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1話 苦痛の日々
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「テメェらなんか死んじまえっ‼︎」
なんでこんなことになってるんだろ。
俺は少し昔のことを思い返す。
✳︎ ✳︎ ✳︎ ✳︎ ✳︎ ✳︎
数年前俺たちはある家庭に生まれた。俺は三兄弟のうちの次男で頼もしいお兄ちゃんと可愛い弟と一緒にそれなりにだが幸せに暮らしていたんだ。
あることを除けば…。
それはうちの両親が世に言う毒親だったことだ。母さんは夜の仕事をしていて父さんがいない日は必ず男を家に連れ込んでいたし、父さんは仕事が終わるとすぐにパチンコをうちにいくほどのギャンブル好きだった。
そんな両親は俺たちがまるでいないかのように接した。それでもさすがに世間体は気にするようでいつも俺たちが死なないよう必要最低限の金をテーブルに置いて出て行く。ほんと胸糞悪い話だよな。
まだ小さかった弟はその状況をよくわかっていなかったけど、1番上の優兄ちゃんと俺は自分達が愛されていないことを十分に理解していた。
それでも優兄ちゃんは俺たちが寂しい思いをしないよう暇な時間はいつも遊び相手になってくれたし、俺たちが腹を空かせないように毎日ご飯の準備をしてくれた。本当にその時間が幸せだった。
でもある日を境にその生活が崩れたんだ。
それは父さんの会社が倒産してからだった。その日のうちに母さんは他の男と夜逃げをして父さんはなすすべもなくどんどんどん底に落ちていった。いつからか昼間から飲んだくれることが日課になり、しまいには俺たちに手をあげる始末だ。でも優兄ちゃんが俺たちを庇っていたから実際俺と歩夢はほとんど手を出されることはなかった。
「お兄ちゃんがいるから心配しないで。何があってもお兄ちゃんは太一と歩夢の味方だからね」
優兄ちゃんは優しい笑みをうかべながらいつもそう言ってくれる。
だけど日に日に増えていく傷を見るたびに俺は自分の不甲斐なさに悔しくなった。
そんな生活に重ねて悪いことが続き、金が底をつき始めた父さんは弟の歩夢をダシに金を稼ごうとし始めたんだ。歩夢は大人しい性格だし、何より兄弟で1番可愛らしい顔つきをしている。その辺のショタ好きにはたまらない容姿でうまくいくとでも考えたんだろう。
幸いなことにそれに気づいた優兄ちゃんが父さんと他の奴らを止めてくれたおかげで歩夢が最後までヤられることはなかったが、次の日優兄ちゃんの体には青紫色のアザがたくさん出来ていた。
「優兄ちゃんそれ…っ。」
「大丈夫。こんなのなんともないよ。心配してくれてありがとう。」
傷が痛むだろうに優兄ちゃんは笑顔を忘れることなくそう言った。
そこで俺はみんなと家から逃げ出すなり警察に行くなり何か行動に移すべきだったんだ。あんな事が起こる前に。
それはある夜の日だった。俺は何かの音がして目が覚めた。
ギシギシ …ギシギシ…ッ──。
何の音だろう。
そう思って優兄ちゃんを起こし隣の歩夢も起こそうすると歩夢が居ないことに気づく。
「優兄ちゃん、歩夢がいない…っ!」
そこからの展開は早かった。俺たちは音がする方へと向かい、ある部屋にたどり着く。そこは親父の部屋で未だに音が鳴り続いていたが、耳を澄ましたところで微かに音に混じって声が聞こえた。
「……ぃ………や…、…けて、おに───、たすけてっ…!」
「 ?!! 」
急いで扉を開けると歩夢に覆いかぶさりながら腰を揺らしている親父の姿があった。
「い、一体何してるんですか…っ‼︎」
優兄ちゃんはそう怒鳴りながら親父を突き飛ばし歩夢から引き剥がす。
「邪魔すんじゃねぇよ‼︎」
俺は咄嗟に泣いている歩夢に駆け寄り抱き寄せた。その間も優兄ちゃんは親父と揉み合っている。いつもただ俺らを庇うだけの優兄ちゃんはこれでもかと親父につかみかかって行く。でも大人の力に敵わずバランスを崩した優兄ちゃんはベランダから足を滑らして落ちていった。
「優兄ちゃん!!」
すぐにベランダから覗いたけどそこに優兄ちゃんの姿はなく、父さんはゆう兄ちゃんを殺した容疑で逮捕され、それを機に俺たちは母方の祖父母のお世話になることになった。
幸いにも祖父母は常識人で俺たちが苦労しないように面倒を見てくれた。それでもどこかよそよそしくて、俺たちと一戦引いている感じだった。
その時の俺はもっと早く助けてくれればとか
そんなことしか考えられなかった。けど今思えば自分が何かしら行動してればこんなことにはならなかったんだ。そんな自分の不甲斐なさと優兄ちゃんがいなくなったショックから毎日泣いて過ごしていた。
それでも俺には歩夢がいる。泣いている暇なんかないし、優兄ちゃんがしてくれたようにお兄ちゃんとして歩夢を面倒見なくちゃって思ってからは必死に生きてきた。
なんでこんなことになってるんだろ。
俺は少し昔のことを思い返す。
✳︎ ✳︎ ✳︎ ✳︎ ✳︎ ✳︎
数年前俺たちはある家庭に生まれた。俺は三兄弟のうちの次男で頼もしいお兄ちゃんと可愛い弟と一緒にそれなりにだが幸せに暮らしていたんだ。
あることを除けば…。
それはうちの両親が世に言う毒親だったことだ。母さんは夜の仕事をしていて父さんがいない日は必ず男を家に連れ込んでいたし、父さんは仕事が終わるとすぐにパチンコをうちにいくほどのギャンブル好きだった。
そんな両親は俺たちがまるでいないかのように接した。それでもさすがに世間体は気にするようでいつも俺たちが死なないよう必要最低限の金をテーブルに置いて出て行く。ほんと胸糞悪い話だよな。
まだ小さかった弟はその状況をよくわかっていなかったけど、1番上の優兄ちゃんと俺は自分達が愛されていないことを十分に理解していた。
それでも優兄ちゃんは俺たちが寂しい思いをしないよう暇な時間はいつも遊び相手になってくれたし、俺たちが腹を空かせないように毎日ご飯の準備をしてくれた。本当にその時間が幸せだった。
でもある日を境にその生活が崩れたんだ。
それは父さんの会社が倒産してからだった。その日のうちに母さんは他の男と夜逃げをして父さんはなすすべもなくどんどんどん底に落ちていった。いつからか昼間から飲んだくれることが日課になり、しまいには俺たちに手をあげる始末だ。でも優兄ちゃんが俺たちを庇っていたから実際俺と歩夢はほとんど手を出されることはなかった。
「お兄ちゃんがいるから心配しないで。何があってもお兄ちゃんは太一と歩夢の味方だからね」
優兄ちゃんは優しい笑みをうかべながらいつもそう言ってくれる。
だけど日に日に増えていく傷を見るたびに俺は自分の不甲斐なさに悔しくなった。
そんな生活に重ねて悪いことが続き、金が底をつき始めた父さんは弟の歩夢をダシに金を稼ごうとし始めたんだ。歩夢は大人しい性格だし、何より兄弟で1番可愛らしい顔つきをしている。その辺のショタ好きにはたまらない容姿でうまくいくとでも考えたんだろう。
幸いなことにそれに気づいた優兄ちゃんが父さんと他の奴らを止めてくれたおかげで歩夢が最後までヤられることはなかったが、次の日優兄ちゃんの体には青紫色のアザがたくさん出来ていた。
「優兄ちゃんそれ…っ。」
「大丈夫。こんなのなんともないよ。心配してくれてありがとう。」
傷が痛むだろうに優兄ちゃんは笑顔を忘れることなくそう言った。
そこで俺はみんなと家から逃げ出すなり警察に行くなり何か行動に移すべきだったんだ。あんな事が起こる前に。
それはある夜の日だった。俺は何かの音がして目が覚めた。
ギシギシ …ギシギシ…ッ──。
何の音だろう。
そう思って優兄ちゃんを起こし隣の歩夢も起こそうすると歩夢が居ないことに気づく。
「優兄ちゃん、歩夢がいない…っ!」
そこからの展開は早かった。俺たちは音がする方へと向かい、ある部屋にたどり着く。そこは親父の部屋で未だに音が鳴り続いていたが、耳を澄ましたところで微かに音に混じって声が聞こえた。
「……ぃ………や…、…けて、おに───、たすけてっ…!」
「 ?!! 」
急いで扉を開けると歩夢に覆いかぶさりながら腰を揺らしている親父の姿があった。
「い、一体何してるんですか…っ‼︎」
優兄ちゃんはそう怒鳴りながら親父を突き飛ばし歩夢から引き剥がす。
「邪魔すんじゃねぇよ‼︎」
俺は咄嗟に泣いている歩夢に駆け寄り抱き寄せた。その間も優兄ちゃんは親父と揉み合っている。いつもただ俺らを庇うだけの優兄ちゃんはこれでもかと親父につかみかかって行く。でも大人の力に敵わずバランスを崩した優兄ちゃんはベランダから足を滑らして落ちていった。
「優兄ちゃん!!」
すぐにベランダから覗いたけどそこに優兄ちゃんの姿はなく、父さんはゆう兄ちゃんを殺した容疑で逮捕され、それを機に俺たちは母方の祖父母のお世話になることになった。
幸いにも祖父母は常識人で俺たちが苦労しないように面倒を見てくれた。それでもどこかよそよそしくて、俺たちと一戦引いている感じだった。
その時の俺はもっと早く助けてくれればとか
そんなことしか考えられなかった。けど今思えば自分が何かしら行動してればこんなことにはならなかったんだ。そんな自分の不甲斐なさと優兄ちゃんがいなくなったショックから毎日泣いて過ごしていた。
それでも俺には歩夢がいる。泣いている暇なんかないし、優兄ちゃんがしてくれたようにお兄ちゃんとして歩夢を面倒見なくちゃって思ってからは必死に生きてきた。
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