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ロキの妙計
ソフィーアの涙4
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ガキキキキィィィィィン!!
先程とは逆に、ランカストが振り下ろしたデュランダルをユトムンダスがバスタード・ソードで受け止める。
「うおおおぉぉぉぉぉ!!」
デュランダルを地面に当てた反動で鋭く振り上げ、ランカストはユトムンダスに連続攻撃を仕掛けた。
しかし、左腕に捕われたテューネに攻撃を当てる訳にはいかない為、どうしてもユトムンダスの右側に攻撃が集中し、その斬撃は尽くユトムンダスに読まれてしまう。
なんとか腕から逃れようと暴れるテューネの動きも、太いユトムンダスの腕はビクともしない。
(なんとかテューネを奴の腕から解放しないと………このままじゃ、攻撃が当たらない…………)
ユトムンダスも片腕での攻撃なので、その剣撃の軌道はランカストも読み易かった。
ただ、ランカストは必死に戦っている状態で、ユトムンダスは遊んでるかのように余裕がある。
ランカストの劣勢は、誰の目にも明らかだった。
その状況を見たオルフェは、自ら持つ剣に力を込める。
「見習いの騎士が、村人達を守る為に頑張ってる。オレが、こんな所で足止めを食う訳にはいかないんだ!!」
オルフェは自分にしか聞こえない程度の声で、自らを鼓舞した。
オルフェらベルヘイム騎士達は、8名程度で1体のヨトゥン兵と戦っている。
それでも、1人も突破出来ない。
「情けない、それでもベルヘイム騎士団か!!10体程度のヨトゥン兵、とっとと突破してくれ!!」
後方から聞こえてくるガヌロンの声にも、苛々してしまう。
自分達の剣は、確かにヨトゥン兵に届いている。
ただ、刃がヨトゥン兵の屈強な筋肉を貫けない。
皮膚表面しか斬れない剣では、どうにもならなかった。
普通の兵卒とは、明らかに違う………ヨトゥン兵達も疲労はあるだろうが、それを表に出さないで1人1人確実にベルヘイム騎士達を減らしていく。
(あのヨトゥン兵達は、一体なんなの??強すぎる!!)
ベルヘイム騎士の救援は期待出来ない…………その状況を見たソフィーアは、役に立たなかった自らのレイピアを見つめる。
(この状況で、ランカストとテューネを助けるには…………これしかない!!)
ソフィーアは持っていたレイピアを、ユトムンダスの目の前に投げつけた。
「おっと、何のつもりだ」
目の前に飛んで来たレイピアをゆっくり弾き飛ばしたユトムンダスの右腕に、ソフィーアが跳び付く!!
「ランカスト!!」
ユトムンダスの力なら、ソフィーアの身体など簡単に振り払える。
しかし、ゆっくり飛んで来たレイピア…………ランカストの動きを隠すように飛び込んで来たソフィーアの身体………瞳を動かす動作、レイピアを弾く動作、ソフィーアを振り払う動作……………
それらの動きが、ランカストの動きを隠し、デュランダルが自らの左肩に突き刺される程度の隙を、ユトムンダスは作ってしまった。
普通の剣ではない…………神剣デュランダルの一撃は、その左肩を貫通するに充分な威力がある。
「ぐわあああぁぁぁ!!」
思いもよらない激痛に、ユトムンダスはテューネとソフィーアを同じ方向に投げ飛ばしていた。
ランカストが色気を出して、ユトムンダスに致命傷を与えるような動きをしたら、それは防がれていたかもしれない。
ランカストは、最短でテューネを助ける動きをした。
テューネを助ける…………それが、身を投げ出したソフィーアの願いだと分かっていたから…………
投げ飛ばされた2人は軽傷で済んだようであり、ランカストが見た時には立ち上がる動作を始めていた。
安堵したランカストとは逆に、ユトムンダスは怒りを表にしている。
本来、傷を負うような戦いではない。
それが、未熟な人間達に傷を負わされたのだ。
その怒りは、ソフィーアへと向けられている。
「小娘が…………やってくれたな!!遊んでやってれば、いい気になりやがって!!まずは貴様達から殺してやる!!」
ユトムンダスの長い腕が、ソフィーアとテューネを襲う!!
剣先はソフィーアを…………そして、柄はテューネの頭を捕らえようとしていた。
「なんて事だ…………おい、騎士見習い…………ソフィーを助けろ…………ベルヘイム正騎士に推薦してやるから、ソフィーを助けろ!!」
ユトムンダスの斬撃は、ガヌロンの目にはゆっくりと見える。
絶望の淵に、徐々に落とされていくような感覚…………
ガヌロンの膝は地に落ち、倒されていくベルヘイム騎士の姿など目にも入らず、ただ娘・ソフィーアに迫るユトムンダスの剣の軌道を追っていた。
ガヌロンの声が届く前に、ランカストは既に動き出している。
(間に合う!!柄の方を止めなければ、テューネが死ぬ!!そっちが先だ!!)
ソフィーアも頷いたように、ランカストには見えた。
(そうよ、ランカスト。私よりテューネを…………7国の騎士の血筋を守って…………そして、ユトムンダスを倒して…………)
ソフィーアは自分は助からないと悟って、一筋の涙が頬を伝う。
テューネを救いに入るランカストの姿を見たガヌロンは、頭を抱える。
「馬鹿な…………それでは、遠心力でソフィーに刃が当たってしまう!!子供より、ソフィーを助けろー!!」
ガヌロンの叫び声は、虚しく空に響き渡った………
先程とは逆に、ランカストが振り下ろしたデュランダルをユトムンダスがバスタード・ソードで受け止める。
「うおおおぉぉぉぉぉ!!」
デュランダルを地面に当てた反動で鋭く振り上げ、ランカストはユトムンダスに連続攻撃を仕掛けた。
しかし、左腕に捕われたテューネに攻撃を当てる訳にはいかない為、どうしてもユトムンダスの右側に攻撃が集中し、その斬撃は尽くユトムンダスに読まれてしまう。
なんとか腕から逃れようと暴れるテューネの動きも、太いユトムンダスの腕はビクともしない。
(なんとかテューネを奴の腕から解放しないと………このままじゃ、攻撃が当たらない…………)
ユトムンダスも片腕での攻撃なので、その剣撃の軌道はランカストも読み易かった。
ただ、ランカストは必死に戦っている状態で、ユトムンダスは遊んでるかのように余裕がある。
ランカストの劣勢は、誰の目にも明らかだった。
その状況を見たオルフェは、自ら持つ剣に力を込める。
「見習いの騎士が、村人達を守る為に頑張ってる。オレが、こんな所で足止めを食う訳にはいかないんだ!!」
オルフェは自分にしか聞こえない程度の声で、自らを鼓舞した。
オルフェらベルヘイム騎士達は、8名程度で1体のヨトゥン兵と戦っている。
それでも、1人も突破出来ない。
「情けない、それでもベルヘイム騎士団か!!10体程度のヨトゥン兵、とっとと突破してくれ!!」
後方から聞こえてくるガヌロンの声にも、苛々してしまう。
自分達の剣は、確かにヨトゥン兵に届いている。
ただ、刃がヨトゥン兵の屈強な筋肉を貫けない。
皮膚表面しか斬れない剣では、どうにもならなかった。
普通の兵卒とは、明らかに違う………ヨトゥン兵達も疲労はあるだろうが、それを表に出さないで1人1人確実にベルヘイム騎士達を減らしていく。
(あのヨトゥン兵達は、一体なんなの??強すぎる!!)
ベルヘイム騎士の救援は期待出来ない…………その状況を見たソフィーアは、役に立たなかった自らのレイピアを見つめる。
(この状況で、ランカストとテューネを助けるには…………これしかない!!)
ソフィーアは持っていたレイピアを、ユトムンダスの目の前に投げつけた。
「おっと、何のつもりだ」
目の前に飛んで来たレイピアをゆっくり弾き飛ばしたユトムンダスの右腕に、ソフィーアが跳び付く!!
「ランカスト!!」
ユトムンダスの力なら、ソフィーアの身体など簡単に振り払える。
しかし、ゆっくり飛んで来たレイピア…………ランカストの動きを隠すように飛び込んで来たソフィーアの身体………瞳を動かす動作、レイピアを弾く動作、ソフィーアを振り払う動作……………
それらの動きが、ランカストの動きを隠し、デュランダルが自らの左肩に突き刺される程度の隙を、ユトムンダスは作ってしまった。
普通の剣ではない…………神剣デュランダルの一撃は、その左肩を貫通するに充分な威力がある。
「ぐわあああぁぁぁ!!」
思いもよらない激痛に、ユトムンダスはテューネとソフィーアを同じ方向に投げ飛ばしていた。
ランカストが色気を出して、ユトムンダスに致命傷を与えるような動きをしたら、それは防がれていたかもしれない。
ランカストは、最短でテューネを助ける動きをした。
テューネを助ける…………それが、身を投げ出したソフィーアの願いだと分かっていたから…………
投げ飛ばされた2人は軽傷で済んだようであり、ランカストが見た時には立ち上がる動作を始めていた。
安堵したランカストとは逆に、ユトムンダスは怒りを表にしている。
本来、傷を負うような戦いではない。
それが、未熟な人間達に傷を負わされたのだ。
その怒りは、ソフィーアへと向けられている。
「小娘が…………やってくれたな!!遊んでやってれば、いい気になりやがって!!まずは貴様達から殺してやる!!」
ユトムンダスの長い腕が、ソフィーアとテューネを襲う!!
剣先はソフィーアを…………そして、柄はテューネの頭を捕らえようとしていた。
「なんて事だ…………おい、騎士見習い…………ソフィーを助けろ…………ベルヘイム正騎士に推薦してやるから、ソフィーを助けろ!!」
ユトムンダスの斬撃は、ガヌロンの目にはゆっくりと見える。
絶望の淵に、徐々に落とされていくような感覚…………
ガヌロンの膝は地に落ち、倒されていくベルヘイム騎士の姿など目にも入らず、ただ娘・ソフィーアに迫るユトムンダスの剣の軌道を追っていた。
ガヌロンの声が届く前に、ランカストは既に動き出している。
(間に合う!!柄の方を止めなければ、テューネが死ぬ!!そっちが先だ!!)
ソフィーアも頷いたように、ランカストには見えた。
(そうよ、ランカスト。私よりテューネを…………7国の騎士の血筋を守って…………そして、ユトムンダスを倒して…………)
ソフィーアは自分は助からないと悟って、一筋の涙が頬を伝う。
テューネを救いに入るランカストの姿を見たガヌロンは、頭を抱える。
「馬鹿な…………それでは、遠心力でソフィーに刃が当たってしまう!!子供より、ソフィーを助けろー!!」
ガヌロンの叫び声は、虚しく空に響き渡った………
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