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21.VSナマズ
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最初の対面は、お互い様子見から始まった。
と言っても警戒してるのは俺だけで、ナマズはただプカプカ浮かんでいるだけだが。
くっそ、見てろよ。その余裕今からぶち壊してやる。
早速ひとつの魔法を唱える。
今まで使っていた送風や風刃とは違う別の風魔法だ。
「【削風】」
これまた読んで字のごとくの魔法だ。
風で撫で付けるようにして対象の表面を削ぎ取るという中々に強烈なもの。
今回はこれにナマズの分泌液をこそげ取って貰うことを期待してる。
削風がナマズにぶつかると、どうやら目論見は成功したようで、ナマズの体表にあった光沢が取れ、ついでに擦り傷のようなものがいくつも出来ていた。
ここで嬉しい誤算に気づく。
見たところ、分泌液下のナマズの肌は柔らかく脆い。
そうと気付けばそこからは早く、【風刃】をどんどん撃ち込んでいく。
みるみるうちにナマズは傷付いていき、もしかしたらこのまま勝てるかも、と希望が見えてくる。
──行けそう。もうちょっと。
そう思って何度目かの【風刃】を発動しようとした瞬間、今まで静寂を保っていたナマズが奇声と共に何かを吐き出した。
それはナマズが浸かる湖の水よりもドス黒く、若干紫がかっていた。
物凄く毒々しい。
視認すると共に直感する。
これ、絶対食らっちゃダメなやつ。
「──ッ、【昇風】!!」
咄嗟に魔法を発動し、身をかがめる。
下から発生した突風がナマズの吐き出した何かと衝突し、上方に少しだけ軌道をズラす。
何かは頭上を通って背後の地面に落ち、ベチャッと音を立てて潰れた。
恐る恐る後ろを確認してみると、地面がジュウジュウと悲鳴をあげていた。
……おい、ナマズ。お前もしかしてただのナマズじゃなくて──……毒ナマズなのか。
くっそ、だとしたら控えめに言って最悪だ。
ただでさえ図体がデカいのに、それに加えて毒?
ほんとに調節間違えてやがる。
戦慄する俺を横に、どうやらナマズは静観モードをやめたらしく、全身にあの毒々しい何かを吐き付け始めた。
なんだアイツ。気でも狂ったか?
……と思ったのも束の間、なんとナマズの体の傷がジュワジュワ言って治っていくではないか。
──は?
…………おい。おいおいおいおい!
ちょっと待て、は!?
お前回復まですんの!?バカじゃん!?
俺が口をあんぐりと開けて目の前の事実を受け入れられないでいる内にナマズは回復を終えやがり、今となってはムフーという声が聞こえそうなほどにだらけきってやがる。
……なんだこのナマズ。マジで何なんだ……。
呆れとも絶望ともつかない不安定な感情が湧く。
多分俺は今ものすごい顔をしているだろう。
ナマズは最初の登場時とは打って変わって不動、と言うより怠惰感満載でふんぞり返っている。
こちらを見下すように。
なめてやがる、コイツ。
ナマズの顔はピクリともしていないのに、何故か嘲笑の雰囲気しか感じない。
……ムカつくなー、コイツ……!
「風刃!」
額に青筋を立てたまま感情に身を任せて魔法を発動した。
────はずだった。
前に突き出した手のひらは光らず、魔法を発射した時の独特の感覚もない。
えっ?なん──
流石にナマズもこれ以上攻撃を喰らいたくなかったらしく、風刃に対抗するためにあの毒物を吐きつけていた。
それと衝突するはずだった風刃が何故か発動せず、両者が意図しない形で戦闘は終結することになる。
蓮のアバターの肉体はジュッと音を立てて消えた。
と言っても警戒してるのは俺だけで、ナマズはただプカプカ浮かんでいるだけだが。
くっそ、見てろよ。その余裕今からぶち壊してやる。
早速ひとつの魔法を唱える。
今まで使っていた送風や風刃とは違う別の風魔法だ。
「【削風】」
これまた読んで字のごとくの魔法だ。
風で撫で付けるようにして対象の表面を削ぎ取るという中々に強烈なもの。
今回はこれにナマズの分泌液をこそげ取って貰うことを期待してる。
削風がナマズにぶつかると、どうやら目論見は成功したようで、ナマズの体表にあった光沢が取れ、ついでに擦り傷のようなものがいくつも出来ていた。
ここで嬉しい誤算に気づく。
見たところ、分泌液下のナマズの肌は柔らかく脆い。
そうと気付けばそこからは早く、【風刃】をどんどん撃ち込んでいく。
みるみるうちにナマズは傷付いていき、もしかしたらこのまま勝てるかも、と希望が見えてくる。
──行けそう。もうちょっと。
そう思って何度目かの【風刃】を発動しようとした瞬間、今まで静寂を保っていたナマズが奇声と共に何かを吐き出した。
それはナマズが浸かる湖の水よりもドス黒く、若干紫がかっていた。
物凄く毒々しい。
視認すると共に直感する。
これ、絶対食らっちゃダメなやつ。
「──ッ、【昇風】!!」
咄嗟に魔法を発動し、身をかがめる。
下から発生した突風がナマズの吐き出した何かと衝突し、上方に少しだけ軌道をズラす。
何かは頭上を通って背後の地面に落ち、ベチャッと音を立てて潰れた。
恐る恐る後ろを確認してみると、地面がジュウジュウと悲鳴をあげていた。
……おい、ナマズ。お前もしかしてただのナマズじゃなくて──……毒ナマズなのか。
くっそ、だとしたら控えめに言って最悪だ。
ただでさえ図体がデカいのに、それに加えて毒?
ほんとに調節間違えてやがる。
戦慄する俺を横に、どうやらナマズは静観モードをやめたらしく、全身にあの毒々しい何かを吐き付け始めた。
なんだアイツ。気でも狂ったか?
……と思ったのも束の間、なんとナマズの体の傷がジュワジュワ言って治っていくではないか。
──は?
…………おい。おいおいおいおい!
ちょっと待て、は!?
お前回復まですんの!?バカじゃん!?
俺が口をあんぐりと開けて目の前の事実を受け入れられないでいる内にナマズは回復を終えやがり、今となってはムフーという声が聞こえそうなほどにだらけきってやがる。
……なんだこのナマズ。マジで何なんだ……。
呆れとも絶望ともつかない不安定な感情が湧く。
多分俺は今ものすごい顔をしているだろう。
ナマズは最初の登場時とは打って変わって不動、と言うより怠惰感満載でふんぞり返っている。
こちらを見下すように。
なめてやがる、コイツ。
ナマズの顔はピクリともしていないのに、何故か嘲笑の雰囲気しか感じない。
……ムカつくなー、コイツ……!
「風刃!」
額に青筋を立てたまま感情に身を任せて魔法を発動した。
────はずだった。
前に突き出した手のひらは光らず、魔法を発射した時の独特の感覚もない。
えっ?なん──
流石にナマズもこれ以上攻撃を喰らいたくなかったらしく、風刃に対抗するためにあの毒物を吐きつけていた。
それと衝突するはずだった風刃が何故か発動せず、両者が意図しない形で戦闘は終結することになる。
蓮のアバターの肉体はジュッと音を立てて消えた。
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