雫物語~Myth of The Wind~

くろぷり

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スラハト解放戦

スラハト解放戦2

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「なんて事だ……一度城壁付近まで後退するぞ!!」

ユングヴィは嫌な予感がして、コナハト城に背を向けて崩れた城壁に向け走り出した……その時……

天を覆う程の火の玉が、スラハトの町を目掛けて降り注いだ。

凄まじい量の火の玉に、スラハトの町は一瞬で火の海と化す。

逃げ惑うスラハトの人々の悲鳴が、町の至る所から聞こえてくる。

「町の中央に行っては駄目だっ!!城壁近くであれば、火が回っていない場所もある。とにかく、端に寄るんだ!!」

確かに、火の玉は町の中心目掛けて降り注いだ為、城壁付近であれば火が回っていない場所もある。

しかし火の勢いは凄まじく、更には崩れた日干しレンガにも熱が蓄えられて、城壁内の温度は灼熱地獄のような熱さになっていた。

火の手が回っていない城壁付近まで逃げ延びた人々も、その熱さと脱水、そして煙を吸い込んでしまい次々と倒れていく。

逃げようにも、熱を持った崩れた城壁のレンガに塞がれ、もはや脱出は不可能だった。

そうしている間にも、地獄の業火の如く勢いの増す炎に、スラハトの人々……そしてユングヴィ隊の兵達は、成す統べも無く次々と焼かれていく。

「くそっ……なんて事を!!人間の町とはいえ、自分の領内の住人を簡単に切り捨てるとは……」

城壁の端に辿り着いたユングヴィは唇を噛み締めながら、その炎を悔しそうに眺める。

そして、火が回っているのは城壁に囲まれた居住区のみに集中しており、農地には被害が出ていない様子だった。

広大な農地のある塀の内側からは煙が見えていない事から、それは明らかだ。

働く人間は、いくらでも補充出来るという事か……

ユングヴィの精悍な顔は、怒りと悔しさで歪んでいた。

もはや自分の力では、どうにもならない……

スラハトの町は、もはや完全に燃えていた。

逃げ遅れた人々の中には、家に燃え移った火に焼かれる者、建物の崩壊に巻き込まれた者……

悲痛の叫びが、スラハト全体から沸き上がっていた……

「火の化身、スルトの仕業か!!人を嬲るような事を簡単に……遊んでるつもりか!!」

ユングヴィの咆哮は、人々の絶望の叫びに掻き消されていた……
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