「フェルグス!!」
ゼークの放った全身全霊の一撃を、フェルグスはカラドボルグで難無く受け止める。
「ゼーク、気持ちは分かるが………今は我々が争っている時では無いだろう??ランカストが危険な状況だ。恐らく、こいつの策略でな…………」
ランカストの傍らで、ガヌロンが縄で縛られた状態で倒れていた。
「フェルグス…………何故、コイツを捕らえた??まぁ…………敵の軍師がフラフラ歩いていれば、そりゃ捕まえるかもしれんが………」
オルフェの言葉にフェルグスは微かに笑うと、気を失って倒れているガヌロンに視線を向ける。
「私も、ロキ様の護衛をしていた。明らかに、そちらの女性の動きが不自然だったんで、何かあると思いガヌロンを観察していた。奴は戦闘開始と同時に戦場から離脱を始めたので、怪しいと感じて後をつけてみたんだが…………そうしたら、この高台でランカストが死ぬのを心待ちにしているような発言をしていたのでな…………」
フェルグスの戦術眼に驚くゼークとテューネだったが、オルフェは当然という顔をしていた。
「あの状況なら、ガヌロンが怪しいのは明白だな…………正面から見てたなら…………尚更だ」
ランカストとロキの会話にも加わらず、始めから敵軍の囲みを突破する為に動いていたなら、正面から見てれば不自然に見えたに違いない。
そして当然、囲みを突破しようとする敵の軍師を追うのは当然だろう。
むしろ、ガヌロンに関心を示さなかったロキとビューレイストが不自然だが…………
「こうして話し込んでても、私は構わないんだが…………ランカストは危険な状況だ。ビューレイストと戦うみたいだが……………奴は強いぞ」
フェルグスの視線の先…………敵兵に囲まれたランカストが、ビューレイストと向き合っている。
「あの敵将……………ビューレイストって、数で圧倒してるのに、あえて一騎打ちをするつもり??一体何を考えて…………」
「そんな事!!今直ぐに行けば、ランカスト様を助けられる!!オルフェ様、ガヌロンの兵を探して、早く助けに!!」
ゼークは不自然な戦場に違和感を覚えるが、テューネにはランカストを救うチャンスにしか見えていない。
オルフェも直ぐにランカストを助けに行きたかったが、ゼークの言う通り違和感が残る。
「まさか…………ランカストが死んだ後、直ぐにデュランダルを回収するつもりか??混戦の中でランカストが殺されたら、デュランダルの消息が分からなくなる…………いや、それよりも…………デュランダルを拾った兵が、偶然にもデュランダルに認められたりする事を避ける為か…………」
仮にオルフェの考えが正しかったとして、その状況で助けに入ってもいいのか??
「ビューレイストの持つ剣…………ダーインスレイヴは魔剣だ。急がなければ、取り返しのつかない事になるぞ」
魔剣、ダーインスレイヴ…………
その噂を、オルフェは聞いた事がある。
鞘から抜かれたダーインスレイヴは、相手の生き血を全て吸うまで鞘に戻らない…………
その時、地響きが周囲に広がった。
ランカストが構えたデュランダルが、雄叫びを上げるかのように震えている。
「魔剣が何よ!!ランカスト様には、デュランダルがある!!私達が行くまで、必ず無事でいる!!早く助けに!!」
テューネの切羽詰まった言葉に、フェルグスは林の中に目を向けた。
そこには、フェルグスの兵に見張られた、200名程度の兵が座らされている。
装備はベルヘイム軍の物…………
「助けに行くなら、使ってもいいぞ。先の戦闘で、風の騎士に助けてもらったからな…………せめてもの恩返しだ」
その言葉に、ゼークは胸が熱くなった。
ひょっとしたら、フェルグスが自分達の元に戻って来てくれるかもしれない……………
幼い自分が憧れた騎士と、肩を並べて戦える日が来るかも…………そんな淡い期待を持ってしまう。
「すまんフェルグス!!使わせて貰うぞ!!迷っていても仕方がない!!敵兵の動きが止まっている今なら…………ランカストを救えるかもしれん!!ガヌロンの兵達も…………このまま戻ったら、大将を見殺にして逃げた兵として罪に問われる!!しかし、今…………逃げ出さずに戦い、ランカストを助けられたら、その罪は不問にする!!」
ガヌロンの指示に従っただけの兵達は、フェルグスの部隊に捕まった時点で死を覚悟していた。
それだけに、生き延びれる可能性が出た事で士気が上がっている。
「これより、ランカスト救出作戦に移行する。敵を倒す事が目的ではない!!救出したら、すぐに戦線を離脱するぞ!!」
オルフェを先頭に、ゼーク、テューネ、そしてベルヘイム兵達が、再びロキの軍勢の中に飛び込んで行った……………
「コッチにはいないぞ!!」
ゼーク隊とオルフェ隊の兵達は、必死にガヌロンを捜していた。
と、その時……………
「オルフェ様、コッチに来て下さい!!」
兵の1人が、オルフェの前に慌てて走って来た。
「どうした??」
「ガヌロンが…………フェルグスに捕まってます!!」
フェルグスと聞いて、オルフェとゼークは顔を見合せる。
「フェルグス…………航太が、お母様を助けてくれたのに…………まだ私達と戦うつもりなの??」
ゼークの瞳が、怒りに奮えた。
「いや…………ガヌロンを捕らえたと言うなら、完全に敵対してる訳でも無いかもしれん…………フェルグスなら、ガヌロンの動きが不可思議なのも分かる筈だ」
オルフェの言葉に頷いたゼークは、フェルグスを見たつけたと言う兵が走って来た方向に足を向ける。
「とにかく…………急ぎましょう!!どっちみち、ガヌロンの兵を使わないとランカストを助けに行けない!!」
ゼークの言葉に、いち早く反応したテューネは先頭をひた走った。
テューネにとっては、フェルグスが何者かなど、どうでもいい。
とにかくランカストを助けたい…………その一心で、足を前に出す。
林を抜けた高台…………戦場を見渡せる場所に、フェルグスは立っていた。
純白に黄金の縁取りの鎧…………その神々しい姿に、始めて見たテューネは言葉を失う。
そんなテューネの背後から、白き閃光が駆け抜けていく!!
「フェルグス!!」
ゼークの放った全身全霊の一撃を、フェルグスはカラドボルグで難無く受け止める。
「ゼーク、気持ちは分かるが………今は我々が争っている時では無いだろう??ランカストが危険な状況だ。恐らく、こいつの策略でな…………」
ランカストの傍らで、ガヌロンが縄で縛られた状態で倒れていた。
「フェルグス…………何故、コイツを捕らえた??まぁ…………敵の軍師がフラフラ歩いていれば、そりゃ捕まえるかもしれんが………」
オルフェの言葉にフェルグスは微かに笑うと、気を失って倒れているガヌロンに視線を向ける。
「私も、ロキ様の護衛をしていた。明らかに、そちらの女性の動きが不自然だったんで、何かあると思いガヌロンを観察していた。奴は戦闘開始と同時に戦場から離脱を始めたので、怪しいと感じて後をつけてみたんだが…………そうしたら、この高台でランカストが死ぬのを心待ちにしているような発言をしていたのでな…………」
フェルグスの戦術眼に驚くゼークとテューネだったが、オルフェは当然という顔をしていた。
「あの状況なら、ガヌロンが怪しいのは明白だな…………正面から見てたなら…………尚更だ」
ランカストとロキの会話にも加わらず、始めから敵軍の囲みを突破する為に動いていたなら、正面から見てれば不自然に見えたに違いない。
そして当然、囲みを突破しようとする敵の軍師を追うのは当然だろう。
むしろ、ガヌロンに関心を示さなかったロキとビューレイストが不自然だが…………
「こうして話し込んでても、私は構わないんだが…………ランカストは危険な状況だ。ビューレイストと戦うみたいだが……………奴は強いぞ」
フェルグスの視線の先…………敵兵に囲まれたランカストが、ビューレイストと向き合っている。
「あの敵将……………ビューレイストって、数で圧倒してるのに、あえて一騎打ちをするつもり??一体何を考えて…………」
「そんな事!!今直ぐに行けば、ランカスト様を助けられる!!オルフェ様、ガヌロンの兵を探して、早く助けに!!」
ゼークは不自然な戦場に違和感を覚えるが、テューネにはランカストを救うチャンスにしか見えていない。
オルフェも直ぐにランカストを助けに行きたかったが、ゼークの言う通り違和感が残る。
「まさか…………ランカストが死んだ後、直ぐにデュランダルを回収するつもりか??混戦の中でランカストが殺されたら、デュランダルの消息が分からなくなる…………いや、それよりも…………デュランダルを拾った兵が、偶然にもデュランダルに認められたりする事を避ける為か…………」
仮にオルフェの考えが正しかったとして、その状況で助けに入ってもいいのか??
「ビューレイストの持つ剣…………ダーインスレイヴは魔剣だ。急がなければ、取り返しのつかない事になるぞ」
魔剣、ダーインスレイヴ…………
その噂を、オルフェは聞いた事がある。
鞘から抜かれたダーインスレイヴは、相手の生き血を全て吸うまで鞘に戻らない…………
その時、地響きが周囲に広がった。
ランカストが構えたデュランダルが、雄叫びを上げるかのように震えている。
「魔剣が何よ!!ランカスト様には、デュランダルがある!!私達が行くまで、必ず無事でいる!!早く助けに!!」
テューネの切羽詰まった言葉に、フェルグスは林の中に目を向けた。
そこには、フェルグスの兵に見張られた、200名程度の兵が座らされている。
装備はベルヘイム軍の物…………
「助けに行くなら、使ってもいいぞ。先の戦闘で、風の騎士に助けてもらったからな…………せめてもの恩返しだ」
その言葉に、ゼークは胸が熱くなった。
ひょっとしたら、フェルグスが自分達の元に戻って来てくれるかもしれない……………
幼い自分が憧れた騎士と、肩を並べて戦える日が来るかも…………そんな淡い期待を持ってしまう。
「すまんフェルグス!!使わせて貰うぞ!!迷っていても仕方がない!!敵兵の動きが止まっている今なら…………ランカストを救えるかもしれん!!ガヌロンの兵達も…………このまま戻ったら、大将を見殺にして逃げた兵として罪に問われる!!しかし、今…………逃げ出さずに戦い、ランカストを助けられたら、その罪は不問にする!!」
ガヌロンの指示に従っただけの兵達は、フェルグスの部隊に捕まった時点で死を覚悟していた。
それだけに、生き延びれる可能性が出た事で士気が上がっている。
「これより、ランカスト救出作戦に移行する。敵を倒す事が目的ではない!!救出したら、すぐに戦線を離脱するぞ!!」
オルフェを先頭に、ゼーク、テューネ、そしてベルヘイム兵達が、再びロキの軍勢の中に飛び込んで行った……………
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