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第100話 手紙

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「んー。マーガレットさん……フレンドさん……」

 絶賛、俺宛の手紙を確認しているのだが、そろいもそろって内容というものがほとんどない。
 長めの文章で語られていることを要約すると会ってお話ししたい。よければ使命依頼を受けないか?騎士としてわが領地へ。
 そんなくだらないことばかりだ。
 そもそも会って話したいってなんだよ。目的がなさすぎるだろ。
 
 ティナたちは先ほど昼食を終えたので、今はベットの上でまったりタイム。
 いずれお昼寝の時間がくるだろう。
 
「お、従魔愛好家からの手紙だ。たしか手紙を送ったって言ってたな」

 俺は貴族の手紙を横に避け、中を確認していく。
 
 なになに。王宮の一室で従魔愛好家のパーティ―を行います。従魔たちもつれてきて欲しい。
 最新の従魔フードや衣装の発表会。相談会などがあると。
 この世には従魔フードと呼ばれるものがあるのか。確かにテフテフの実も魔物に対してはすごくおいしそうになっているし、そういう商品の開発も行っているのかもしれない。
 それに衣装の発表だと?楽しみすぎる。
 ベクトル商会なのでは従魔専用の服はおいてなかったが、もしかしたら勇姿の団体が商品化をしているかもしれない。
 それにしても日程は一か月後か……まあ、そりゃそうだよな。明日にでも出席したかったのだが、貴族とかも集まる会だろうし、それぐらい前から参加のお誘いをしているか。

 自由な冒険者に一か月後の予定を聞かれても正直わからん。
 今までも気ままに行動し、案外暇なく生活しているからな。
 とりあえず、手紙でも出席の意思表明をしておこう。

 天使の楽園。従魔込みで参加させていただきます。


 さて、名簿にある貴族の手紙は一応目を通したな。
 あとはとりあえず、差出人の名前だけ見て、読むかを決めておこう。

 ネザートさん。男爵。うん知らないから読まない。
 メリネードさん。伯爵っと。これも知らないから後回し。
 
 ヴァロン帝国には一体どれだけの貴族がいるのか。まだまだ手紙はなくなりそうにない。
 あれ?ソラ・カゲヤマというあて名書きで、他と一風変わった筆のような物で達筆な文字で書かれている手紙が一枚。。
 差出人のところにはギラン組と書かれている。

 あー。なんだっけか。武闘大会でそんなやつと戦った気がするな。
 確かうちの子たちに敵意向けたから、恥ずか死の研究をしたやつの組だよな。
 若頭だったかな?案外精神力がなくて感想すら言わず敗北宣言したやつ。
 もしかしたら恥ずか死の研究についての感想がかかれているのか?

 俺はその手紙をあけ、中を確認する。
 おおー、貴族の手紙とは違って非常にシンプルでわかりやすい内容だ。
 そこにはたった一文のみ。

 お礼がしたいからギラン組へ一人でこい。

 あれかな?崇高なる恥ずか死の研究に参加させてくれてありがとうと感謝の気持ちをのべてくれるのかな?
 謝礼なんていいのにな。気持ちだけで嬉しい。
 それにしても研究結果に必要だから、感想もつけて手紙にして欲しかったな。

 ぺらっぺらの一枚の手紙をみて研究について考えているが、まあ、世の中そんな優しい世界ではないよな。
 ギラン組。話だけは聞いたが、どうやらスラム街をまとめる一つの組織らしい。
 日夜、スラム街の荒くれ者をまとめ、闇ギルド経由で仕事を斡旋しているとか。
 その中では表ざたにはできない闇深い仕事もあると聞く。

 そんなギラン組がする俺へのお礼。

 一体なんだろうな。日本のそういう組織でのお礼は報復という言葉で表されることがあるが。
 この世界でもそういう使われ方をするのだろうか。
 それに俺一人でこいという名ざしの呼び出し。
 
 ふ、俺をあまり舐めない方がいい。
 
 ソラ・カゲヤマ。日本で二一年すごし、ふいの出来事でこの世界に異世界転移してはや二年。
 日本では武術や運動などはあまりしてこなかったが、こちらにきて自分なりにだが己を高め、戦闘において自信をつけてきた。それの証明として先日の武闘大会で優勝、直にAランク冒険者にもなる。
 
 本当になめてくれるなよ?


 自由な死神。ソラ・カゲヤマがそんなめんどくさい所に行くわけがないだろう。
 どこのイベント製造機の主人公だ。
 自らめんどくさいイベントが起きそうなスラム街などなぜ行く必要がある?
 そんなやつはバカだ。
 
 それに本当にお礼がしたいなら甘いお菓子の詰め合わせを送ってこい。
 それが一番のお礼だ。会いに来いなどと上からの指示なんて無視一択。

「モコ、燃やして」
「わふっ」

 ふわりと手紙を風魔法で浮かすと、モコは塵も残さす手紙を消滅させる。
 これぞシュレッダーいらずの紙の処理方法。
 再生紙などはこの世界にないだろうからね。どうせ焼却処分だ。
 うちのモコが焼却処分をしても問題がないだろう。

 あー、事務処理をしているこの忙しい時に、無駄で生産性のない時間を過ごしてしまった。
 文字数は少なかったが、思考を含め、およそ二分。
 死神の二分は大きいぞ?どれだけうちの子を撫でられると思っているんだ。
 
 さっ、気分を変えて、手紙の整理に戻ろう。
 んーっと。あ、クロエさんからの手紙だ。
 そういえば先生になってもらってからほとんど顔を出してなかったな。
 もうそろそろ二度目の授業の時期かな?

 一応俺宛の手紙なので、ティナに伝える前に確認しよう。
 ちなみにティナとシロはすでにお昼寝しているからね。

 手紙を開き、中をのぞくと、そこには。
 綺麗な文字で紙一面にびっしりと書き詰められている。
 
 どこか猟奇的に感じるが、とりあえず読み始めてみる。

「こ、これは……」

 手紙に書かれている内容を要約すると、ルイを素直にさせてくれてありがとう。
 そしてルイとクロエさんの出会いから、ルイとの思い出、ルイの好きなところ。
 それらが紙一面に書かれていた。

 なんだこのバカップルは。
 俺に惚気ないと死んでしまう病気なのか?
 別に感謝の気持ちを手紙として伝えるだけでいいだろうが。
 俺にルイの好きなところとか教えてくれてもなにも感じないぞ?
 ルイが編み物が苦手だったり、回復魔法が苦手だったりなどの情報を俺が得てどうしろと?
 
 そこがまた可愛いく、私の得意な分野だから、カギと鍵穴の関係で私が埋めてあげるのっと
 あー、お腹いっぱいです。
 ほんと勘弁してください。
 それでなくても最近のルイはうざさに磨きがかかっているんだからな。
 しかもルイは無意識で惚気てくるからたまったもんじゃない。

 さっさと結婚でもなんでもしてくれ。
 お祝いは盛大にしてあげるから、俺に惚気るのはやめてくれ。

 俺は手紙を机に投げ出し、ティナの枕となっているモコに抱き着く。
 俺にはこのもふもふと天使がいる。
 それ以外必要ない。
 ほら、今も俺に抱き着かれて、モコがしっぽを振っているだろ?
 可愛い事この上ない。

 ほら、テトも俺に近づいてくる。

「にゃにゃにゃ」

 ティナシロが寝ているから静かにしてっと。
 そんなこと言いながら俺に体を寄せてきているじゃないか。
 ここを撫でてほしいのか?
 
 ごろごろーと声をあげながら甘えてくるテト。
 ほんとティナシロにはしっかりとしたおねえちゃんだが、俺の前だと可愛い妹だ。
 存分に甘えさせてあげよう。


 この世界にもあるのだろうか?日本ではこんな言葉がある。

『気が向いたらいくよ』

 たまに友達同士の会話で使われる言葉だが、俺はこれを言ったやつが本当に来たのを見たことがない。
 その場しのぎでしかない言葉。
 みんなわかってはいるがそれ以上暗黙の了解で突っ込んではいけないという不思議な言葉。

 だから俺も使わせてもらう。

「気が向いたら残りの手紙は読むよ」
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