雫物語~Myth of The Wind~

くろぷり

文字の大きさ
上 下
11 / 222
紅の剣士と恐怖の剣

恐怖の剣【ヘルギ】

しおりを挟む
「これ……やったのお前か……」

航太は切り刻まれて倒れてる人を見て言う。

「そうだ、今中でも赤ん坊と女が同じ状態で倒れてるぜ!」

悪ぶれる様子もなく、話を進める。

「赤ん坊??そんな幼い命も奪うなんて……!!」

智美が叫んだ!!

深紅の鎧に身を包んだその男は、航太達の方に歩いてきた。

「お前……何者だっ!!」

航太は鞘から【エアの剣】を抜き、構える。

それに呼応し、智美は右手に【草薙剣】左手に【天叢雲剣】。

絵美は【天沼矛】をそれぞれ構える。

深紅の男は不適な笑みを浮かべながら、血のように赤い剣を鞘より抜く。

まるで蛇が刀身に巻き付けられているような、不気味な剣である。

「我が【ヘルギ】に血を吸わせてくれるのか??」

深紅の剣【ヘルギ】を構えながら、男が言う。

「うぇぇぇ!きっも~~い。わたしが一番嫌いなタイプだわ!!」

絵美が「うぇっ」と何かを吐き出すポーズをする。

「航太!!こんなヤツ秒殺するでしゅ~~」

ガーゴが「戦う」ポーズをしながら、興奮気味に言う。

「しゃあ!!いくぜ!!」

航太は【エアの剣】を水平に振った!

すると鎌鼬が発生し、深紅の男を強襲する!!

しかし、その鎌鼬をヒラリと簡単にかわすと、一瞬で航太との距離を詰め【ヘルギ】で切りかかる!!

航太は辛うじてその一撃を【エアの剣】で受け、後退する。

両手が、もの凄い痺れている。

(一撃でこれかよ!!)

航太は始めて恐怖を覚えた。

だが、そんな恐怖の中でも1つの事に気づく。

「あんた…ヨトゥンの兵隊なのか?見たところ、人間のように見えるが…」

航太は先程聞いたヨトゥンの特徴と、目の前にいる男が一致してないように見えた。

「ほう、オレの事を知らんか…なら教えといてやろう。我が名は【ガイエン・ドーマ】今から貴様らを殺す、クロウ・クルワッハ隊の先鋒の将だ!!」

深紅の男……ガイエンは、ヨトゥン兵が放ったであろう火で燃え上がり、オレンジの空になっているオゼス村の方を一瞥し、不気味に笑う。

「もはや村の人間は皆殺しにしたのに、ご苦労なこったな!!」

そう言うガイエン顔は、人間の全てを恨んでいる表情に見える。

人かヨトゥンか…その問いに返答は無かったが、その表情から航太は直感的にガイエンは人だろうと感じていた。

人同士で殺し合う事…そんな状況になるとは考えておらず、航太の手は震えだす。

「あなた……人の命を何だと思ってるの……小さな子供まで手にかけて……許せない!!」

しかし、智美の心の中は怒りが支配していたのであろう。

ガイエンが人かどうかなどお構いなしに、大声をあげて両手の剣を勢いよく振り回す!

演舞をやってただけあり、美しい舞のように、しかし変則的にガイエンを狙う!!

ヨトゥン兵と戦った時のような、手心は感じない。

今まで感じた事のない程の怒りが智美を支配していた………はずだった。

「はっ……………いや……」

しかし、怒りに満ちた智美の動きが急に止まり、腰が砕けたように尻もちをつく。

その体は、まるで悪寒がきたかのように小刻みに震えている。

視線の先には、剣先を智美に向けたガイエンが立っていた。

「智美!動きを止めるな!やられるぞ!!」

航太はガイエンに向かって鎌鼬を放ち、隙をついて智美に近づく。

「大丈夫か??」

航太が智美の肩に触ると、尋常じゃない程にガクガクと震えている。

(すげー怯えてやがる!一体何があった??)

航太は智美からガイエンの方へ視線をズラすと、余裕で鎌鼬をかわして剣を振り上げていた。

「ちっ」

航太は振り下ろされる【ヘルギ】に辛うじて反応し、智美を庇いながら間一髪【エアの剣】で受ける。

「つっ!!」

再び、両手に痺れが走る。

体勢を崩し「ヤバイ!」と航太が思った瞬間、横から絵美が【天沼矛】をガイエンに向けて突く!

航太から見ると閃光にしか見えない突きも、ガイエンに簡単に弾かれる。

しかし、絵美は弾かれる力を利用して一回転!!

今度は矛をしならせて、薙ぎ払う!!

しかしガイエンは、この攻撃も予測していたかのように後方に飛んで簡単にかわす。

「ふん」

ガイエンは鼻で笑うと【ヘルギ】を絵美に向けて構えた。

「ひゃあ!!」

絵美は、腰を抜かしたかのように突然転んだ。

そして、智美同様に体を震わせている。

(どうなってるんだ??)

しかし、考えをまとめる間もなくガイエンが迫る。

「ふん、Myth Knightだったら楽しめる思ったが、ただの雑魚か!つまらんな」

ガイエンは【ヘルギ】の剣先を航太に向けながら、薄ら笑いを浮かべた。

(せっかく【エアの剣】の特性が分かってきたのに!何か出来ないのか?)

航太は考えを巡らせるが、ガイエンが近くにつれ、ジリジリ後退するしか考えつかない。

智美・絵美の援護を期待しようにも、2人とも怯えており、戦闘どころではなさそうだ。

(くそー!まさか、あの紅い剣は神器なのか? Myth Knight って味方だけじゃねーのかよっ!!)

航太は、自分の心臓の音を近くで聞いてる感じがした。

死ぬという感覚や、この世界にやってきた後悔……

色々な事が、頭の中を交差する。

「うわぁぁぁ!!」

頭の中がゴチャゴチャになって、ヤケになってガイエンに斬りかかろうとした瞬間……

バシュ!!

後方で炸裂音のような音が聞こえた………
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【取り下げ予定】愛されない妃ですので。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。 国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。 「僕はきみを愛していない」 はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。 『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。 (ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?) そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。 しかも、別の人間になっている? なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。 *年齢制限を18→15に変更しました。

転生調理令嬢は諦めることを知らない

eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。 それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。 子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。 最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。 八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。 それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。 また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。 オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。 同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。 それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。 弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。  主人公が酷く虐げられる描写が苦手な方は、回避をお薦めします。そういう意味もあって、R15指定をしています。  追放令嬢ものに分類されるのでしょうが、追放後の展開はあまり類を見ないものになっていると思います。  2章立てになりますが、1章終盤から2章にかけては、「令嬢」のイメージがぶち壊されるかもしれません。不快に思われる方にはご容赦いただければと存じます。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?

甘寧
ファンタジー
「武闘家貴族」「脳筋貴族」と呼ばれていた元子爵令嬢のマリアンネ。 友人に騙され多額の借金を作った脳筋父のせいで、屋敷、領土を差し押さえられ事実上の没落となり、その借金を返済する為、城で侍女の仕事をしつつ得意な武力を活かし副業で「便利屋」を掛け持ちしながら借金返済の為、奮闘する毎日。 マリアンネに執着するオネエ王子やマリアンネを取り巻く人達と様々な試練を越えていく。借金返済の為に…… そんなある日、便利屋の上司ゴリさんからの指令で幽霊屋敷を調査する事になり…… 武闘家令嬢と呼ばれいたマリアンネの、借金返済までを綴った物語

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

処理中です...