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2章:初恋のおにぎり
14話:のた坊主
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「おいジジイ~、久しぶりじゃな! 天狐、じゃないか。白狐がきたぞ~」
勝手に木造の小さい家の扉を開け大きな声で呼ぶ天狐様。
それほどまでに親しいのかジジイ呼びだ。
というか天狐じゃなく、今白狐って言った? 確か、もう少し位があがれば空狐になるとかいっていたような?
もしかしてサラリーマンみたいに昇格すると名前が変わるのかな?
課長とか部長みたいな感じで。
そんなことを考えていると、どこ、ばたと倒れたりぶつかるような音がする。
思わず「大丈夫なんですか?」と天狐様に尋ねると大きく溜め息をつくと呆れたように口を開いた。
「昔からあんなじゃ。 のたのた歩きおって、よく壁や床にぶつけておるのよ。 あのジジイは」
「そうなんですか?」
「まぁそれがのた坊主なんじゃがな」
「のた坊主?」
「狸の妖怪の一種じゃ。 酒好きで酒を片手に現れる。 酒蔵に入っては酒を勝手に盗み飲みしておるだけの狸ジジイじゃ」
天狐様の説明と同時にのたのたと一匹の狸が二足歩行ででてくる。
ところどころぶつけたのか手でさすっているようだ。
のたのたっていうよりも、ふらふらって感じがするけどね。
「おぉ、お?懐かしい顔じゃなぁ。 何年ぶりだぁ?」
「十年くらいじゃろ」
「なら最近だなぁ」
酔っているのかふわふわとゆったりした話し方だ。
天狐様がいる時点でもう妖怪とかにあまり驚かなくなったけど、それにしてもでかい。
僕より頭一個高いくらいか?
横幅もでかいからよりでかさを感じる。
お相撲さんと同じくらいの体格なのかな?
「にしてもついに天狐になったかぁ。 前は白狐のときじゃったからなぁ」
「その為の眠りじゃろうて」
「じゃあ次長く眠るときは空狐になるんかぁ?」
「じゃと思うぞ」
「そうかぁ。 そうかぁ。 それはめでてぇな。 ならワシの秘蔵の酒でものんでくかぁ?」
「勿論じゃ! じゃが、その前に、ほれ」
天狐様に押されのた坊主が目の前にくる。
僕をようやく認識したのか垂れた目を見開いて「人間かぁ。久しいなぁ」と驚いているようだ。
「新汰です。 えっとのた坊主さん?」
「はっはは! のた坊主は種族名じゃな。 ワシの名はどぶ田ろく郎じゃ。 ろく郎とでも呼んでくれぃ」
「名前あるんですね! 分かりました。 ろく郎さん!」
「まぁある奴とない奴があるからなぁ。 ちなみに天狐はないなぁ」
「あ、はい! 天狐様から聞きました。 でも名前あるなしってなんで別れてるんですか?」
「コイツが神様もどきでワシが妖怪だからだなぁ。 神様は勝手に名前をつけられん。 ワシは妖怪だからなぁ、勝手に名のることもできれば、名前を付けてもらうこともできるぞ。 ちなみにワシの名はな、その昔酒蔵にいた酒造りの名手につけてもらった名じゃ。 お前はどぶろくが好きすぎるからどぶ田ろく郎じゃ!ってなぁ」
「そうなんですね」
「ジジイその話は後じゃ。 酒を飲みながらなら聞いてやる」
「ほっほ。 なら酒をもってくるとするかのぉ。 ほれ、そこの軒下にでも座っとれ。 幾分か綺麗だからなぁ」
そういうとまたのたのたと歩きながら玄関から家の奥へと入っていった。
勝手に木造の小さい家の扉を開け大きな声で呼ぶ天狐様。
それほどまでに親しいのかジジイ呼びだ。
というか天狐じゃなく、今白狐って言った? 確か、もう少し位があがれば空狐になるとかいっていたような?
もしかしてサラリーマンみたいに昇格すると名前が変わるのかな?
課長とか部長みたいな感じで。
そんなことを考えていると、どこ、ばたと倒れたりぶつかるような音がする。
思わず「大丈夫なんですか?」と天狐様に尋ねると大きく溜め息をつくと呆れたように口を開いた。
「昔からあんなじゃ。 のたのた歩きおって、よく壁や床にぶつけておるのよ。 あのジジイは」
「そうなんですか?」
「まぁそれがのた坊主なんじゃがな」
「のた坊主?」
「狸の妖怪の一種じゃ。 酒好きで酒を片手に現れる。 酒蔵に入っては酒を勝手に盗み飲みしておるだけの狸ジジイじゃ」
天狐様の説明と同時にのたのたと一匹の狸が二足歩行ででてくる。
ところどころぶつけたのか手でさすっているようだ。
のたのたっていうよりも、ふらふらって感じがするけどね。
「おぉ、お?懐かしい顔じゃなぁ。 何年ぶりだぁ?」
「十年くらいじゃろ」
「なら最近だなぁ」
酔っているのかふわふわとゆったりした話し方だ。
天狐様がいる時点でもう妖怪とかにあまり驚かなくなったけど、それにしてもでかい。
僕より頭一個高いくらいか?
横幅もでかいからよりでかさを感じる。
お相撲さんと同じくらいの体格なのかな?
「にしてもついに天狐になったかぁ。 前は白狐のときじゃったからなぁ」
「その為の眠りじゃろうて」
「じゃあ次長く眠るときは空狐になるんかぁ?」
「じゃと思うぞ」
「そうかぁ。 そうかぁ。 それはめでてぇな。 ならワシの秘蔵の酒でものんでくかぁ?」
「勿論じゃ! じゃが、その前に、ほれ」
天狐様に押されのた坊主が目の前にくる。
僕をようやく認識したのか垂れた目を見開いて「人間かぁ。久しいなぁ」と驚いているようだ。
「新汰です。 えっとのた坊主さん?」
「はっはは! のた坊主は種族名じゃな。 ワシの名はどぶ田ろく郎じゃ。 ろく郎とでも呼んでくれぃ」
「名前あるんですね! 分かりました。 ろく郎さん!」
「まぁある奴とない奴があるからなぁ。 ちなみに天狐はないなぁ」
「あ、はい! 天狐様から聞きました。 でも名前あるなしってなんで別れてるんですか?」
「コイツが神様もどきでワシが妖怪だからだなぁ。 神様は勝手に名前をつけられん。 ワシは妖怪だからなぁ、勝手に名のることもできれば、名前を付けてもらうこともできるぞ。 ちなみにワシの名はな、その昔酒蔵にいた酒造りの名手につけてもらった名じゃ。 お前はどぶろくが好きすぎるからどぶ田ろく郎じゃ!ってなぁ」
「そうなんですね」
「ジジイその話は後じゃ。 酒を飲みながらなら聞いてやる」
「ほっほ。 なら酒をもってくるとするかのぉ。 ほれ、そこの軒下にでも座っとれ。 幾分か綺麗だからなぁ」
そういうとまたのたのたと歩きながら玄関から家の奥へと入っていった。
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