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スラハト解放戦
最後の魔法5
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ユトムンダスにかけた魔法……それは、ユトムンダスを倒した者を監視する為の魔法……ロキがデュランダルを監視する為に、その魔法を騎士見習いのランカストにかかるように仕向けた。
ロキはベルヘイム12騎士の誰かにユトムンダスを倒させ、ベルヘイムの内情も含めて監視しようとしていたのだが、ガヌロンの英断により潰える事になる。
そう……全ては偶然だった。
ガヌロンが騎士見習いとヨトゥンの将の一騎打ちという不自然な状況に、ベルヘイム騎士を待機させた事も……兵を村から引き離した状況でレンヴァル村を襲えば、12騎士クラスが短騎でユトムンダスに戦いを挑むだろうというロキの思惑も……そしてソフィーアの血が聖遺物となり、その赤い光で魔力が薄まり直ぐに発動出来なかった事も……
その偶然を見極めて、ガヌロンは走った。
何かの魔法が……強い魔力が、ユトムンダスから見習い騎士に移されようとしている。
皇の目の……ノアの少女を守り、娘が大好きだと言っていた男……そして、レンヴァル村を救った英雄……
この状況を見ている者を欺き、更に騎士見習いを守る為に、ガヌロンはランカストを押し退けソフィーアとの間に割って入った。
その魔力がガヌロンに入り込んで来て、魔法に深い知識を持つガヌロンは直ぐに気付く。
監視の魔法……その時、ガヌロンは全てを欺く事に決めた。
死に行く娘に嫌われようが、ベルヘイム中の人間に蔑まれようが、自分の大好きだった家族を奪い、ベルヘイムを……世界を崩壊させようとしている者を許さない……
ガヌロンは、その決意で歩み始める。
ロンスヴォで聖ドニの力がデュランダルに付加された時、その光に触れて監視の魔法は一度ガヌロンから解かれていた。
それに気付いたロキは、智美に監視の魔法をかける。
その場でガヌロンを殺すより、智美から入る情報でガヌロンが余計な事を言いそうになったら殺せばいいとロキは考えたのだろう。
ガヌロンは、自分以外の者に監視の魔法が移った時の事も考えていた。
慰霊碑の花である。
ビューレイストから漂うロキの魔力の一部を花に移し、智美からロキの魔力を持つ花に監視の魔法を移し、その魔法をシェルクードに移した。
魔法は、本人の魔力が宿る所には戻す事が出来る……そして何故か智美から魔力が発生しておらず、ロキの魔力が定着しなかった為に、花へ監視の魔法を移す事に成功する。
それに智美は軍の重要人物であり、何かあれば軍を上げて助けてしまう事が前例があり分かっていた。
魔法を熟知するガヌロンは、一兵卒でありランカスト信者であるシェルクードに目を付け、監視の魔法の宿主にする事を決める。
そして、記憶を失わせてベルヘイムと関係無い場所へ……
自分はそのタイミングで、7国の騎士が奪われたとされる聖バジルの血が眠る城、コナハトへ……
ガヌロンの魔力にはロキの監視の魔法が長年に渡り影響を与えていた為、自分の魔法を大量に使えばロキに感づかれてしまう。
そこで、魔導師の指輪を使っていた……
更には、聖バジルの血の力を付与された時、ガヌロンはバロールの魔眼による監視も受ける事になる。
胸に写し出される魔眼のコピーから流れる映像が、バロールの頭に届いてしまう。
ガヌロンはゼークの剣で魔眼のコピーを貫かせ、自分の血脈を止めさせた瞬間、火の玉の1つに自分の魔力を発動させ、聖バジルの血を混ぜてデュランダルに向けて放った。
魔眼のコピーが無く、自分の血脈が止まっていれば、誰にも気付かれずにデュランダルに力を送る事が出来る。
デュランダルが聖遺物で力が増す事は、ヨトゥン内では知識が豊富なロキぐらいしか知らない筈だからだ。
「これでバロールにもロキにも気付かれずに、聖バジルの力がデュランダルに宿った……」
「ランカスト様……話は分かりました。でも、ここまでする必要があったんですか??デュランダルのパワーアップだけの為に、ランカスト様とガヌロンが……いえ、ガヌロン様が犠牲になるなんて……」
デュランダルに聖バジルの力を付加すれば、その力が上がる事も分かる。
だが、それはレンヴァル村に眠るミステルテインを掘り出す為に必要……ロキにも有利に働いてしまうのではないかと、不安が過ぎった。
「ミステルテインは、ロキを殺す為に必要な剣だ。そしてロキはユトムンダスを差し向け、ソフィーアが殺された原因を作った男だ。だからこそ、ロキに気付かれないように聖遺物をデュランダルに宿す事が必要だったんだ……」
「7国の騎士の持ち物は、バロールに負けた時に奪われているの。でも、バロールが聖バジルの血を保管しているかは分からなかった……お父さんは焦っていたのかもしれない。ランカストを殺してしまった罪悪感があったのかも……」
ソフィーアの言葉を聞いているうちに、ランカストが死んでしまったシーンがテューネの頭の中で再生される。
そうだ……ガヌロンの仕業で、ランカスト様は……
「不完全なデュランダルでレンヴァル村の大地が割れるなんて、ロキは本気で考えてはなかったんだろうな……私から皇の目を持つテューネに、デュランダルの所有権を移したかったんだろう……」
ランカストは話を続けるが、テューネは怒りでそれどころではなかった。
そんなテューネを様子を見て、ソフィーアは肘でランカストの腕を突く。
「ん??ああ……そうか。ガヌロン殿は、私を救おうとはしてくれていたんだ。わざわざフェルグスに捕まって、少しでも私の生存確率を上げようとしていた。自分の身が危険だと分かっていながらな……」
「私も、今まで信じられなかった……聖バジルの力と共に、お父さんの記憶が流れて来るまでは……だから、テューネが信じれないのは無理ないわ……」
ソフィーアは、優しくテューネを抱きしめる。
「ガヌロン殿の知略は、ベルヘイム1だ。ロキが変身したソフィーアの言葉を……指示を忠実に熟しながら、ロキに気付かれないように……我々にも気付かれないように、私やオルフェ……12騎士を使って、ベルヘイムを守っていた。あの時、もし私に監視の魔法がかかっていたら、テューネもデュランダルも今頃はロキの元に……」
ランカストの言葉には、ガヌロンをサポートしきれなかった悔しさが滲み出ていた。
「でもね、テューネ。私達は、謝らなければいけない。私達が繋いで来たバトンは、テューネに預けるしかないの……デュランダルでレンヴァル村の大地を穿ち、ロキを倒す……その役目を、テューネにお願いしなくてはいけない。とても危険な役目を背負わせる事になるわ……」
「デュランダルの力が上がれば、テューネに掛かる負担は確実に増える。それが分かっていながら、それでも頼るしかない……」
ソフィーアとランカストの言葉に、テューネは頷く。
「そろそろ時間だ……聖遺物の力が、デュランダルに同化する。テューネ、皇の目を使い過ぎるな……力は強大だが、リスクが高過ぎる」
「私達3人の力が……お父さんの想いも、デュランダルには宿っているわ……私達の戦いに巻き込んでしまったけど、お願いね……テューネ。けど、信じてるよ……ロキを倒して、ヨトゥンを退けて……平和な世界を、テューネと一緒にデュランダルの中から見れるって……」
そう言い残し、ランカストとソフィーアの姿は黒い光の中へと吸い込まれるように消えてしまった。
「ランカスト様……ソフィーア様……私は、巻き込まれたとか、危険な役目だとか、そんな事は思ってないですよ……ロキは、お2人を弄んだ憎き相手……必ず私が討ちます。デュランダルの中から見ていて下さい……」
2人が消えた黒い光が少しずつ晴れて行き、テューネの視線に地面に突き刺さったデュランダルが見えてくる。
刀身が黒く輝き、柄は黄金に光っていた。
その黄金の柄に、テューネは手を伸ばす。
デュランダルの柄を握った瞬間、今まで感じた事のない程の力がテューネの身体に流れ込んできた。
その力に逆らわないように、テューネはデュランダルを大地から引き抜こうと力を込める。
すると、デュランダルの黒い刀身の中央に紅いルーン文字が縦に描かれていき、円形に大地が割れた。
「きゃああぁぁ!!」
デュランダルを大地から引き抜いただけで、その大地が割れた事にも驚いたテューネだが、近くで聞こえた女性の叫び声にも驚く。
「ゼーク……様??」
テューネの視線の先には、円形に割れた大地のギリギリ外側でしゃがむゼークの姿があった。
「ゼーク様……じゃ、ないでしょ!!心配して見に来たのに、随分と元気そうじゃない……それにしても、デュランダルの力……凄いわね……」
ゼークは円形に割れた大地を、確認するように眺めている。
「ゼーク様、ガヌロン様は??状況は、どうなっていますか??」
「そうだ、ガヌロン!!なんか話あるとかって言ってたけど、置いてきちゃった!!私が剣を突き刺したから、重症の筈だけど……」
テューネは、慌てて視線をガヌロンに向けた。
胸をゼークの剣で貫かれている姿を見て、テューネはガヌロンの側に行く為に全力で走り出していた……
ロキはベルヘイム12騎士の誰かにユトムンダスを倒させ、ベルヘイムの内情も含めて監視しようとしていたのだが、ガヌロンの英断により潰える事になる。
そう……全ては偶然だった。
ガヌロンが騎士見習いとヨトゥンの将の一騎打ちという不自然な状況に、ベルヘイム騎士を待機させた事も……兵を村から引き離した状況でレンヴァル村を襲えば、12騎士クラスが短騎でユトムンダスに戦いを挑むだろうというロキの思惑も……そしてソフィーアの血が聖遺物となり、その赤い光で魔力が薄まり直ぐに発動出来なかった事も……
その偶然を見極めて、ガヌロンは走った。
何かの魔法が……強い魔力が、ユトムンダスから見習い騎士に移されようとしている。
皇の目の……ノアの少女を守り、娘が大好きだと言っていた男……そして、レンヴァル村を救った英雄……
この状況を見ている者を欺き、更に騎士見習いを守る為に、ガヌロンはランカストを押し退けソフィーアとの間に割って入った。
その魔力がガヌロンに入り込んで来て、魔法に深い知識を持つガヌロンは直ぐに気付く。
監視の魔法……その時、ガヌロンは全てを欺く事に決めた。
死に行く娘に嫌われようが、ベルヘイム中の人間に蔑まれようが、自分の大好きだった家族を奪い、ベルヘイムを……世界を崩壊させようとしている者を許さない……
ガヌロンは、その決意で歩み始める。
ロンスヴォで聖ドニの力がデュランダルに付加された時、その光に触れて監視の魔法は一度ガヌロンから解かれていた。
それに気付いたロキは、智美に監視の魔法をかける。
その場でガヌロンを殺すより、智美から入る情報でガヌロンが余計な事を言いそうになったら殺せばいいとロキは考えたのだろう。
ガヌロンは、自分以外の者に監視の魔法が移った時の事も考えていた。
慰霊碑の花である。
ビューレイストから漂うロキの魔力の一部を花に移し、智美からロキの魔力を持つ花に監視の魔法を移し、その魔法をシェルクードに移した。
魔法は、本人の魔力が宿る所には戻す事が出来る……そして何故か智美から魔力が発生しておらず、ロキの魔力が定着しなかった為に、花へ監視の魔法を移す事に成功する。
それに智美は軍の重要人物であり、何かあれば軍を上げて助けてしまう事が前例があり分かっていた。
魔法を熟知するガヌロンは、一兵卒でありランカスト信者であるシェルクードに目を付け、監視の魔法の宿主にする事を決める。
そして、記憶を失わせてベルヘイムと関係無い場所へ……
自分はそのタイミングで、7国の騎士が奪われたとされる聖バジルの血が眠る城、コナハトへ……
ガヌロンの魔力にはロキの監視の魔法が長年に渡り影響を与えていた為、自分の魔法を大量に使えばロキに感づかれてしまう。
そこで、魔導師の指輪を使っていた……
更には、聖バジルの血の力を付与された時、ガヌロンはバロールの魔眼による監視も受ける事になる。
胸に写し出される魔眼のコピーから流れる映像が、バロールの頭に届いてしまう。
ガヌロンはゼークの剣で魔眼のコピーを貫かせ、自分の血脈を止めさせた瞬間、火の玉の1つに自分の魔力を発動させ、聖バジルの血を混ぜてデュランダルに向けて放った。
魔眼のコピーが無く、自分の血脈が止まっていれば、誰にも気付かれずにデュランダルに力を送る事が出来る。
デュランダルが聖遺物で力が増す事は、ヨトゥン内では知識が豊富なロキぐらいしか知らない筈だからだ。
「これでバロールにもロキにも気付かれずに、聖バジルの力がデュランダルに宿った……」
「ランカスト様……話は分かりました。でも、ここまでする必要があったんですか??デュランダルのパワーアップだけの為に、ランカスト様とガヌロンが……いえ、ガヌロン様が犠牲になるなんて……」
デュランダルに聖バジルの力を付加すれば、その力が上がる事も分かる。
だが、それはレンヴァル村に眠るミステルテインを掘り出す為に必要……ロキにも有利に働いてしまうのではないかと、不安が過ぎった。
「ミステルテインは、ロキを殺す為に必要な剣だ。そしてロキはユトムンダスを差し向け、ソフィーアが殺された原因を作った男だ。だからこそ、ロキに気付かれないように聖遺物をデュランダルに宿す事が必要だったんだ……」
「7国の騎士の持ち物は、バロールに負けた時に奪われているの。でも、バロールが聖バジルの血を保管しているかは分からなかった……お父さんは焦っていたのかもしれない。ランカストを殺してしまった罪悪感があったのかも……」
ソフィーアの言葉を聞いているうちに、ランカストが死んでしまったシーンがテューネの頭の中で再生される。
そうだ……ガヌロンの仕業で、ランカスト様は……
「不完全なデュランダルでレンヴァル村の大地が割れるなんて、ロキは本気で考えてはなかったんだろうな……私から皇の目を持つテューネに、デュランダルの所有権を移したかったんだろう……」
ランカストは話を続けるが、テューネは怒りでそれどころではなかった。
そんなテューネを様子を見て、ソフィーアは肘でランカストの腕を突く。
「ん??ああ……そうか。ガヌロン殿は、私を救おうとはしてくれていたんだ。わざわざフェルグスに捕まって、少しでも私の生存確率を上げようとしていた。自分の身が危険だと分かっていながらな……」
「私も、今まで信じられなかった……聖バジルの力と共に、お父さんの記憶が流れて来るまでは……だから、テューネが信じれないのは無理ないわ……」
ソフィーアは、優しくテューネを抱きしめる。
「ガヌロン殿の知略は、ベルヘイム1だ。ロキが変身したソフィーアの言葉を……指示を忠実に熟しながら、ロキに気付かれないように……我々にも気付かれないように、私やオルフェ……12騎士を使って、ベルヘイムを守っていた。あの時、もし私に監視の魔法がかかっていたら、テューネもデュランダルも今頃はロキの元に……」
ランカストの言葉には、ガヌロンをサポートしきれなかった悔しさが滲み出ていた。
「でもね、テューネ。私達は、謝らなければいけない。私達が繋いで来たバトンは、テューネに預けるしかないの……デュランダルでレンヴァル村の大地を穿ち、ロキを倒す……その役目を、テューネにお願いしなくてはいけない。とても危険な役目を背負わせる事になるわ……」
「デュランダルの力が上がれば、テューネに掛かる負担は確実に増える。それが分かっていながら、それでも頼るしかない……」
ソフィーアとランカストの言葉に、テューネは頷く。
「そろそろ時間だ……聖遺物の力が、デュランダルに同化する。テューネ、皇の目を使い過ぎるな……力は強大だが、リスクが高過ぎる」
「私達3人の力が……お父さんの想いも、デュランダルには宿っているわ……私達の戦いに巻き込んでしまったけど、お願いね……テューネ。けど、信じてるよ……ロキを倒して、ヨトゥンを退けて……平和な世界を、テューネと一緒にデュランダルの中から見れるって……」
そう言い残し、ランカストとソフィーアの姿は黒い光の中へと吸い込まれるように消えてしまった。
「ランカスト様……ソフィーア様……私は、巻き込まれたとか、危険な役目だとか、そんな事は思ってないですよ……ロキは、お2人を弄んだ憎き相手……必ず私が討ちます。デュランダルの中から見ていて下さい……」
2人が消えた黒い光が少しずつ晴れて行き、テューネの視線に地面に突き刺さったデュランダルが見えてくる。
刀身が黒く輝き、柄は黄金に光っていた。
その黄金の柄に、テューネは手を伸ばす。
デュランダルの柄を握った瞬間、今まで感じた事のない程の力がテューネの身体に流れ込んできた。
その力に逆らわないように、テューネはデュランダルを大地から引き抜こうと力を込める。
すると、デュランダルの黒い刀身の中央に紅いルーン文字が縦に描かれていき、円形に大地が割れた。
「きゃああぁぁ!!」
デュランダルを大地から引き抜いただけで、その大地が割れた事にも驚いたテューネだが、近くで聞こえた女性の叫び声にも驚く。
「ゼーク……様??」
テューネの視線の先には、円形に割れた大地のギリギリ外側でしゃがむゼークの姿があった。
「ゼーク様……じゃ、ないでしょ!!心配して見に来たのに、随分と元気そうじゃない……それにしても、デュランダルの力……凄いわね……」
ゼークは円形に割れた大地を、確認するように眺めている。
「ゼーク様、ガヌロン様は??状況は、どうなっていますか??」
「そうだ、ガヌロン!!なんか話あるとかって言ってたけど、置いてきちゃった!!私が剣を突き刺したから、重症の筈だけど……」
テューネは、慌てて視線をガヌロンに向けた。
胸をゼークの剣で貫かれている姿を見て、テューネはガヌロンの側に行く為に全力で走り出していた……
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