31 / 134
第31話 ソラティナクッキング
しおりを挟む「第一回ソラティナクッキングを始めます」
「はいっ」
「にゃー」
「わん」
「きゅー」
宿に帰り、依頼中のごはんの作り置きを作ることにする。
道中にティナが料理をしたいというので、急遽、ソラティナクッキングの開催が決まった。
別に大掛かりなものではないが、こういうのは気持ちが大事だ。
子供が料理のお手伝いをしたいと言って来たら、大人は全力でその気持ちに応えてあげるべきだ。
それにしても、この世界にホットプレートやたこ焼き機がないのが悔やまれるな。
たしか、子供と一緒につくるミニお好み焼き、ミニクレープ、たこ焼き、カステラなど広告で見たことがある。
子供がいない俺には、だれが買うんだよって思っていたのだが、ティナがいる今、その存在のありがたさがわかる。
一緒にぱぱっと料理ができて、その場でティナが食べる顔を見れる。ティナが作った料理をその場で食べることができる。
なんたる幸運か。考えるだけでニヤケが止まらないよ。
それにしても、もったいなくて食べれないかもしれないな。
影収納に永久保存しておくか?
いや、それだとティナが悲しむかもしれない、
どうすれば、ティナが作ったものを永久保存し、かつティナの喜ぶ笑顔を見れるのだろう。
食べてしまえばなくなる。なくなったものは元には戻らない。
1-1=0のままだ。
んー。これは難問だ。
「ソラ?」
「あー。ごめん。四則演算と不可逆性問題について考えていた」
「?」
待ちきれなくなったティナから声がかかるが、返答によりまた疑問に思わせてしまった。
そんなティナはおばあちゃんの店で買ったエプロンをつけている。
これがまた天使力をアップさせているのだよ。
いつもと違った見た目は新鮮さがあり、俺の目の癒しになる。
テトモコシロはなにもしないが、ティナが巻いたスカーフを身に着けてご機嫌だ。
念のため厨房と廊下の間のところでみんなをお座りさせておく。
さすがに、人様の厨房に毛がもふもふのうちの子を入れるのはまずいと感じてしまった。
ティナが待ちきれないみたいなので、ソラティナクッキングを始めようか。
「では、最初にハンバーグを作ります」
「つくりますっ」
今日のティナはやる気十分だ。
腕まくりをして、手伝う気満々のティナは俺の言葉を反復する。
「まずは、この肉ブロックをひき肉にします」
「しますっ」
きれいに洗った箱に肉ブロックを入れ、風魔法を発動し、小さい風の刃を十本生み出し、肉ブロックをひき肉へと変えていく。
はじめてハンバーグを作った時は、手で時間をかけ刻んでいたのだが、テトモコの食べる量を考えると馬鹿らしくなったのだ。
しかも、大好評で何回もねだられたため、短時間で効率よくできないかを考えた結果、風魔法の使用だった。
これがまた難しいのよ。
箱を壊さないように、十本の小さい風の刃を動かす。
難しさは右手と左手で違うことをするレベルの比じゃない。
指一本で風の刃一本動かすイメージで、風を動かす必要がある。
キーボードと一緒じゃないのか?そう思うだろ?
残念ながら俺は人差し指でしかキーボードを叩けない。
それにキーボードは決められた位置に指を下ろすだけ。
こちとら風の刃で肉ブロックをひき肉にしているんだ。決まった動きなどなく、ただひたすらに動かすだけ。
これも研究の結果、十本が精密操作できる限界だった。
大雑把にすれば本数は増やせるのだが、それだとキッチンごと切り裂てしまいそうになる。
「次は玉ねぎです」
「ですっ」
見ているだけでも楽しいのか。手をワキワキさせている。
ティナがやる作業の復習かな?
玉ねぎも先ほど同様、風魔法でささっとみじん切りに。
そして、フライパンにいれて、火を通していく。
その間に、ひき肉とパンくず、牛乳、塩コショウを箱に入れ。
「ティナの出番です」
「ですっ」
ティナが必死に、手をにぎにぎ、ぐーぐー。ひき肉をこねていく。
身長の問題もあり、床に箱を置き、ほぼ全身を入れてこねている。
もう、素足で踏んでもらった方が楽なのかな?
あまり、ハンバーグを踏むということを気いたことないが、混ざれればいいのではないかと、素人ながら思ってしまった。
それにティナの素足で……食べてみたい……。
いや、やめておこう。
ティナが作業している姿をちゃんとお座りして応援しているテトモコシロ。
しっぽを振り振りしながら、じーっと見ている。
ティナを見ているよね?
お肉じゃないよね?
玉ねぎの火をとめて、冷ましてから、後入れだ。
ティナがこねている間に、スープや、シチューなど鍋ごと影収納に入れれるものを作っていく。
ここら辺はもう適当に具材を風魔法で刻み、鍋に入れて味付けで終わりだ。
味の変化があればいいと思う。
大学生の男なんてそんなもんよ。
結構な大きさの肉ブロックだったので、それなりの重労働なはずなのに、ティナは楽しそうに手を動かしている。
子供用ナイフとかあればいいんだけど、店にあるのはどれもティナには大きすぎて危険だった。そのため、今回のティナの仕事はこねたり、混ぜたりするだけだ。
次のティナの仕事は、ポテトサラダのつぶしをしてもらう。
あらかじめ、火にかけてゆでているジャガイモと卵を取りだし、キュウリやニンジンを薄切りに。
味付けはマヨネーズがないから、塩コショウのみだ。
「ティナ交代しよう。今度はポテトサラダをつぶしてもらいます」
「ますっ」
そろそろしんどいかな?ってところでティナのもみもみタイムは終了だ。
ティナは棒をつかってポテトサラダをつぶしていく。
この作業はもみもみより好きみたいだ。
リズミカルに木の棒を刺している。
「ハンバーグの形をつくります」
「ますっ」
ティナは俺のマネをして、小さいハンバーグを量産していく。
一口ハンバーグの出来上がりだ。
何個か一緒にハンバーグのたねをつくり、俺は焼きの作業に入る。
これは魔道具のコンロをつかうので、俺の魔法の使用はなし。
っていうことはただ量が多いハンバーグを焼いていくだけだ。
ティナ助手は疲れたみたいなので、焼きあがったハンバーグを、つまみ食いさせてあげる。
もちろんテトモコシロが許すはずがないので、みんなで共犯になる。
つまみぐいって不思議なおいしさがあるよな。
子供ながらに背徳感を感じているのだろうか。
さて、俺が作ったやつと、屋台で買ったやつで道中の食事は賄えるだろう。
行きにかかるのも一週間だし。
それに、ヘンネルまでの道中にある一つの街で一夜を過ごすらしい。
「ティナ、これから、今日のデザート作るから。部屋で遊んでいていいぞ」
「わかったぁー」
「にゃー」
ティナはテトの出した水で手を洗い、二階へと走って戻る。
テトモコシロもその後を追う。
さて、スポンジケーキでも作ろうかな。
卵をかき混ぜ、砂糖を少しずつ入れかき混ぜる。
バターを溶かした牛乳を入れ。
生地どろどろになるまでかき混ぜ、あとは小麦粉だ。
マジックボックスに薄力粉なんてないからね。
妥協だよ。
でもうちの子たちはおいしく食べてくれるんだ。
それにしても、この世界に料理魔道具が存在してよかった。
先代の地球人よ。
あなたの知識チートに感謝します。
だけど、少しは残しておいてほしい。
俺も知識チート全開にして異世界で金儲けしてみたいから。
まあ、この世界の人がただただ発明したのかもしれないけど。
それでも、料理チートは絶対に行われている。
ファミレスみたいな店、屋台いつもお世話になっています。
芋をふかしたものがあふれる世界でなくて本当に良かった
そんな世界だと異世界旅行なんてしている余裕なんてないかもしれない。
さぁー、焼きあがったら、うちの子たちに食べてもらおう。
0
お気に入りに追加
1,729
あなたにおすすめの小説
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
鑑定能力で恩を返す
KBT
ファンタジー
どこにでもいる普通のサラリーマンの蔵田悟。
彼ははある日、上司の悪態を吐きながら深酒をし、目が覚めると見知らぬ世界にいた。
そこは剣と魔法、人間、獣人、亜人、魔物が跋扈する異世界フォートルードだった。
この世界には稀に異世界から《迷い人》が転移しており、悟もその1人だった。
帰る方法もなく、途方に暮れていた悟だったが、通りすがりの商人ロンメルに命を救われる。
そして稀少な能力である鑑定能力が自身にある事がわかり、ブロディア王国の公都ハメルンの裏通りにあるロンメルの店で働かせてもらう事になった。
そして、ロンメルから店の番頭を任された悟は《サト》と名前を変え、命の恩人であるロンメルへの恩返しのため、商店を大きくしようと鑑定能力を駆使して、海千山千の商人達や荒くれ者の冒険者達を相手に日夜奮闘するのだった。
日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊
北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。
幼女エルフの自由旅
たまち。
ファンタジー
突然見知らぬ土地にいた私、生駒 縁-イコマ ユカリ-
どうやら地球とは違う星にある地は身体に合わず、数日待たずして死んでしまった
自称神が言うにはエルフに生まれ変えてくれるらしいが……
私の本当の記憶って?
ちょっと言ってる意味が分からないんですけど
次々と湧いて出てくる問題をちょっぴり……だいぶ思考回路のズレた幼女エルフが何となく捌いていく
※題名、内容紹介変更しました
《旧題:エルフの虹人はGの価値を求む》
※文章修正しています。
異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話
kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。
※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。
※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
異世界帰りのオッサン冒険者。
二見敬三。
彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。
彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。
彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。
そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。
S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。
オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?
神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。
猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。
そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。
あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは?
そこで彼は思った――もっと欲しい!
欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。
神様とゲームをすることになった悠斗はその結果――
※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる