天狐様のお袋の味

立花立花

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3章:命を救う真っ赤な苺ゼリー

20話:妖怪に好かれる意味

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牡丹ちゃんと出会って一週間がたった。
あれからよく家に来るようになって、最近では僕と一緒に天狐様に料理を教えてもらっている。

「それじゃあ今日も御馳走様でした!」
「うん。 気を付けてね」
「うん!」

夕飯を一緒に食べろく郎さんのところに帰るため森から豆狸の姿に変わる。
牡丹ちゃんに手を振りながら「またね」と声をかけると僕の後ろから天狐様が「またのぉー!」とテレビを見ながら話している。
少し前から比べると本当に騒がしくなったなぁ。

「はい! お邪魔しました!」

そういうと牡丹ちゃんは帰っていった。
にしても妖怪とはいえ女の子に好かれるのは普通に嬉しい。
牡丹ちゃんも可愛いし、その、つ、付き合ってもいいんじゃないかな?
この一週間でそう思えるほど仲良くなっていた。
そんな僕の浮ついた様子に気づいたのか天狐様が口を開く。

「新汰、ちとそこ座れ」
「え? 急にどうしたんですか?」
「いいかそこ座るんじゃ」

有無を言わせない圧に僕は天狐様が指さした場所に座る。
テレビが置いてあるリビングは畳で出来ている。その中央に炬燵用のテーブルが置いてある。
丁度今は春から夏に変わろうとしている最中で炬燵用のテーブルがあるだけで、布団自体はしまっている。
そのテーブルをはさんで向かい側に天狐様は座っていた。

「牡丹のことちょっとでもいいなぁとか思っとるじゃろ?」
「なんでそれを!」
「もう見とったらバレバレじゃよ」

はぁと溜め息をつくように呆れた表情をする天狐様。

「あのなぁ、新汰。 人ならざる者の執着を舐めたらあかんぞ」
「でも牡丹ちゃんはそんな変なことする子には見えないけど…」
「それは牡丹がまだ生まれたばかりの妖怪だからじゃ。 本来妖怪から好かれるというのはあの世へ連れていかれることを意味するんじゃ」
「え」
「だってそうじゃろ? 自分と同じ年月を生きるためにもそ奴が妖怪になるのが手っ取り早い。 妖怪になるために一番可能性がある方法がそ奴を殺すことじゃ。 まぁ、他にもいろいろと方法はあるがな。 やっぱり執着と恨みは妖怪になりやすい条件じゃからなぁ」

天狐様の言葉に絶句する。

「まぁ好かれた相手が牡丹でよかったなぁ。 あれはまだ妖怪という自覚はないな。 まだまだ普通の狸じゃと思ってる。 今のうちに命の大切さを教えればまず殺されることはなくなるじゃろ」
「そ、そんな…」
「いいか? もしやばい奴に好かれたり、執着されたらすぐにワシに言うんじゃよ」
「わ、分かった」

天狐様は僕の返事に満足したのか「テレビの続きでもみるかのぉ」と再度テレビを見始めた。
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