33 / 134
第33話 気を取り直して
しおりを挟む 隣に立つ課長に視線を向ける。
課長は私の視線を受けて、「佐々木くんに僕の姿は見えてないよ」と言った。そして証拠を見せるように自分のデスクの引き出しを開ける江里菜の傍に行き、 課長は江里菜の肩を叩き、「佐々木くん、久しぶり」と声を掛けた。
江里菜は全く無反応に引き出しの中を漁っていた。
「あった! やっぱりここだったんだ」
江里菜が独り言のように言った。
「じゃあ、帰ります。お疲れ様でした」
江里菜がドアに向かって歩き出した。
「あの、佐々木さん」
「何ですか?」
江里菜が振り向いた。
「見えない?」
視線を課長の方に向けた。
課長は笑顔を浮かべて江里菜の前に立ち、バンザイをしたり、ジャンプしながら、「やあ、佐々木くん、僕の事見える?」と聞いた。
「何を?」
江里菜がきょとんとした表情を浮かべた。
「佐々木さん、本当に見えないの?」
「だから何をです?」
江里菜が眉を寄せる。
「えーと、その課長……」
「課長?」
「いえ、あの、くも。佐々木さんの肩に小さな蜘蛛が」
「えーっ、ヤダー!」
江里菜が凄い勢いで肩を払った。
「ねえ、取れました? 取れました?」
「は、はい。取れました」
「びっくりした。じゃあお先に」
江里菜がオフィスを出て行った。
課長がこっちを向いた。
「ね、島本くんにしか僕は見えないんだよ」
「なんでですか?」
「それは僕にもわからない。残念ながら娘も、両親も兄弟も僕に気づかなかったんだ。 もしかして島本くん、霊感が強いんじゃない? 時々、僕みたいな死んじゃった人見える事があったりしない?」
「しませんよ。死んじゃった人が見えたのは課長が初めてです」
「うーん、そうか」
課長がポリポリと頭をかく。
「後はあれかな」
課長が小声で言った。
「あれ?」
「いや、何でもない」
「何です? 気になります」
「いや、いいんだ」
「教えて下さい」
「だから、何でもないって。そんな事より早く仕事を終わらせなさい。今はあまり残業ができないだろ」
急に課長が上司の表情をした。
渋々パソコンに向かった。
課長は自分の席だった所に座り、腕を組んで何かを考えていた。
課長は私の視線を受けて、「佐々木くんに僕の姿は見えてないよ」と言った。そして証拠を見せるように自分のデスクの引き出しを開ける江里菜の傍に行き、 課長は江里菜の肩を叩き、「佐々木くん、久しぶり」と声を掛けた。
江里菜は全く無反応に引き出しの中を漁っていた。
「あった! やっぱりここだったんだ」
江里菜が独り言のように言った。
「じゃあ、帰ります。お疲れ様でした」
江里菜がドアに向かって歩き出した。
「あの、佐々木さん」
「何ですか?」
江里菜が振り向いた。
「見えない?」
視線を課長の方に向けた。
課長は笑顔を浮かべて江里菜の前に立ち、バンザイをしたり、ジャンプしながら、「やあ、佐々木くん、僕の事見える?」と聞いた。
「何を?」
江里菜がきょとんとした表情を浮かべた。
「佐々木さん、本当に見えないの?」
「だから何をです?」
江里菜が眉を寄せる。
「えーと、その課長……」
「課長?」
「いえ、あの、くも。佐々木さんの肩に小さな蜘蛛が」
「えーっ、ヤダー!」
江里菜が凄い勢いで肩を払った。
「ねえ、取れました? 取れました?」
「は、はい。取れました」
「びっくりした。じゃあお先に」
江里菜がオフィスを出て行った。
課長がこっちを向いた。
「ね、島本くんにしか僕は見えないんだよ」
「なんでですか?」
「それは僕にもわからない。残念ながら娘も、両親も兄弟も僕に気づかなかったんだ。 もしかして島本くん、霊感が強いんじゃない? 時々、僕みたいな死んじゃった人見える事があったりしない?」
「しませんよ。死んじゃった人が見えたのは課長が初めてです」
「うーん、そうか」
課長がポリポリと頭をかく。
「後はあれかな」
課長が小声で言った。
「あれ?」
「いや、何でもない」
「何です? 気になります」
「いや、いいんだ」
「教えて下さい」
「だから、何でもないって。そんな事より早く仕事を終わらせなさい。今はあまり残業ができないだろ」
急に課長が上司の表情をした。
渋々パソコンに向かった。
課長は自分の席だった所に座り、腕を組んで何かを考えていた。
0
お気に入りに追加
1,725
あなたにおすすめの小説

じいちゃんから譲られた土地に店を開いた。そしたら限界集落だった店の周りが都会になっていた。
ゆうらしあ
ファンタジー
死ぬ間際、俺はじいちゃんからある土地を譲られた。
木に囲まれてるから陽当たりは悪いし、土地を管理するのにも金は掛かるし…此処だと売ったとしても買う者が居ない。
何より、世話になったじいちゃんから譲られたものだ。
そうだ。この雰囲気を利用してカフェを作ってみよう。
なんか、まぁ、ダラダラと。
で、お客さんは井戸端会議するお婆ちゃんばっかなんだけど……?
「おぉ〜っ!!? 腰が!! 腰が痛くないよ!?」
「あ、足が軽いよぉ〜っ!!」
「あの時みたいに頭が冴えるわ…!!」
あ、あのー…?
その場所には何故か特別な事が起こり続けて…?
これは後々、地球上で異世界の扉が開かれる前からのお話。
※HOT男性向けランキング1位達成
※ファンタジーランキング 24h 3位達成
※ゆる〜く、思うがままに書いている作品です。読者様もゆる〜く呼んで頂ければ幸いです。カクヨムでも投稿中。

神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。
猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。
そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。
あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは?
そこで彼は思った――もっと欲しい!
欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。
神様とゲームをすることになった悠斗はその結果――
※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。

【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-
ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。
自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。
いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して!
この世界は無い物ばかり。
現代知識を使い生産チートを目指します。
※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。
やっと買ったマイホームの半分だけ異世界に転移してしまった
ぽてゆき
ファンタジー
涼坂直樹は可愛い妻と2人の子供のため、頑張って働いた結果ついにマイホームを手に入れた。
しかし、まさかその半分が異世界に転移してしまうとは……。
リビングの窓を開けて外に飛び出せば、そこはもう魔法やダンジョンが存在するファンタジーな異世界。
現代のごくありふれた4人(+猫1匹)家族と、異世界の住人との交流を描いたハートフルアドベンチャー物語!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる