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10.バイト
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数日経って慣れたパン屋の香ばしい匂い。
一旦は受付や商品陳列に精を出し、新人ということもあってパン制作などはおいおいにするんだとか。
さて、俺は今日も今日とて働いている。
最初は覚えることも結構あって大変だったが、今となってはやりがいもあり、何より賄いや仕事終わりに余ったパンをくれたりする。
普通に楽しい。
ちなみにだが、日野さんとの一件は「ちょっとお金稼いどきたいから……」と少しだけ待ってもらうことにした。
すると連絡先を交換して「いつでも頼ってね!」と言ってくれた。神か?
ということで、お言葉に甘えてしばらくはバイトに専念させてもらうことにする。
そしてお金を稼いだら、ギルドに入って、買い食いしたり料理したり……うへへ。
……と、そろそろお客さんが入ってくる時間帯だ。
今日も一日頑張るかー!
「お、今日もやってんねぇ」
一人の男性が来店する。
「あ、いらっしゃいませー。グラさんもいつも通りで」
その人は顔見知りで、グラさんという30代くらいの男性だ。
「おう、前も言った気がするが、朝はここのパンを食べながら職場に行くんだ」
「冒険者ギルドの解体屋……でしたっけ?」
「あぁ、やっぱり言ってたな。朝飯は食わねぇと活力が湧かねぇんだ」
そう言いながら彼の目当てのパンが乗せられたトレーがレジに置かれる。
「なるほどです。えーっと、デリオークの焼肉パンとドーナツボールですね。合計で450ゴールドになります」
この世界はゴールドという単位でお金が数えられ、日本の円と同じ価値観らしい。
「はいよ」
「……ちょうどいただきます。またのご利用をお待ちしております」
「おう、またな」
グラさんが背を向けて出口に向かって歩いていく。
入れ違いにまた別の客が入ってきたので、来店の挨拶を行う。
まだ今日は始まったばかりだ。
◇◇◇
あー、終わったー!
肩を回しながら街の中心にある噴水に向かう。
この噴水はプレイヤーのログイン、ログアウトを制御しているらしく、ここに近付けばログアウトのウィンドウが浮かび上がり、ログアウトすることができる。
ちなみに外のモンスターとかと戦って死んだ場合のリスポーンもここからになるらしい。
さて、ログアウトする前に所持金の確認をしておこう。
数日このゲームにログインして分かったことがあって、それの一つにこの世界での通貨には実体は無いことが挙げられる。
世界観ゆえか利便性ゆえか、この世界では実物ではなく架空の資金を用いて物の売買を行う。
現実で言う電子マネーみたいな感じだろうか。
まぁ、便利なことに変わりはないので不満は無い。
とにかく、この世界には貨幣がない。
つまり、自分の所持金の確認方法も独自にあるってことだ。
うちのパン屋に通っているお客さんに聞いて知ったのだが、現在の所持金などについてもウィンドウで確認するらしく、それを開くための呪文があるらしい。
なんでも「マイマネー」って唱えれば出てくるようで、んなバカな、と思いつつ唱えてみるとあら不思議、ウィンドウが出てきた。
ということで、噴水前で「マイマネー」と呟いて所持金を確認することにする。
所持金:2万8800ゴールド
おぉ、3日間でこれか。
ちなみに時給800ゴールドだ。
安いのか高いのか分からない。
とりあえずこんだけあれば冒険者ギルドに入るだけは許されるだろう、という事で明日は遂に突入してみようと思う。
店長には休みを貰ったし、楽しみだなぁ!
明日に思いを馳せながらログアウトウィンドウの文字を押す。
いつものようにまどろむようにしてログアウトする。
一旦は受付や商品陳列に精を出し、新人ということもあってパン制作などはおいおいにするんだとか。
さて、俺は今日も今日とて働いている。
最初は覚えることも結構あって大変だったが、今となってはやりがいもあり、何より賄いや仕事終わりに余ったパンをくれたりする。
普通に楽しい。
ちなみにだが、日野さんとの一件は「ちょっとお金稼いどきたいから……」と少しだけ待ってもらうことにした。
すると連絡先を交換して「いつでも頼ってね!」と言ってくれた。神か?
ということで、お言葉に甘えてしばらくはバイトに専念させてもらうことにする。
そしてお金を稼いだら、ギルドに入って、買い食いしたり料理したり……うへへ。
……と、そろそろお客さんが入ってくる時間帯だ。
今日も一日頑張るかー!
「お、今日もやってんねぇ」
一人の男性が来店する。
「あ、いらっしゃいませー。グラさんもいつも通りで」
その人は顔見知りで、グラさんという30代くらいの男性だ。
「おう、前も言った気がするが、朝はここのパンを食べながら職場に行くんだ」
「冒険者ギルドの解体屋……でしたっけ?」
「あぁ、やっぱり言ってたな。朝飯は食わねぇと活力が湧かねぇんだ」
そう言いながら彼の目当てのパンが乗せられたトレーがレジに置かれる。
「なるほどです。えーっと、デリオークの焼肉パンとドーナツボールですね。合計で450ゴールドになります」
この世界はゴールドという単位でお金が数えられ、日本の円と同じ価値観らしい。
「はいよ」
「……ちょうどいただきます。またのご利用をお待ちしております」
「おう、またな」
グラさんが背を向けて出口に向かって歩いていく。
入れ違いにまた別の客が入ってきたので、来店の挨拶を行う。
まだ今日は始まったばかりだ。
◇◇◇
あー、終わったー!
肩を回しながら街の中心にある噴水に向かう。
この噴水はプレイヤーのログイン、ログアウトを制御しているらしく、ここに近付けばログアウトのウィンドウが浮かび上がり、ログアウトすることができる。
ちなみに外のモンスターとかと戦って死んだ場合のリスポーンもここからになるらしい。
さて、ログアウトする前に所持金の確認をしておこう。
数日このゲームにログインして分かったことがあって、それの一つにこの世界での通貨には実体は無いことが挙げられる。
世界観ゆえか利便性ゆえか、この世界では実物ではなく架空の資金を用いて物の売買を行う。
現実で言う電子マネーみたいな感じだろうか。
まぁ、便利なことに変わりはないので不満は無い。
とにかく、この世界には貨幣がない。
つまり、自分の所持金の確認方法も独自にあるってことだ。
うちのパン屋に通っているお客さんに聞いて知ったのだが、現在の所持金などについてもウィンドウで確認するらしく、それを開くための呪文があるらしい。
なんでも「マイマネー」って唱えれば出てくるようで、んなバカな、と思いつつ唱えてみるとあら不思議、ウィンドウが出てきた。
ということで、噴水前で「マイマネー」と呟いて所持金を確認することにする。
所持金:2万8800ゴールド
おぉ、3日間でこれか。
ちなみに時給800ゴールドだ。
安いのか高いのか分からない。
とりあえずこんだけあれば冒険者ギルドに入るだけは許されるだろう、という事で明日は遂に突入してみようと思う。
店長には休みを貰ったし、楽しみだなぁ!
明日に思いを馳せながらログアウトウィンドウの文字を押す。
いつものようにまどろむようにしてログアウトする。
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