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第48話 白髪
しおりを挟む食事も食べ終わり、俺たちは客室へと案内された。
客室はシンプルな作りであるが、ベットも大きくシックな感じで作られていた。
「ここがソラ達の部屋よ。自由にしていいから昼食とか晩御飯が必要な日はメイドか執事に伝えておいてね」
「わかったよ。助かる」
「私は学校の準備するから自室にいるわ。何か聞きたいことがあったら聞いてね」
そういうとフィリアは自室へと戻っていった。
「ソラ。今から何するのっ?」
「んー。せっかくだし街並みを見てみたいよな」
「気になるっ」
「じゃー、行こっか」
うちの子たちも乗り気なので街に繰り出すとする。
フィリアからは伯爵家の紋章付きのカードを貰っている。
どうやら、それを貴族街の門で見せるとスムーズに通れるらしい。
スレイロンの街でもそのカードを持っていれば、問題なく屋敷に行けたのにな。
俺たちはサバスさんに外出を告げ、そのまま屋敷を出る。
貴族街を歩いているが周りにある屋敷の面積に驚く。
日本では高級住宅街には行ったことないけどこんな景観なのだろうか。
街中にあるビルなどがなく、大きな一軒家が隣り合い道を作っている。
貴族街の門に着くとそのまま素通りできた。
俺たちを不審な目で少し見ていたが、見る限り手ぶらだし子供だからね。
何事もなく出ることができたよ。
貴族の子供の散歩だと思っているのだろう。
門を抜けるとそこには違う街並みが見える。
門一つでこれだけ世界が違うんだな。
目の前を行きかう人々みてしみじみと感じる。
カフェのようなテスラ席で飲み物を飲んでいる人。屋台に並び仲間と話ししている人。
様々な人がそれぞれの生活を営んでいる。
「人多いねっ」
「そうだな。それに人に結構見られるな」
うちの子たちはスレイロンと同様に注目の的のようだ。
都会だし従魔を飼っている人は多いと思うけど、小さな子供二人が従魔を三匹つれた光景は珍しいようだ。
近くを通る人々は可愛いねといいながらうちの子たちを見ている。
ティナは人込みで迷子にならないようにモコの上に乗せている。
そして、現在はモコパーカーを身に着けている。
そう。天使なのだ。
初めて見る住民にはそれはもう可愛いく映っていることだろう。
カメラさえあれば盗撮され拡散されていたほどに。
「ねー、どこいく?」
「街の入り口らへんに冒険者ギルドを見つけたからまずはそこに行こうか」
ティナの杖を買うお金は用意できているが、これからどれだけお金が必要になるかわからないから、影収納の魔物を全部買い取りしてもらいたい。
旅行先で予定よりお金を使うなんてあるあるだろ?
それに、欲しいものがこの世界ですぐに量産されるならいいのだが、ダンジョン産の物で一点物だと、売れたら二度と手に入らない可能性がある。
そんなことがないように、現在の資金を金としておいておきたい。
ジロジロと住人、観光客からの視線を集めながら冒険者ギルドへ進んでいく。
帝都の冒険者ギルドは見るかぎりで四階建てのようだ。
外見はそんな違いはないのだが、敷地面積も大きい。
「わぁー。冒険者さんいっぱい」
ティナがモコの上で興奮しているが、確かに多いな。
スレイロンではあまり見なかった、十歳ぐらいの冒険者も見える。
学校もあるし、やはり若い人の数の差は歴然だ。
少年らの立ち姿、装備品からはあまり強さを感じない。
人数は多いが、スレインロンの方が質がいいように感じる。
冒険者ギルドの一階に見えるものはC~Gランク受付。依頼受付。買い取りカウンターが見えた。
ここではランクによって受付が分かれているようだ。
奥の方には冒険者が固まっており、C~Gランクの依頼の掲示板を見ている。
「えっと。俺がBランクだから二階に進もうか」
「うんっ」
二階への階段に進んでいき、フロアを上がる。
二階は静けさがあり、数個のパーティーが机で話しているだけ。
掲示板の周りにも人は見あたらない。
やはりBランク以上となると大分人数が減るようだ。
子供が上がってくるのが珍しいのか、二階にいる人たちの視線が集まる。
めんどくさいことに巻き込まれないといいけど。
小説なら絡まれる状況だ。
俺たちは視線を集めながらも買い取りカウンターへと進む。
「すみません。この階はBランクからの受付になっていまして、それ以外での買取は一階でお願いします」
「ほい」
案の定、受付嬢に止められたので冒険者カードを渡す。
「Bランクですか……」
受付嬢は驚いた顔をしているが、周りの冒険者はすでに俺たちから視線を外し話へと戻っている。
良かった。ここではテンプレのようなことは起こらないみたいだ。
「カードの提示ありがとうございます。買い取りですがどれほどありますか?」
「んー。いっぱい」
「それならばこのマジックボックスへとお入れください」
おおー、久々みたよマジックボックス。
確かに、帝都だと買い取りの量も多そうだしな。いちいち倉庫へと行っていたら倉庫が混雑しそうだ。
でも、問題が一つ。
「男性の職員さんに手伝ってもらっていいですか?収納スキルで収納しているので床には出せるんだけど、箱に入れるとなると大変なんだ」
「収納スキルでしたか、それなら職員が手伝いますね」
そう、影収納だから床に面しているか俺が持っているかしか出し入れできないのだ。
魔物の死骸は重いのよ。持った状態で出現させると腕が持たない。
男性の職員二名が来たので、俺の影で影収納から魔物の死骸を出していく。
どんどんと出てくる死の森の魔物たちに驚きつつも職員さんはマジックボックスへと入れていく。
「これで終わり」
最後の魔物をだして受付嬢へと伝える。
「ありがとうございます。内容は書面にしますので席についてお待ちください」
ここでは受け取り時に内容を書面にするみたいだ。
まあ、人多ければどれが誰の物なのか管理しないとわからなくなるか。
俺たちは指示に従い後ろにある席へと座る。
ティナは初めてみる帝都の冒険者ギルドが楽しいのか、あちこちを見渡している。
「ティナリア?」
「あぁ?」
席で待っていると階段の方からティナを呼ぶ声がする。
視線を移すと、そこには白髪で渋めのおじいさんが立ってこちらを見ていた。
「テトモコシロ」
俺の呼びかけに答え、モコはティナを乗せ後ろへと下がる。
シロはティナへの結界を施し、テトはティナの前に陣取る。
俺は椅子から立ち上がり、大鎌をおじいさんへと向ける。
見たことない人だ。
そしてティナをティナリアと呼ぶ知り合いを俺は知らない。
「ま、待て」
「うるさい。ティナに近寄るな、殺すぞ?」
俺は抑えている魔力を極限まで開放し、大鎌へと注いでいく。
周りの冒険者はいきなりの緊急事態に席を立ち、対応できるように静かに、俺たちの行く先を見つめている。
受付嬢たちは慌てているみたいだがそんなことを気にしている余裕がない。
「頼むから、大鎌を下ろしてくれ」
「それはできない。殺されたくないならそこを動くな」
白髪のおじいさんは動揺しているが、俺の指示に従っているようで一歩も動いてはいない。
「ティナリア、生きていたのだな。よかったぁ」
おじいさんはそういうと涙をこぼしながら床へと崩れ落ちていく。
「マクレン様」
一緒に来ていたお付きの人がおじいさんを支える。
生きていてよかっただと?
こいつはティナの事件を知っている。
何を知っている?どこまでその事件に関わっている?
この白髪のおじいさんは誰だ。
親族か?親戚か?知り合いか?
あらゆる可能性が頭によぎるが、どれも俺にはわからない。
ただ、ティナのことを知っているというだけでも、俺に敵意を感じさせる。
ティナはすこしおびえているのかモコにしがみついている。
「……おじいちゃん?」
小さな声で消えるように吐き出されたティナ言葉が俺の耳に届いてしまった。
『殺せ』
頭の中で声が聞こえる
『親族は敵だ」
『ティナを守るためなら世界を敵に回してやる」
決意した言葉が頭から離れない。
『殺せ』
頭の中はこの言葉で埋め尽くされていく。
頭に響く声に従って。
大鎌に影の魔力を込めたまま、一歩、また一歩と白髪へと近づいていく。
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