63 / 222
レンヴァル村の戦い
凰の目
しおりを挟む
「もうアルったら………………まだ忙しい時間なのに呼び出して…………会ったら文句の1つでも言ってやらなきゃ!!」
航太達がレンヴァル村から戻って来る少し前、ホワイト・ティアラ隊の隊長でもある【ネイア・ペンティス】は、幕舎から少し離れた林の中を歩いていた。
アルパスターから人のいない所で話があると言われ、仕事の合間に時間を作っていた為、ネイアは少し苛つきながら歩いている。
しかし、久しぶりに恋人であるアルパスターと2人きりの時間が持てそうなので、その感情とは裏腹に心は躍っていた。
と……………その時突然に、背筋に悪寒が走った。
「何…………この感じ…………凄い圧力を感じるけど………」
ネイアは、その圧力を感じる木の間に視線を移す。
バサバサバサっ
その視線の先で、風も吹いてないにも関わらず、何本かの木が揺れた。
「何……………何なの……………」
ネイアは、恐怖と好奇心と…………不思議な感情のまま、歩いていた足取りは少し早足になり、木の揺れている中心に近づいていく。
そこに立っていたアルパスターに、ネイアは気付いた。
「アル……………こんな所にいたの?この凄い圧力は一体何?胸がドキドキするような…………」
ネイアの声を聞いたアルパスターは、咄嗟にネイアの口に自らの手を当てて言葉を遮る。
「ネイア…………少し落ち着いてから見てくれ……………彼の邪魔はしないようにな……………」
ネイアは再び、視線を揺れ動く木の中心に向けた。
「っ……………………!!」
大声を出しそうになったネイアは、今度は自分の手で口を塞ぎ、声が出すのを抑え……………そして…………息を飲む。
その視線の先…………………小さな男が、80センチ程度の小ぶりで身幅が広い両刃の剣を持ち、その身体に力を入れている。
その剣圧のみで、周囲の木々を揺らしていた。
それだけでも驚きなのだが、ネイアが驚いたのは、身体の小さなその男の目……………その瞳が赤く輝いていたのだ。
「そんな……………あれ、凰の目じゃないの??……………なんで彼が…………」
【凰の目】
神話の世界に住む人なら誰もが知っている【7国の騎士】の1人、【アスナ・フェニックス】の持っていた伝説の赤い瞳…………
アスナの凰の目が輝く時、神の力ですら押し返すとまで言われる瞳………
何10年も前にアスナと共に失われた瞳が、今ネイアの前で輝いている。
「驚いただろ?俺も彼と最初に会った時、身が震えたよ。驚きと…………そして希望。彼がいれば、バロールの魔眼に対抗できる………」
そんなアルパスターの声が耳に届いているのか、いないのか…………ネイアは全く反応出来なかった。
思いがけない男が、思いがけない力を持っている……………言葉にならない程の驚きが、ネイアの心に渦巻いている。
「今は……………この事は内密にして欲しいんだ……………オレとキミとユングヴィ王子の3人のみが、この事実を知っている。ヨトゥン軍に気付かれたら、バロールに近付く事が難しくなってしまう…………」
「見られただけで人間を死に至らしめるバロールの魔眼…………今回の遠征軍の大半は、バロールとの決戦で殺される事になる…………そう思っていた……………でも、彼がいてくれたら……………」
アルパスターの言葉に、茫然とした瞳を小柄な男から目を話せないネイアが、希望の言葉を口にする。
「そうだ………凰の目を持つ人間のみが、バロールの魔眼に対抗出来る。そして、彼の力は伝説となっているアスナと同等か……………それ以上だと思うぞ」
その言葉に、ネイアの瞳は大きくなる。
気の弱そうな彼が、伝説となっている騎士より強い??
ネイアには、思いも寄らない事実だった。
「ネイア、キミには話しておきたかったんだ…………彼のいる部隊の隊長として……………そして、オレの大切な人として…………彼は、人間の宝……………そして、切り札だ。ホワイト・ティアラ隊がもし敵の攻撃に晒される事があれば、命を懸けてでも守って欲しい」
「分かってる。バロールと戦うまでは、彼をヨトゥン軍とは戦わせない。バロールに彼の事が知られたら、姫を奪還出来る可能性が失われる…………でも、彼の強さは本物なの?命を懸けなきゃいけないなら、知っておきたい。彼の強さを…………」
ネイアの言葉に、アルパスターは頷いた。
「そう言うと思っていたよ。だから、こんな人気の無い場所にキミを呼んだんだ。代償が付き纏うその力を…………彼はキミになら見せてもいいと………………な」
アルパスターはそう言うと、神槍ブリューナクを構える。
「アル……………何をするつもり!!」
「オレの全力が彼に通用するか……………その目で見届けてくれ!!彼が命を懸けて守る価値があるのかを!!」
その言葉が終わると同時に、ブリューナクの先から閃光が3本、彼に向かって撃ち出された!!
航太達がレンヴァル村から戻って来る少し前、ホワイト・ティアラ隊の隊長でもある【ネイア・ペンティス】は、幕舎から少し離れた林の中を歩いていた。
アルパスターから人のいない所で話があると言われ、仕事の合間に時間を作っていた為、ネイアは少し苛つきながら歩いている。
しかし、久しぶりに恋人であるアルパスターと2人きりの時間が持てそうなので、その感情とは裏腹に心は躍っていた。
と……………その時突然に、背筋に悪寒が走った。
「何…………この感じ…………凄い圧力を感じるけど………」
ネイアは、その圧力を感じる木の間に視線を移す。
バサバサバサっ
その視線の先で、風も吹いてないにも関わらず、何本かの木が揺れた。
「何……………何なの……………」
ネイアは、恐怖と好奇心と…………不思議な感情のまま、歩いていた足取りは少し早足になり、木の揺れている中心に近づいていく。
そこに立っていたアルパスターに、ネイアは気付いた。
「アル……………こんな所にいたの?この凄い圧力は一体何?胸がドキドキするような…………」
ネイアの声を聞いたアルパスターは、咄嗟にネイアの口に自らの手を当てて言葉を遮る。
「ネイア…………少し落ち着いてから見てくれ……………彼の邪魔はしないようにな……………」
ネイアは再び、視線を揺れ動く木の中心に向けた。
「っ……………………!!」
大声を出しそうになったネイアは、今度は自分の手で口を塞ぎ、声が出すのを抑え……………そして…………息を飲む。
その視線の先…………………小さな男が、80センチ程度の小ぶりで身幅が広い両刃の剣を持ち、その身体に力を入れている。
その剣圧のみで、周囲の木々を揺らしていた。
それだけでも驚きなのだが、ネイアが驚いたのは、身体の小さなその男の目……………その瞳が赤く輝いていたのだ。
「そんな……………あれ、凰の目じゃないの??……………なんで彼が…………」
【凰の目】
神話の世界に住む人なら誰もが知っている【7国の騎士】の1人、【アスナ・フェニックス】の持っていた伝説の赤い瞳…………
アスナの凰の目が輝く時、神の力ですら押し返すとまで言われる瞳………
何10年も前にアスナと共に失われた瞳が、今ネイアの前で輝いている。
「驚いただろ?俺も彼と最初に会った時、身が震えたよ。驚きと…………そして希望。彼がいれば、バロールの魔眼に対抗できる………」
そんなアルパスターの声が耳に届いているのか、いないのか…………ネイアは全く反応出来なかった。
思いがけない男が、思いがけない力を持っている……………言葉にならない程の驚きが、ネイアの心に渦巻いている。
「今は……………この事は内密にして欲しいんだ……………オレとキミとユングヴィ王子の3人のみが、この事実を知っている。ヨトゥン軍に気付かれたら、バロールに近付く事が難しくなってしまう…………」
「見られただけで人間を死に至らしめるバロールの魔眼…………今回の遠征軍の大半は、バロールとの決戦で殺される事になる…………そう思っていた……………でも、彼がいてくれたら……………」
アルパスターの言葉に、茫然とした瞳を小柄な男から目を話せないネイアが、希望の言葉を口にする。
「そうだ………凰の目を持つ人間のみが、バロールの魔眼に対抗出来る。そして、彼の力は伝説となっているアスナと同等か……………それ以上だと思うぞ」
その言葉に、ネイアの瞳は大きくなる。
気の弱そうな彼が、伝説となっている騎士より強い??
ネイアには、思いも寄らない事実だった。
「ネイア、キミには話しておきたかったんだ…………彼のいる部隊の隊長として……………そして、オレの大切な人として…………彼は、人間の宝……………そして、切り札だ。ホワイト・ティアラ隊がもし敵の攻撃に晒される事があれば、命を懸けてでも守って欲しい」
「分かってる。バロールと戦うまでは、彼をヨトゥン軍とは戦わせない。バロールに彼の事が知られたら、姫を奪還出来る可能性が失われる…………でも、彼の強さは本物なの?命を懸けなきゃいけないなら、知っておきたい。彼の強さを…………」
ネイアの言葉に、アルパスターは頷いた。
「そう言うと思っていたよ。だから、こんな人気の無い場所にキミを呼んだんだ。代償が付き纏うその力を…………彼はキミになら見せてもいいと………………な」
アルパスターはそう言うと、神槍ブリューナクを構える。
「アル……………何をするつもり!!」
「オレの全力が彼に通用するか……………その目で見届けてくれ!!彼が命を懸けて守る価値があるのかを!!」
その言葉が終わると同時に、ブリューナクの先から閃光が3本、彼に向かって撃ち出された!!
0
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説
頭が花畑の女と言われたので、その通り花畑に住むことにしました。
音爽(ネソウ)
ファンタジー
見た目だけはユルフワ女子のハウラナ・ゼベール王女。
その容姿のせいで誤解され、男達には尻軽の都合の良い女と見られ、婦女子たちに嫌われていた。
16歳になったハウラナは大帝国ダネスゲート皇帝の末席側室として娶られた、体の良い人質だった。
後宮内で弱小国の王女は冷遇を受けるが……。
婚約破棄騒動に巻き込まれたモブですが……
こうじ
ファンタジー
『あ、終わった……』王太子の取り巻きの1人であるシューラは人生が詰んだのを感じた。王太子と公爵令嬢の婚約破棄騒動に巻き込まれた結果、全てを失う事になってしまったシューラ、これは元貴族令息のやり直しの物語である。
神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜
星井柚乃(旧名:星里有乃)
恋愛
「アメリアお姉様は、私達の幸せを考えて、自ら身を引いてくださいました」
「オレは……王太子としてではなく、一人の男としてアメリアの妹、聖女レティアへの真実の愛に目覚めたのだ!」
(レティアったら、何を血迷っているの……だって貴女本当は、霊感なんてこれっぽっちも無いじゃない!)
美貌の聖女レティアとは対照的に、とにかく目立たない姉のアメリア。しかし、地味に装っているアメリアこそが、この国の神のいとし子なのだが、悪魔と契約した妹レティアはついに姉を追放してしまう。
やがて、神のいとし子の祈りが届かなくなった国は災いが増え、聖女の力を隠さなくなったアメリアに救いの手を求めるが……。
* 2023年01月15日、連載完結しました。
* ヒロインアメリアの相手役が第1章は精霊ラルド、第2章からは隣国の王子アッシュに切り替わります。最終章に該当する黄昏の章で、それぞれの関係性を決着させています。お読みくださった読者様、ありがとうございました!
* 初期投稿ではショートショート作品の予定で始まった本作ですが、途中から長編版に路線を変更して完結させました。
* この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。
* ブクマ、感想、ありがとうございます。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!
仁徳
ファンタジー
あらすじ
リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。
彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。
ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。
途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。
ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。
彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。
リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。
一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。
そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。
これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる