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スラハト解放戦
最後の魔法6
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「テューネ……デュランダルの記憶を見たか? もし見たのなら……聖遺物とデュランダルが、いかに重要かが……分かっただろう?」
ゼークの剣が胸に突き刺さったままのガヌロンは、魔導師の指輪の魔力で意識を保っていた。
しかし、流れ落ちる血の量が……生気を失い蒼ざめていく身体が……荒い呼吸が……
ガヌロンの死期が迫って来ている事を、否が応にも伝えていた。
「デュランダルの中で……ランカスト様とソフィーア様に会いました。そして、ガヌロン様の……ガヌロン様の真の目的も聞きました! でも……でも、まだ分からない! なんで、ランカスト様は犠牲にならなければいけなかったの! 聖遺物をデュランダルに与え、その力でミステルテインを掘り出さないとロキが倒せない事も分かった! でも……ソフィーア様が死んだ原因を作った男を倒す為だとしても、その為にランカスト様を犠牲にしたら……そんなの……また恨みが増すだけなのに……」
テューネの瞳から、我慢していた涙が流れ落ちる。
その涙を、血まみれの手でガヌロンは拭った。
「テューネ……すまなかった……な。だが、ソフィーアを殺されたの恨みだけでは……ないんだ。ロキは……この世界そのものを……滅ぼそうとしている。だからこそ……ミステルテインを唯一扱える……ヴァナディース姫の奪還と……デュランダルの覚醒は……ベルヘイムの……いや、人類の……最後の希望……いや、やり遂げねばならない……使命なんだ……」
ロキは知っている人間であれば、全く同じ人間になれる。
そう……姿を真似るだけではなく、その人本人になれるのだ。
つまり、ヴァナディース姫に変身すれば、ミステルテインを持ててしまう……
ロキがミステルテインを隠してしまえば、もはやロキを倒す手段は無くなる。
だからこそ、ガヌロンはロキに気付かれないようにデュランダルに聖遺物の力を付加させようという考えに至る……たとえ、どんなに嫌われようが、軽蔑されようが……
ガヌロンはゼークの剣が胸から抜けないように片手で抑え、もう片方の手はテューネの頬を撫でる。
「フィアナ騎士が……ベルヘイムの為に……戦っているのも……ロキの野望を……止める為だ……その最重要の使命が……テューネ……その肩に乗っているんだ……」
ガヌロンの血で頬を染めながら、テューネはランカストやソフィーアが自分に謝っていた理由が分かった。
大きな使命が込められたデュランダルの黒い刀身を、思わずテューネは見つめてしまう。
そこに、ゼークが息を切らして戻って来た。
「もう……急に走り出して……って、なんなの? この状況……」
額の汗を拭ったゼークは、テューネの頬に手を当てるガヌロンの姿に戸惑う。
まるで戦友が、自分の意思を托すような姿に見えたからだ。
「ゼーク……すまん……少し、テューネと話を……させてくれ……それが済んだら、止めを刺してくれて……構わん……」
ゴホッゴホッ!
咳と共に、ガヌロンの血が口から流れる。
「テューネ、お前は……それだけ貴重な……存在だ。だから……何でも1人で背負い込むな……お前の周りには、信用出来る……仲間が……沢山いるだろう? ゼークもいる……そして、同じ先祖を持つ……姉妹もいる……仲間を頼れ……お前1人が力を持っても……駄目だ……そして、今のデュランダルの力を……ロキに知られては……いけない……」
ガヌロンはそう言うと、魔導師の指輪をデュランダルの黒い刀身に当てた。
そして何かの呪文を唱えると魔導師の指輪が赤く輝き、デュランダルの刀身が黒から元の銀色に戻っていく。
「えっ? 何を……せっかくデュランダルに宿った力を……ガヌロン様、何をするんですか!」
「てゆーか……デュランダルを元に戻したのもそうだけど、同じ先祖を持つ姉妹って……テューネと同じ先祖って言ったら、ノア家って事になるんだけど?」
テューネもゼークも、ガヌロンが今の今まで憎き敵だった為、その息も絶え絶えな様子を見ても疑問が優先してしまう。
「ぐっ……テューネ……デュランダルは……デュランダルの力は……ロキに知られてはいけない。ただのカモフラージュだが……それでも、次にお前が力を欲するまでは……聖バジルの力は眠りにつく……だからこそ、仲間を……頼れ。智美と……絵美は……ノアの末裔……ミルティの……子孫だ……バロールから……その話を聞いた……時、儂は思った……運命の3女神が、降臨したと……ノアの力で……世界を……救うんだ……」
「なっ……智美と絵美が、ミルティの子孫……ノアの血はヨトゥンの天敵だから、様々な方法で抹殺されていた……でも、テューネ以外の生き残りがいるなんて……」
ガヌロンの言葉にゼークは言葉を失い、テューネは力を失ったデュランダルの柄を握った。
「智美様と絵美様が、私と同じ血を……やっぱり、水の力を持つ神器はトライデントが分離してしまった姿……なんですね?」
「そうだ……トライデントも、バロールの魔眼の力で3つに分かれた……だが、これは偶然……なんだろうか? 水の力を操り、回復の力で人々の死の運命を覆す双子の姉妹……そして、ヴァルキリアの如く大剣を操る女性騎士……伝承にある、運命の3姉妹が我々の前に現れて下さった……」
ガヌロンは、出血の影響で頭が朦朧としているのだろうか……少し饒舌になっている。
「ガヌロン……あなた……」
ゼークは、ガヌロンの瞳が朦朧となっていく様を見ていた……その指にはめれた魔導師の指輪から発する光は、少しずつ弱いものになっていた……
ゼークの剣が胸に突き刺さったままのガヌロンは、魔導師の指輪の魔力で意識を保っていた。
しかし、流れ落ちる血の量が……生気を失い蒼ざめていく身体が……荒い呼吸が……
ガヌロンの死期が迫って来ている事を、否が応にも伝えていた。
「デュランダルの中で……ランカスト様とソフィーア様に会いました。そして、ガヌロン様の……ガヌロン様の真の目的も聞きました! でも……でも、まだ分からない! なんで、ランカスト様は犠牲にならなければいけなかったの! 聖遺物をデュランダルに与え、その力でミステルテインを掘り出さないとロキが倒せない事も分かった! でも……ソフィーア様が死んだ原因を作った男を倒す為だとしても、その為にランカスト様を犠牲にしたら……そんなの……また恨みが増すだけなのに……」
テューネの瞳から、我慢していた涙が流れ落ちる。
その涙を、血まみれの手でガヌロンは拭った。
「テューネ……すまなかった……な。だが、ソフィーアを殺されたの恨みだけでは……ないんだ。ロキは……この世界そのものを……滅ぼそうとしている。だからこそ……ミステルテインを唯一扱える……ヴァナディース姫の奪還と……デュランダルの覚醒は……ベルヘイムの……いや、人類の……最後の希望……いや、やり遂げねばならない……使命なんだ……」
ロキは知っている人間であれば、全く同じ人間になれる。
そう……姿を真似るだけではなく、その人本人になれるのだ。
つまり、ヴァナディース姫に変身すれば、ミステルテインを持ててしまう……
ロキがミステルテインを隠してしまえば、もはやロキを倒す手段は無くなる。
だからこそ、ガヌロンはロキに気付かれないようにデュランダルに聖遺物の力を付加させようという考えに至る……たとえ、どんなに嫌われようが、軽蔑されようが……
ガヌロンはゼークの剣が胸から抜けないように片手で抑え、もう片方の手はテューネの頬を撫でる。
「フィアナ騎士が……ベルヘイムの為に……戦っているのも……ロキの野望を……止める為だ……その最重要の使命が……テューネ……その肩に乗っているんだ……」
ガヌロンの血で頬を染めながら、テューネはランカストやソフィーアが自分に謝っていた理由が分かった。
大きな使命が込められたデュランダルの黒い刀身を、思わずテューネは見つめてしまう。
そこに、ゼークが息を切らして戻って来た。
「もう……急に走り出して……って、なんなの? この状況……」
額の汗を拭ったゼークは、テューネの頬に手を当てるガヌロンの姿に戸惑う。
まるで戦友が、自分の意思を托すような姿に見えたからだ。
「ゼーク……すまん……少し、テューネと話を……させてくれ……それが済んだら、止めを刺してくれて……構わん……」
ゴホッゴホッ!
咳と共に、ガヌロンの血が口から流れる。
「テューネ、お前は……それだけ貴重な……存在だ。だから……何でも1人で背負い込むな……お前の周りには、信用出来る……仲間が……沢山いるだろう? ゼークもいる……そして、同じ先祖を持つ……姉妹もいる……仲間を頼れ……お前1人が力を持っても……駄目だ……そして、今のデュランダルの力を……ロキに知られては……いけない……」
ガヌロンはそう言うと、魔導師の指輪をデュランダルの黒い刀身に当てた。
そして何かの呪文を唱えると魔導師の指輪が赤く輝き、デュランダルの刀身が黒から元の銀色に戻っていく。
「えっ? 何を……せっかくデュランダルに宿った力を……ガヌロン様、何をするんですか!」
「てゆーか……デュランダルを元に戻したのもそうだけど、同じ先祖を持つ姉妹って……テューネと同じ先祖って言ったら、ノア家って事になるんだけど?」
テューネもゼークも、ガヌロンが今の今まで憎き敵だった為、その息も絶え絶えな様子を見ても疑問が優先してしまう。
「ぐっ……テューネ……デュランダルは……デュランダルの力は……ロキに知られてはいけない。ただのカモフラージュだが……それでも、次にお前が力を欲するまでは……聖バジルの力は眠りにつく……だからこそ、仲間を……頼れ。智美と……絵美は……ノアの末裔……ミルティの……子孫だ……バロールから……その話を聞いた……時、儂は思った……運命の3女神が、降臨したと……ノアの力で……世界を……救うんだ……」
「なっ……智美と絵美が、ミルティの子孫……ノアの血はヨトゥンの天敵だから、様々な方法で抹殺されていた……でも、テューネ以外の生き残りがいるなんて……」
ガヌロンの言葉にゼークは言葉を失い、テューネは力を失ったデュランダルの柄を握った。
「智美様と絵美様が、私と同じ血を……やっぱり、水の力を持つ神器はトライデントが分離してしまった姿……なんですね?」
「そうだ……トライデントも、バロールの魔眼の力で3つに分かれた……だが、これは偶然……なんだろうか? 水の力を操り、回復の力で人々の死の運命を覆す双子の姉妹……そして、ヴァルキリアの如く大剣を操る女性騎士……伝承にある、運命の3姉妹が我々の前に現れて下さった……」
ガヌロンは、出血の影響で頭が朦朧としているのだろうか……少し饒舌になっている。
「ガヌロン……あなた……」
ゼークは、ガヌロンの瞳が朦朧となっていく様を見ていた……その指にはめれた魔導師の指輪から発する光は、少しずつ弱いものになっていた……
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