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37話 貴族の噂

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side アイザック


「お前なんかしたのか?」

「いや、そもそも会ったのもはじめてだよ。ちょっと怖がらせちゃったかな?」


「珍しいな、お前物腰柔らかいから大抵のやつはすぐ懐くのに。」

まぁ歩夢は人見知りって言ってたししょうがないか。
俺はそう思いながら酒を取り出す。
そこでふと俺は話そうと思っていた話題をふる。

「そういえば情報は集まったのか?」

「少しずつだけど順調に集まってるよ。多分あと少しで割り出せるんじゃないかな。」

俺たちが今話しているのは裏で噂になっている貴族の人身売買についてだ。
人身売買は違法だが今貴族の間で流行っているようで売買されるのは獣人だけじゃなく中には落ち人・・・も含まれているようだ。

なぜ俺とディランがその噂を調べているのかというと、こいつが番探しの旅でこの街にいるのは確かだがいきなり匂いがしなくなり見つけられなくなったといったのが始まりだ。
最悪の可能性は考えたくないがもしかしたらこいつの番もどっかに監禁されてるかも知れねぇ、匂いが消えるなんて一体何があったんだ。

俺は数少ない親友のためにも騎士団にいる幼なじみとも協力してその事件の真相を探っている。

「もし見つからなかったとしてもそんな事件に巻き込まれてなければ安心なんだけど。もし何か痛い目にあっているようなら私どんなことをしてしまうかわかりません。」

「…今ならその気持ちすごいわかるわ。」

運命の番に合うことなんか一生ないと思ってたけど、俺は出会ってしまった。

もし太一に何かあったら俺も正気を保てなくなるだろう。
それくらい運命の番は大切で自然と求め合っちまう。

俺たちは酒を酌み交わしながらお互いの情報を交換しつついろんな話をした。







side ディラン

ノウゼンカズラに無事ついた私は友人兼幼なじみの家を訪ねていた。
番の匂いは未だにしないが私の番はこの街にいると自分の勘が告げている。

しばらく過ごすうちに私は貴族の間で行われる人身売買の話を聞いた。
もしかしたらと最悪の事態を考え今は毎日その事件に関する情報を集めている。
もう一人の幼なじみも協力してくれて今彼が持っている情報を全て教えてくれた。
いつも通り情報収集を終えた私はアイザックの家に戻る。

ガチャ

「よ!おかえり。昨日話した通り今日は俺の知り合いも家に泊まるからよろしくな。とりあえずお前のことを紹介しなくちゃな。」

アイザックは俺を迎え入れるや否やリビングに連れ出して目の前の少年たちに俺を紹介し始めた。

一人はアイザックの運命の番でもう一人はその子の弟らしい。
話には聞いていたけどまさかこんなに可愛らしい子たちとは思っておらず少し面食らってしまった。

だけどすぐに気を取り直して俺は挨拶をした。

「はじめましてディラン・カーライルと言います。気軽にディランとでも呼んでください。まさかアイザックにこんな可愛らしい友人がいるなんてびっくりですね。」

アイザックの番はクールな印象だったが意外にも人当たりがよくとても気さくな人物だと思った。
けどもう一人の弟くんは何故か私をみてから目を見開いて固まってしまう。

何かしてしまったかな?
私は不安になった。

それからはあまり話すこともなく二人はすぐに下がってしまう。

何故だろう、わたしには運命の番がいるはずなのに何故かあの弟くんのことが気になる。
だけどこんなに近くにいて匂いがしないのなら私の番ではないのかな。

普通これだけ近くにいたら嗅覚の鋭い私には匂いを消そうとしても微かに感じることができてしまう。

そうして匂いはしないもののその気になる気持ちが消えずもどかしい気持ちになった私は一体何なんだろうと思いつつ気を紛らわすようにアイザックに振られた話に専念することにした。
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