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第12話 報酬と検証
しおりを挟む「ねえねえ、エレナさん。今さっきのおじいちゃんはギルドマスターなの?」
「そうですよ。ティナリア様。自分の仕事を私にまかせて、自分は受付で冒険者とお話ししているだけのギルドマスターです」
「……でもギルドマスターってすごいんでしょ?」
「そうですね……尊敬はしていますね。かつて、死の森のスタンピードを自らが冒険者たちの先頭にたち殲滅させ、この街を救った英雄ですから。個人でAランクの称号を得た数すくない一人です。」
「エレナさんはおじいちゃんが好きなんだね」
「内緒ですよ。ティナリア様。あのおじいちゃんすぐに調子に乗ってしまいますので」
「うんっ、ないしょー」
「きゅー」
ティナとシロがうんうんと頷き、口の前で、手を×にしている。
どうやってこの可愛いらしい仕草を身に着けたのだろうか。
天使には標準搭載なのかもしれない。
そんな二人と一匹の会話を聞きながら歩いていると、どうやら倉庫についたようだ。
「グスタさんいますか?魔物の検品と解体をお願いします」
「おーエレナさんか。俺専用倉庫にくるなんてめずらしいな」
「マスターからの伝言です。おそらく死の森の中心にちかい魔物もあるからお前がみろだそうです」
「死の森の中心ねー、どこにそんな命知らずのバカがいるんだか」
「あー、もういいか?俺が持っている魔物の死骸だ。死の森の中心にいるやつもあるぞ。てか、中心のものがほとんどだ」
「坊主がか?あのじいさんもう老いが頭にもきてしまったのか……」
「とりあえずだすぞ」
そう告げ、俺は死の森で狩った魔物の死骸を影収納から出していく。
「ちょ、ちょっとまて坊主」
一か月分ぐらいを出し終わり、さらに出そうとするとグスタさんからストップがかかる。
「サイクロンウルフにウッディーゴリラ、ウッディーサルだと?それにその甲羅はフォレストタートルのやつか。キングバッファローの角まであるじゃないか」
「ごめんけど、名前知らないんだ。魔石もあるけど、分けて収納してなかったからどれがどれかとかわからないんだけど」
「心配するな坊主。鑑定したらわかるし、ギルドに勤めている解体士はそれなりに魔石の判別がつく。っといってもこれだけの量となると時間がかかるな」
「ギルドに登録するのにお金が必要なんだけど、なんとかならない?」
「エレナさん、この坊主に白金貨一枚渡しといてくれ、見た限りそれぐらいはする。あとは詳しくみてみないとわからないが、数十枚の金貨を足すぐらいだ」
「わかりました。そこからギルドカード発行代、従魔登録の代金、スレイロンへの入場料を差し引いて、カードをすぐにお渡ししますね」
おおー。入場料もこっちでやってくれるのは助かるな。
そしてそんなシステムだから、さっさとルイは帰ったのか。
あとで渡しに行かないといけないかと思ったわ
それにしても白金貨か。
ドーラに聞く限り物価と貨幣の相関は。
銅貨 十円
大銅貨 百円
銀貨 一千円
大銀貨 一万円
金貨 百万円
白金貨 一億円
みたいだ。
一躍、億万長者だ。
しかもまだ三倍ぐらい死の森の魔物がのこっている。
「それにしてももったいない。この毛皮も大分傷んでいるな。解体の時の傷も見られる。今度からは魔物をそのまま持ってこい」
「えっと、お肉はもらいたいんだけど。うちの子たち大食いだから」
「にゃー」
「わふー」
そうだそうだー、お肉をとるなーとテトモコが猛反対。
「解体に出したものをすべて買い取るわけではない。ほしい素材があれば持ち主に返すのが当たり前だ。解体料はかかるが、今の素材に比べたら、より高値で売れるし、その方が坊主にとっても、ギルドにとっても儲けがでる」
「それなら助かるよ。解体するの得意じゃないんだ。お肉が欲しいだけだったし。今度から解体にまわすよ」
「ソラ……ティナ少しは素材もほしい」
「あー、そうだったな、ティナは宝物集めてるんだっけか。ならほしいものはそのままティナにあげて、他をすべて売却しよう」
「……ありがと」
解体の料金は三日後にわかるとのことなので、その時に残りのお金も回収する。
俺たちはエレナさんからカードと、金が入った袋をうけとると、さっさとギルドから出ていく。
もう日が落ちており、普通の商店はしまっている。
俺たちは食事どころと宿を手配しに大通りを散策しているが。
「後ろからついてくるやつらが鬱陶しいな」
「にゃー」
「ちょっとお話してみるか」
「わふわふ」
「え?だれかついてきてるの?」
後ろを振り向こうとするティナを止め、俺たちは大通りをそれ、小道に入る。
「よぉよぉ、坊ちゃんたち。ずいぶんと金を持っているらしいな」
バカ二人が釣れたか。
おそらく受付で金を三つの袋に分けているときにでも見ていたのだろう。
リスク分散と、もしもの時のために、金は俺とテトモコの影収納に分けて保管している。
一つの袋におよそ3300万円だ。
これで、もしティナとはぐれても、なんとかなる。
ティナにテトモコ両方ともついていないことはないし、もしいなくなっても、テトモコなら匂いで見つけられるはずだ。
「お兄さんたちいい年なんだから、子供にたかるようなことやめようよ」
「けっ、かわいげのないガキだな。金とそこの嬢ちゃんをおいていけば見逃してやる」
ふーん。嬢ちゃんをおいていけか。
死刑だな。
それに、テトモコシロのことを見えてないのか?
いくら可憐なうちの天使が傍にいるからって、魔物であることは変わりないんだぞ?
ほら、テトモコが威嚇してるじゃんか。
人間の街にいるからか、大分弱めに威嚇しているが。
まあ、死刑であることには変わりない。うちの天使に近づくものには容赦なんてしない。
「テトモコ俺がやるよ。検証したいことがあったから好都合だ」
「ガキがなにいってやがる、いいから金をおけ」
俺は風魔法で加速し、バカ二人に近寄り、肩に手をのせる。
「影入り」
俺とバカ二人は影世界へと入る。
「な、なにがおきた。視界が灰色だと」
「あー落ち着いてもらっていいか?検証だといっただろう」
人間を影世界に持ち込むことはできるのか。
前から検証したかったが、周りにはティナしかおらず、どうなるかわからない影世界に連れて行くわけにはいかなかった。
物や魔物は影世界につれていくことができた。
今回は影世界で人間が生きていられるかの検証だ。
「これからお兄さんたちにはここで一日過ごしてもらうよ」
「何言ってんだ、ガ、キ……」
俺は魔力を解き放ち、周りに数重の風の刃を浮かべる。
「うるさいな。拒否権はない。ここで一日過ごし、明日のこの時間にここにいたら表の世界に出してあげる」
「ううっ、魔力を抑えてくれ。ここにいたら出してくれるのか?」
「うん、それまではどこにいてもいいけど、明日にはここにいて。探すのなんてめんどくさいから」
相手の力量もわからないからこんなことになるんだ。
二人は引きつった顔で、俺を見ているが、ただ脅しただけだろ。
「じゃーね」
俺は表世界にいきテトモコと合流する。
「……お兄ちゃんたちどうしたの?」
「えっと、影世界で人が生活できるかの検証に付き合ってくれてるんだ。ティナ影世界に入りたいっていってただろう?だからそのための検証。」
「うんっ、うまくいったら入っていいの?」
「その時はシロもつれて、みんなで影世界にはいってみような」
「うんっ」
俺たちは、宿を見つけその中に入る。
従魔も泊まれて、飯なしだが。二人+三匹で一日、銀貨四枚。
四千円だとすると安いんじゃないんだろうか。
子供だけという問題もあったが、それに関してはなんのその。
俺たちは約二週間ぶりの風呂とベットで、すぐに眠ることができた。
翌日の昼頃に目覚めた俺たちは、影収納の作り置きのごはんを食べる。
思ったより疲れていたのか、少し体が重い。
ティナは見る限り元気だが、二週間森を移動してきて疲れていないわけがない
「今日は一日、休憩としよう。この宿から出るのは禁止で」
「ええーー。なんでなんで??」
「にゃにゃにゃな?」
「きゅきゅうううう?」
「はい、何をいっても聞きません。テトモコは大丈夫かもしれないが、ティナは慣れていない森での移動。シロは危険な状態だったこと。それを考えると、体にも精神的にもつかれていると思う」
「ううーーー。なら、部屋の中で遊ぶのは?」
「それはいいぞ。走り回ったり、うるさすぎたりせず遊ぶんだぞ。買い物は明日しよう。テトモコシロもティナに物のこととか聞いて、欲しいものを考えておいて」
部屋の中でまったりとくつろいでいる。
こんな時間も必要だ。
死の森で、俺たちは寝ていたが、常に周りに警戒を向けていて、満足に睡眠時間をとれていなかった。
仲良く輪になり、明日のことについて話あっているうちの子たちを見ながら、俺はベットの誘惑に抗うことをやめた。
「にゃー」
「わふ」
頬にリズミカルな温かい振動を感じる。
目を開けると、テシテシ攻撃をするテトとそれを見守るモコ。
横に暖かなやわらかい感触を感じ見てみると、ティナとシロが抱き合って寝ていた。
窓からさす光は弱くっており、あたりが暗くなり始めていた。
「にゃにゃ」
「あー、そうか、検証中だった」
俺は検証中であるバカふたりのことを思い出し、ベットから起きる。
「じゃー、確認に行ってくるから、テトモコはお守頼むな」
そういって出ていこうとすると、モコに止められた
「なんだ行きたいのか?」
「わふ」
「じゃー、モコも一緒にいこう。テト、ティナとシロを任せたぞ」
「にゃー」
宿からでて、昨日の場所にやってきてから影入りする。
影世界では、二人の男が座ってまっていた。
「遅いぞガキ、なんだこの場所は、人にも触れないし、話せない。建物も触れないし、開いている場所しかはいれない」
「早く出せ、クソガキが」
「あー、お兄さんたちの質問は別に求めてない。ただ聞かれたことに応えて。それに答えないと出さないよ」
「くそが、わかったよ。質問に答えるから、水と食料をくれ」
俺は影収納から適当にパンと水を渡す。
「食べながらでいいから答えて。どこか体調に変化は?」
「ない、しいていうなら、腹が減るのと、のどが渇くぐらいだ」
「じゃー、魔力はどうだ?減ったか?」
「いや、減っている感覚はない」
「ちゃんと眠れたか?」
「あー寝れたな。宿に入れないから、ここで寝たが特に変わった様子はないぞ」
「じゃーちゃんと生きて生活できたんだ、それはよかった」
俺は男たちに微笑む。
男たちは微妙な顔をしているが。
「じゃー最後にこれ飲んで」
俺は風魔法でつくった塊を男たちの口に入れる
「エアーブラスト」
男たちの体内で風が膨張し、内部から男たちの体を破裂させ、亡骸へと変えた。
ごめんけど。
俺が影魔法を使えると知られるわけにはいかないんだ。
影魔法は俺の生命線だ。
もしかしたら影魔法の対抗策があるかもしれない。
こんなことでリスクを残していくことはどうしてもできなかった。
しかもこいつらはティナのことを下種な目で見ていた。
そんなやつ生きている価値がない。
俺にとって初めての殺人だが、思ったより罪悪感がないな。
異世界転移の補正だろうか。
これからも、好き好んで殺人を犯そうだなんて思っちゃいない。
ただ、俺はうちの子を守るためなら容赦をしない。そう決めている
影世界からモコとでてきて、何事もなく宿に戻る。
「ソラっ、検証?うまくできた?」
「あー、大丈夫だったぞ。今度みんなで影世界にはいろうか」
「うんっ」
「きゅーーー」
俺の周りに集まり、喜んでいるうちの子たち。
その日は、宿の横の食事処でご飯を食べ、みんなで寄り添いながら入眠した。
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