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第95話 飛んでパク
しおりを挟む「テフテフの実を取りに行こうぞ」
「いこっー」
謎にドーラの掛け声でティナは右腕を上げ、行く気満々。
テトモコシロも先ほど準備運動してたしな。
行くんだろうなーとは思っていたよ。
フールさんや?これは俺も行っていいよね?
風の研究は一旦お休みしてもいいよね?
ティナとの木の実狩りイベントを逃すのは嫌なんだけど……。
「なにフールを見ておる。ソラも行くに決まっておるだろう。早く準備をせい」
「あー、ありがとう。準備も何も、俺はこれで準備万端だ」
いつも手ぶら、神様印ロープ、ブーツ。ただそれだけで十分だ。
問題はテントをどうしようかってところだけど。
「フールは行かないのか?」
「このテント納めるのもめんどくさいでしょ?私はここで寝ているわ。気持ちいいの」
テントの布団の中から答えるフール。
テントにいてくれるのは助かるのだが、寝るってどれぐらいだ?
頼むからちょっとが数年なんてことはないよな?
その時は切りつけてでも起こすからな?
「ソラなによ」
「いや、数年とか寝られると困るなと……。」
「そんなはずないでしょ。本格的には寝ないわよ」
「それならいい。テントをお願いね」
まぁー、どうしようもできない時はドーラがなんとかしてくれるか。
ティナの肩らへんを呑気に飛んでいるドーラを見る。
んー。平和だな。
友達のことはまかせるからな。
「にゃにゃ」
「あー、俺たちも行くか」
今日のテトは俺と行動する気分らしい。
俺の肩の上で俺の頬にぺしぺしと攻撃してきている。
はいはい。追いつきますよっと。
木々の間をどんどんと進んでいくモコ。
今日のお掃除担当はシロらしく、考えなしで向かってくるダンジョンの魔物を蹴散らしていく。
迷いの森の魔物はゴブリンや鹿、鳥、虫。
結構苦手な見た目な虫もいたが、シロが土魔法でぐちゃぐちゃにしていた。
まあ、きれいに倒さないたびにモコが口出ししていたがな。
ティナはモコの上で、楽しそうに森のあちこちを見ている。自動で進むモコの上で森林探索は楽しいだろうな。
「あれは何―?」
「あれはポーションに使用する薬草じゃな」
「あれはー?」
「あれは木に擬態したトレントという魔物の花じゃぞ。あの花が出す臭いで獲物を誘うのじゃ。シロよ。倒してよいぞ。真ん中あたりを切断すると死ぬ:
「きゅうきゅう」
ティナのあれ何攻撃が何回も飛んでくるが。
それに対して、ティナにもわかりやすい言葉で説明するドーラ。
さすがドーラという感じで、辞書でも持っているのかというほどすべてのことについて詳しい。
でも、もしかしたら迷いの森に向かう冒険者なら頭に入れておくべき内容なのかもしれない。
今のトレントのことも俺はまったく知らなかった。
索敵しているからこそ、あれが魔物に近いなにかということが分かったが。あれだけ大きく、動かない魔力だと気づきにくいな。
単なる魔力のある何かとしか思えなかった。
テトモコは魔物とわかっていたみたいだけどね。
俺の索敵もまだまだ改良の余地があるな。
シロも問題なくトレントの幹を砕いていた。ドリルのような土の槍を回線させ、大きな風穴を開あける。
シロも魔法の使い方が人間味あふれる者になってきた気がする。
シロなりに勉強しているのかもしれないな。
「わふわふ」
「どこからー?」
「わふっ」
モコがテフテフの実の匂いを嗅ぎつけたらしい。
ゆっくりと進んでいたが、ちょうど一時間ぐらいかな。
さすがモコだ。時間通りの誘導ありがと。
モコが進んで行く先を追いかけていくと、そこには木からつるされた青いこぶし大の木の実が数個。
テフテフの実で間違いないだろうが、それは蔦を揺らしながら左右へと揺れている。
風で揺れている?と思いたいが、そこまでの風は今ない。
ということは、木の実が自体が揺れている可能性が高いが。
木の実が揺れるってどうゆう現象だよ。
今も目の間で揺れているテフテフの実。
んー理解ができない。ファンタジーという言葉で片付けてもいいだろうか。
「それがテフテフの実じゃの、相変わらず食べたいとは思えないほど青い実だの」
「なー、なんで揺れているの?」
「なんでじゃろうな。木と会話したことはないのでな。わからん。だが、その実にすこし魔力がこもっているせいなのかもしれん。魔力と言っても微量で何も起きないがな」
「食べ過ぎたらダメなものか?」
「いや、それはないぞ。初めて見つけた時は大量に狩って食べまくったからのー」
被検体がドラゴンだとなんの確証もないんだけどな。
逆にドーラが食べ物で食あたりするところを見てみたいよ。
絶対にそれは食べ物でなく、猛毒の類だと思うがな。
「じゃー、採るか」
「きゅー」
俺が言い終わる前に、OKサインが出そうだとシロは駆け出していた。
地面を蹴り、空中に飛び出したシロは揺れているテフテフの実へとがぶりと噛みつく。
そのまま着地し、きゅうきゅうと声を漏らしながら、テフテフの実を完食する。
シロのなかで採るっていう言葉はわからなかったのかな?
あれだとただの食事なのだが。
テトモコもうらやましそうな顔をしているのでOKサインを出す。
まあ、先にうちの子のおやつだな。
採取はそれからだ。ありがたいことに見える範囲にテフテフの実がなる木は多い。
「あんまり食べ過ぎちゃだめだよー」
「ティナも取りたい」
「んー。じゃー、俺の前に来て」
「はいっ」
俺に向き合うように立つティナ。
上目遣いでみてくる天使を撫でてみる。
「えへへー、ちがう。木のみ」
「あー、つい。逆向いて」
「はーい」
危ない危ない。ティナの天使さで目的を忘れてしまうところだった。
天使の恐ろしきパッシブスキルだ。
ティナを後ろから抱き上げ、風魔法で上昇していく。
天使のティナは軽いのだ。腕力だけでティナを支えることだってできるんだから。
と言いたいところだが、こちとら十歳の少年なんでな。
腕力だけではさすがにプルプルしてくるので、ティナの下にも風を置いてる。
ティナだけでもいいんだけど、さすがに不安だから念のためこの形をとる。
決して、特等席でティナの採取を見たい。二人の共同作業だねとか思ってはいないよ。
「んー。止まって」
ティナは左右に揺れるテフテフの実と格闘中。
テトモコシロは器用に口で落とし、そのままペロリ。
ティナの可愛いおててだと少し大きくて取りにくいかな?
「俺がとろうか?」
「いやっ。ティナがやる」
ティナが謎にやる気だ。悔しそうな顔を見せていたが、狙いを定めて両手でつかみに行く。
俺も風魔法で移動し、それを補助する。
「とれたっけどとれない。ソラ―」
「まかせて」
ティナでは蔦が切れないようなので風魔法で切断してあげる。
テフテフの実を手にしたティナはホクホク顔だ。
嬉しそうに青い実を見つめている。
「これって食べれる?」
「オリバーさんは食べれるけど、そんなにおいしくはないと言ってたよ」
「でも、みんなおいしそう」
そうなんだよね。テトモコシロは恐るべきスピードで木の実に飛び掛かりおいしそうに口をもぐもぐさせている。
しっぽもずっと振りっぱなしなので機嫌もいいみたいだしな。
「俺が味見するから待ってね」
青い木の実をそのままかじると、口の中にほのかに甘いかおりが充満する。
んー。なんだろう。なしのようなほのかな甘さと言えばいいのだろうか。
中身もすべて青く、青い汁がでてくる。
まずくもないが、テトモコシロが喜ぶほどのものではないと思うが、今も楽しそうにと瓶こんでいるテトモコシロを見ると、やっぱり喜んではいるんだよな。
「どう?」
「んー。おいしいよ。まずくはない。けどテトモコシロみたいには食べないかな」
「ティナも食べるっ」
そのまま残りをティナに渡すと、白い手を青色にそめつつ天使ががぶり。
「……。おいしい……?」
「そう。そんな感じの味。テトモコシロが喜んでいるからみんなの分と依頼分は確保しよう」
「うんっ」
ティナも俺とほぼおなじぐらいの反応。テトモコシロがおいしそうに食べて手たからね。ハードルをあげすぎたのかもしれない。
そのあとは少しだけティナのやりたいようにやらしてあげ、後は俺が風魔法で全部を集めた。
テトモコシロは今回使い物にならなかった。
何回言っても、木の実にそのまま噛みつくからね。
それほどそそるなにかがあるのだろうな。
ほんと不思議な実だ。
ダンジョンだから遠慮なく見える範囲のところはかりつくしましたよ。
「ドーラは食べないのか?」
「我は食べないぞ。それより、今日は前食べたハンバーグが食べたいぞ」
またこのドラゴンは手がかかることを。
ピクニックやキャンプでハンバーグつくるやつなんてふつういないからな?
「了解。時間かかるからな?それぐらいは待ってよね」
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