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孤独な旅立ち
一真とアルパスター
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「ブリューナク………そしてディノ家………いきなり会えるなんて………」
独り言のように呟くと、一真は安堵の表情を浮かべる。
「その反応………やはり君はアスナの………伝説の騎士の末裔なんだな!!」
アルパスターは立ち上がると感極まって、一真の両肩を持つと強く揺すった。
「痛いですよ。それに、オレはアスナの子孫じゃない。バルドルという、昔ロキに殺されて………そして、生き返らせてもらった堕ちた神です。いや………今はバルデルスという名の人間です。生まれ変わって、幼い頃に7国の騎士達と旅をして、アスナと共にファブニールの血を浴びました。だから、あなたの先祖、ランティストの事も知っています」
そう言うと、一真は満天の星が輝く空を見上げる。
「ファブニールの血を浴びた後、幼くて不老不死の身体をコントロール出来なかったオレは、ファブニールの血による破壊と再生を繰り返し続けて、その痛みで気が狂いそうだった………それを見兼ねたミルティが、オレを凍らせて世界を越えた………オレが不死の身体をコントロールし、ファブニールの血に打ち勝てるようになるまで、氷の中でゆっくりと成長させてくれた………」
一真は、アルパスターにランティストの面影を感じていた………昔、共に旅をした戦友の面影に、どうしても多弁になってしまう。
「世界を越えた………か。アスナとミルティは、君を助ける為に姿を消したんだな………そして、バルドルの神話は私も知っている。不死になりながら、宿り木とだけは精霊契約をしていなかった為に、その剣で貫かれて死んでしまったと………」
「そうです。でも、1人の神がオレを救ってくれた………ロキを止める剣となる為に、オレを生き返らせてくれた。でも………まだまだ未熟ですが………」
未熟………その言葉を否定しようとしたアルパスターだったが、言葉を飲み込んだ。
今の話だと、この男の敵はロキという事になる。
ロキはヨトゥンと神の血を合わせ持ち、屈強なヨトゥン軍の中でも最強と噂される男だ。
ロキと戦う者であれば、その力は神級でなければならない。
だとすれば………フィアナ騎士であり、ベルヘイムの遠征軍を任されている自分を圧倒したところで、それはある意味当然なのであろう。
アルパスターは自分の力の無さに情けなくなりながら、自分の祖先である7国騎士達の力に思いを馳せた。
「ロキと戦う………か。しかし、ロキも不老不死という噂がある。噂が本当であれば、不死身の者同士の戦い………決着がつかないと思うが??」
「ロキとオレは、同じなんです。オレを不死身にする為に行った精霊契約の時、ロキはオレと同じに身体になっていた。そして、オレと同じ不死の力を得たんです。なので、さっき話に出た宿り木の剣………ミステルテインなら、ロキを殺せる………」
ミステルテインという剣の名前を聞いて、アルパスターの表情が曇る。
「残念だが、ミステルテインはヨトゥンの手に落ちている。ミステルテインの使い手であるベルヘイムの姫君と共に、今はバロールの手にあるんだ………」
「バロール………まだ生きていたのか………アスナやミルティ、そして7国の騎士を壊滅に追いやったヨトゥンの将………なら、命の恩人達の敵を討つのもオレの役目だ!!」
一真の握るグラムも、以前の主であるアスナの敵を討てる事を感じたのか………その刀身が一瞬輝く。
「我々は、そのバロールを倒す為に行軍している。バルデルス様の力を貸して頂けるなら、ありがたい!!」
「様って………オレは別の世界で、鷹津一真って名前を頂いているんです。この世界に来るのに、別の世界の兄弟や幼なじみに協力して貰ってるので、出来れば一真と読んでほしいのですが………」
色々な名前が出てきて混乱したアルパスターだったが、一真から事情を聞き何とか理解した。
「なるほどな………その者達は、皆Myth Knightなのか………神剣が使える者達が、3人も同時に現れるとは俄には信じがたいが………」
「元々、素質はあったのですが………完全に覚醒したみたいです。その証拠に………」
一真の瞳が赤から黒に戻ると、持っていたグラムが地面に突き刺さり動かなくなる。
「こっちの世界に来て、ヨトゥンと戦ったのか………もうMyth Knightになってますね。義兄の持っているエアの剣と、このグラムは元々ソード・オブ・ヴィクトリーという一振りの剣だった………グラムが凰の目を使わないと持てないという事は………」
「少なくとも、一真の義兄はMyth Knightになっている………という事か………」
アルパスターの言葉に、一真が頷く。
「義兄達が、この世界に残るのか………それとも、元の世界に戻るのか………その判断が出来るまで、将軍の元で保護してもらってもいいですか??もし、この世界に残ると言うなら、将軍に護ってほしいのです」
「任せろ………と言ってやりたいトコだが、ヨトゥン軍は強い。出来る限り護るし、危険があればオレが動く。それで良ければ………」
アルパスターの偽りの無い言葉に、一真は義兄………航太達を任せられると感じた。
独り言のように呟くと、一真は安堵の表情を浮かべる。
「その反応………やはり君はアスナの………伝説の騎士の末裔なんだな!!」
アルパスターは立ち上がると感極まって、一真の両肩を持つと強く揺すった。
「痛いですよ。それに、オレはアスナの子孫じゃない。バルドルという、昔ロキに殺されて………そして、生き返らせてもらった堕ちた神です。いや………今はバルデルスという名の人間です。生まれ変わって、幼い頃に7国の騎士達と旅をして、アスナと共にファブニールの血を浴びました。だから、あなたの先祖、ランティストの事も知っています」
そう言うと、一真は満天の星が輝く空を見上げる。
「ファブニールの血を浴びた後、幼くて不老不死の身体をコントロール出来なかったオレは、ファブニールの血による破壊と再生を繰り返し続けて、その痛みで気が狂いそうだった………それを見兼ねたミルティが、オレを凍らせて世界を越えた………オレが不死の身体をコントロールし、ファブニールの血に打ち勝てるようになるまで、氷の中でゆっくりと成長させてくれた………」
一真は、アルパスターにランティストの面影を感じていた………昔、共に旅をした戦友の面影に、どうしても多弁になってしまう。
「世界を越えた………か。アスナとミルティは、君を助ける為に姿を消したんだな………そして、バルドルの神話は私も知っている。不死になりながら、宿り木とだけは精霊契約をしていなかった為に、その剣で貫かれて死んでしまったと………」
「そうです。でも、1人の神がオレを救ってくれた………ロキを止める剣となる為に、オレを生き返らせてくれた。でも………まだまだ未熟ですが………」
未熟………その言葉を否定しようとしたアルパスターだったが、言葉を飲み込んだ。
今の話だと、この男の敵はロキという事になる。
ロキはヨトゥンと神の血を合わせ持ち、屈強なヨトゥン軍の中でも最強と噂される男だ。
ロキと戦う者であれば、その力は神級でなければならない。
だとすれば………フィアナ騎士であり、ベルヘイムの遠征軍を任されている自分を圧倒したところで、それはある意味当然なのであろう。
アルパスターは自分の力の無さに情けなくなりながら、自分の祖先である7国騎士達の力に思いを馳せた。
「ロキと戦う………か。しかし、ロキも不老不死という噂がある。噂が本当であれば、不死身の者同士の戦い………決着がつかないと思うが??」
「ロキとオレは、同じなんです。オレを不死身にする為に行った精霊契約の時、ロキはオレと同じに身体になっていた。そして、オレと同じ不死の力を得たんです。なので、さっき話に出た宿り木の剣………ミステルテインなら、ロキを殺せる………」
ミステルテインという剣の名前を聞いて、アルパスターの表情が曇る。
「残念だが、ミステルテインはヨトゥンの手に落ちている。ミステルテインの使い手であるベルヘイムの姫君と共に、今はバロールの手にあるんだ………」
「バロール………まだ生きていたのか………アスナやミルティ、そして7国の騎士を壊滅に追いやったヨトゥンの将………なら、命の恩人達の敵を討つのもオレの役目だ!!」
一真の握るグラムも、以前の主であるアスナの敵を討てる事を感じたのか………その刀身が一瞬輝く。
「我々は、そのバロールを倒す為に行軍している。バルデルス様の力を貸して頂けるなら、ありがたい!!」
「様って………オレは別の世界で、鷹津一真って名前を頂いているんです。この世界に来るのに、別の世界の兄弟や幼なじみに協力して貰ってるので、出来れば一真と読んでほしいのですが………」
色々な名前が出てきて混乱したアルパスターだったが、一真から事情を聞き何とか理解した。
「なるほどな………その者達は、皆Myth Knightなのか………神剣が使える者達が、3人も同時に現れるとは俄には信じがたいが………」
「元々、素質はあったのですが………完全に覚醒したみたいです。その証拠に………」
一真の瞳が赤から黒に戻ると、持っていたグラムが地面に突き刺さり動かなくなる。
「こっちの世界に来て、ヨトゥンと戦ったのか………もうMyth Knightになってますね。義兄の持っているエアの剣と、このグラムは元々ソード・オブ・ヴィクトリーという一振りの剣だった………グラムが凰の目を使わないと持てないという事は………」
「少なくとも、一真の義兄はMyth Knightになっている………という事か………」
アルパスターの言葉に、一真が頷く。
「義兄達が、この世界に残るのか………それとも、元の世界に戻るのか………その判断が出来るまで、将軍の元で保護してもらってもいいですか??もし、この世界に残ると言うなら、将軍に護ってほしいのです」
「任せろ………と言ってやりたいトコだが、ヨトゥン軍は強い。出来る限り護るし、危険があればオレが動く。それで良ければ………」
アルパスターの偽りの無い言葉に、一真は義兄………航太達を任せられると感じた。
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