雫物語~Myth of The Wind~

くろぷり

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紅の剣士と恐怖の剣

恐怖の剣【ヘルギ】

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「これ……やったのお前か……」

航太は切り刻まれて倒れてる人を見て言う。

「そうだ、今中でも赤ん坊と女が同じ状態で倒れてるぜ!」

悪ぶれる様子もなく、話を進める。

「赤ん坊??そんな幼い命も奪うなんて……!!」

智美が叫んだ!!

深紅の鎧に身を包んだその男は、航太達の方に歩いてきた。

「お前……何者だっ!!」

航太は鞘から【エアの剣】を抜き、構える。

それに呼応し、智美は右手に【草薙剣】左手に【天叢雲剣】。

絵美は【天沼矛】をそれぞれ構える。

深紅の男は不適な笑みを浮かべながら、血のように赤い剣を鞘より抜く。

まるで蛇が刀身に巻き付けられているような、不気味な剣である。

「我が【ヘルギ】に血を吸わせてくれるのか??」

深紅の剣【ヘルギ】を構えながら、男が言う。

「うぇぇぇ!きっも~~い。わたしが一番嫌いなタイプだわ!!」

絵美が「うぇっ」と何かを吐き出すポーズをする。

「航太!!こんなヤツ秒殺するでしゅ~~」

ガーゴが「戦う」ポーズをしながら、興奮気味に言う。

「しゃあ!!いくぜ!!」

航太は【エアの剣】を水平に振った!

すると鎌鼬が発生し、深紅の男を強襲する!!

しかし、その鎌鼬をヒラリと簡単にかわすと、一瞬で航太との距離を詰め【ヘルギ】で切りかかる!!

航太は辛うじてその一撃を【エアの剣】で受け、後退する。

両手が、もの凄い痺れている。

(一撃でこれかよ!!)

航太は始めて恐怖を覚えた。

だが、そんな恐怖の中でも1つの事に気づく。

「あんた…ヨトゥンの兵隊なのか?見たところ、人間のように見えるが…」

航太は先程聞いたヨトゥンの特徴と、目の前にいる男が一致してないように見えた。

「ほう、オレの事を知らんか…なら教えといてやろう。我が名は【ガイエン・ドーマ】今から貴様らを殺す、クロウ・クルワッハ隊の先鋒の将だ!!」

深紅の男……ガイエンは、ヨトゥン兵が放ったであろう火で燃え上がり、オレンジの空になっているオゼス村の方を一瞥し、不気味に笑う。

「もはや村の人間は皆殺しにしたのに、ご苦労なこったな!!」

そう言うガイエン顔は、人間の全てを恨んでいる表情に見える。

人かヨトゥンか…その問いに返答は無かったが、その表情から航太は直感的にガイエンは人だろうと感じていた。

人同士で殺し合う事…そんな状況になるとは考えておらず、航太の手は震えだす。

「あなた……人の命を何だと思ってるの……小さな子供まで手にかけて……許せない!!」

しかし、智美の心の中は怒りが支配していたのであろう。

ガイエンが人かどうかなどお構いなしに、大声をあげて両手の剣を勢いよく振り回す!

演舞をやってただけあり、美しい舞のように、しかし変則的にガイエンを狙う!!

ヨトゥン兵と戦った時のような、手心は感じない。

今まで感じた事のない程の怒りが智美を支配していた………はずだった。

「はっ……………いや……」

しかし、怒りに満ちた智美の動きが急に止まり、腰が砕けたように尻もちをつく。

その体は、まるで悪寒がきたかのように小刻みに震えている。

視線の先には、剣先を智美に向けたガイエンが立っていた。

「智美!動きを止めるな!やられるぞ!!」

航太はガイエンに向かって鎌鼬を放ち、隙をついて智美に近づく。

「大丈夫か??」

航太が智美の肩に触ると、尋常じゃない程にガクガクと震えている。

(すげー怯えてやがる!一体何があった??)

航太は智美からガイエンの方へ視線をズラすと、余裕で鎌鼬をかわして剣を振り上げていた。

「ちっ」

航太は振り下ろされる【ヘルギ】に辛うじて反応し、智美を庇いながら間一髪【エアの剣】で受ける。

「つっ!!」

再び、両手に痺れが走る。

体勢を崩し「ヤバイ!」と航太が思った瞬間、横から絵美が【天沼矛】をガイエンに向けて突く!

航太から見ると閃光にしか見えない突きも、ガイエンに簡単に弾かれる。

しかし、絵美は弾かれる力を利用して一回転!!

今度は矛をしならせて、薙ぎ払う!!

しかしガイエンは、この攻撃も予測していたかのように後方に飛んで簡単にかわす。

「ふん」

ガイエンは鼻で笑うと【ヘルギ】を絵美に向けて構えた。

「ひゃあ!!」

絵美は、腰を抜かしたかのように突然転んだ。

そして、智美同様に体を震わせている。

(どうなってるんだ??)

しかし、考えをまとめる間もなくガイエンが迫る。

「ふん、Myth Knightだったら楽しめる思ったが、ただの雑魚か!つまらんな」

ガイエンは【ヘルギ】の剣先を航太に向けながら、薄ら笑いを浮かべた。

(せっかく【エアの剣】の特性が分かってきたのに!何か出来ないのか?)

航太は考えを巡らせるが、ガイエンが近くにつれ、ジリジリ後退するしか考えつかない。

智美・絵美の援護を期待しようにも、2人とも怯えており、戦闘どころではなさそうだ。

(くそー!まさか、あの紅い剣は神器なのか? Myth Knight って味方だけじゃねーのかよっ!!)

航太は、自分の心臓の音を近くで聞いてる感じがした。

死ぬという感覚や、この世界にやってきた後悔……

色々な事が、頭の中を交差する。

「うわぁぁぁ!!」

頭の中がゴチャゴチャになって、ヤケになってガイエンに斬りかかろうとした瞬間……

バシュ!!

後方で炸裂音のような音が聞こえた………
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