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第132話 ソラティナ散歩

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「ソラ―。今日はティナの番だよ」

 朝から天使のダイレクトアタック。
 ふわりと天使が俺の胸に乗っかり、朝から幸せなのだが。
 さすがに天使といえど寝起きに胸のりは少しだけきつい。

「おはよう。ティナ」
「おはよう。今日はっティナの番ティナの番っ」

 さらっと胸からベットの上へと降ろすと、ベットで跳ねながら声を出しはじめるティナ。
 朝から元気なことで。

 シロとの二人外出を終えた翌日。昨日から言っていたとおり、今日はティナとの二人外出。
 
「なにかしたいことはある?」
「んー。あのね。ティナ行きたいところあるの」

 おっ。ティナが行きたいところ。これまで結構帝都でまったりしてきたが、あまりティナから行きたいところを聞いたことはない。

 これは絶対にそこに行こう。

 たとえ火の中、水の中、草の中、森の中。
 どこであろうとそこに行くと決めた。

「それはどこ?」
「あのね。冒険者ギルドっ」
「……」

 ん?斜め上の回答過ぎて頭の理解が追い付いていかない。
 冒険者ギルド?そんなものいくらでもいけるし、なんなら最近いった気がする。
 冒険者ギルド……なにがあったかな?
 別にこれといって用事はないし、地域密着型のスレイロンとは違い、都会の帝都での冒険者ギルドに知り合いも多くはいない。会いに行く相手もいないだろう。

 んー。
 はぁっ。
 もしかしてあれか?ティナも冒険者として仕事をしたいってやつか?以前もそれで依頼を受けに行ったしな。
 たしかに、ティナの依頼は最近受けていない。そろそろ受けたい時期なのかもしれない。

「わかった。依頼見に行こうな」
「依頼?ソラ仕事するの?」
「ん?俺は受けないよ?ティナが受けるんじゃないの?」
「ティナ依頼はしないよー。昨日シロちゃんがいっぱい魔物の素材持って帰ったでしょ?」
「うん」
「ティナも欲しいなって。でもティナだと集められないから、ギルドに行けばいっぱいあるかなって。ダメかな?」

 あー、なるほど。昨日の迷いの森産の素材を見て、ティナは宝物あつめしたくなったのか。
 目をキラキラしてダメかな?と言っているティナ。そんな天使を無視できるはずがない。
 いこう。冒険者ギルド倉庫に入れるかは知らないが、ここぞという時のA級冒険者。冒険者ギルド幹部マクレンさんの孫という権力。
 ここで権力を使わなくてはいつ使うんだ。

「ダメじゃない。行こう。絶対に俺が承諾させてやる」
「ありがとう。ソラ―」

 嬉しさ全開で俺に抱き着くティナ。
 お兄ちゃんに任せろ。絶対に首を縦に振らせてやる。

「いざゆかん。宝物探し」
「宝物さがしぃー」

 ありったけの夢をかき集め宝物を探しに、俺とティナはラキシエール伯爵家を出ていく。
 もちろん。テトモコシロも俺たちの後を追い、ラキシエール伯爵家から出て、貴族街の死角で影入りしている。
 
「ん」
「ん?はいっ」

 ティナが手を出してくるので、その手をとり、貴族街を歩いていく。
 
 ティナの歩調に合わせ、ゆっくりと帝都を歩いていく。
 こういう散歩も珍しい。二人が並んで、同じ歩調で歩む。いつもはモコの上にいるティナの姿か、うちの子たちで歩くティナの背中をみることしかないからな。

 貴族街を抜け、帝都の大通りにつくといつも通りの人の多さ。
 何ら変わりがないように見えるが、どこか時の流れがゆっくり進んでいるように感じる。

「ソラ。あのおばあちゃん可愛い」
「あー、そ、そうだな。可愛いな」
 
 ティナが指さす方を向くと、テトパーカーを着た70代ぐらいのおばあちゃんが歩いている。
 すこしだけ言葉に詰まったが、別に悪いことはない。
 ファッションは自由だし、どの年齢になろうと好きなものを着ればいい。それが人生を楽しむ秘訣なのだよ。

「あー、おじいちゃんもだー」
「そうだな。近くにいる子はお孫さんかな?」

 おばあちゃんが歩いていく先にはモコパーカーを着たおじいちゃんと小さいシロパーカーを着た子供。
 家族そろってうちの子パーカー。
 これにはさすがにうれしさを感じるし、そういう着方もあるのかと感心させられる。
 本当の家族ではない俺たちのパーカーを本当の家族が着ることで、すこしだけ家族にちかづけたのではないか。そんなエモいことを考えてしまったよ。

「うれしいねー。テトちゃん、モコちゃん、シロちゃんでいっぱいになるといいねー」
「そうだなー」

 それは少し困るけど。と言いたくなったが、ティナが嬉しそうなのでそのまま口にしないことにした。

「ソラ―、あれなんだろうね」
「なんだろうな」

 大通りをティナの歩調でゆっくり歩くと、新しい発見がいっぱいある。
 好奇心旺盛なティナは目につく知らない物を片っ端から俺に聞いてくるが、残念ながらほとんどの物の回答を持ち合わせていなかった。
 ほんとこの時ほど俺の知識不足を悔いたことはない。
 異世界転移で脳内図書館や叡智の書などの情報収集系の能力が欲しかったよ。

 今も、ティナは七色の変色する液体を見て、俺に質問してきている。
 もちろん返答はなんだろうな。

「これなに?」
「あら、可愛いお嬢ちゃんね。これはスライムでできた石鹸なのよ。綺麗な色しているでしょ?」
「うん。綺麗」
「ひとつ買うよ」
「まいどー」

 ティナが興味を持ったものすべて買っていく。
 今回はなにも急いでいない。ただただ二人の時間を楽しむことが目的。
 ゆっくり進めばいい。
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