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第52話 お話にならない
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翌日、いつもよりも早く目が覚めた。
窓から入ってくる光はまだ朝の模様を示していない。
思っているよりも、今日のことを気にしていたようだ。
睡眠時間がいつもより短いのにもかかわらず、頭の回転はいつもより早い。
「わふ?」
「あー、まだ寝ていていいぞ。少し庭で体を動かすだけだ」
ベットから出た俺に気づいたのかモコの目が覚める。
何が起きるかわからないし、ベットの中でくつろいでいてもゆっくり休めそうにない。
「わふわふーわん」
「一緒に体を動かしたいのか?」
「わふ」
モコは静かにベットからでて、庭へ向かう俺の後を追いかけてくる。
「久々に特訓しようか」
「わふ」
モコも朝からご機嫌なようで、特訓にはノリ気だ。
体をグーと伸ばし、特訓の準備運動をしている。
「ルールは魔法、武器、爪、噛みつきなし。相手にケガさせるのはダメだからね」
「わふ」
「それに、ラキシエール伯爵家の屋敷や庭の芝生にも気を掛けること」
「わふ」
「じゃー、始めるか」
その合図でお互いが行動をし始める。
モコは目にもとまらぬ速さで俺の後ろへと回り込み、背中へとタッチしようとするが。
俺も二年前の俺じゃない。
それを空中に飛び上がり回転することで避ける。
それにモコも反応し、空中に飛びだした俺に肉球を当てようとしてくる。
やはり、速さではテトモコに勝てないな。
俺はモコが出してくる手を受け流し、それの反発を利用してモコから距離をとる。
「わんわーーん」
「だろ?俺も成長しているんだぞ」
決めれたと思ったのか、モコは少し悔し気になく。
モコは動きを止め、俺を見つめている。
どのように肉球をあてるかを考えているのだろう。
考えが思いついたのか、体を子犬サイズに戻し、俺の方に駆け寄ってくる。
子犬状態のモコは進むスピードは多少遅くなるが、その分小回りがきき、攻撃も当てにくくなる。
んー。この状態のモコは本当に厄介だ。
小さな体で俺の周りを走りまわっているかと思うと、いきなり俺の足の間を高速で抜ける。
そして、また距離をとり、周りを走り回る。
実践だと、足元にいるモコから火魔法が発動されるからな。
考えるだけでも、絶対に受けたくはない攻撃だ。
何がとは言わないが、絶対にだ。
それに、小さいモコに攻撃を当てるのも至難の業だ。
モコにどっちのサイズの方が強い?って聞くと、単独なら子犬状態の方が強いと返ってきた。
なんでも、動きやすいらしい。
まあー、攻撃当てれないもんな……
いつもはティナを守るために大きくなっているとのことだし、ほんとにいい子だ。
その後も俺とモコの特訓は続いていたが。
「にゃーーん」
「きゅー」
「あー。ずるい。ソラとモコちゃんだけで遊んでるー」
テトシロティナの元気な声で特訓の手が止まる。
いや、別に遊んでいたわけではないんだけどね。
そんなことは知らないと、うちの子たちは猛抗議だ。
どうどう。朝から元気なうちの子たちを鎮めるのには時間がかかる。
その後はもちろん特訓など続けることができず、サバスさんが呼びに来るまで俺たちのふれあいタイムは続いた。
「じゃー、俺は行ってくるぞ」
「にゃー」
「ソラ、テトちゃんいってらっしゃい」
「行ってらっしゃい。ティナちゃんのことはまかせて」
モコシロティナとフィリアに見送られ、エルドレート公爵家に向かう馬車に乗る。
テトは朝のことを怒っているのか、絶対に行くと俺の肩から降りてはくれなかった。
まあ、テトがいると安心もできるし、ありがたいのだが。
ずるいずるい、テトとも特訓してと何回も鳴き声を上げていた。
あの場ではティナもいたし、あまり危ないこともできなかったので、しかたがなかったんだよね。
結局、今日は俺について行くということで許してもらったのだ。
今はご機嫌に俺の頬にスリスリしている。
機嫌がいいと本当に甘えん坊だ。
まあ、悪い時でも呼べばゴロゴロと音を鳴らしてくるのだが。
貴族街をどんどんと進んでいく。
「こちらがエルドレート公爵家の屋敷となります。帰りは本当に歩いて帰られますか?」
「うん。ありがと。散歩がてら歩いて帰るよ」
「わかりました。では戻りますね」
そういうと御者の人は馬車が来た道へと戻っていく。
「お待ちしていました。天使の楽園ですね。旦那様がお待ちですのでご案内します」
執事服を身に包んだ男性は俺たちの返答を待たず、屋敷の門を開け、屋敷へと向かっていく。
そのまま、部屋へと案内され、ソファーに座っているように指示をされた。
謝罪を受けに来たはずなんだけど、なんか対応が悪いな。
これが公爵家の客への対応なのか?
今回は了承を得ずにテトをソファーの上に乗せ、まったりさせておく。
これで怒るなら、そんだけの器ってだけだ。
お茶もお菓子も来る様子がないので、影収納からだし勝手に食べて待つことにする。
「んにゃー」
「そうだなー。遅いね」
もうすでに体感で一五分ほど待っているのだと思うのだが、一向に部屋の扉を開かれない。
やることもないので、とりあえず、本を読みながら待つことにする。
俺が指定した時間だし、午前中というのも曖昧な表現だからね。
公爵家の旦那ってことは当主だろうし、忙しいのかな?
それから、一時間ほどたっただろうか。
本も飽きてきて、扉開いて廊下を覗いてみるが、誰も来る様子はない。
テトなんかソファーですやすや寝息を立てている。
「よし、帰るか」
テトを起こし、出していたコップやお菓子を影収納に入れていく。
収納し終わり、歩き出そうとすると、ドンという音をたて扉が開かれる音が聞こえる。
「このガキか?」
「そうです」
「そうか、おい、どこに行こうとしている」
いかつい顔に髭を生やしたじじいが何か言っているが、そんなこと気にしない。
スルーして、扉から出ようとするとじじいから再度声がかかった。
「貴様がソラというものだな?どこに行こうとしている」
「帰る」
俺はただそう告げ、部屋をでる。
「まて、ガキ。謝罪をしにきたのではないのか」
「ああ?」
このじじいは何を言っているんだ?
頭に蛆虫でも沸いているのか?
じじぃに顔を向けると、ニヤニヤとした気に食わない顔で俺を見下ろしている。
子が子なら親も親だな。
本当、金髪バカにそっくりだよ。特にあほなところがな。
「お前が謝罪するのではないのか?従者に書かせた手紙の内容すら知らないのか?もっと仕事したほうがいいぞ。じじぃ」
「なっ。不敬だぞ貴様」
横にいる執事が何か言っているが気にしない。お前には話してすらいない。
小物は黙っていろ。
じじぃは突然の罵倒に驚いているのか、何も発せず、ただ顔を赤くさせている。
肝臓でも悪いのか?酒の飲みすぎだぞ。じじぃ。
「捕らえろ。その魔物も殺せ」
怒鳴るように、大声で叫ぶじじぃ。
「やめた方がいい。お前から送られた手紙は冒険者ギルドの幹部へと送っている。謝罪を受けに来た俺がなんで捕えられる事態になるんだろうな?そちらに落ち度があるのでは?冒険者ギルドはどう捉えるんだろうか。楽しみだね」
「なっ」
にっこりと笑みを浮かべてじじぃを睨みつける。
金髪とティナの家のこともあり、公爵家を舐め腐っている俺だが、権力としての公爵家を舐めているわけではない。
俺が何もしなくても、権力の力で俺を犯罪者にするのはどうとでもできるだろう。
それを回避するために、一応マクレンさんへと手紙を送ったのだ。
各ギルドは国に属さず、この大陸の国に影響力を及ぼしている。
国に属さないということは権力の影響を受けないということだ。
それに、冒険者は貴族との関わりも多く、間にギルドが入ることもしばしばあるようだ。
今回はティナのおじいさんということで存分にその影響力を使わせてもらった。
権力の高い知り合いは本当に使い勝手がいい。
「謝罪は受け取らないよ。夜道には気を付けてね。影から黒猫が見ているかもしれないから」
「にゃーん」
俺はそういうとテトを肩にのせ、屋敷から出ていく。
にゃんにゃにゃにゃんにゃー。
テトもすっきりしているのかご機嫌さんだ。
後ろの怒鳴り声は、俺のシャットダウンスキルで全く聞こえていない。
何回も言うが、そんなものはないのだが。
俺とテトは貴族街をスキップするように歩いていく。
今夜は楽しみだな。
窓から入ってくる光はまだ朝の模様を示していない。
思っているよりも、今日のことを気にしていたようだ。
睡眠時間がいつもより短いのにもかかわらず、頭の回転はいつもより早い。
「わふ?」
「あー、まだ寝ていていいぞ。少し庭で体を動かすだけだ」
ベットから出た俺に気づいたのかモコの目が覚める。
何が起きるかわからないし、ベットの中でくつろいでいてもゆっくり休めそうにない。
「わふわふーわん」
「一緒に体を動かしたいのか?」
「わふ」
モコは静かにベットからでて、庭へ向かう俺の後を追いかけてくる。
「久々に特訓しようか」
「わふ」
モコも朝からご機嫌なようで、特訓にはノリ気だ。
体をグーと伸ばし、特訓の準備運動をしている。
「ルールは魔法、武器、爪、噛みつきなし。相手にケガさせるのはダメだからね」
「わふ」
「それに、ラキシエール伯爵家の屋敷や庭の芝生にも気を掛けること」
「わふ」
「じゃー、始めるか」
その合図でお互いが行動をし始める。
モコは目にもとまらぬ速さで俺の後ろへと回り込み、背中へとタッチしようとするが。
俺も二年前の俺じゃない。
それを空中に飛び上がり回転することで避ける。
それにモコも反応し、空中に飛びだした俺に肉球を当てようとしてくる。
やはり、速さではテトモコに勝てないな。
俺はモコが出してくる手を受け流し、それの反発を利用してモコから距離をとる。
「わんわーーん」
「だろ?俺も成長しているんだぞ」
決めれたと思ったのか、モコは少し悔し気になく。
モコは動きを止め、俺を見つめている。
どのように肉球をあてるかを考えているのだろう。
考えが思いついたのか、体を子犬サイズに戻し、俺の方に駆け寄ってくる。
子犬状態のモコは進むスピードは多少遅くなるが、その分小回りがきき、攻撃も当てにくくなる。
んー。この状態のモコは本当に厄介だ。
小さな体で俺の周りを走りまわっているかと思うと、いきなり俺の足の間を高速で抜ける。
そして、また距離をとり、周りを走り回る。
実践だと、足元にいるモコから火魔法が発動されるからな。
考えるだけでも、絶対に受けたくはない攻撃だ。
何がとは言わないが、絶対にだ。
それに、小さいモコに攻撃を当てるのも至難の業だ。
モコにどっちのサイズの方が強い?って聞くと、単独なら子犬状態の方が強いと返ってきた。
なんでも、動きやすいらしい。
まあー、攻撃当てれないもんな……
いつもはティナを守るために大きくなっているとのことだし、ほんとにいい子だ。
その後も俺とモコの特訓は続いていたが。
「にゃーーん」
「きゅー」
「あー。ずるい。ソラとモコちゃんだけで遊んでるー」
テトシロティナの元気な声で特訓の手が止まる。
いや、別に遊んでいたわけではないんだけどね。
そんなことは知らないと、うちの子たちは猛抗議だ。
どうどう。朝から元気なうちの子たちを鎮めるのには時間がかかる。
その後はもちろん特訓など続けることができず、サバスさんが呼びに来るまで俺たちのふれあいタイムは続いた。
「じゃー、俺は行ってくるぞ」
「にゃー」
「ソラ、テトちゃんいってらっしゃい」
「行ってらっしゃい。ティナちゃんのことはまかせて」
モコシロティナとフィリアに見送られ、エルドレート公爵家に向かう馬車に乗る。
テトは朝のことを怒っているのか、絶対に行くと俺の肩から降りてはくれなかった。
まあ、テトがいると安心もできるし、ありがたいのだが。
ずるいずるい、テトとも特訓してと何回も鳴き声を上げていた。
あの場ではティナもいたし、あまり危ないこともできなかったので、しかたがなかったんだよね。
結局、今日は俺について行くということで許してもらったのだ。
今はご機嫌に俺の頬にスリスリしている。
機嫌がいいと本当に甘えん坊だ。
まあ、悪い時でも呼べばゴロゴロと音を鳴らしてくるのだが。
貴族街をどんどんと進んでいく。
「こちらがエルドレート公爵家の屋敷となります。帰りは本当に歩いて帰られますか?」
「うん。ありがと。散歩がてら歩いて帰るよ」
「わかりました。では戻りますね」
そういうと御者の人は馬車が来た道へと戻っていく。
「お待ちしていました。天使の楽園ですね。旦那様がお待ちですのでご案内します」
執事服を身に包んだ男性は俺たちの返答を待たず、屋敷の門を開け、屋敷へと向かっていく。
そのまま、部屋へと案内され、ソファーに座っているように指示をされた。
謝罪を受けに来たはずなんだけど、なんか対応が悪いな。
これが公爵家の客への対応なのか?
今回は了承を得ずにテトをソファーの上に乗せ、まったりさせておく。
これで怒るなら、そんだけの器ってだけだ。
お茶もお菓子も来る様子がないので、影収納からだし勝手に食べて待つことにする。
「んにゃー」
「そうだなー。遅いね」
もうすでに体感で一五分ほど待っているのだと思うのだが、一向に部屋の扉を開かれない。
やることもないので、とりあえず、本を読みながら待つことにする。
俺が指定した時間だし、午前中というのも曖昧な表現だからね。
公爵家の旦那ってことは当主だろうし、忙しいのかな?
それから、一時間ほどたっただろうか。
本も飽きてきて、扉開いて廊下を覗いてみるが、誰も来る様子はない。
テトなんかソファーですやすや寝息を立てている。
「よし、帰るか」
テトを起こし、出していたコップやお菓子を影収納に入れていく。
収納し終わり、歩き出そうとすると、ドンという音をたて扉が開かれる音が聞こえる。
「このガキか?」
「そうです」
「そうか、おい、どこに行こうとしている」
いかつい顔に髭を生やしたじじいが何か言っているが、そんなこと気にしない。
スルーして、扉から出ようとするとじじいから再度声がかかった。
「貴様がソラというものだな?どこに行こうとしている」
「帰る」
俺はただそう告げ、部屋をでる。
「まて、ガキ。謝罪をしにきたのではないのか」
「ああ?」
このじじいは何を言っているんだ?
頭に蛆虫でも沸いているのか?
じじぃに顔を向けると、ニヤニヤとした気に食わない顔で俺を見下ろしている。
子が子なら親も親だな。
本当、金髪バカにそっくりだよ。特にあほなところがな。
「お前が謝罪するのではないのか?従者に書かせた手紙の内容すら知らないのか?もっと仕事したほうがいいぞ。じじぃ」
「なっ。不敬だぞ貴様」
横にいる執事が何か言っているが気にしない。お前には話してすらいない。
小物は黙っていろ。
じじぃは突然の罵倒に驚いているのか、何も発せず、ただ顔を赤くさせている。
肝臓でも悪いのか?酒の飲みすぎだぞ。じじぃ。
「捕らえろ。その魔物も殺せ」
怒鳴るように、大声で叫ぶじじぃ。
「やめた方がいい。お前から送られた手紙は冒険者ギルドの幹部へと送っている。謝罪を受けに来た俺がなんで捕えられる事態になるんだろうな?そちらに落ち度があるのでは?冒険者ギルドはどう捉えるんだろうか。楽しみだね」
「なっ」
にっこりと笑みを浮かべてじじぃを睨みつける。
金髪とティナの家のこともあり、公爵家を舐め腐っている俺だが、権力としての公爵家を舐めているわけではない。
俺が何もしなくても、権力の力で俺を犯罪者にするのはどうとでもできるだろう。
それを回避するために、一応マクレンさんへと手紙を送ったのだ。
各ギルドは国に属さず、この大陸の国に影響力を及ぼしている。
国に属さないということは権力の影響を受けないということだ。
それに、冒険者は貴族との関わりも多く、間にギルドが入ることもしばしばあるようだ。
今回はティナのおじいさんということで存分にその影響力を使わせてもらった。
権力の高い知り合いは本当に使い勝手がいい。
「謝罪は受け取らないよ。夜道には気を付けてね。影から黒猫が見ているかもしれないから」
「にゃーん」
俺はそういうとテトを肩にのせ、屋敷から出ていく。
にゃんにゃにゃにゃんにゃー。
テトもすっきりしているのかご機嫌さんだ。
後ろの怒鳴り声は、俺のシャットダウンスキルで全く聞こえていない。
何回も言うが、そんなものはないのだが。
俺とテトは貴族街をスキップするように歩いていく。
今夜は楽しみだな。
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