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スラハト解放戦
スラハト解放戦3
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「くそっ!!ここまで、結局ルナを見つけられなかった……ヨトゥンに捕まったとか、ないよな……」
「航太……ルナを心配する気持ちは分かるけど、今は戦いに集中しないと……一真を追ったならコナハト城を目指すだろうから、ここまでで出会ってないなら、違う方に行ったんだよ。今頃、ホワイト・ティアラ隊に戻ってるんじゃない??方角間違えたーとか言って……」
ゼークの言葉が本心でない事は、その話し方から理解出来た。
今はルナの心配より、作戦の成功の方が重要だと言いたいのだろう……
それでも航太の頭の片隅に、見捨てなければいけないという後悔が残ってしまっている。
しかし、そんなルナの事を忘れてしまうような出来事が起きてしまう。
ゴオオォォン!!
ユングヴィの破壊した城門からスラハトに入ろうとしていた航太やゼークの目の前で、何かの爆発音の後に城壁が崩れ落ちた。
「うおっ!!!」
城壁の側にいた航太は突然の事態に驚きながらも、降ってくる瓦礫を冷静に躱す。
そして自分の引き連れている兵達の無事を確認する為、状況を把握しようと周りを見渡すと、大きな水の球が見える。
智美と絵美の周囲にいた兵は、草薙剣と天叢雲剣によって作り出された水球に覆われ、瓦礫の被害を免れていた。
それでも救えなかった兵は多く、瓦礫の直撃を受け倒れてる兵もいる。
崩れた城壁の下敷きになった兵も数知れず、城門付近の大地は血で赤く染められていた。
「まじか……なんだよ……これ……」
その惨状に、航太は言葉を失う。
「ぐわぁぁぁぁ!!」
更に城壁の内側から、人々の叫び声が聞こえる。
視線を地面から空に変えた航太の目に飛び込んできたのは、血とは違う赤だった。
「空が……燃えてる……」
航太の言葉通り……まるで夕方になったかのように、城壁の内側から赤が空を染める。
「航太……スラハトが燃えてるよ!!」
ゼークの悲痛な叫びが、航太の耳に届く。
だが、同時に襲いかかる悲劇に、航太は対応しなければならなかった。
「わああぁぁぁ!!」
立ち竦むベルヘイム兵に追い撃ちをかけるように、ヨトゥン軍が城壁の両側から現れる。
挟撃されるような形になったベルヘイム軍は、指揮系統が乱れており直ぐに対応が出来ない。
戦意を喪失しているベルヘイム軍は、成す統べ無く次々とヨトゥン兵に倒されていく。
指揮する立場の航太も混乱している為、中軍は組織だった動きも出来ず、更には力でも勝るヨトゥン兵に成す術もなかった。
混乱した中軍は、もはや烏合の衆である。
「航太、何をしている!!このままじゃ全滅するぞ!!」
今までにない危機的状況に混乱する航太の背後から、鬼気迫る声が耳を貫く。
一瞬身体を硬直させた航太は、後ろを振り返った。
智美が懸命に負傷兵の治療をしている、更にその先……
怒涛の如き勢いで、オルフェとテューネが突っ込んで来るのが見えた。
「アルパスター将軍の隊が、右翼のヨトゥン兵を叩く!!ゼークは中軍を纏めて、左翼にあたるんだ!!」
混乱する航太に代わって叫びながら指示を送るオルフェは、そのまま城壁まで馬を走らせる。
「うわっ!!なんだ!!」
疾風の如く自分に迫って来るオルフェの鬼の形相と勢いに驚き、航太は思わず横に跳んで馬の進行方向から逸れるように動く。
「航太、テューネを風の力で城壁の上まで飛ばすんだ!!」
横に逸れた航太を横目に、オルフェとテューネは開いたスペースに馬を飛び込ませる。
「んな無茶な……何メートルあると思ってんスか??着地の時に死にますよ!!」
崩れたとはいえ、まだ10m以上ある城壁の上まで飛んで、城壁の上に着地できればいいが、着地したところで降りる手段は無い。
城壁の上まで飛んだら、着地の時に死んでしまう事は目に見えていた。
「航太様、私なら大丈夫です!!早く飛ばして下さい!!1人でも多くの人を助けないと……」
そう言うと、テューネは航太の返答を聞く前に馬から飛んだ。
走る馬から飛んだテューネは、そのまま瓦礫の上に着地しても勢いがある為ただでは済まないだろう。
「テューネ、何してんだ!!くそっ、どうなっても知らねーぞ!!」
テューネの身体の下にエアの剣で風を集めた航太は、一気に風を吹き上げる。
その瞬間、テューネの小さな身体は天高く舞い上がった……
「航太……ルナを心配する気持ちは分かるけど、今は戦いに集中しないと……一真を追ったならコナハト城を目指すだろうから、ここまでで出会ってないなら、違う方に行ったんだよ。今頃、ホワイト・ティアラ隊に戻ってるんじゃない??方角間違えたーとか言って……」
ゼークの言葉が本心でない事は、その話し方から理解出来た。
今はルナの心配より、作戦の成功の方が重要だと言いたいのだろう……
それでも航太の頭の片隅に、見捨てなければいけないという後悔が残ってしまっている。
しかし、そんなルナの事を忘れてしまうような出来事が起きてしまう。
ゴオオォォン!!
ユングヴィの破壊した城門からスラハトに入ろうとしていた航太やゼークの目の前で、何かの爆発音の後に城壁が崩れ落ちた。
「うおっ!!!」
城壁の側にいた航太は突然の事態に驚きながらも、降ってくる瓦礫を冷静に躱す。
そして自分の引き連れている兵達の無事を確認する為、状況を把握しようと周りを見渡すと、大きな水の球が見える。
智美と絵美の周囲にいた兵は、草薙剣と天叢雲剣によって作り出された水球に覆われ、瓦礫の被害を免れていた。
それでも救えなかった兵は多く、瓦礫の直撃を受け倒れてる兵もいる。
崩れた城壁の下敷きになった兵も数知れず、城門付近の大地は血で赤く染められていた。
「まじか……なんだよ……これ……」
その惨状に、航太は言葉を失う。
「ぐわぁぁぁぁ!!」
更に城壁の内側から、人々の叫び声が聞こえる。
視線を地面から空に変えた航太の目に飛び込んできたのは、血とは違う赤だった。
「空が……燃えてる……」
航太の言葉通り……まるで夕方になったかのように、城壁の内側から赤が空を染める。
「航太……スラハトが燃えてるよ!!」
ゼークの悲痛な叫びが、航太の耳に届く。
だが、同時に襲いかかる悲劇に、航太は対応しなければならなかった。
「わああぁぁぁ!!」
立ち竦むベルヘイム兵に追い撃ちをかけるように、ヨトゥン軍が城壁の両側から現れる。
挟撃されるような形になったベルヘイム軍は、指揮系統が乱れており直ぐに対応が出来ない。
戦意を喪失しているベルヘイム軍は、成す統べ無く次々とヨトゥン兵に倒されていく。
指揮する立場の航太も混乱している為、中軍は組織だった動きも出来ず、更には力でも勝るヨトゥン兵に成す術もなかった。
混乱した中軍は、もはや烏合の衆である。
「航太、何をしている!!このままじゃ全滅するぞ!!」
今までにない危機的状況に混乱する航太の背後から、鬼気迫る声が耳を貫く。
一瞬身体を硬直させた航太は、後ろを振り返った。
智美が懸命に負傷兵の治療をしている、更にその先……
怒涛の如き勢いで、オルフェとテューネが突っ込んで来るのが見えた。
「アルパスター将軍の隊が、右翼のヨトゥン兵を叩く!!ゼークは中軍を纏めて、左翼にあたるんだ!!」
混乱する航太に代わって叫びながら指示を送るオルフェは、そのまま城壁まで馬を走らせる。
「うわっ!!なんだ!!」
疾風の如く自分に迫って来るオルフェの鬼の形相と勢いに驚き、航太は思わず横に跳んで馬の進行方向から逸れるように動く。
「航太、テューネを風の力で城壁の上まで飛ばすんだ!!」
横に逸れた航太を横目に、オルフェとテューネは開いたスペースに馬を飛び込ませる。
「んな無茶な……何メートルあると思ってんスか??着地の時に死にますよ!!」
崩れたとはいえ、まだ10m以上ある城壁の上まで飛んで、城壁の上に着地できればいいが、着地したところで降りる手段は無い。
城壁の上まで飛んだら、着地の時に死んでしまう事は目に見えていた。
「航太様、私なら大丈夫です!!早く飛ばして下さい!!1人でも多くの人を助けないと……」
そう言うと、テューネは航太の返答を聞く前に馬から飛んだ。
走る馬から飛んだテューネは、そのまま瓦礫の上に着地しても勢いがある為ただでは済まないだろう。
「テューネ、何してんだ!!くそっ、どうなっても知らねーぞ!!」
テューネの身体の下にエアの剣で風を集めた航太は、一気に風を吹き上げる。
その瞬間、テューネの小さな身体は天高く舞い上がった……
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