天狐様のお袋の味

立花立花

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2章:初恋のおにぎり

11話:無言の微笑み

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「じゃあ家に戻るね」
「また学校で」
「うん!」


僕はミケを撫でると家に戻るため振り返るとそこには先ほど家に帰ると言っていた森が立っていた。


「うわっ! びっくりした! 何か忘れ物とか?」
「…」
「森?」


森は無言で微笑むと僕に向かって手を差し出した。
その手にはお花が一つ。


「くれるのか?」
「…」
「ありがとう」


森の手から花を取りお礼を言う。
すると森は首をブンブンと横にふった。


「これって森のお母さんから?」
そう聞きながら花をみる。
あまり見かけたことがないけど綺麗な花だ。花に詳しくないから種類まで分からないけど。
一輪でも花自体が大きいから様になっている。そんなことを考えている間にも質問の答えが返ってこない。
いつもの森なら「それはね」と言いながら教えてくれそうなものなのに。
あまりの静寂から顔をあげるとそこには森の姿はなかった。


「森?」


あたりを見渡してもそこにいるのは僕とミケだけ。



「まさかミケお前が化けたわけじゃないよな?」



天狐様がいるわけだし化け猫がいても可笑しくはない。
天狐様のおかげで絶対ありえないことがあり得るようになっちゃったよ…。
でもまぁ「ミケなわけがないよな」

飴とか食べててずっと無言だった可能性もゼロじゃないしな。

学校で聞けばいいし。



「おーい! 新汰~!!! 飯じゃ飯~!!」
「天狐様!? 今行きます!!」



天狐様に呼ばれるまま走って家に帰る。
そして天狐様が作ったであろう油揚げの味噌汁とご飯、そして昨日の残りの筑前煮を食べ学校に向かう準備をした。


「っと忘れるとこだった!」
「なんじゃ? コップに水なんかいれよって? 飲み物なら冷蔵庫にあるぞ?」
「これはお花用」
「お花?」
「これ、今朝もらったんだ」



花瓶替わりのコップに貰った花をさした。



「この花…どっかで見たことがあるような…? はて、どこじゃったか?」
「天狐様この花知ってるの?」
「それを思い出している最中じゃ。 まだ目覚めて時間がたっとらんからな」
「ふ~ん。 そういうもんなんですねって…! やば! 天狐様留守番お願いします!!」
「任された。 ほれいってらっしゃい」
「っ! はい! 行ってきます!」



久しぶりのやり取りに大きく返事をし僕は学校へと走り出した。
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