上 下
27 / 134

第27話 ないしょのプレゼント

しおりを挟む
 翌朝、ティナに勢いよく起こされた。

「おはよっ。ソラ」
「あー、おはよう」
「にゃー」
「わふ」
「きゅう」

 シロも起きているのか。いつも最後に起きるはずなのだが。
 ティナを見ると目を輝かせて、俺を見ている。
 ん?なんだ。
 なんで、朝からこんなご機嫌なんだろう。
 そしてご機嫌なまま、うちの子会議を開き、話をし始めた。
 テトモコシロの声は小さくて聞こえないが、ティナの声だけは聞こえる。
 
 ティナがなにかを取りに行くらしいが。
 どこにだろう。
 うちの子だけであまり外に出したくないんだけどな。
 そんなことを思っていると、ドアのノックの音が聞こえる。

「ソラさん、起きてますか?ミランダさんがお見えです」
「ミランダさん?なん「ティナがいくー」の用事か……」

 宿の人に聞き返そうとしたがティナに遮られる。
 止めようとしたが、テトモコシロも後に続くので、とりあえず見守ることにする。
 ティナが、扉をあけ、そのまま下の階へと行ってしまった。

「そういえば、ルイが今日誰か来るとか言ってたな。それがミランダさんか」

 まだ、起きたばかりで頭が働いていない。
 なんて言ってただろうか。

「ソラっ、みてみてー」

 扉をドンと鳴らし、勢いよく、ティナが入ってくる。

「おじゃましますね。ソラおはよう」
 
 その後にテトモコシロが続き、ミランダさんが部屋に入ってきた。
 ティナを見えると真っ黒な布のようなものを持っている。

「これ、テトちゃんのやつ」
「テト?あー、ミランダさんが言ってた服か」
「そうよ。出来上がったから渡しに来たのよ」

 ティナが広げてみると、黒いパーカーのような形状でフードにはテトの耳に似た耳がちゃんとついてある。
 胸元には、テトのような黒猫が刺繍してあり、右肩のところに水色の線が入っている。
 服の後ろにもちゃんとテトの長いしっぽがあった。

「ほぉー。よくできてるな。ちゃんとテトっぽいぞ」
「ねー、モコちゃんもシロちゃんも可愛いだよぉー」

 ティナの後ろで、ミランダさんが二つのパーカーを見せてくる。

「すごいなー。確かにモコとシロだ」

 大まかにはテトパーカーと変わりはないようだ。
 違いといえば、それぞれの刺繍に、肩の線の色ぐらい。
 シロのパーカーが白色だけど、みんな可愛いらしいデザインで作られている。

「オプションにするつもりだったけど、胸元が寂しいからそのまま刺繍をつけておいたわ」
「いいんじゃないか?」

 オプションなんて金持ちしかつけないかもしれないからね。
 それであまり金額が変わらないなら、その方がいいだろう。
 うちの子たちも喜んでいるみたいだし。

「これソラの分ね」

 そう言いながら、ティナがテトモコシロパーカーを俺に渡してきた。

「ん?俺の?頼んでないんだが」
「昨日ティナちゃんが頼みに来たのよ。頼まれる前から準備はしていたんだけどね」

 そのためだったのか。
 俺に内緒でテトモコシロパーカを依頼してきたと。
 んー。ティナの気持ちだし着てやりたいけど、すこし恥ずかしいな。
 そう考えている間にも、ティナはモコパーカーを着てみたようだ。

「わんっ」
「くっ」
 
 ティナがモコのマネをし一鳴きする。
 くそ、なんて攻撃力だ。俺のHPはもうゼロだぞ。
 防御力無視の最大火力での攻撃。
 ズン、ズン、ズン、クリティカルヒット。

「わんわんわん」
「わふわふーわん」

 ティナとモコが犬語で話している。
 なんたる光景。
 ついに俺は本当に死んでしまったのだろう。
 うちの天使ともふもふが会話をしている。
 こんな光景がこの世に存在していていいのだろうか。

 あーーーーー、カメラ。
 頭がおかしくなりそうだ。
 カメラが手元にない事実に悔しすぎて、吐き気がしそうだ。

「ソラ?大丈夫だワン?」

 頭を押さえている俺を心配するティナ。
 それはとどめを刺しにきたのか?
 
「ティナちゃん、次はテトちゃんパーカーを着ましょうか」

 ミランダさんがティナの服を脱がし、テトパーカーを被せる。

 俺はあと、二ターンこの攻撃をくらうのか?
 心がもたないぞ?
 幸せすぎて死んでしまうぞ?
 頼むから時間をおいてくれ。
 
 無慈悲にもその気持ちが伝わることなくティナはテトパーカに着終えた。

「にゃ?」

 首をかしげ、テトのマネをするティナ。
 鼻血は出ていないだろうか。
 服を汚すわけにはいかない。

「にゃにゃにゃーーん」
「にゃんにゃんにゃ」

 喜々として会話を行うティナとテト。
 俺はそれをただ見ているだけしかできない。
 空気を吸い込み、息を吐く。
 その動作でさえしんどい。
 これ以上何が俺にできるのか……

「次はシロちゃんね」
「にゃーーん」

 シロの白いパーカを纏うティナ。

「きゅうきゅう」
「きゅっきゅーーー」

 シロは大騒ぎだ。
 そんな状況を見ている俺はかわいいbotとかしている。
 ついに精神が崩壊した。
 あ、ティナがしっぽを振り振りしている。
 かわいい。

「ソラ、戻ってきなさい。それ以上は考えちゃだめよ。人間に戻れなくなるわ」

 意味深なことを言うミランダさん。
 そんなミランダさんも「これは売れるわ」と小声でつぶやいている。
 売れるに決まっているだろう。
 うちの天使がこれを着て街中を歩くんだぞ?
 これで売れなかったら、人類を俺が滅ぼしてやるよ。
 これの価値を見出せない人類など存在する意味がない。
 
「ちなみに、ローブもできたので持ってきたわよ。こっちのシロちゃんのほうがもふもふよ」

 ミランダさんはそう言うとシロパーカーを脱がし、シロローブに着せ替える。

「うわぁー、もふもふだよーー。みてっソラ。ここにテトちゃん、モコちゃん、シロちゃんいるよ」
 
 うん。言われなくても見ている。
 うちの子が輝いて見えるよ。
 シロローブの胸元にはテトモコシロが刺繍されており、右肩に三本線が入っている。
 上から水色、赤色、茶色だ。
 
 テトモコシロも大騒ぎ。
 ティナの周りを行ったり来たり。
 久々に興奮しているようだ。

「うちで販売するものは、シロちゃんには悪いけど、一本しっぽになっちゃうの。四本だと価格が合わせられなくて」
「きゅー」

 そんなことは気にしていないようで、作ってくれたお礼を言っている。


「ねえねえ、ソラ」
「ん?どうした?」

 来ていたシロローブを脱ぎ、部屋着姿のティナが声をかける。

「……これ、プレゼント」

 ティナの小さな手には木箱が置かれていた。

「俺に?」
「うんっ」

 やはり天使だ。
 すこし視界がゆがんでいるように見える。
 目を擦り、ティナの手から木箱を受けとる。
 そのまま、木箱をあけ、中をのぞくと。

「ネックレス……」
「どう?気に入った?みんなで話してつくってもらったの」

 言葉がでない。
 ネックレスは黒色の鎖でつながれており、真っ白な素材で太陽を思わせる形をしている物の上に、三日月状に形作られた灰色の物が重なっている。
 太陽には、水色、赤色、茶色の宝石がちりばめられており、三日月には、白と黒の宝石がちりばめられている。
 太陽と月。ティナと俺をモチーフにしたようなデザインで、ちりばめられたうちの子たちの瞳の色の宝石。
 家族を表すかのようなネックレスだ。

 ふいに地面に涙が落ちる。

「ソラ、大丈夫?うれしくなかった?」

 ティナが慌てているが、そんなはずがない。

「すごくうれしいんだ。うれしすぎて言葉にならなかった。ありがとう。みんなで考えたのか?」
「よかったっ。そうだよ。みんなで考えたのっ」
「ティナはえらい子だな、テトモコシロもいい子だ。こっちおいで」

 俺は時間を忘れて、うちの子たちとじゃれあう。

「あと、これティナちゃんにって、ガンツから受け取っているわ」
「これ、ティナの??なにー?」

 ミランダさんはティナに木箱を渡す。
 ティナは木箱をあけ中をのぞく。

「うわぁー、ティナもソラと一緒のネックレスだ」

 ティナが箱から取り出したのは、同じデザインのネックレスだった。
 ただ、ティナの物は白色の鎖でつながれており、ティナらしさがある。

「素材が余ったから、ティナちゃんのも作ったんだって」
「素材はなにを使ってるんだ?」
「私も聞いたけれど、教えてくれなかったの」
「ドーラのだよ」

 ドーラのやつってことはドラゴンの素材ね。
 これがルイが言っていたことか。
 いつの間に貰っていたのやら。
 ドーラの素材ならあまり公にはできないな。

「なるほど、ドーラが持っているやつを貰ったのか」
「うんっ」

 ティナは何も気兼ねなしに応える。
 まあ、ルイがつれていった店だろうし、ミランダさんにも教えなかったってことは口が堅い職人なんだろう。
 
「じゃー、街にいくわよ」
「え?」

 そういうと、ミランダさんはティナにシロパーカーをかぶせる。


しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

鑑定能力で恩を返す

KBT
ファンタジー
 どこにでもいる普通のサラリーマンの蔵田悟。 彼ははある日、上司の悪態を吐きながら深酒をし、目が覚めると見知らぬ世界にいた。 そこは剣と魔法、人間、獣人、亜人、魔物が跋扈する異世界フォートルードだった。  この世界には稀に異世界から《迷い人》が転移しており、悟もその1人だった。  帰る方法もなく、途方に暮れていた悟だったが、通りすがりの商人ロンメルに命を救われる。  そして稀少な能力である鑑定能力が自身にある事がわかり、ブロディア王国の公都ハメルンの裏通りにあるロンメルの店で働かせてもらう事になった。  そして、ロンメルから店の番頭を任された悟は《サト》と名前を変え、命の恩人であるロンメルへの恩返しのため、商店を大きくしようと鑑定能力を駆使して、海千山千の商人達や荒くれ者の冒険者達を相手に日夜奮闘するのだった。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

星の勇者たち でも三十九番目だけ、なんかヘン!

月芝
ファンタジー
来たる災厄に対抗すべく異世界に召喚された勇者たち。 その数、三十九人。 そこは剣と魔法とスチームパンクの世界にて、 ファンタジー、きたーっ! と喜んだのも束の間、なんと勇者なのに魔法が使えないだと? でも安心して下さい。 代わりといってはなんですが、転移特典にて星のチカラが宿ってる。 他にも恩恵で言語能力やら、身体強化などもついている。 そのチカラで魔法みたいなことが可能にて、チートで俺ツエーも夢じゃない。 はずなのだが、三十九番目の主人公だけ、とんだポンコツだった。 授かったのは「なんじゃコレ?」という、がっかりスキル。 試しに使ってみれば、手の中にあらわれたのはカリカリ梅にて、えぇーっ! 本来であれば強化されているはずの体力面では、現地の子どもにも劣る虚弱体質。 ただの高校生の男子にて、学校での成績は中の下ぐらい。 特別な知識も技能もありゃしない。 おまけに言語翻訳機能もバグっているから、会話はこなせるけれども、 文字の読み書きがまるでダメときたもんだ。 そのせいで星クズ判定にて即戦力外通告をされ、島流しの憂き目に……。 異世界Q&A えっ、魔法の無詠唱? そんなの当たり前じゃん。 っていうか、そもそも星の勇者たちはスキル以外は使えないし、残念! えっ、唐揚げにポテトチップスにラーメンやカレーで食革命? いやいや、ふつうに揚げ物類は昔からあるから。スイーツ類も充実している。 異世界の食文化を舐めんなよ。あと米もあるから心配するな。 えっ、アイデアグッズで一攫千金? 知識チート? あー、それもちょっと厳しいかな。たいていの品は便利な魔道具があるから。 なにせギガラニカってば魔法とスチームパンクが融合した超高度文明だし。 えっ、ならばチートスキルで無双する? それは……出来なくはない。けど、いきなりはちょっと無理かなぁ。 神さまからもらったチカラも鍛えないと育たないし、実践ではまるで役に立たないもの。 ゲームやアニメとは違うから。 というか、ぶっちゃけ浮かれて調子に乗っていたら、わりとすぐに死ぬよ。マジで。 それから死に戻りとか、復活の呪文なんてないから。 一発退場なので、そこんところよろしく。 「異世界の片隅で引き篭りたい少女。」の正統系譜。 こんなスキルで異世界転移はイヤだ!シリーズの第二弾。 ないない尽くしの異世界転移。 環境問題にも一石を投じる……かもしれない、笑撃の問題作。 星クズの勇者の明日はどっちだ。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

処理中です...