17 / 23
16.魔導書
しおりを挟む
本屋に着いてまず思ったことを述べたい。
──最っ高に居心地が良い。
俺は目が悪くなる前は本の虫と呼んでも差し支えないくらいには本が好きだった。
あの本独特の匂いと紙の柔らかさが不思議な世界観を醸し出してくれる。
それでも、本は雑多に積まれ、照明は所々に配置されたランタンだけ。
本を読むことなど到底考えられていないような雰囲気。
だがそれがいい。
人生で一回くらいはこんな不思議感のある場所で本を読んでみたいと思っていた。
やっぱり現代の図書館や書店は綺麗すぎる。
その方がいいって人ももちろんいるだろうけど、俺は圧倒的にこっちの方がいい。
更にここに魔法に関する書物があるだぁ?
最っ高じゃねぇか!
俺が一人興奮していると、前を歩いていたグラさんが一切の躊躇無く受付の奥へ押し入って行った。
「おーい、サラ。納品に来たぞー」
「ふぁ……グラ……もうそんな時間……?」
すると奥からグラさんと連れ立って一人の少女が出て来た。
銀髪に白いフードを被った可憐な少女だった。
そして何よりほっぺがもちもちだった。
もちーんみたいな効果音が鳴ってそうなほどにもちもちofもちもちだった。
「……どちら様?」
「おい、そこは客として扱えよ。お前仮にもここの店主だろ」
グラさんのツッコミを眠そう目を擦りながら無視し、グッと俺に近付いてジロジロ見てくる。
「あ、あの、グラさん。この人が……?」
「あぁ、ここ『精霊の智慧』の店主だ。まだだいぶ若いがな」
「……よろしく……あなたは?」
「あっ、えっと俺は──」
「──そういうのはいいから、コイツに魔導書を見繕ってやってくんねぇか?」
「……魔導書?」
そう言われるや否やキリッと表情に真剣味が増──したように見えなくもない店主さん。
相も変わらずほっぺがもちもちだった。
「何属性が欲しい?」
心なしか先程までふにゃふにゃだった声にも芯が通っている。
だか──
「えっと……何属性があるんですか?」
生憎と俺は無知だった。
「むぅ……そこからか」
と言うと店主さんは受付奥に引っ込んでしまった。
「ちょっと待っといてやってくれ」
グラさんにそう言われたので、少し待っていると店主さんが奥から黒板のようなものを引いて戻ってきた。
俺たちの前までそれを引き摺ってきてから一息つくと、手に持っていたチョークのようなもので持ってきた黒板をコツコツと叩いた。
「まず、魔法には発生魔法と吸収魔法、操作魔法と精神魔法の4つの分類がある」
そう言って店主さんは黒板に今言った分類を区切りながら書き込んでいく。
「で、発生魔法の中に含まれているのが火魔法と水魔法、光魔法の3つ。そして吸収魔法に含まれているのがそれらの逆にあたる氷魔法と乾燥魔法、闇魔法。
発生魔法はその場で一から魔法の元になるものを作り出すから発生、吸収魔法は発生魔法で発生させるものを逆に吸い取って魔法の元にするから吸収って言う」
綺麗な文字が黒板にどんどん書き込まれていく。
「ここまでいい?」
「……はい、何とか」
「じゃあ、次は操作魔法について説明する。操作魔法に含まれているのは風魔法と土魔法の2つで、これは元々存在しているものを操って魔法を行使するからこう呼ばれてる。だから前のふたつよりも魔力消費が少なくて済む。
発生魔法の発生させる手順を省いたものと考えた方がわかりやすいかも。
だから、発生魔法でも魔法以外で発生したものを使うこともできる。限定的な操作魔法だと思えばいい。もちろんその場合は操作魔法と一緒で魔力消費は少なくて済む。でも、吸収魔法はその性質上難しいと思う」
「お、おぉ……」
恐ろしくテンポが早い。
段々と早口になっていっている気もするし、えらく前のめりで熱弁している。
ここで俺は確信した。
あぁ、この人──オタクだ。
「理解した?理解したね。じゃあ精神魔法について行くよ。精神魔法は────」
店主さんのマシンガントークは更に加速し、俺の体は打ち付けられていく。
徐々にぐったりしていく俺と、止まらない店主さん。
グラさんはそれを遠くから眺めて苦々しく笑っていた。
──最っ高に居心地が良い。
俺は目が悪くなる前は本の虫と呼んでも差し支えないくらいには本が好きだった。
あの本独特の匂いと紙の柔らかさが不思議な世界観を醸し出してくれる。
それでも、本は雑多に積まれ、照明は所々に配置されたランタンだけ。
本を読むことなど到底考えられていないような雰囲気。
だがそれがいい。
人生で一回くらいはこんな不思議感のある場所で本を読んでみたいと思っていた。
やっぱり現代の図書館や書店は綺麗すぎる。
その方がいいって人ももちろんいるだろうけど、俺は圧倒的にこっちの方がいい。
更にここに魔法に関する書物があるだぁ?
最っ高じゃねぇか!
俺が一人興奮していると、前を歩いていたグラさんが一切の躊躇無く受付の奥へ押し入って行った。
「おーい、サラ。納品に来たぞー」
「ふぁ……グラ……もうそんな時間……?」
すると奥からグラさんと連れ立って一人の少女が出て来た。
銀髪に白いフードを被った可憐な少女だった。
そして何よりほっぺがもちもちだった。
もちーんみたいな効果音が鳴ってそうなほどにもちもちofもちもちだった。
「……どちら様?」
「おい、そこは客として扱えよ。お前仮にもここの店主だろ」
グラさんのツッコミを眠そう目を擦りながら無視し、グッと俺に近付いてジロジロ見てくる。
「あ、あの、グラさん。この人が……?」
「あぁ、ここ『精霊の智慧』の店主だ。まだだいぶ若いがな」
「……よろしく……あなたは?」
「あっ、えっと俺は──」
「──そういうのはいいから、コイツに魔導書を見繕ってやってくんねぇか?」
「……魔導書?」
そう言われるや否やキリッと表情に真剣味が増──したように見えなくもない店主さん。
相も変わらずほっぺがもちもちだった。
「何属性が欲しい?」
心なしか先程までふにゃふにゃだった声にも芯が通っている。
だか──
「えっと……何属性があるんですか?」
生憎と俺は無知だった。
「むぅ……そこからか」
と言うと店主さんは受付奥に引っ込んでしまった。
「ちょっと待っといてやってくれ」
グラさんにそう言われたので、少し待っていると店主さんが奥から黒板のようなものを引いて戻ってきた。
俺たちの前までそれを引き摺ってきてから一息つくと、手に持っていたチョークのようなもので持ってきた黒板をコツコツと叩いた。
「まず、魔法には発生魔法と吸収魔法、操作魔法と精神魔法の4つの分類がある」
そう言って店主さんは黒板に今言った分類を区切りながら書き込んでいく。
「で、発生魔法の中に含まれているのが火魔法と水魔法、光魔法の3つ。そして吸収魔法に含まれているのがそれらの逆にあたる氷魔法と乾燥魔法、闇魔法。
発生魔法はその場で一から魔法の元になるものを作り出すから発生、吸収魔法は発生魔法で発生させるものを逆に吸い取って魔法の元にするから吸収って言う」
綺麗な文字が黒板にどんどん書き込まれていく。
「ここまでいい?」
「……はい、何とか」
「じゃあ、次は操作魔法について説明する。操作魔法に含まれているのは風魔法と土魔法の2つで、これは元々存在しているものを操って魔法を行使するからこう呼ばれてる。だから前のふたつよりも魔力消費が少なくて済む。
発生魔法の発生させる手順を省いたものと考えた方がわかりやすいかも。
だから、発生魔法でも魔法以外で発生したものを使うこともできる。限定的な操作魔法だと思えばいい。もちろんその場合は操作魔法と一緒で魔力消費は少なくて済む。でも、吸収魔法はその性質上難しいと思う」
「お、おぉ……」
恐ろしくテンポが早い。
段々と早口になっていっている気もするし、えらく前のめりで熱弁している。
ここで俺は確信した。
あぁ、この人──オタクだ。
「理解した?理解したね。じゃあ精神魔法について行くよ。精神魔法は────」
店主さんのマシンガントークは更に加速し、俺の体は打ち付けられていく。
徐々にぐったりしていく俺と、止まらない店主さん。
グラさんはそれを遠くから眺めて苦々しく笑っていた。
1
お気に入りに追加
87
あなたにおすすめの小説
モノ作りに没頭していたら、いつの間にかトッププレイヤーになっていた件
こばやん2号
ファンタジー
高校一年生の夏休み、既に宿題を終えた山田彰(やまだあきら)は、美人で巨乳な幼馴染の森杉保奈美(もりすぎほなみ)にとあるゲームを一緒にやらないかと誘われる。
だが、あるトラウマから彼女と一緒にゲームをすることを断った彰だったが、そのゲームが自分の好きなクラフト系のゲームであることに気付いた。
好きなジャンルのゲームという誘惑に勝てず、保奈美には内緒でゲームを始めてみると、あれよあれよという間にトッププレイヤーとして認知されてしまっていた。
これは、ずっと一人でプレイしてきたクラフト系ゲーマーが、多人数参加型のオンラインゲームに参加した結果どうなるのかと描いた無自覚系やらかしVRMMO物語である。
※更新頻度は不定期ですが、よければどうぞ
アルケディア・オンライン ~のんびりしたいけど好奇心が勝ってしまうのです~
志位斗 茂家波
ファンタジー
新入社員として社会の波にもまれていた「青葉 春」。
社会人としての苦労を味わいつつ、のんびりと過ごしたいと思い、VRMMOなるものに手を出し、ゆったりとした生活をゲームの中に「ハル」としてのプレイヤーになって求めてみることにした。
‥‥‥でも、その想いとは裏腹に、日常生活では出てこないであろう才能が開花しまくり、何かと注目されるようになってきてしまう…‥‥のんびりはどこへいった!?
――
作者が初めて挑むVRMMOもの。初めての分野ゆえに稚拙な部分もあるかもしれないし、投稿頻度は遅めだけど、読者の皆様はのんびりと待てるようにしたいと思います。
コメントや誤字報告に指摘、アドバイスなどもしっかりと受け付けますのでお楽しみください。
小説家になろう様でも掲載しています。
一話あたり1500~6000字を目途に頑張ります。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷
くみたろう
ファンタジー
彼女の名前は東堂翠。
怒りに震えながら、両手に持つ固めの箱を歪ませるくらいに力を入れて歩く翠。
最高の一日が、たった数分で最悪な1日へと変わった。
その要因は手に持つ箱。
ゲーム、Anotherfantasia
体感出来る幻想郷とキャッチフレーズが付いた完全ダイブ型VRゲームが、彼女の幸せを壊したのだ。
「このゲームがなんぼのもんよ!!!」
怒り狂う翠は帰宅後ゲームを睨みつけて、興味なんか無いゲームを険しい表情で起動した。
「どれくらい面白いのか、試してやろうじゃない。」
ゲームを一切やらない翠が、初めての体感出来る幻想郷へと体を委ねた。
それは、翠の想像を上回った。
「これが………ゲーム………?」
現実離れした世界観。
でも、確かに感じるのは現実だった。
初めて続きの翠に、少しづつ増える仲間たち。
楽しさを見出した翠は、気付いたらトップランカーのクランで外せない大事な仲間になっていた。
【Anotherfantasia……今となっては、楽しくないなんて絶対言えないや】
翠は、柔らかく笑うのだった。
VRMMOで神様の使徒、始めました。
一 八重
SF
真崎宵が高校に進学して3ヶ月が経過した頃、彼は自分がクラスメイトから避けられている事に気がついた。その原因に全く心当たりのなかった彼は幼馴染である夏間藍香に恥を忍んで相談する。
「週末に発売される"Continued in Legend"を買うのはどうかしら」
これは幼馴染からクラスメイトとの共通の話題を作るために新作ゲームを勧められたことで、再びゲームの世界へと戻ることになった元動画配信者の青年のお話。
「人間にはクリア不可能になってるって話じゃなかった?」
「彼、クリアしちゃったんですよね……」
あるいは彼に振り回される運営やプレイヤーのお話。
引退した元生産職のトッププレイヤーが、また生産を始めるようです
こばやん2号
ファンタジー
とあるVRMMOで生産職最高峰の称号であるグランドマスター【神匠】を手に入れた七五三俊介(なごみしゅんすけ)は、やることはすべてやりつくしたと満足しそのまま引退する。
大学を卒業後、内定をもらっている会社から呼び出しがあり行ってみると「我が社で配信予定のVRMMOを、プレイヤー兼チェック係としてプレイしてくれないか?」と言われた。
生産職のトップまで上り詰めた男が、再び生産職でトップを目指す!
更新頻度は不定期です。
思いついた内容を書き殴っているだけの垂れ流しですのでその点をご理解ご了承いただければ幸いです。
※この小説は【アルファポリス】及び【小説家になろう】の同時配信で投稿しています。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる