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スラハト解放戦
最後の魔法4
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「ゼーク……キミの剣の柄に刻まれている炎の紋章……それは、ゼークの家系に伝わる剣の……7国の騎士の時代から伝わる物……それが、ただの柄である筈はない……アムルサイトという名前と関連がある……」
息も絶え絶えに、ガヌロンはゼークに語りかける。
「ちょっと……そんな事より、テューネは無事なの??監視されてたか何だか知らないけど、悠長に話している場合じゃないでしょ??」
ゼークは、アムルサイトという自分の名前にコンプレックスを持っていた。
そもそも名前っぽくはないし、可愛くもない。
女性としては、もう少し可愛い名前をつけて欲しかったという思いもある。
なので、ゼークというファミリー・ネームで呼んでもらうようにしていた。
その名前の秘密が分かる……ゼークにとって、最も気になる事の1つであったが、それよりも自分が助けられなかったテューネの状態が気になる。
ガヌロンがヨトゥン側に監視されていて攻撃を仕掛けていたのなら、タイミング的に魔法を外す事が出来たのではないかと薄い期待を抱いてしまう。
「テューネか……儂の考えが間違っていなければ、無事の筈だ……」
ガヌロンはテューネの跪いて位置を指差し、その動きに合わせてゼークは振り返る。
テューネが跪いていた場所には黒い光の球体があり、その姿を隠していた。
光が黒い……その表現が合っているのかは分からないが、ゼークにはそう見える。
「あの黒い光は……何??テューネは無事なの??」
闇のような暗さと、何故か光を感じる黒に、ゼークは焦りを感じた。
あの中に居るテューネは無事なのか……
ガヌロンを無視して、ゼークは黒い光の球体を目指して走り出した……
火の玉に囲まれていたテューネは、自分の死を感じていた。
助けてっ!!
そう叫べば、ゼークは自らの命を顧みないで助けに来ただろう。
ただ、助けに来てもらっても全方位を火の玉に囲まれている状態では、ゼークも自分も何も出来ずに死ぬだけだという事は分かりきっていた。
ならば、ゼークにはガヌロンを討って欲しい……
テューネは動かなくなった自分の身体に不甲斐無さを感じながらも、ゼークを助けられた事には満足していた。
「ランカスト様、ソフィーア様……ごめんなさい。約束……守れそうにありません。でも、きっとゼーク様が私の後を継いで戦ってくれると信じています。だから……そちらに行く事をお許し下さい……」
テューネは瞳を閉じて、デュランダルを抱きしめる。
そして、灼熱の如き熱波が身体に伝わり始めた。
ドオオオォォォォォォン!!
爆音が耳元で聞こえ、身体を流れる血液が沸騰でもしているかのような熱さを感じた後、目を閉じていても分かるぐらいの闇の中にテューネは放り出された。
ああ……死んだんだな……そう感じたテューネの耳元で、聞き覚えのある懐かしい大好きな声が、囁くように小さく聞こえて来る。
「テューネ……目を開けて……」
その声に導かれるように、テューネの瞼がゆっくりと開いた。
開いた瞳に、大好きだった人達の顔が映し出される。
視線の先には、ランカストとソフィーアの姿があったのだ。
ああ……やっぱり、死んだんだな……
そう思うと、テューネは少し気分が楽になった。
「テューネ、私達との約束……私とランカストの想いを継いで戦っていてくれて、ありがとう……」
「ソフィーア様……ごめんなさい。私……志半ばで倒れちゃった……でも、ガヌロンはゼーク様が討ってくれた……これで、お2人の魂も救われる……」
残念な気持ちはあるが、それでもガヌロンはゼークが討ってくれているだろうという確信が、テューネを少し安心させる。
「テューネ、あの時……ユトムンダスを討った、あの時……お前を助けて……助けられて、本当に良かった。だが、辛い思いをさせている……今までも……そして、これからも……」
テューネは頭を撫でてくれるランカストの大きな手に、安心感と懐かしさと共に、疑問を抱く。
「ランカスト様……私は死んだんですよ??だから、こうしてお2人と話せている。だから、もう辛い思いなんて……」
「テューネ、あなたは死んでいないわ……今、デュランダルには、お父さんが聖バジルの力を付加したの。だから少しだけ、デュランダルが知っている情報をあなたに見せているだけ。そう……私とランカストの記憶から抽出した情報を……」
ソフィーアの言葉に、テューネは混乱していた。
ガヌロンが聖遺物を??
裏切り者の筈で、ランカストが殺された原因を作った男……
そんな奴が、デュランダルの力になる聖遺物を運んで来た??
「混乱するのも無理はない……だがガヌロン殿は、最初から私と同じ志で戦ってきた。我々が仲違いをしているように見せたのも、私を策に嵌めたのも、全てはこの時の為だ」
頭を抱えるテューネに、優しい声でランカストが語りかける。
「デュランダルはレンヴァル村に眠る神剣、ミステルテインを守る大地を割る為に必要なんだ……だが、デュランダルは聖遺物の力を付加していかないと力が発揮できない。そこで、ロキは人間にデュランダルを預けて聖遺物を集めさせようとした。 聖遺物は、心が清らかな者の元に集まると言われている……だから、2つもの聖遺物がソフィーアの元に集まったのだろう……」
「その血が聖遺物になってしまうぐらいの聖なる心の持ち主なんだから、それなら聖遺物がソフィーア様の元に集まるのは当たり前ですね……」
ランカストとテューネの話を聞いているソフィーアの顔が、自然と赤く染まっていく。
「ちょっと……本人を目の前にして、あんまり恥ずかしい事を言わないで……それに時間が無いから、話を進めて……」
赤い顔で手を伸ばして話を促すソフィーアの姿は、とても可愛く見えた。
なんか、幸せな時間だなぁ……テューネは、この時間が永遠に続けばいいと思ってしまう。
ソフィーアの姿を見て笑っていたランカストは、テューネにも少し笑いかけてから口を開く。
「ガヌロン殿は、騎士見習いの私如きがユトムンダスを倒せた事に疑問を感じていた……いや、そもそも騎士見習いがヨトゥンの将と一騎打ちを出来ている状況に疑問を持っていた。だからあの時、ベルヘイムの騎士達を待機させて、状況把握に努めた。そして、ロキの存在とユトムンダスにかかった魔力に気付いたんだ……」
そしてランカストは、話を始めた……
息も絶え絶えに、ガヌロンはゼークに語りかける。
「ちょっと……そんな事より、テューネは無事なの??監視されてたか何だか知らないけど、悠長に話している場合じゃないでしょ??」
ゼークは、アムルサイトという自分の名前にコンプレックスを持っていた。
そもそも名前っぽくはないし、可愛くもない。
女性としては、もう少し可愛い名前をつけて欲しかったという思いもある。
なので、ゼークというファミリー・ネームで呼んでもらうようにしていた。
その名前の秘密が分かる……ゼークにとって、最も気になる事の1つであったが、それよりも自分が助けられなかったテューネの状態が気になる。
ガヌロンがヨトゥン側に監視されていて攻撃を仕掛けていたのなら、タイミング的に魔法を外す事が出来たのではないかと薄い期待を抱いてしまう。
「テューネか……儂の考えが間違っていなければ、無事の筈だ……」
ガヌロンはテューネの跪いて位置を指差し、その動きに合わせてゼークは振り返る。
テューネが跪いていた場所には黒い光の球体があり、その姿を隠していた。
光が黒い……その表現が合っているのかは分からないが、ゼークにはそう見える。
「あの黒い光は……何??テューネは無事なの??」
闇のような暗さと、何故か光を感じる黒に、ゼークは焦りを感じた。
あの中に居るテューネは無事なのか……
ガヌロンを無視して、ゼークは黒い光の球体を目指して走り出した……
火の玉に囲まれていたテューネは、自分の死を感じていた。
助けてっ!!
そう叫べば、ゼークは自らの命を顧みないで助けに来ただろう。
ただ、助けに来てもらっても全方位を火の玉に囲まれている状態では、ゼークも自分も何も出来ずに死ぬだけだという事は分かりきっていた。
ならば、ゼークにはガヌロンを討って欲しい……
テューネは動かなくなった自分の身体に不甲斐無さを感じながらも、ゼークを助けられた事には満足していた。
「ランカスト様、ソフィーア様……ごめんなさい。約束……守れそうにありません。でも、きっとゼーク様が私の後を継いで戦ってくれると信じています。だから……そちらに行く事をお許し下さい……」
テューネは瞳を閉じて、デュランダルを抱きしめる。
そして、灼熱の如き熱波が身体に伝わり始めた。
ドオオオォォォォォォン!!
爆音が耳元で聞こえ、身体を流れる血液が沸騰でもしているかのような熱さを感じた後、目を閉じていても分かるぐらいの闇の中にテューネは放り出された。
ああ……死んだんだな……そう感じたテューネの耳元で、聞き覚えのある懐かしい大好きな声が、囁くように小さく聞こえて来る。
「テューネ……目を開けて……」
その声に導かれるように、テューネの瞼がゆっくりと開いた。
開いた瞳に、大好きだった人達の顔が映し出される。
視線の先には、ランカストとソフィーアの姿があったのだ。
ああ……やっぱり、死んだんだな……
そう思うと、テューネは少し気分が楽になった。
「テューネ、私達との約束……私とランカストの想いを継いで戦っていてくれて、ありがとう……」
「ソフィーア様……ごめんなさい。私……志半ばで倒れちゃった……でも、ガヌロンはゼーク様が討ってくれた……これで、お2人の魂も救われる……」
残念な気持ちはあるが、それでもガヌロンはゼークが討ってくれているだろうという確信が、テューネを少し安心させる。
「テューネ、あの時……ユトムンダスを討った、あの時……お前を助けて……助けられて、本当に良かった。だが、辛い思いをさせている……今までも……そして、これからも……」
テューネは頭を撫でてくれるランカストの大きな手に、安心感と懐かしさと共に、疑問を抱く。
「ランカスト様……私は死んだんですよ??だから、こうしてお2人と話せている。だから、もう辛い思いなんて……」
「テューネ、あなたは死んでいないわ……今、デュランダルには、お父さんが聖バジルの力を付加したの。だから少しだけ、デュランダルが知っている情報をあなたに見せているだけ。そう……私とランカストの記憶から抽出した情報を……」
ソフィーアの言葉に、テューネは混乱していた。
ガヌロンが聖遺物を??
裏切り者の筈で、ランカストが殺された原因を作った男……
そんな奴が、デュランダルの力になる聖遺物を運んで来た??
「混乱するのも無理はない……だがガヌロン殿は、最初から私と同じ志で戦ってきた。我々が仲違いをしているように見せたのも、私を策に嵌めたのも、全てはこの時の為だ」
頭を抱えるテューネに、優しい声でランカストが語りかける。
「デュランダルはレンヴァル村に眠る神剣、ミステルテインを守る大地を割る為に必要なんだ……だが、デュランダルは聖遺物の力を付加していかないと力が発揮できない。そこで、ロキは人間にデュランダルを預けて聖遺物を集めさせようとした。 聖遺物は、心が清らかな者の元に集まると言われている……だから、2つもの聖遺物がソフィーアの元に集まったのだろう……」
「その血が聖遺物になってしまうぐらいの聖なる心の持ち主なんだから、それなら聖遺物がソフィーア様の元に集まるのは当たり前ですね……」
ランカストとテューネの話を聞いているソフィーアの顔が、自然と赤く染まっていく。
「ちょっと……本人を目の前にして、あんまり恥ずかしい事を言わないで……それに時間が無いから、話を進めて……」
赤い顔で手を伸ばして話を促すソフィーアの姿は、とても可愛く見えた。
なんか、幸せな時間だなぁ……テューネは、この時間が永遠に続けばいいと思ってしまう。
ソフィーアの姿を見て笑っていたランカストは、テューネにも少し笑いかけてから口を開く。
「ガヌロン殿は、騎士見習いの私如きがユトムンダスを倒せた事に疑問を感じていた……いや、そもそも騎士見習いがヨトゥンの将と一騎打ちを出来ている状況に疑問を持っていた。だからあの時、ベルヘイムの騎士達を待機させて、状況把握に努めた。そして、ロキの存在とユトムンダスにかかった魔力に気付いたんだ……」
そしてランカストは、話を始めた……
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