雫物語~Myth of The Wind~

くろぷり

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ロキの妙計

ソフィーアの涙2

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ガキキキキィィィィィン!!

ランカストはバスタード・ソードで、ユトムンダスの振り下ろしたデュランダルの一撃を辛うじて受けるが、その力を受け止めきれずに後方へ飛ばされる。

「ちっ!!なんで、あんな見習い騎士がユトムンダスと戦っているんだ??まぁ…………しかし、捕われてるのがソフィーではないから、慌てる必要もないか……………」

ガヌロンはそう言うと、一瞬で20名程度を倒されたベルヘイム騎士団に視線を移す。

「このまま戦闘継続をしても、こちらの被害が増えるだけだ。牽制を続けつつ、本隊の合流を待つ!!」

ガヌロンはそう叫ぶと、80名程度ななった騎士達を下げ始める。

「ガヌロン様、あそこで1人ユトムンダスと戦っている者…………彼は、我がベルヘイム騎士が見習いの時に装備する鎧を纏っています。助けなくては!!」

ヨトゥンの部隊と対峙しながら、少しづつ下がっていく騎士達の中から、若い騎士がガヌロンに歩み寄って言った。

「オルフェか………………貴様は、戦況というモノを少し学んだ方がいいな。残りの80名程度の騎士では、屈強なヨトゥン兵の壁を破れん。剣の腕も大事だが、状況を把握しろ」

オルフェ・グランス……………凛々しく整った顔には、まだ幼さが残る。

まだ15歳という若さだが、ベルヘイム騎士団に抜擢され、将来はベルヘイム12騎士に抜擢されるだろうと噂される騎士だ。

その剣技の美しさは、流れるように清々しさを感じる程である。

そんなオルフェは、正義感が強く、真っ直ぐな少年であった。

「しかしガヌロン様、見習い騎士1人を救えない騎士団…………ベルヘイム騎士団は、そんな汚名を背負う事になるかもしれません!!」

あまりにも真っ直ぐな視線で見てくるオルフェに、ガヌロンは呆れた顔で頭を掻く。

「だから、戦況を見ろと言ってるだろう!!このまま、我々が見習い1人を助ける為に飛び込んで全滅したら、村人の全てが殺されるかもしれん。こうして、ヨトゥン兵をここに張り付かせておくのも我等の仕事だ」

ガヌロンの言葉を聞きながら、オルフェは唇を噛み締める。

確かに、たった10騎程度のヨトゥン兵だが、あまりに強い。

このまま、策もなく飛び込めば全滅する可能性もある。

しかし……………

レンヴァル村に辿り着くまではあそこまで急いでいて、急に安堵の表情になって兵を後退させるガヌロンが、オルフェは気に入らなかった。

オルフェの視線の先では、自分と同じぐらいの歳の少年が、必死にユトムンダスと戦っている。

額と左腕から血を流しながらも、その瞳は強く輝いているようにも見えた。

「ふん…………ベルヘイム騎士団も、たいした事ないな………おい、2人ぐらい宝探しを再開しろ。攻めてくる気のないベルヘイム騎士など、相手にしてても時間の無駄だ」

ユトムンダスの指示で、2人のヨトゥン兵が村に戻って行く。

(くそ…………ベルヘイムの正規騎士が、何も出来ないのか…………もはや、オレがコイツを…………この将を倒す以外、村を救えない…………)

ランカストはボロボロになった自らの体を、バスタード・ソードで支える。

ユトムンダスを睨むランカストの視線が、村に戻ってきたヨトゥン兵を捉えた。

そのヨトゥン兵達は、先に進ませないように立ち向かう村人達を尽く殺し始める。

「そんな……………皆、逃げてくれ!!立ち向かうなんて、無理だ!!」

ランカストの叫び声も虚しく、村人達はヨトゥン兵の餌食になっていく。

「ふん…………腑抜けのベルヘイム騎士の中で、貴様が1番まともだな。それだけは評価してやる。もう少しだけ、遊んでやるぞ」

ユトムンダスは再びデュランダルを構えると、ランカストに向かって歩き出す。

「このまま…………こんな所で終われるか!!村の皆も…………命を無駄にしないでくれ!!絶望の中でも、命を繋げる事を……………諦めないでくれ!!」

ランカストは吠えると、ユトムンダスに向かって飛び込んだ。

左腕に捕われた少女に当たらないように、それでも気迫の篭った剣撃をユトムンダスに浴びせていく。

「テューネ!!必ず助ける!!もう少し、辛抱してくれ!!」

ランカストと目が合った少女……………テューネは、力強く頷いた。

まだ7歳程の少女は、瞳に涙を溜めてはいるが、泣き出さずにユトムンダスの腕から逃れようと必死にもがいている。

ランカストの気迫の篭った剣撃で、数歩だけ後ろに下がったユトムンダスは、民家の影から飛び出す人影に気付いた。

「今だっ!!」

自分から視線の外れた一瞬の隙を付いて、ランカストはユトムンダスの持つデュランダルを弾き飛ばす。

「なんだと!!」

慌てるユトムンダスの左腕に、レイピアの切っ先が突き刺さる。

レイピアを構えてユトムンダスに立ち向かう…………その人影を見たガヌロンの表情が、激変していく。

「そんな……………ソフィー……………」

ガヌロンが呟いたその一言は、オルフェにしか聞こえなかった………
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