113 / 134
第112話 マフィア
しおりを挟む「ただいま」
「おかえりー」
「わふー」
「きゅー」
思わぬ出会いでいい情報を聞けたためルンルンで帰宅した俺。
そんなルンルンな俺をこちらもルンルンで迎えてくれるうちの子たち。
熱い抱擁を交わし、甘えてくる子たちを存分に甘やかす。
「お仕事がんばったっ?」
「がんばったぞー。今日の夜もお仕事だ」
「ティナは?ティナもいくっ?」
「ティナはフィリアとお留守番っ」
「んー、わかったぁー」
「ソラが夜に仕事?」
「あー。うん」
「あー、わかったわ。またろくでもないことなのね」
俺の出迎えに来てくれたフィリアは俺の顔を見て、なぜかなにかを悟っている。
ほんとこいつには隠し事ができない。
まあ、確かに今は顔がにやけているかもしれないけどな。
「なぁー、フィリア。質問いいか?」
「何よ。改まって。別にいいけどなに?」
「前さ、マフィアをすべてはつぶさないって話してたじゃん?あれって、帝都ほどの大きなスラム街があるところなら、そこをまとめているマフィアが一つなくなろうとも問題がないってことだよな?」
「……ソラ?あなた何をしようとしているの?」
「お仕事」
「問題がないことはないけど、大丈夫なはず。少しだけ勢力図は変わるでしょうけど、私たちには影響はないわ。というか、ソラって冒険者だよね?どこかの組織の幹部、国の暗部とかではないのよね?」
「当たり前だろ?なんで俺が自由を捨て、そんなめんどくさい役職につかないといけないんだよ。俺は自由を謳歌し、天使、もふもふを愛す死神だ」
「んー。だよね。またもめ事?」
「そうだね。まあ、今日でおそらく終わりじゃないかな?」
あの金髪バカを処刑できれば、決闘から始まったエルドレート公爵家とのしがらみはなくなるはずだ。
まあ、また新たなしがらみできるかもしれないが。
しがらみや恨み、そういうものは一つがなくなればまた生まれてくるもの。
今日する行動でまた新たなしがらみが生まれる可能性は捨てきれないな。
「そういえば、帝都のスラム街をまとめているマフィアは三大マフィアだっけ?」
「そうよ。ギラン組、シルベスターファミリー、ドクズチーム。この三勢力ね。で、武闘大会の流れからギラン組かしら?」
「さぁーね」
「そこまでいってわからない人はいないわよ。別に私は何も思わないし、一般人に危害が加わらないならなにしてもいいわ。別に心配しているわけではないけど、ケガだけはしないでよね。ティナちゃんが心配するでしょ」
なるほど。その三勢力ね。ツンデレ属性をほんのりと発揮しているフィリアにツッコミを入れるのはやめておこう。めんどくさいし、俺たちにラブコメはない。
勢力図とかスラム街の均衡とか知らないけど、俺のしりぬぐいはどこかのマフィアにお任せしよう。
俺たちに迷惑かけなければ、好きに自分の勢力を高めてくれ。
「なにかそのマフィアについての情報はないか?」
「んー。私もそんなに詳しくないからね?知っていることなんて一般的なものぐらい。ギラン組とシルベスターファミリーは昔からある組織でその歴史も長い。その分勢力も多いし、スラム街での影響力は大きいわ。それに比べるとドクズチームは新興マフィアと呼ばれている。少数精鋭であるけど、その一人一人が厄介な人物って言われているわね。確かボスみたいな人はいなかったはずよ」
なるほどな。ギラン組は思ったより人が多そうだな。これはもしかして結構手こずる可能性があるか?
それにしても少数精鋭のマフィアか。こいつらはやばそうだな。
少数精鋭で活動できるなら、冒険者とかでも活躍できるだろうに。
わざわざスラム街を拠点にしなくてもやっていけるはずだ。
こういう少数精鋭のやつらは決まって強い。
どのアニメや漫画でもそうだ。どこぞの旅団も一三人ぐらいだったし。
自分たちの強さに自信があり、それを知っているからこそ自由にする。
あまり関わりたくないやつらだな。
「シルベスターファミリーってのはどうゆうところだ?」
「シルベスターは名前通りで、シルベスターという人物がトップに立ち、まとめているらしい。本当の子供ではないでしょうが、トップはつねにシルベスターの名を持つって聞くわね。歴史が長い分、スラム街の知識も豊富だろうし、ギラン組がなくなったとしても、おそらく上手にまとめてくれるわ。噂話だけど、国ともつながっているらしいしね」
じゃー、俺のしりぬぐいをしてくれるのはおそらくこっちかな。
国とつながってるとか、考えるだけで嫌になるが、国をまとめるのも大変なんだろうな。
どうしても表だけでは国はなりたたない。必要悪という考え方がこの世界にあるのかは知らないが、汚い部分を処理する組織も必要だと。
住民全員を幸せにする。
以前、フィリアが言っていた言葉だが、そのためには悪を使うしかない場面もでてくるんだろうな。
国とは違い、領地経営ではおそらくマンパワーが足りなくなる。
当たり前の話だが、マンパワーが足りなく、目の届かないところにいる住民は好き放題の生活を送るだろう。
どうして人は監視の目がないとこうも不誠実な生き方をするのか。
日本にいた時に見たことがある記事だが、一般的な人は監視の目がないと九五%は不正、手を抜くなどの行為をするらしい。
認めたくはないが、わからなくもないデータだ。
やはり他の人の目がないと、手を抜く人は多そうだし、作業スピードも変わってくるはずだ。
このデータは仕事上の物だが、生き方でも同じような考え方はできるだろう。日本でもわざわざ人目があるところで犯行を犯す人は少ない。だからこそ、監視カメラがあり、わざわざカメラ作動中などのポップを貼って注意喚起している店まで存在する。
俺ら一般人からすれば、監視カメラなんてあるのはわかっているし、こんなポップを貼ってもするやつはするだろって考えになるが、結構防犯には必要な措置らしい。
現代日本にはカメラという素晴らしい。いや、ほんとに素晴らしきものが存在することで可愛いものを保存でき、かつ犯罪防止などもできる。
残念ながら、この世界にはカメラがない……
なぁ、神様。犯罪も防止できるんだぜ?カメラ必要じゃないかな?
あなたが大切にしている生物を助けると思ってさ、ダンジョンにでもいい、カメラを報酬として宝箱にいれてくれないか?
どこにあろうと俺はとりに行くし、市場にでるならば即座に買うからさ……
待つこと数秒。もちろん反応はない。
切実な俺の願いも神様には届いていなそうだ。
まあ、カメラが欲しいって話ではなく、人が生きる社会では悪は必要で、上手く付き合っていく必要があるって話だ。
シルベスターファミリー。まったく内部情報とかは知らないけど、しりぬぐいお願いしますって菓子折りでももっていこうかな。
0
お気に入りに追加
1,727
あなたにおすすめの小説
追い出された万能職に新しい人生が始まりました
東堂大稀(旧:To-do)
ファンタジー
「お前、クビな」
その一言で『万能職』の青年ロアは勇者パーティーから追い出された。
『万能職』は冒険者の最底辺職だ。
冒険者ギルドの区分では『万能職』と耳触りのいい呼び方をされているが、めったにそんな呼び方をしてもらえない職業だった。
『雑用係』『運び屋』『なんでも屋』『小間使い』『見習い』。
口汚い者たちなど『寄生虫」と呼んだり、あえて『万能様』と皮肉を効かせて呼んでいた。
要するにパーティーの戦闘以外の仕事をなんでもこなす、雑用専門の最下級職だった。
その底辺職を7年も勤めた彼は、追い出されたことによって新しい人生を始める……。

鑑定能力で恩を返す
KBT
ファンタジー
どこにでもいる普通のサラリーマンの蔵田悟。
彼ははある日、上司の悪態を吐きながら深酒をし、目が覚めると見知らぬ世界にいた。
そこは剣と魔法、人間、獣人、亜人、魔物が跋扈する異世界フォートルードだった。
この世界には稀に異世界から《迷い人》が転移しており、悟もその1人だった。
帰る方法もなく、途方に暮れていた悟だったが、通りすがりの商人ロンメルに命を救われる。
そして稀少な能力である鑑定能力が自身にある事がわかり、ブロディア王国の公都ハメルンの裏通りにあるロンメルの店で働かせてもらう事になった。
そして、ロンメルから店の番頭を任された悟は《サト》と名前を変え、命の恩人であるロンメルへの恩返しのため、商店を大きくしようと鑑定能力を駆使して、海千山千の商人達や荒くれ者の冒険者達を相手に日夜奮闘するのだった。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-
ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。
自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。
いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して!
この世界は無い物ばかり。
現代知識を使い生産チートを目指します。
※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

とある元令嬢の選択
こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる