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スラハト解放戦
続・スラハト解放戦5
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「私を倒す……か。それ程の実力者が、ベルヘイム軍にいるのか? いるなら、手合わせしたいモンだ」
余裕の表情でオルフェを見たスルトは、その腕を振り上げる。
スルトの後方……まだ火が立ち昇る場所から、一列に隊列を整えた騎士団が現れた。
鎧は全て朱色であり、火の中を進んで来るその姿は正に炎の騎士に見える。
「あれは……ムスペルの騎士……なのか?」
その朱色の鎧を見て、航太の言葉が……声が震えた。
以前、一度だけ戦った事のある相手………ランカスト将軍と供に戦ったにも関わらず、苦戦した相手……
苦戦……いや、命は助かったが、完全なる負け戦のイメージしかない。
その時は3人のムスペルの騎士に大苦戦したが、今は見た目だけでも30騎はいる。
(ちくしょう……身体が恐怖を感じてるのが分かっちまう! だが、あの頃からオレだって成長してる筈だ! 震えよ、止まってくれっ!)
航太は震えを抑えながら、必死に一歩目を踏み出す。
航太の視線の先……そこは、ムスペルの騎士が列を乱さずに前進しながらゼーク隊の騎士を槍で貫いている惨劇が繰り広げられていた。
力量が違い過ぎる……何の抵抗も出来ずに、命が奪われていく……
航太は、ムスペルの騎士の力を知っていながら、それでも足を前に踏み出すしかない。
その時、ムスペルの騎士とゼーク隊の騎士の間に、水の壁が突然作り出された。
「今のうちに、とりあえず距離をとって!」
智美によって作り出された水の壁によって前進を遮られたムスペル騎士の隙を突き、ゼーク隊の騎士は後退する。
しかし、一瞬躊躇したムスペルの騎士だったが、直ぐに前進を開始した。
躊躇わずに、水の壁に足を踏み入れていく。
「あの騎士……一体何なの? なんか、気味悪いね……」
「智ちゃんがロキに捕まってた時、私達は一回戦ってんだよね……ご想像通り、かなりヤバイ相手だよ……」
絵美も前回の戦いを思い出したのか、表情が緊張している。
「けど……やるしかねぇ! 一真を助ける為にも、ベルヘイムの騎士を助ける為にも、スラハトの人達を助ける為にも、神剣を持つオレ達がやるしかねぇんだ!」
航太は叫ぶと、走り出した。
「風の神剣を持つ騎士か……スリヴァルディを倒した男だったな。試させてもらうぞ!」
スルトはそう言うと、走って来る航太に向けてムスペルの騎士を1人差し向ける。
槍を構えたムスペルの騎士が、航太に迫って来た。
「1対1かよっ! 舐めやがって!」
近付くムスペルの騎士に、航太は鎌鼬を放つ。
その攻撃を簡単に躱し、ムスペルの騎士は航太に迫る。
「航ちゃん、相手が強いなら囲んで攻撃するよ! 卑怯とか、言ってられる場合じゃないしね」
航太のフォローに入ろうとした智美と、その後ろを追っていた絵美の横から、それぞれ1騎ずつムスペルの騎士が現れた。
「なに?」
「コイツら……1騎ずつで、私達を止めようとしてる……」
何故……と考える間もなく、ムスペルの騎士から鋭い突きが放たれる。
絵美は、その突きを辛うじて天沼矛で止めるが、その力強い一撃で後方に弾き飛ばされた。
「絵美! 今行くから、少し堪えて!」
ゼークが絵美の元へ行こうとするが、その目の前にもムスペルの騎士が1騎で立ち塞がる。
「スルト……何故、我々を試すような戦い方をする? 何を考えているんだ?」
「オルフェ、無駄口を叩いてる暇があるのか? 今の貴様の相手は、私ではないぞ?」
オルフェの横からも、ムスペルの騎士が迫る。
「ちっ! 何を考えているか分からんが……全員、目の前の敵を倒す事だけを考えろ!」
オルフェは、オートクレールを握り締めた。
何かがおかしい……オルフェは疑問を抱きながらも、ムスペルの騎士は考え事をしながら倒せる相手ではない。
一騎討ちを続ければ、数が多い敵の方が有利に違いないが、それでも一気に攻め込まれるよりはマシだろう……
とりあえずは、目の前の敵を退ける……絶望が押し寄せる中、オルフェはムスペルの騎士に斬りかかった……
余裕の表情でオルフェを見たスルトは、その腕を振り上げる。
スルトの後方……まだ火が立ち昇る場所から、一列に隊列を整えた騎士団が現れた。
鎧は全て朱色であり、火の中を進んで来るその姿は正に炎の騎士に見える。
「あれは……ムスペルの騎士……なのか?」
その朱色の鎧を見て、航太の言葉が……声が震えた。
以前、一度だけ戦った事のある相手………ランカスト将軍と供に戦ったにも関わらず、苦戦した相手……
苦戦……いや、命は助かったが、完全なる負け戦のイメージしかない。
その時は3人のムスペルの騎士に大苦戦したが、今は見た目だけでも30騎はいる。
(ちくしょう……身体が恐怖を感じてるのが分かっちまう! だが、あの頃からオレだって成長してる筈だ! 震えよ、止まってくれっ!)
航太は震えを抑えながら、必死に一歩目を踏み出す。
航太の視線の先……そこは、ムスペルの騎士が列を乱さずに前進しながらゼーク隊の騎士を槍で貫いている惨劇が繰り広げられていた。
力量が違い過ぎる……何の抵抗も出来ずに、命が奪われていく……
航太は、ムスペルの騎士の力を知っていながら、それでも足を前に踏み出すしかない。
その時、ムスペルの騎士とゼーク隊の騎士の間に、水の壁が突然作り出された。
「今のうちに、とりあえず距離をとって!」
智美によって作り出された水の壁によって前進を遮られたムスペル騎士の隙を突き、ゼーク隊の騎士は後退する。
しかし、一瞬躊躇したムスペルの騎士だったが、直ぐに前進を開始した。
躊躇わずに、水の壁に足を踏み入れていく。
「あの騎士……一体何なの? なんか、気味悪いね……」
「智ちゃんがロキに捕まってた時、私達は一回戦ってんだよね……ご想像通り、かなりヤバイ相手だよ……」
絵美も前回の戦いを思い出したのか、表情が緊張している。
「けど……やるしかねぇ! 一真を助ける為にも、ベルヘイムの騎士を助ける為にも、スラハトの人達を助ける為にも、神剣を持つオレ達がやるしかねぇんだ!」
航太は叫ぶと、走り出した。
「風の神剣を持つ騎士か……スリヴァルディを倒した男だったな。試させてもらうぞ!」
スルトはそう言うと、走って来る航太に向けてムスペルの騎士を1人差し向ける。
槍を構えたムスペルの騎士が、航太に迫って来た。
「1対1かよっ! 舐めやがって!」
近付くムスペルの騎士に、航太は鎌鼬を放つ。
その攻撃を簡単に躱し、ムスペルの騎士は航太に迫る。
「航ちゃん、相手が強いなら囲んで攻撃するよ! 卑怯とか、言ってられる場合じゃないしね」
航太のフォローに入ろうとした智美と、その後ろを追っていた絵美の横から、それぞれ1騎ずつムスペルの騎士が現れた。
「なに?」
「コイツら……1騎ずつで、私達を止めようとしてる……」
何故……と考える間もなく、ムスペルの騎士から鋭い突きが放たれる。
絵美は、その突きを辛うじて天沼矛で止めるが、その力強い一撃で後方に弾き飛ばされた。
「絵美! 今行くから、少し堪えて!」
ゼークが絵美の元へ行こうとするが、その目の前にもムスペルの騎士が1騎で立ち塞がる。
「スルト……何故、我々を試すような戦い方をする? 何を考えているんだ?」
「オルフェ、無駄口を叩いてる暇があるのか? 今の貴様の相手は、私ではないぞ?」
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「ちっ! 何を考えているか分からんが……全員、目の前の敵を倒す事だけを考えろ!」
オルフェは、オートクレールを握り締めた。
何かがおかしい……オルフェは疑問を抱きながらも、ムスペルの騎士は考え事をしながら倒せる相手ではない。
一騎討ちを続ければ、数が多い敵の方が有利に違いないが、それでも一気に攻め込まれるよりはマシだろう……
とりあえずは、目の前の敵を退ける……絶望が押し寄せる中、オルフェはムスペルの騎士に斬りかかった……
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