うちの天使に近寄るな~影と風に愛された死神はうちの子を守りたいだけなんだ~

朱音 アキ

文字の大きさ
上 下
121 / 134

第120話 日常の一コマは重要なパーツだと思うんですけど、読者の皆様は好みではありませんかね?やっぱりなにかインパクトが欲しいですか?

しおりを挟む
「ソラ君、問題はありませんでしたか?なにやら大きな声が聞こえましたが」

 問題ありましたよね?報告してください。
 そう言っているかのように俺に質問をしてくるサバスさん。

「大丈夫。問題なしです」
「……本当ですか?」
「たぶん」
「……わかりました。確かにエルドレート公爵様も大変喜んでお帰りになられていましたので、今回は大丈夫なのでしょう」

 喜んで帰ったか。ほんとに気持ちが悪い男だ。
 
「それでお疲れのようなのですが、冒険者ギルドから手紙が届いております。どうやらお急ぎのようなのですぐにご確認ください」
「ん?急ぎ?」

 俺はサバスさんから手紙を受け取り、すぐさま目を通していく。
 なになに。
 副ギルマスであるオリバーさんからの手紙か。

 ソラ君のAランク認定がされました。冒険者カードも準備ができましたので冒険者ギルドに顔を出してください。
 それと、テフテフの実の依頼がもうそろそろ期限が過ぎてしまいます。このままでは依頼失敗となりますので、二日以内に受付までお越しください。

 おっと。Aランクの昇格は嬉しいが、そんなことより、普通に依頼をうけていたことを忘れていた。
 迷いの森でテフテフの実の採取。あの時はドラゴン騒動で、ルイやジェイドさん、皇帝と振り回されまくったからな。
 それにお茶会参加者からの手紙を読むという強制労働。

 普通ならそのまま依頼失敗となり、業績の失敗数が増えるだけで連絡などこないだろうな。今回はAランク昇格の件があったので、タイミングがよかったのだろう。

「ティナ。冒険者ギルドに行くから、シロローブ着てな」
「ギルド?お仕事?」
「この前依頼を受けただろ?それを納品しにいくんだ。それと俺はAランクになるらしい」
「Aランク?すごいすごい。お祝いだー」

 うちの子たちは勝利の舞改め、祝福の舞をエンジェルリングで披露している。
 やったっやったっと喜びながら俺を祝福している天使ともふもふ。
 すこしだけ前の舞とは違い、もふもふ達の動きがアクロバットになっている。
 
 この踊りはいつどこで練習しているのだろうか。
 二十四時間。ほぼ一緒にいるのだが、これの練習風景を未だ見たことがない。
 以前モコに聞いたのだが、一応練習はしているらしい。だけど俺には内緒ということだそうだ。
 
 だから俺はそれ以来言及していないし、見るつもりもない。
 考えてみてくれ、これがつるの恩返しバージョンなら最悪な展開を迎えるんだぞ?
 ちょっとした好奇心がすべてを無にする典型例。
 その好奇心でエンジェルリングが二度と見ることができないという事態になったら、俺は悔やみきれないほどの後悔をするだろう。
 だからうちの子たちで遊ぶような雰囲気を出している時は読書タイムへと移行するようにしている。

「ソラ?いくっ?」
「にゃ?」

 うちの子たちの可愛いらしい祝福の舞に見とれているとティナとテトから声がかかる。
 
「ごめん。じゃー行こうか」

 今日はみんな歩きたい気分なのか、モコに乗ることもなく、ラキシエール伯爵家を出ていく。
 
 陽が照らす貴族街で楽しそうに前を歩く三匹と天使。
 俺はその後ろ姿を追っているのだが、時折、俺がついてきているのかを確認するように振り向くのがまた可愛い。
 こう、ちらっと見て確認すると、またみんなで仲良く歩き出す。
 それも全員揃ってではないから、俺は結構頻繁にうちの子たちに確認されている。

 こういう単なる日常の風景。その中でも思い思われの行動が見えるところがまた嬉しく思う。
 
 地球には見返り美人という言葉があるだろう?
 あれは振り返った時の横顔が美しいと思えた時に使う言葉なのだが、うちの天使は振り返らなくても後ろ姿だけでも美人さんなんだ。
 こういう時はなんていえばいいんだろうか。
 
 後ろ姿美人だと、前からみたら不細工なのかもしれないという少しだけ風刺のような物が入っている気がする。
 んー。難しいが天使はどの角度から見ても美人さん。360度美人。全方位美人とでもいうのかな。

 そもそもそれだと普通に美人でいいかもしれないけどね。
 
 
「ソラ―、遅い」
「きゅうきゅう」

 俺が考えごとをしている間、歩みは遅くなっていたようで、少し遅れていると感じたティナとシロはすぐさま声をかけてくる。

「ごめんごめん。そろそろ貴族街もでるし、モコにのって移動しようか。建国記念祭が終わったとしてもまだ、人は多そうだし、一応有名人だからね。囲まれるとめんどくさい」
「わかったぁー。モコちゃん。おすわりー」
「わふっ」

 モコはティナの指示を聞き、お座りではないが、ティナの前で体を伏せる。
 なんでもティナの中で伏せという言葉はあまり好きではないらしく、普通にお座りして欲しいときも、乗りたいときもおすわりという指示を出す。
 そこをモコが察知して、お座りか伏せかを判断しているのだ。

 モコが賢いからできるけど、普通の犬とかなら無理だろうな。
 
 うちの子全員モコに乗り、モコは颯爽と帝都の大通りを走り出す。
 一応、急いではいないので、それなりのスピードでだ。
 突然のもふもふ、天使、武闘大会優勝者の登場にいつもどおりの視線をあつめるが、そんなものは気にしない。

 パレードの見世物ではないんだぞ。うちの子を愛でたいのはわかるが近寄ってくるんじぇねー。
 
 そう、あたりを睨みつけるが、後ろからカッコいいと黄色い声が聞こえている。
 どうやらまったく俺の睨みは機能していないようだ。
 結構、敵対者相手には有効な睨みなんだけどな。こういう時の睨みは一向に機能しようとしてくれない。今さらながら十歳という年齢がたまにつらくなるな。

「ついたぁー」
「わふー」
「そうだな。モコゆっくりな。怒られちゃうから」
「わふ」

 モコは了解と一鳴き。
 もう冒険者ギルドで怒られるようなことはしたくないんだ。上級冒険者として恥じない姿を後輩ちゃんたちに見せていかないとな。
 俺は気持ちを切り替え、表情をキリリとさせる。

「では、行こうつ」

 俺の合図でモコは鼻をあて、扉を開けていく。

「にゃー」
「わふー」
「きゅー」
「きましたぁー」

 うちの子はなぜか、冒険者ギルドへと足を踏み入れると、手をあげ、到着を知らせる。
 その姿はどんなにガタイがよく強面の冒険者でも顔がほころんでしまうようなかわいらしさ全開だ。
 俺が顔を引き締めたのも意味がなく、当然女性冒険者や職員などから可愛いと黄色声。
 
 はぁー。俺がかっこつけるのはもう少し年齢が上がってからにしよう。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

追い出された万能職に新しい人生が始まりました

東堂大稀(旧:To-do)
ファンタジー
「お前、クビな」 その一言で『万能職』の青年ロアは勇者パーティーから追い出された。 『万能職』は冒険者の最底辺職だ。 冒険者ギルドの区分では『万能職』と耳触りのいい呼び方をされているが、めったにそんな呼び方をしてもらえない職業だった。 『雑用係』『運び屋』『なんでも屋』『小間使い』『見習い』。 口汚い者たちなど『寄生虫」と呼んだり、あえて『万能様』と皮肉を効かせて呼んでいた。 要するにパーティーの戦闘以外の仕事をなんでもこなす、雑用専門の最下級職だった。 その底辺職を7年も勤めた彼は、追い出されたことによって新しい人生を始める……。

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

とある元令嬢の選択

こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。

側妃契約は満了しました。

夢草 蝶
恋愛
 婚約者である王太子から、別の女性を正妃にするから、側妃となって自分達の仕事をしろ。  そのような申し出を受け入れてから、五年の時が経ちました。

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

大好きなおねえさまが死んだ

Ruhuna
ファンタジー
大好きなエステルおねえさまが死んでしまった まだ18歳という若さで

無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~

鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!  詳細は近況ボードに載せていきます! 「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」 特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。 しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。 バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて―― こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

処理中です...