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第1話 異世界転移
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「にゃー」
「わふ」
「あと五分……ん?」
ねだるような鳴き声と顔にやわらかな圧迫感を感じ、目が覚めた。
目を開けると透き通るような水色の目をした黒い猫。
スラリとした前足を器用に俺のほっぺにうちつけテシテシと音を鳴らしている。
ベットの横に目をずらすと、深紅の目をキラキラさせてしっぽをふっている黒い子犬がお座りしていた。
えーと、どういう状況だ?
目の前には見知らぬ黒猫と黒犬。
部屋は丸太でできたログハウスの一室で、俺はそのベットに寝かされていた。
今も黒猫のテシテシ攻撃はつづいているが、とりあえず抱き上げ、ベッドの横にある窓から外の景色を見てみる。
目の前には青い空と鬱蒼とした森が広がっていた。
考えをまとめるために、ゴロゴロと音を鳴らしている黒猫を足元へとおろす。
「うん、まったくわからん。どこだよここ。」
落ち着け俺、ここに寝る前の状況を思い出すんだ。
その間にも、俺の足元で二匹がにゃんにゃんわんわん鳴いている。
俺の足の間を黒いもふもふが行ったり来たり。
目が合うと、首をかしげ見つめ返してくる。
「なんだこの子たちは。かわいいすぎるんだが」
でもかまっている余裕はない。
現在俺は知らない場所にいて、緊急事態なんだ。
心を鬼にし、二匹をスルーすることにきめ……れない。
一旦思考停止、OK。
「よーし、おいで」
床に座り、二匹を呼ぶと、嬉しそうに体を寄せてくる。
黒猫のほうは黒色の長毛でさらさらの手触りだ。
そして黒犬の方も毛が長く、もふもふの感触で、思わずおなかの毛に顔面ダイブしてしまった。
あー癒される。
二匹ともしきりに俺のにおいをかいだり、手をなめたりして甘えてくる。
「ここが天国か……」
アニマルセラピーというものの存在を知っていたが、実際に体験すると効果はあるものだ。
いままで動揺していた気持ちは薄まり、頭を冷やすことができた。
体感一五分ほどのふれあいだったが満足だ。
意識を失う前の記憶を思い出していこう。
俺は影山空で二十一歳。私立の理系大学に通う大学生だ。
家族は父、母の三人で、大学に通っているため、現在は一人でマンションに住んでいる。
バイトにあけくれ、趣味の小説やジムに通い、日々の生活を送っていた。
ちゃんと記憶があるってことは記憶喪失ではないか……
一番新しい記憶は、たしか、大学の試験を受けるためにバイクにのって……
あーそうだ……住宅街の角からトラックが急にでてきて、トラックと衝突した。
そのあとからの記憶がない。
見当たす限りここは病院ではなさそうだ。
体も痛いところはないし、けがも見る限りなさそう。
「あれ、手ってこんなに小さかったかな?」
思わず声に出た。
いや、まて、ありえない。
手とかの話だけではない。
体全体が小さくなって子供サイズになっている。
部屋を見渡し、取り付けられている鏡を見つけ中をのぞくと、そこには黒髪の幼い少年が写しだされていた。
俺の幼い時に似ている。が、こんなに可愛かったか?
全体的に、少しだけほりが深くなった感じだ。
夢か。夢ならばさめてくれ。
現実逃避をしながら手や頬っぺたをつねっているとベットの上に座らせていた子犬がベットから降り走り出した。
そして、ベットの影に隠れたと思ったらすぐに戻ってきた。
戻ってきた黒犬の口には手紙が加えられており、器用に俺の膝の上に落とす。
手紙?読めってことだよね。
ありがとうと感謝の気持ちを伝えながら黒犬をなで、手紙を開く。
「痛いっ、なんだこれ、頭が割れる」
いままでに感じたことがない頭痛がする。
痛みに悶えながら数分耐えていると次第に痛みは消えていった。
なんだったんだ?
え?なんだこの記憶は?
俺はこの世界のことなんてしらないはずだ。
だが、今俺の中でこの状況についての記憶が存在する。
記憶の内容では
・今いる世界は地球ではなく、魔法や魔物が存在する世界であること。
・影山空は死んでおり、その死は予定された死ではなく、地球の神の手違いであること。
・お詫びに俺に縁がある影魔法と風魔法のスキルを与え、この世界に転移させたこと。
・相性が良い魔物を与えること。
・ログハウスやその周りの土地は結界で保護された場所であること。
・地球での影山空という存在をなかったことにしたこと。
「俺は死んでしまったのか。そして異世界へと神様が送ってくれたと。なんともファンタジーな出来事だな」
頭の中で状況を整理し、考えをまとめているが、いきなり異世界転移しましたと言われても正直困る。
ネット小説は多少読んだことがあるが、まさか自分が異世界に行くと思って読んでいる人なんていないだろう。
手紙の送り主、おそらくこの世界の神かそれに準ずるものだろう方に感謝することは、俺である影山空という存在を地球で消してくれたことだ。
神様の手違いで死んだとしても、人間にとって死であることは変わりがない。
それが手違いであろうとなかろうと人間に知る由もないのだ。
存在をなかったことにしたってことは俺の死で両親が悲しむことがないってこと。
それだけは本当によかった。
自分で思うのもなんだが。
愛情を注いだ子供を事故でなくすだなんて不幸この上ない。
でも、死んでしまったならしかたがないか。
両親のことは気になるが、今の俺にはどうしようもできない。
異世界転移?小説では流行っていたな。
みんなどんなことをしていただろうか。
勇者、英雄、冒険者、魔王、王様。
やりたい放題やっていたのは共通か。
なら、俺もこの世界でやりたい放題させてもらおう。
神様に与えられたチャンスだ。
俺だって異世界を堪能してやる。
それに俺は一人じゃない。
黒猫と黒犬がいる。
俺はこの子達と一緒に異世界を楽しめればいい。
ただそれだけだ。
「わふ」
「あと五分……ん?」
ねだるような鳴き声と顔にやわらかな圧迫感を感じ、目が覚めた。
目を開けると透き通るような水色の目をした黒い猫。
スラリとした前足を器用に俺のほっぺにうちつけテシテシと音を鳴らしている。
ベットの横に目をずらすと、深紅の目をキラキラさせてしっぽをふっている黒い子犬がお座りしていた。
えーと、どういう状況だ?
目の前には見知らぬ黒猫と黒犬。
部屋は丸太でできたログハウスの一室で、俺はそのベットに寝かされていた。
今も黒猫のテシテシ攻撃はつづいているが、とりあえず抱き上げ、ベッドの横にある窓から外の景色を見てみる。
目の前には青い空と鬱蒼とした森が広がっていた。
考えをまとめるために、ゴロゴロと音を鳴らしている黒猫を足元へとおろす。
「うん、まったくわからん。どこだよここ。」
落ち着け俺、ここに寝る前の状況を思い出すんだ。
その間にも、俺の足元で二匹がにゃんにゃんわんわん鳴いている。
俺の足の間を黒いもふもふが行ったり来たり。
目が合うと、首をかしげ見つめ返してくる。
「なんだこの子たちは。かわいいすぎるんだが」
でもかまっている余裕はない。
現在俺は知らない場所にいて、緊急事態なんだ。
心を鬼にし、二匹をスルーすることにきめ……れない。
一旦思考停止、OK。
「よーし、おいで」
床に座り、二匹を呼ぶと、嬉しそうに体を寄せてくる。
黒猫のほうは黒色の長毛でさらさらの手触りだ。
そして黒犬の方も毛が長く、もふもふの感触で、思わずおなかの毛に顔面ダイブしてしまった。
あー癒される。
二匹ともしきりに俺のにおいをかいだり、手をなめたりして甘えてくる。
「ここが天国か……」
アニマルセラピーというものの存在を知っていたが、実際に体験すると効果はあるものだ。
いままで動揺していた気持ちは薄まり、頭を冷やすことができた。
体感一五分ほどのふれあいだったが満足だ。
意識を失う前の記憶を思い出していこう。
俺は影山空で二十一歳。私立の理系大学に通う大学生だ。
家族は父、母の三人で、大学に通っているため、現在は一人でマンションに住んでいる。
バイトにあけくれ、趣味の小説やジムに通い、日々の生活を送っていた。
ちゃんと記憶があるってことは記憶喪失ではないか……
一番新しい記憶は、たしか、大学の試験を受けるためにバイクにのって……
あーそうだ……住宅街の角からトラックが急にでてきて、トラックと衝突した。
そのあとからの記憶がない。
見当たす限りここは病院ではなさそうだ。
体も痛いところはないし、けがも見る限りなさそう。
「あれ、手ってこんなに小さかったかな?」
思わず声に出た。
いや、まて、ありえない。
手とかの話だけではない。
体全体が小さくなって子供サイズになっている。
部屋を見渡し、取り付けられている鏡を見つけ中をのぞくと、そこには黒髪の幼い少年が写しだされていた。
俺の幼い時に似ている。が、こんなに可愛かったか?
全体的に、少しだけほりが深くなった感じだ。
夢か。夢ならばさめてくれ。
現実逃避をしながら手や頬っぺたをつねっているとベットの上に座らせていた子犬がベットから降り走り出した。
そして、ベットの影に隠れたと思ったらすぐに戻ってきた。
戻ってきた黒犬の口には手紙が加えられており、器用に俺の膝の上に落とす。
手紙?読めってことだよね。
ありがとうと感謝の気持ちを伝えながら黒犬をなで、手紙を開く。
「痛いっ、なんだこれ、頭が割れる」
いままでに感じたことがない頭痛がする。
痛みに悶えながら数分耐えていると次第に痛みは消えていった。
なんだったんだ?
え?なんだこの記憶は?
俺はこの世界のことなんてしらないはずだ。
だが、今俺の中でこの状況についての記憶が存在する。
記憶の内容では
・今いる世界は地球ではなく、魔法や魔物が存在する世界であること。
・影山空は死んでおり、その死は予定された死ではなく、地球の神の手違いであること。
・お詫びに俺に縁がある影魔法と風魔法のスキルを与え、この世界に転移させたこと。
・相性が良い魔物を与えること。
・ログハウスやその周りの土地は結界で保護された場所であること。
・地球での影山空という存在をなかったことにしたこと。
「俺は死んでしまったのか。そして異世界へと神様が送ってくれたと。なんともファンタジーな出来事だな」
頭の中で状況を整理し、考えをまとめているが、いきなり異世界転移しましたと言われても正直困る。
ネット小説は多少読んだことがあるが、まさか自分が異世界に行くと思って読んでいる人なんていないだろう。
手紙の送り主、おそらくこの世界の神かそれに準ずるものだろう方に感謝することは、俺である影山空という存在を地球で消してくれたことだ。
神様の手違いで死んだとしても、人間にとって死であることは変わりがない。
それが手違いであろうとなかろうと人間に知る由もないのだ。
存在をなかったことにしたってことは俺の死で両親が悲しむことがないってこと。
それだけは本当によかった。
自分で思うのもなんだが。
愛情を注いだ子供を事故でなくすだなんて不幸この上ない。
でも、死んでしまったならしかたがないか。
両親のことは気になるが、今の俺にはどうしようもできない。
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やりたい放題やっていたのは共通か。
なら、俺もこの世界でやりたい放題させてもらおう。
神様に与えられたチャンスだ。
俺だって異世界を堪能してやる。
それに俺は一人じゃない。
黒猫と黒犬がいる。
俺はこの子達と一緒に異世界を楽しめればいい。
ただそれだけだ。
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