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コナハト攻城戦
凰翼8
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炎に焼かれたバロールは、それでもゆっくりと立ち上がった。
「やっぱり……生きてるか……」
一つ溜息をついた後、一真は呟く。
その瞳は、再び鮮やかな赤に変わっている。
「鳳凰覚醒を使うと、ここまで強くなるか……人間にしては過ぎた力じゃのう……しかも、心を失ってない……凄まじい程の精神力じゃ!」
そう言うバロールに、危機感は全く感じない。
寧ろ余裕の表情であり、胸の傷も既に治っている。
「そろそろ、本気で戦ってみるかのぅ……鳳凰覚醒した時の力は、既に分かったからの……」
バロールの魔眼が青白く怪しく光り……再びバロールの姿が一真の視界から消えた。
「くっ!」
幻術を使って死角から攻撃するバロールに、凰の目の動体視力で辛くも躱す一真。
「何だ? さっきより早くなってる気がする……魔眼は2つのままなのに……どうなってんの?」
魔眼が青白い輝きを放ち始めてから、明らかにスピードが違う。
「目が青くなってから、魔眼の力が強くなっている気がする……凰の目だけでは対応出来ない!」
先程までは、バロールの姿が消えるような感覚しかなかった。
しかし今は、バロールの姿が一瞬2人に見え、更に攻撃が襲いかかってくるタイミングも早くなっている……
バロールの幻術に対応出来なくなってきた一真の左肩に、ついにクレイモアの刃が届く。
掠めただけの一撃だったが、鎧ではなくパーカーを着用していた一真の肩を斬るには充分だった。
白地のパーカーの生地が裂け、その周囲にうっすらと赤い染みが広がっていく。
「儂を相手に、凰の目だけでは相手にならんぞ? 鳳凰覚醒を使うんじゃな。あんまり待たされると、さっきのチビちゃんを襲ってしまうかもしれないしのぅ……」
作り笑いを浮かべるバロールは、余裕すら感じられる。
鳳凰覚醒した力ですら、一真が心を失うまでは耐えられるという自信があるのだろう。
そんなバロールを睨みながら、一真は鳳凰覚醒の修業をしていた頃を思い出していた。
凰の目とは全く違う、鳳凰覚醒を使っている時の恐怖……
自分自身が、闇の中へ突っ込んでいくような……まるでジェットコースターで闇の中へ飛び込んでいくような……自分では抵抗する事すら出来ず、闇に吸い込まれていくような……そんな感覚。
強敵と戦いながら、そんな恐怖とも闘わなければならない。
一真は無意識に、胸元で輝くティアから預かったペンダントを握り締める。
心を強くする魔法のお守り……ティアは、そう言っていた。
気持ちが和らいだ一真は、頭を整理する。
自分に必要なのは、心を失う恐怖じゃない……多くの人達の未来を繋げる為の覚悟と勇気だ……
ティアのペンダントは、一真の恐怖を少し和らげてくれた。
それで充分……一度覚悟が出来れば、もう戦える。
「行くぞバロール! これが……鳳凰覚醒の力だっ!」
再び、一真の背中に炎の翼が具現化した。
いや……先程よりも鮮明に……そして激しく……まるで命を燃やしているかのような、強い翼が現れる。
「まだ上があったか……じゃが、その攻撃を防げば、儂の勝ちじゃ!」
バロールの魔眼が青白く輝き……そして見開いた。
バロールも渾身の力で、魔眼の力を使う……が、炎の翼を得た一真のスピードは幻術すら通用しない。
いや……幻術にかかろうが関係ない……グラムに炎を纏わせて一閃!
一真の前方に、広範囲の炎の刃が走る!
「ぐおおぉぉぉぉぉ!」
バロールは躱す事も出来ず、炎の刃に斬り裂かれた身体は、焼かれながら壁に叩き付けられた。
「これで終わりだっ! バロール!」
「強いのぅ……じゃが、切り札があるのは、コチラも同じじゃ!」
バロールに向かって飛び込みながら振り下ろされたグラムが、氷の壁に遮られる。
「なに……氷も操れるのか? けど、この程度の氷でっ!」
グラムの纏う激しい炎は、あっさりと氷の壁を溶かし、バロールにグラムが振り下ろされた……が、グラムの剣先は地面を叩く。
「なっ……この一瞬で、どこに消えた?」
躱せる筈がない……氷の壁に遮られたのは、ほんの一瞬……1秒にも満たない時間だろう。
その一瞬で、身体ごと視界から消えるなど有り得ない。
「いやはや、凄い力じゃのう……まさか、人間相手に3つ目の魔眼を使う事になるとは思わんだったわ。さて……ここからは正真正銘、本気の戦いじゃの!」
第三の目が開き、バロールの身体から異様な力が沸き上がっていた……
「やっぱり……生きてるか……」
一つ溜息をついた後、一真は呟く。
その瞳は、再び鮮やかな赤に変わっている。
「鳳凰覚醒を使うと、ここまで強くなるか……人間にしては過ぎた力じゃのう……しかも、心を失ってない……凄まじい程の精神力じゃ!」
そう言うバロールに、危機感は全く感じない。
寧ろ余裕の表情であり、胸の傷も既に治っている。
「そろそろ、本気で戦ってみるかのぅ……鳳凰覚醒した時の力は、既に分かったからの……」
バロールの魔眼が青白く怪しく光り……再びバロールの姿が一真の視界から消えた。
「くっ!」
幻術を使って死角から攻撃するバロールに、凰の目の動体視力で辛くも躱す一真。
「何だ? さっきより早くなってる気がする……魔眼は2つのままなのに……どうなってんの?」
魔眼が青白い輝きを放ち始めてから、明らかにスピードが違う。
「目が青くなってから、魔眼の力が強くなっている気がする……凰の目だけでは対応出来ない!」
先程までは、バロールの姿が消えるような感覚しかなかった。
しかし今は、バロールの姿が一瞬2人に見え、更に攻撃が襲いかかってくるタイミングも早くなっている……
バロールの幻術に対応出来なくなってきた一真の左肩に、ついにクレイモアの刃が届く。
掠めただけの一撃だったが、鎧ではなくパーカーを着用していた一真の肩を斬るには充分だった。
白地のパーカーの生地が裂け、その周囲にうっすらと赤い染みが広がっていく。
「儂を相手に、凰の目だけでは相手にならんぞ? 鳳凰覚醒を使うんじゃな。あんまり待たされると、さっきのチビちゃんを襲ってしまうかもしれないしのぅ……」
作り笑いを浮かべるバロールは、余裕すら感じられる。
鳳凰覚醒した力ですら、一真が心を失うまでは耐えられるという自信があるのだろう。
そんなバロールを睨みながら、一真は鳳凰覚醒の修業をしていた頃を思い出していた。
凰の目とは全く違う、鳳凰覚醒を使っている時の恐怖……
自分自身が、闇の中へ突っ込んでいくような……まるでジェットコースターで闇の中へ飛び込んでいくような……自分では抵抗する事すら出来ず、闇に吸い込まれていくような……そんな感覚。
強敵と戦いながら、そんな恐怖とも闘わなければならない。
一真は無意識に、胸元で輝くティアから預かったペンダントを握り締める。
心を強くする魔法のお守り……ティアは、そう言っていた。
気持ちが和らいだ一真は、頭を整理する。
自分に必要なのは、心を失う恐怖じゃない……多くの人達の未来を繋げる為の覚悟と勇気だ……
ティアのペンダントは、一真の恐怖を少し和らげてくれた。
それで充分……一度覚悟が出来れば、もう戦える。
「行くぞバロール! これが……鳳凰覚醒の力だっ!」
再び、一真の背中に炎の翼が具現化した。
いや……先程よりも鮮明に……そして激しく……まるで命を燃やしているかのような、強い翼が現れる。
「まだ上があったか……じゃが、その攻撃を防げば、儂の勝ちじゃ!」
バロールの魔眼が青白く輝き……そして見開いた。
バロールも渾身の力で、魔眼の力を使う……が、炎の翼を得た一真のスピードは幻術すら通用しない。
いや……幻術にかかろうが関係ない……グラムに炎を纏わせて一閃!
一真の前方に、広範囲の炎の刃が走る!
「ぐおおぉぉぉぉぉ!」
バロールは躱す事も出来ず、炎の刃に斬り裂かれた身体は、焼かれながら壁に叩き付けられた。
「これで終わりだっ! バロール!」
「強いのぅ……じゃが、切り札があるのは、コチラも同じじゃ!」
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「なに……氷も操れるのか? けど、この程度の氷でっ!」
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「なっ……この一瞬で、どこに消えた?」
躱せる筈がない……氷の壁に遮られたのは、ほんの一瞬……1秒にも満たない時間だろう。
その一瞬で、身体ごと視界から消えるなど有り得ない。
「いやはや、凄い力じゃのう……まさか、人間相手に3つ目の魔眼を使う事になるとは思わんだったわ。さて……ここからは正真正銘、本気の戦いじゃの!」
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