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第121話 ソラはレベルアップしました

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うちの子たちがなぜか可愛いさを全開に振りまいているため、冒険者、職員の視線を一気に集めている。

 なぜ、うちの子たちは冒険者ギルドに入る際こんな入場の仕方をしたのだろうか。
 元気に笑顔を振りまいているうちの子たちを見るが理由がわからん。
 それほど冒険者ギルドにくることを楽しみしていたのか?

「これで怒られない?」
「きゅ?」

 俺の思考を読んだかのように、ティナはそう俺に向かって言ってくる。
 んー。いつもは猛スピードで入場し、駆け上がることを怒られていた。
 それは驚かせていることが原因なので、確かにこの入場の仕方だと怒られないのかもしれない。
 
 うちの子たち天才か?
 即座に問題の対処法を考え実行する。なかなか大人でもできる物ではない。
 考えはできるが、大人になればなるほど、実行には時間がかかる。

 でも、この入場の仕方を続けていると帝都の冒険者ギルドで看板天使ともふもふになる日も遠くないな
 
 冒険者たちよ。日々すたれている心に癒しを与えているうちの子にひれ伏せ。
 職員さんよ。日々の仕事の疲れを癒すうちの子たちに感謝せよ。

「何を大声を出しているんですか。あー、天使の楽園の皆さんでしたか。さぁー、三階の部屋へご案内します。職員は話していないで仕事に戻りなさい。冒険者を待たせすぎてはいけませんよ」

 階段から降りてきた副ギルマスのオリバーさんは一階職員に注意していく。
 その声を聴き、さっと仕事にもどる職員さん。

 なんかすまん。うちの子たちが可愛すぎてすまん。

 ふむふむ、うちの子たちが可愛いを振りまけばこうなると。
 対処法としては間違いではないが、それが職員さんが怒られることにつながるのは申し訳ないな。
 んー。難しい問題だが。今回に関してはうちの子たちの可愛いさに非はない。
 むしろ癒しを与えていて、職員さんのその後の仕事効率があがるだろう。
 よし、何か言われたらこれで行こう。

 適度な休息。適度なもふもふは日常生活、生命活動には必要不可欠で、それは遺伝子レベルでも解明されている。
 癒しというものの存在は、仕事への熱意。生活の質の向上に貢献しており、生きる糧として必要としている人もいる。
 だから今回俺たちは悪くない。よし、問題解決。
 
 もちろんのことだが、上記の内容は俺がただ思っているだけで、そんな内容の論文を読んだわけではない。

 俺たちはオリバーさんについていき、階段を上っていく。                                          
 いつもよりご機嫌さんのうちの子たちは跳ねるように階段を上がっている。
 俺よりもAランク昇格を喜んでいるようで、なんだか俺も嬉しくなってくる。

 以前通された部屋にオリバーさんは入っていく。その後を追う俺たち。
 
「ソラ君。ようやくギルドマスターを説得することができました。なにやらソラ君もマスターにあったことがあるようですね。その時の印象があまりよくなかったらしく、しぶっていたのですが、私がごり押ししておきました」

 挨拶もそうそう、オリバーさんはギルマスを説得した話をしてくる。
 やっぱり、あの時は問題児すぎたよな。
 自分でも自覚があるし、それをごり押しで押しきったオリバーさんがすげーよ。
 どうやればあんなサイコパスな人間のAランク認定をごり押したのか。
 
「ありがとうございます」
「それとこれがソラ君の冒険者カードです。Aランクからはその人のイメージカラーをモチーフとしたカードが作られます。ソラ君の場合は黒をモチーフにした白文字のカードに決まりました。私は緑色の方が可愛いと思ったのですがね、どうやらみんな死神のイメージが強いらしくそう決まりました」

 なるほど。たまに毛色の違うカードをみたことがあったが、Aランクからは冒険者カードも特別なのか。
 まぁー、俺が口をだすとしても、黒基調の白文字だろうから大満足だな。
 
 なぜか保護者面のオリバーさんはももっと可愛いらしいものがよかったのですがと悔し気。
 俺は可愛いくない。可愛いはうちの子たちの専売特許だ。
 俺はカッコいいを目指しているのでそこのところは知っておいてもらいたい。
 だが、口に出していうと、男の子はかっこいいのに憧れますよねとさらに、話が進みそうなので口にはださない。

「それと、今回作成は私が行いまして、再度従魔の種族を確認しましたが、これがアサシンタイガー、シャドーキングウルフ、エンペラーフォックスなのですね。言われてみても信じられないですが、触ってみてもよろしいでしょうか?」

 目をキラキラとさせ、俺に訴えかけてくるオリバーさん。
 大人の男性のこういう場面をあまり見たことはないが、もふもふに触りたい。これは老若男女共通の物だ。俺には偏見はないぞ。

「どうぞどうぞ。うちの子たちも嫌がってはいませんし。お菓子を食べながらでも触らせてくれますよ」

 与えられたおやつに夢中になっているうちの子たち。
 いろんなところの客室で与えらるお菓子。うちの子たちの間で俺は仕事だというのに、おそらくついていけばお菓子がもらえるぐらいの気持ちなんだろうな。
 今まで出会ってきた人の大半は、もふもふに甘く、天使に優しい。こういう俺だけの話し合いの時は必ずといっていいほどうちの子たちは餌付けをされている。

 オリバーさんはもふもふに触れ、少しの間撫でると満足げに俺たちに感謝の言葉を述べてくる。

「それで、Aランクからは貴族と同等の権力?地位?というやつなんですかね?」
「武闘大会の褒美の話しですね。基本的には貴族からバカにされたり、下に見られたりすることはありません。ですが、それは基本的な貴族だけです。王族、公爵、侯爵などの貴族の中でも上位貴族である方の中ではそう考えてはいない方も少なからずいます。また、男爵、子爵などの下級貴族でもそういう場面がございます」
「なるほど。まぁー、冒険者を認めている貴族相手には使えるぐらいの感覚でいいのかな?」
「そうですね。結局は人と人の付き合いですので、関係性によっても変わってきます。Aランクだからといって、調子に乗っていると、問題行為として貴族側から苦情が来る場合がありますので、お気をつけください。でも、ソラ君たちは大丈夫だと思います」
「?大丈夫とは?」
「武闘大会優勝かつ、皇帝直々に与えられた褒美ですからね。冒険者としても力は申し分ない、それに加え、国のトップが同等の地位、権力を与えるつもりで、Aランク推薦を与えた。それを軽んじれば、皇帝を軽んじているとなんら変わりがないですからね。そのことの意味を理解できる常識がある貴族は問題なく接してくれるはずです」
 
 ほぉー、俺が思っているよりも皇帝さんは俺の希望を叶えてくれているみたいだ。
 やはり、こういう部分も学んでいかなくちゃいけないな。
 今まで権力とかに触れる機会もなく、避けてはきていたが、知らぬ間に恩を受けている可能性がある。
 言葉の表面上だけではなく、その裏側も理解できるようにしていこう。
 
「まあ、めんどくさい貴族には関わるなってことですよね?」
「そうなります。問題ごとが少ないのにこしたことはありませんから」
「気を付けます」

 あの気持ちが悪い男とかな。めんどくさいことこの上ないから、関わらないように生きていこう。

「それで、依頼の方はどうでしたか?帝都にいるということは採取できていると思うのですが」
「あー、ごめんなさい。依頼を忘れてまして、納品していなかったんです。これが納品分です」

 テフテフの実を影収納から取り出し、机に並べていく。
 それを見ていたテトモコシロははぁっとした目になる。
 
 ふふ、テトモコの影収納に入れていたら気づかない間になくなっていそうだからな、すべてテフテフの実は俺が管理している。動くから心配ないだろうが、食べ過ぎで太るのは健康によくない。
 あのポヨンポヨンの姿も悪くはないが……ね。戦闘もするし、身軽である方がいいのだよ。

 俺も依頼のことをすっかり忘れていたんだ、テトモコシロもテフテフの実のことを忘れていたのだろう。
 今にも飛び掛かりそうなので、とりあえず三つだけ放り投げておく。

「可愛いですね」
「でしょ?うちの子たちは最強で最かわなんです」

 投げられた三つを、何も示し合わせず、それぞれが一つずつかぶりつく。
 しっぽをフリフリしながら一心不乱に食べている姿は誰が見ても可愛いだろう。
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